急性アルコール中毒の人は、エタノールによって血清浸透圧が上昇します。
一般的に血清浸透圧が上昇すると、細胞内から水が引き出されるため細胞が小さくなり、血清ナトリウムは薄まって低下します。例えば、高血糖の場合はそうです。
しかし、エタノールが増えても、浸透圧に対して何か行う必要はありません(エタノールが増えすぎるために起こる問題はここでは触れません)。エタノールは細胞膜を自由に出入りできるため、浸透圧は高くなりますが、張度(tonicity)には影響しないからです。細胞内の水分の出入りを規定するのは張度です。
血清浸透圧の計算式は以下の通りです。
血清浸透圧=2×Na(mEq/L)+BUN(mg/dL)÷2.8+血糖(mg/dL)÷18
「なに!文IIはブスだからいや?」と覚えるのでした(知らんけど)。この場合、BUNもまた自由に細胞膜を出入りできるため、細胞内水分量には影響を与えません。よって、張度は以下の通りです。
張度=2×Na+血糖÷18
急性アルコール中毒で浸透圧が上昇している人がいても、理論上はナトリウムは低下しません。もし低下している人がいたら、それはエタノールとは関係ない低ナトリウム血症があると考えなければなりません。低ナトリウム血症の鑑別時に血清浸透圧を測定し、正常か高ければ低ナトリウム血症は検査ミスか他の病態による結果であって治療は不要とされていますが、治療が必要な場合もあることを知っておいた方が良いです。こちらの文献(有料ですが、ある方法で手に入れました)に分かりやすい表が載っています。直接載せるのは良くないでしょうから、一部を日本語にして載せます。
張度が低い場合(hypotonicity)
・浸透圧が低く浸透圧ギャップも正常
通常の低ナトリウム血症でSIADが最も多いでしょう。
・浸透圧が正常(たぶん高い場合もある)で浸透圧ギャップが高い
急性アルコール中毒などで無効浸透圧物質が投与されている場合。メインは上と同じ病態。
・浸透圧が高く浸透圧ギャップは正常
腎不全などでBUNが高い状態など。
普段は浸透圧を気にする(していない人もいるかも知れませんが)のですが、張度も気にするようにしましょう。英語の文献にhypotonic hyponatoremiaと良く書かれているのですが、そう言う意味だったのですね、、、、、、勉強になりました。