2023年7月14日金曜日

血液ガスについて勉強する時、日米の違いを知っていると良いかも

 血液ガス分析のやり方を勉強する際、熱心な方は英語のサイトも、、、、、、と思うと思います。

 例えば、こちらのアメリカ胸部疾患学会のサイトは6ステップ法を紹介しています。

 最初にHイオン濃度を計算(24×PCO2÷HCO3)し、表と照らし合わせてpHの値と合うかどうかチェックしましょうとあります。

 しかし、これは日本の多くの病院では不要です。なぜなら日本では、HCO3はpHとPCO2から計算して出していますので、計算が合わないことはあり得ません。あったとしたら、器械が壊れていますので、たぶんHCO3のデータが得られません。

 諸外国では、通常の生化学検査の一環としてHCO3が測定されています。日本でも検査できる病院があるようですが、少なくとも私が勤めてきた病院では血液ガス分析の一環としてHCO3が測定されていました。

 よって、HCO3が生化学で測定されている病院では、血液ガスの検体が問題ないかどうかチェックするため、計算しても良いのかもしれません。が、HCO3の値を比較すれば良いだけなのでは?と思います。

 もしかしたら、血液ガス分析で表示されているHCO3が計算値ではない機会もあるのかも知れませんね。以下の本では7ステップで最後に計算するよう書かれていますが、たくさん載っている症例のうち計算と合わないのは1例だけで、それも、logの計算が大変だからと別の簡単な方法が紹介されているのですが、それとは差が大きくなりますよねと書かれているだけで、じゃあ、差があっても何もしないんだったら計算いらなくないですか?と思います。

 これに関して著者の先生に出版社を通して質問を送ったのですが、これは私流ですみたいな返事が返ってきただけでした。


 他にもアニオンギャップの自動計算はKを含んでいることが多い(ヨーロッパはアニオンギャップの計算にKを入れているため、正常値は4程度高い)事なども知っておくと良いと思います。



2023年4月20日木曜日

P-Amy(P型アミラーゼ)は必要か?

  アミラーゼが上昇しているとP-Amyを追加する先生がいます。私はP型アミラーゼをオーダーすることがないのですが、必要なのか調べてみました。


 急性膵炎診療ガイドライン2015(新しい版には載っていません)のP.62にP-アミラーゼの精度を調べたデータが載っています。



 このデータによれば、ただのアミラーゼとP-アミラーゼの診断の精度はあまり変わらず、P-アミラーゼを追加する意義はほとんどないことが分かります。アミラーゼは測らず、最初からP-Amyとすれば良いかもしれませんが、それでもその方が有用だというデータはありません。何しろ、急性膵炎診療ガイドライン2021のP.35には膵酵素としてリパーゼを推奨し、リパーゼが測定できない場合にアミラーゼと書かれているのですから。


 ちなみにアミラーゼは11点(通常1点は10円です)で、110円ですが、P-Amyは48点(480円)です。アミラーゼだけで済ませば110円で済むところが、両方測ると590円もかかります。


 医療費のことも考えるとP-Amyを測定する必要はあまりないです。

2022年11月22日火曜日

カルシウムをアルブミンで補正するのはやめましょう

低アルブミン血症の人がいたとき、アルブミン値で補正するのは国家試験でも出題されるので常識になっていると思われます。私もずっと補正をしてきました。釈迦に説法ですが、補正式は以下のようなものです。

補正カルシウム値=血清カルシウム値+(4 −アルブミン)

しかし、最近はアルブミンで補正することが推奨されていないようです。知りませんでした。例えば、こちらの論文には、アルブミンで補正しても正確ではないので、アルブミンを使う事はしないようにと書かれています。代わりにイオン化カルシウムを使うべきだと書かれています。UpToDateも見てみましたが、ゴールドスタンダードはイオン化カルシウムのようです。不勉強ですみませんでした。

これからはカルシウムは血液ガスで見るようにしたいと思います。

2022年10月25日火曜日

酸素マスクで酸素を投与した場合の吸入酸素濃度あるいはFIO2の予想

 気付いたら半年以上更新していませんでした。


先日病室で酸素を5L/分単純マスクで投与されている人がいたので、研修医の先生に聞いてみました。酸素濃度はどのぐらいですか?と。


するとえっと、、、、、、、40%位ですと言うので、どう言う計算か聞いたら、8×5=40と聞いたことがない計算式を言われたのでびっくり。

通常は20+4×酸素流量(経鼻カニューラでも同じ)と思っていたので。こちらの計算でも5Lの場合には同じですが。


根拠を聞いてみたら、国家試験の対策本にそう書いてあった記憶があるとのことでした。調べてみたのですが、8×酸素流量という計算式は載っていませんでしたが、こちらの酸素療法ガイドラインという資料の37ページにそのぐらいの濃度だという事が書かれていました。



グラフを作ってみましたが、4L以下で酸素マスクを使うことはない(二酸化炭素が貯留するので避けるべきとされています)ので、5L以上を見ると、経鼻での予測より高くなっていますが、まあ良いんではないかと思います。

根拠となった文献は、色々調べるとこちらの文献のようですが、8×流量はもちろん、だいたいそのぐらいだと言う事すら書かれていないように思うのですが、どなたか英語の得意な方お願いします!

2022年4月15日金曜日

輸血をした時、Hbがどのぐらい上昇するのか?

貧血の患者さんを見つけた場合、輸血をすることがあります。

赤血球輸血を何単位しますか?と聞かれた場合、指導医の先生達は何単位でと言われていて、何で決めているんだろう?と思ったことはありませんか?

実は適当です。まあ、だいたい1単位で1弱上がると考えている人が多いと思います。


が、ちゃんと計算したい!と言う場合には、以下のような式を用います。

予想されるHb上昇値=投与するHb量÷循環血液量

=26.5×輸血単位数÷(70×体重)×100

26.5 輸血1単位に含まれるHbの量(正確にこの量ではないので25としても良いかも知れません)

70 循環血液量は70mL/kg程度です。これも異論があるとは思いますが。

100 単位を合わせるための数字

体重が50kgの人では、0.76×輸血単位数となります。0.8あるいは0.7×輸血単位数と覚えておいても良いでしょう。


上記の式は以下の前提が成り立つと仮定して作られています。

・投与されたHbは血管内に残る

・投与前と投与後で循環血液量は変化しない

 赤血球輸血は血漿をかなり取り除かれていますので、循環血液量を増やさないと考えてください。つまり出血などの場合循環血液量は別の方法で増やさないといけない、逆にうっ血の場合には安心して入れられるということです。

前提が成り立たないことはたくさんあると思いますので、あくまで概算です。


 こちらの日赤の資料をご覧戴くと一番良いと思います。体重と輸血単位数がわかればHbがどのぐらい上昇するか表になっています。

2022年3月17日木曜日

普段の二酸化炭素分圧を予想する式

 前回紹介させて頂いた本に載っていました。


慢性呼吸不全の方が初診で救急来院した場合など、普段の二酸化炭素分圧を知りたいなあと思った場合に以下の式で予想できるとのことです。


予想PCO2=4×(HCO3−10−0.1×PCO2


この式の根拠となる文献は見つかりませんでした。本には文献が載っているのですが、番号がふられてないので分からないのです。


例えば以下の患者さんで考えてみます。

pH 7.056

PCO2 177.4 Torr

HCO3 48.7 mEq/L

予想PCO2=4×(48.7−10−0.1×177.4)=83.84と予想されます。普段からPCO2が高い患者さんのようです。

ΔPCO2=現在のPCO2−普段のPCO2=177.4−83.84=93.56

急性呼吸性アシドーシスが合併したと考えると、ΔHCO3=0.1×ΔPCO2ですので、

普段のHCO3+0.1×ΔPCO2=48.7と言う式が成り立ちます。よって、普段のHCO3は39.3程度になり、普段のpHは7.29となります(pH=6.1+logHCO3÷0.03÷PCO2)。


人工呼吸管理をするのであれば、pHは7.3程度、PCO2は80程度を目標として行えば良いと言うことが分かります。


しかし、慢性呼吸不全時の補正係数は0.4ではなく、0.51という報告もあるそうで、色々ややこしいですね。

2022年2月24日木曜日

血液ガス問題集の紹介

 昨年6月に注文していて、約8ヶ月経ってやっと届いた本です。


 血液ガスに関して75もの症例が載っていて、怒濤のトレーニングです。最初に解説の章がありますが、読まずにいきなり症例を解き始めても問題ありません。症例毎に詳しい解説があります。そして、どの症例から読んでも良いです(別に少しずつ難しくなるわけではなさそうです)。

  もちろん英語ですが、問題を解くだけならそれほど困難は感じないと思います。解説も式などは英語でも同じなので、、、、、、もちろん日本語の本があった方が良さそうですが。

 Kindle版もありますので、タブレットで読むのも良いかも知れません。

 私は早速46番目と48番目、そして39番目を解いてみました。理由は特にありません、、、、、、知らんけど。