2021年6月27日日曜日

浸透圧ギャップは血液ガス分析に役立つか?

 中毒患者さんや原因不明の意識障害では浸透圧ギャップ(正確には浸透圧モル濃度ギャップと言うべきかも知れません)を計算しましょうと言われます。アニオンギャップ上昇があればやはり計算すべきと言う意見もあります。本当なのでしょうか?


  UpToDateの「Serum osmolal gap(血清浸透圧ギャップ)」と言う文献に鑑別が載っていました。代謝性アシドーシスの有無でまず2つに分けます。


アニオンギャップ上昇型代謝性アシドーシスあり

 浸透圧ギャップ大 エチレングリコール

          メタノール

          プロピレングリコール

 浸透圧ギャップ小 重篤な慢性腎臓病(非透析)

          ケトアシドーシス(糖尿病性、アルコール性)

          乳酸アシドーシス

          パラアルデヒド(経口、静注)

アニオンギャップ上昇型代謝性アシドーシスなし

 エタノール

 イソプロパノール

 ジエチルエーテル

 マニトール、ソルビトール、グリシンの点滴

 偽性低ナトリウム血症(重症な高脂血症、高タンパク血症)


 浸透圧ギャップは必ず計算した方が良さそうですね。最後の偽性低ナトリウム血症では、血液ガスの電解質を使えば起こりません。血液ガス分析は通常の生化学検査の電解質とは違う方法で測定しているからです。


 また以下の本のP.104にも似たような分類が載っています。


浸透圧ギャップ上昇なし、アニオンギャップ上昇あり サリチル酸
浸透圧ギャップのみ上昇 エタノール、イソプロパノール
浸透圧ギャップ、アニオンギャップ両方上昇 メタノール、プロピレングリコール

浸透圧ギャップは単純な算数ですが、面倒なのでアプリで計算しましょう。例えばM2Plus Launcherです。


2021年6月26日土曜日

たねぽん法の良い点

  前回紹介させて頂いたたねぽん法ですが、簡単なだけでなく、ミスも少ないと論文に書かれています。英語の論文に書かれていますが、やはり日本語が良いですよね。訳してはしょってみます。


 症例が載っています。66歳の男性で糖尿病があるようです。採血結果は以下の通りです。

Na 138 mmol/L

Cl 96 mmol/L

Alb 3.6 g/dL

HCO3 29 mmol/L

 まずたねぽん法でやってみます。AGの計算がいらないのも面白いです。

Step 1 補正HCO3=Na−CL−2.5×Albを計算

 補正HCO3=138−96−2.5×3.6=33

Step 2 補正HCO3と測定されたHCO3を比較

 33>29で補正HCO3の方が高い

 → アニオンギャップ増加型代謝性アシドーシス

Step 3 補正HCO3とHCO3の正常値を比較

 33 > 25(静脈血HCO3の正常値を25とした)で補正HCO3の方が高い

 → 代謝性アルカローシス


 一般的に言われているアニオンギャップ法でやってみます。

Step 1 アニオンギャップを計算。

 AG=Na−CL−HCO313896−29=13

Step 2 AGをアルブミンで補正

 補正AG=AG+2.5×(4−Alb) アルブミンの正常値を4としています。

 =13+2.5×(4−3.6)=14

Step 3 補正AGをAG正常値と比較

 14 > 10 (AG正常値を10とした)で補正AGの方が大きい。

 → アニオンギャップ上昇型代謝性アシドーシス

Step 4 ΔAGを求める。

 ΔAG=14−10 =4(AG正常値を10とした)

Step 5 ΔHCO3を求める。

 ΔHCO3=HCO3正常値−HCO3測定値

 =25−29 = −4

Step 6 ΔAGとΔHCO3を比較

 4 > −4でΔAGの方が大きい

 代謝性アルカローシス


 診断は同じになりますが、例えばStep 5において、計算を逆にしてしまい、ΔHCO3とΔAGが同じだと間違える可能性があります。そうするとAG上昇型代謝性アシドーシスのみとなってしまい、代謝性アルカローシスの合併を見逃してしまいます。

補正HCO3の計算式

  昨日の投稿で、補正HCO3=Na−CL−2.5×Albと言う式を紹介しました。何故そうなるのか?と言う説明を知りたい方への記事です。

 補正HCO3=HCO3+ΔAG

です。補正HCO3とはHCO3にAG(アニオンギャップ;Anion gap)の上昇分(ΔAG;デルタAGと読みます)を足したものです。AGが上昇すると、それと同じだけHCO3が下がります。陽イオンと陰イオンの合計は同じと仮定されていて、アニオンギャップが増える(陰イオンが増える)とHCO3は下がります。HCO3は結構受け身の陰イオンなのです。そして、AGがゼロになったと仮定した場合のHCO3が、補正HCO3です。また、

 ΔAG=AG−12 (AGの正常値は12と考えて)

 AG=Na−CL−HCO3+2.5×(4−Alb) (4−AlBの4はアルブミンの正常値)

です。最初の式に代入すると、

 補正HCO3=HCO3+Na−CL−HCO3+2.5×(4−Alb)−12

となり

 補正HCO3=Na−CL−2.5×Alb−2

となります。最後の−2は誤差なので、無視すると以下の様になります。

 補正HCO3=Na−CL−2.5×Alb

無視するなんて!と思う方は以下の説明を。

・アルブミンの正常値を4.4とすれば最後の−2は−1になります。さすがにアルブミンの正常値を4.8にするのはどうかとは思いますが、そうすると0になります。

・アニオンギャップの正常値は12かと言えば、最近はもっと低いのではないかと言われています。10が正常値をすれば、ドンピシャその式になります。


 是非この式をお使いください。


2021年6月25日金曜日

酸塩基平衡の解釈法(たねぽん法)

  こちらのサイトに書かれていた方法です。たねもと先生だからたねぽん法なのでしょう。


 サイトにも書かれていますが、論文はこちらです。英語が得意な方はこちらをご覧ください。


 代謝の問題を確認するのに、通常の方法だと6ステップ必要ですが、3ステップで良いというものです。血液ガスを取るの忘れた!と言う場合にも使えます。私はよく使っています。イオンは本来[]をつけるらしいですが、このサイトでは省略しています。

 ここではステップ2と3を逆に記載します。血液ガス分析のデータがなくてもステップ2まで行えるからです。


ステップ1 補正HCO3を計算する。

 補正HCO3=NaCl2.5×Alb 

ステップ2 計算された補正HCO3をHCO3の基準値(24 mEq/L)と比較

 HCO3計算値 > 26 代謝性アルカローシス

 HCO3計算値 22から26の間 正常

 HCO3計算値 < 22 代謝性アシドーシス(アニオンギャップ非増加)

ステップ3 補正HCO3の計算値とHCO3の測定値と比較

 HCO3計算値 > HCO3測定値+2

  測定できない陰イオン増加による代謝性アシドーシス(アニオンギャップ上昇)

 HCO3計算値 HCO3測定値±2の範囲 変な物質は増えていない

 HCO3計算値 < HCO3測定値−2

  異常イオン増加(ブロム中毒、リチウム中毒、免疫グロブリン異常など)


 ステップ1で計算したHCO3はAGが増加していないと仮定した場合のHCO3(補正HCO3と呼んでいます)です。この分析法の根拠は、サイトにも論文にも書かれているので知りたい方はご覧ください。


 何と言ってもアニオンギャップの計算をしないなんて画期的です(似たような計算はしますが)。血液ガス分析のデータがなくても酸塩基平衡の解析が出来るのもいいですね!著明な低アルブミン血症がない場合には、Na−CLでも大丈夫です。それについてはこちらの記事こちらの記事にに書きましたので良かったらご覧ください。


2021年6月24日木曜日

浸透圧を求めるにはどの式を使ったら良いか?

  血液ガス分析には直接関係はありませんが、アニオンギャップが増加している時や、そうでない時でも浸透圧の計算が役立つことがあります。浸透圧は血液検査で測定できます。正確には重量モル浸透圧濃度(Osmolality)で単位はmOsm/kg・H2Oですが、ここでは単に浸透圧とします。


 測定された浸透圧と計算値には当然差(浸透圧ギャップと言います)があります。その差が大きい時(10以上)には、何はおかしな物質が血液中に増えていると予想されます。中毒や原因不明の代謝異常の診断に、この浸透圧ギャップが役立つことがあるのです。


 浸透圧ギャップは、測定された浸透圧−計算された浸透圧で求められます。計算された浸透圧は容積モル浸透圧濃度と言い、単位はmOsm/Lで、単位が違う物どうしを引き算して良いのか?と言う疑問もありますが、それも今回はいいでしょう。


 浸透圧の計算には血糖とBUN(血液尿素窒素)、ナトリウムが必要です。以下の式が有名です。

浸透圧の計算値(mOsm/L)=2×Na(mEq/L)+血糖(mg/dL)÷18+BUN(mg/dL)÷2.8

 係数はNaと同じだけ陰イオンがあるだろうと言うことで2、ブドウ糖は分子量が180、尿素窒素は28(10で割っているのは単位を合わせるため)のためとのことです。しかし、浸透圧の計算法は他にも色々あるようで、どれが一番良いのか検討した文献がありました。その文献によれば以下の式が一番いいようです。

=1.86×(Na+K)+1.15×血糖÷18+BUN÷2.8+14


 また別の文献では以下の式を推奨しています。

=1.89×Na+1.38×K+1.08×血糖÷18+1.03×BUN÷2.8+7.45


 今度使ってみよう。しかし、どちらの文献も一般的に認められている式もacceptableとしています。


2021年6月23日水曜日

Torrとは

  血液ガスにおいて圧力を示す単位はkPaが推奨されていますが、torrでも良いと以前書きました。mmHg=Torr(厳密に言えば違いますが、現在の日本の定義では全く同じ)なので良かったですが、torrとはなんでしょうか?


 その前に注意点です。単位としてtorrを書く場合は「Torr」と最初が大文字だそうです、トルという単位はなどと文章に書く場合はtorrと小文字になるそうです。ややこしい。


 エバンジェリスタ・トリチェリという人が最初に大気圧を水銀で測定したために、彼の功績をたたえてtorrと言う単位の名前になっています。


 定義は1/760気圧と言うことです。mmHgもtorrもちゃんと定義されたのだから良いのじゃないかという気もしますが、科学とは厳密な定義によって成り立っていますので仕方ないですね。


 エバンジェリスタ・トリチェリという名前は、エバンゲリオンのファンの人みたいですごく親しみがわきますね。


2021年6月22日火曜日

mmHgとは

 前回もう使わないと書いた分圧の単位であるmmHgですが、何故そうなったのか、少し勉強してみます。


  こちらのサイトに図入りで解説されていますのでそちらをご覧ください。


 問題点は何かと言えば、測定した場所によって水銀の体積や重力が異なるため、正確な比較が出来ないということです。物質は温度によって体積が変わります。例えば、ある場所での気温が0度で血圧が110mmHgだった場合、気温が30度の場所では体積が増えるため、たぶんですが血圧は110mmHgより高くなります。水銀を使った昔の体温計はその理論を使っています。


 また重力は場所や標高によって異なる(こちらのサイトを参照)ため、わずかではありますが、やはり値に差が出ます。


 どちらも誤差の範囲ではありますし、そもそも実測の血圧(本当は動脈ラインが実測なんですが)も測る人によって差が出ますので、気にしなくても良さそうですが、厳密な値を求められる場合にはmmHgは適切ではありません。日本では血圧や動脈ラインなどの圧のみに許可されているようです。私たちの次の世代ぐらいには、圧力の単位がPa(パスカル)に変わる可能性が高いです。7.5mmHg =1kPaのようですので覚えておきましょう。


 次回はTorr、torr、トルについて勉強しましょう。


2021年6月21日月曜日

A-aDO2の正常値はどれを採用したら良いの?

 血液ガスで酸素化能を評価する場合、肺胞気-動脈血酸素分圧較差をチェックすべきです。が、この値の正常値は色々あってどれを使ったら良いのか分かりませんね。今回はそれについて調べてみます。

A-aDO2=0.3×年齢

A-aDO2=0.5×年齢

A-aDO2=2.5+0.21×年齢PMID: 5963295)

A-aDO2=2.5+0.25×年齢(PMID: 29489223)文献では(年齢+10)÷4とありました。

A-aDO2=4+0.25×年齢(こちらに載っていましたが、引用文献が見つかりません)

A-aDO2=2.5+FIO2×年齢(PMID: 5963295)

A-aDO2=53未満(PMID: 17127809


 先に結論を。A-aDO2が50Torrを越えていたらまず異常と考えてよく、10Torr以下ならまず間違いなく正常でしょう。

 また、年齢を考慮に入れると、20歳以上の方では、0.5×年齢を越えていたら明らかに異常です。2.5+0.21×年齢以下であればまず異常なしです。

 20歳以下では0.3×年齢が一番厳しい基準であり、これをクリアすれば酸素化能障害はないと言えるでしょう。2.5+0.25×年齢が一番緩い基準であり、これを上回れば、酸素化能障害があると考えて良いでしょう。

 個人的には0.3×年齢が一番覚えやすくていい気がします。


 まず、こちらの論文を見てください。A-aDO2の正常値を出しています。

 対象となった患者さんの年齢は18歳から95歳までで、非喫煙者で過去にも喫煙既往歴のない以下の被験者を選択し、男性164人、女性769人のデータを集めたそうです

(1)過去及び現在において心肺疾患を有さず、現在呼吸器症状(喘鳴・咳・痰・労作時息切れ)なし

(2)肥満でない(標準式より120強を肥満と定義)

(3)神経筋疾患や円背など胸郭障害を除外

(4)測定所(病院・施設・保健所)に歩いて来院

(5)腎不全・肝不全などの重症例を除外

(6)インシュリン治療中の糖尿病や症状のある副鼻腔炎等肺機能に影響を及ぼすと考えられる疾患は除外

(7)高血圧・不全麻痺のない脳血管障害・耳鼻科・眼科・皮膚科領域疾患・その他の局所疾患・内分泌疾患・糖尿病・精神疾患・消化器疾患・四肢障害・局所の癌は除外せず

 結果は以下のグラフです。

 
 このデータを見ると、0.5×年齢をとれば、特異度が最も高いような気がします。どれを使っても誤差の範囲と考えることも可能です。

 血液ガスオタクとしては、以下の式が一番格好いい気がします。

A-aDO2=2.5+FIO2×年齢

 貴方はどれを採用しますか?


2021年6月20日日曜日

乳酸アシドーシスがあってもアニオンギャップは上がらないかも知れません。

  昨日の記事の結論ですが、乳酸が高値だったのに、血液ガス分析装置のNa、CLを用いたため、AGが上昇しておらず、おかしな値になったという症例は、今回のタイトルのことを知っていれば、別にどちらでもいいことでした(最初にそう言っちゃあおしまいなので言いませんでした)。


 こちらの論文には、AGが16以上という基準を用いても4割から7割の乳酸アシドーシス(乳酸値が4mmol/L以上)を見逃す可能性があると書かれています。検査に用いたデータは血液ガス分析装置の電解質で、HCO3も計算値だと思われます。論文にはこちらのデンマークの会社の器械を使ったと書かれていました。しかし、AGはKを入れない計算式になっていました。器械が算出する値がそうなっているのか、論文を書くにあたって計算し直したのか、、、、、、気になりましたが、これもどっちでもいい話でしたね。


 こちらの本はある雑誌の座談会で勧められていた本なので購入しました。漫画チックな本だと書かれていたので面白そうだと思って買ったのですが、漫画チックなのは表紙だけでした。良く見たら、雑誌にも表紙が漫画チックだとかかれていました。まいっか。





 この本にはAGが15以上なら代謝性アシドーシスの可能性が高く、25以上ならまず間違いないだろうと書かれています。乳酸アシドーシスの場合には、AGの上昇とHCO3の減少の比率は1.5:1だと書かれています。


 血液ガスマイスターへの道は険しく曲がりくねっているようです。


2021年6月19日土曜日

アニオンギャップを計算する時、電解質は血液ガス分析の値を用いるべきか?

 今日は手抜きというか別のブログに記事を書いたので、そちらをご覧ください。


  こちらの記事をご覧ください。


 結論だけこちらに書けば、どっちでも良いと思われます。が、血液ガス分析の値を用いるべきだという意見も、生化学検査の値を用いるべきだという意見もあります。そんな、細かいことどうでもええんちゃうの?と言う意見もあります、、、、、、知らんけど。


 1年ほど前に私は血液生化学のデータを用いるべきと書いていました。すっかり忘れていました。




2021年6月17日木曜日

mmHgかTorrか?それともhPaか??

 血液ガスデータの分圧の単位として、mmHg(ミリメートル水銀柱、ミリメートルエッチジー、水銀柱ミリメートル)とかtorr(トル)、英語の文献だとPa(パスカル)と言うのを見たことがあると思います。一体どれを使ったら良いの??と思いますよね。


 結論を先に。


「mmHgは辞めてtorrを用い、将来に備えてPaを併記しましょう!」


 以下解説です。


 まず、 こちらのサイトに「新計量法による圧力の単位には、SIに係る計量単位としてPa(パスカル)、N/m2(ニュートン毎平方メートル)およびbar(バール)が用いられるほか、非SI単位として、生体内の圧力にTorr(トール)が、そして血圧にmmHg(水銀柱ミリメートル)が認められています。」とあります。後で解説しますが、正確に比較するためには(医療の現場では)Paを用いることが推奨されているようです。


 血液ガスにはTorrが用いられるようですが、国際的にはPaです。1kPa=7.5Torrですので覚えておきましょう。「PaO2 10kPa」と書かれていたら、75 mmHgです。おっと!その前に、Torrなのかtorrなのか?ですが、PaO2は100Torrと言うような記号として使う場合には、Tは大文字だそうです。「トルは血液ガス分析で分圧を示す単位として使われている」などと書く場合にはtorrと小文字だそうです。ややこしい。


 「mmHg」は血圧などにおいてのみ使用可能とされています。しかし、血圧もPaに変更することが求められているようで、英語のサイトにはkPaが併記されている場合があります。血圧120mmHgは16kPaとなりますが、これは分かりにくいですよね。私たちが生きている間は血圧はmmHgのままでしょう。GOTやGPTもAST、ALTになったのに、AST(GOT)、ALT(GPT)となっているみたいに。


 そして、血液ガス分析のデータはtorrにすることになっているようです(が、出来ればPaに変更)。TorrとmmHgは定義が異なる違った単位だったのですが、その誤差は非常に少なく、通常はTorr=mmHgとして良いです。また今の日本では全く同じ定義ですので、Torr=mmHgです。このブログでもmmHgは使わないように(最近ですが)しておりますが、Torrと同じと考えてください。


 mmHgと書いている方は、是非Torrに変えるようにしましょう。


 細かい定義などについては、次回記事をアップします。


2021年6月16日水曜日

静脈血と動脈血でPCO2やpHがかなり異なる患者さん

  60歳ぐらいの患者さんが救急車で来院されました。静脈血で採血したところ以下の値でした。以下の左の値です。

     静脈血     動脈血

pH    7.367      7.435

PCO2    50       37.8 Torr

HCO3   28.1      24.8 mEq/L

BE      2.0      0.7 mEq/L

Na    138.8     137.4 mEq/L

K     4.20       3.02 mEq/L

CL     101      101 mEq/L

血糖     181      181 mg/dL

乳酸     4.25      4.5 mmol/L

 呼吸数は32回/分であり、合わないよねと研修医の先生に伝え(と言うか最初から動脈血で検査すべきでしたが)、動脈血採血を行いました。その値が右隣の値です。

 やはり結構違いますね。静脈血だと呼吸性アシドーシスがあり、それを代謝で代償していると言う判断になりますが、後者だと乳酸が高いだけになります。

 血液ガスの解釈は難しいですね。

2021年6月15日火曜日

呼吸と数字

  今日は本の紹介です。血液ガスは特に数字がよく出てきます。この本は数字に関する話題を分かりやすく解説しています。研修医、看護師向けとのことですので平易な語りかけるような文章で分かりやすいです。





 P.20には「生体内の圧力の単位としてTorr、血圧の単位としてmmHgを用いる」と世界的に定められていると書かれています。今後このページでもmmHgではなく、Torrを使うようにします!が、著者も本の中でmmHgを使っていて突っ込まないでくださいねと書いています(^^)。

 ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×年)を命名したのはブリンクマン先生ではないとか、面白く読めます。

 2200円と医学書としては安いのも魅力的です。


2021年6月14日月曜日

無呼吸になるとPaCO2はどのぐらい上昇するのか?

  今日は短いです。無呼吸になると、1分間で5Torr程度PaCO2が上昇します。こちらの文献からです。


 原文を引用します。/minは原文ではmin-1(−1は上付き文字)となっていました。

In apnoea, PaCO2 increases by 0.3-0.7 kPa/min, say 0.5 kPa/min.

無呼吸状態において、PaCO2は1分間に0.3〜0.7kPa(2.25〜5.25Torr)、例えば0.5kPa(3.75Torr)上昇する。


 これ、何かで知りたくて調べても分からなかったことなのです。ずいぶん前に知りたかったので何故知りたかったのか忘れました(^^)。

2021年6月13日日曜日

正確な肺胞気式でなくて良いのか?その3

  一度こだわるとしつこく追求したいタイプなので、その3です。


 肺胞気式は本当は少し複雑だと言うこと、PaCO2が高くなるほど、FIO2が高くなるほど簡易式と正式な肺胞気式との差は増えるのですが、A-aDO2の正常値に幅があるので、誤差はほとんど考慮する必要がなく、簡易式で問題ないことをその1その2で書きました。


 それでもごちゃごちゃ言う人がいた場合の理論武装です。その前に、そう言う人の意見をまず聞いてみましょう。

・酸素を投与しない状態でないと正確な呼吸状態が把握できない。

 酸素投与は人工呼吸器であれば正確な酸素濃度が分かります。しかし、経鼻で1L/分の酸素を流すと酸素濃度は24%程度と言われていますが、本当の吸入酸素濃度は分かりません。よって、FIO2が0.24として計算しても、本当は0.28だったりするかも知れません。A-aDO2やP/F比に大きな違いが出るかも知れません。これは別記事で計算してみましょう。


 しかし、、、、、、

・初回は酸素投与しなかったとして

 初回は酸素投与をせず、A-aDO2が例えば50Torrだったとしましょう。酸素化が悪いので酸素を投与します。次のA-aDO2は酸素投与をした状態での結果になります。同じく50Torrだった場合、どう評価するのでしょう?酸素を投与するとA-aDO2は高くなると言われていますので、良くなっていると考えるのでしょうか?それとも変わらないのか?もしかしたら悪くなっているのかも知れません。その次の3回目の採血と比べるのではないでしょうか。結局酸素を投与した状態での評価が必要ですよね。それとも採血する時には、酸素を止めて採血するのでしょうか?

・呼吸商は0.8か???

 計算式では、呼吸商を0.8としていますが、本当の呼吸商はその時の代謝によって異なります。こちらのWikipediaをご覧ください。今の呼吸商はどのぐらいか?を測定する方法は一般臨床では存在しないと思いますし、それをする必要もないでしょう。呼吸商に誤差がある以上、予想式によるPAO2にも誤差がもともとあります。

・大気圧は760Torrか?(TorrもmmHgも同じですが、血圧以外の圧はTorrを用いるそうです)

 PIO2=(760−47)×FIO2において、760Torrは一気圧ですが、測定した場所の正確な気圧は分かりません。多少の誤差があるでしょう(低気圧が通過中には少し低いのではないでしょうか)。当院では、血液ガス分析の器械から出てくる紙データにも、電子カルテに載ったデータにも気圧が書かれていますが、私はこの記事を書くまでは電子カルテにも載っているのは知りませんでした(偉そうなことを書いているのに、チェックしていなかったです)。
 私が勤める病院の標高は40m程度のようです。気温25度で海面が1気圧の時、病院の気圧は756Torrです(こちらのサイトで計算し、こちらのサイトでhPaをmmHgに変換しました)。電子カルテに載っているデータもほぼこの値でした。760Torrからの4Torrの低下は、ほぼ誤差の範囲ですが、松本市は標高600m程度のようで、気圧は710Torr程度になります。酸素投与なしの場合PAO2が10Torr程度、100%酸素投与であれば50Torr程度低下します。これらも考慮して解析しているでしょうか。

・体温は37度か?

 血液ガスは37度の状態で測定するようです。体温が40度ある人では飽和水蒸気圧の補正が必要ではないかと思われます。PIO2を計算する時の760−47の47は37度における飽和水蒸気圧です。体温36度では44.57Torr、38度では49.7Torr、40度であれば55.33Torrになります(こちらのサイトで計算し、こちらのサイトでhPaをTorrに変換しました)。これによっても誤差が出ます(が、大きな誤差ではないと思われます)。

・PAO2は本当か?
 PAO2は理論上の値です。本当の値は測定できませんし、たぶん、理論とは多少異なるでしょう。肺に入ってくる気体を固体のように仮定して計算していますが、固体ではありませんし、機能的残気量とかのことを考えると複雑すぎます。又これについては記事を書きます。


 上記のような理由により、肺胞気式は誤差をたくさん含んだ計算式です。酸素投与をした場合の誤差も許容範囲だと考えて良いでしょう。


 こちらの文献にも以下のように書かれています。

 We can discard the extra term in the full AGE for any usual clinical purpose; it is complicated and simply too small to make a difference.

 我々は、どんな臨床状況においても、正式な肺胞気式(AGE;alveolar gas equation)の余分な項目を破棄できる。正式な肺胞気式は複雑であり差は非常に小さいためである。


 低酸素は許容できるものではありません。必要であれば、是非血液ガスをとる前に酸素投与を開始しましょう。救急外来であれば、救急隊の方に酸素投与を開始してもらってから搬送してもらうのも手かも知れませんね。以前別の病院の救急外来の看護師さんから、そう言う先生(酸素投与は血液ガスをとってから!)がいて困っているのですが、どうしたら良いでしょうと質問されたのです。

2021年6月12日土曜日

正確な肺胞気式でなくて良いのか?その2

  昨日の記事に引き続き、正確な肺胞気式と簡略式との差を考えます。今日は酸素投与がされている場合です。


 「血液ガスは、酸素を投与しない状態で採血して計算しなければならないので、血液ガスをとるまで酸素を絶対に投与するな!」と言う人を見かけます。低酸素は危険ですから、そんなプラクティスは推奨しません。もし、そう思うなら正確な肺胞気式で計算すれば良いです。そう言えば、前回の記事に正確な肺胞気式を書いていませんでした。以下の通りです。

PAO2=PIO2−PaCO2/R+(1/R-1)×PaCO2×FIO2=713×FIO2−PaCO2/0.8+0.25×PaCO2×FIO2

(PaCO2=PACO2という前提ですので、式の中のPCO2はAでもaでも同じです)

 最後の項目はFIO2が低い場合、ほとんど無視できるとされています。酸素投与なしならば、0.25×0.21=0.0525となり、PaCO2が40Torrならば2.1となり誤差の範囲です。前回の記事「正確な肺胞気式でなくて良いのか?その1」で計算してみましたね。今回はPaCO2が40Torrの場合、FIO2が上昇するとどうなるかを計算します。


(1)FIO2  (2)正確な式によるPAO2 (3)簡略式 (4)差(2)−(3)

 0.21       101.83         99.73     2.1

 0.24(経鼻1L)     123.52          121.12       2.4

 0.28(経鼻2L)  152.44          149.64       2.8

 0.32(経鼻3L)  181.36          178.16       3.2

 0.36(マスク4L)  210.28         206.68     3.6

 0.4(マスク5L)    239.2         235.2      4

 0.44(マスク6L)  268.12          263.72       4.4

 0.5        311.5         306.5      5

 0.6        383.8         377.8      6

 0.8        528.4         520.4      8

 1         673           663        10


 と言うことで、100%酸素投与をしていても差は10Torrであり、肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)は10Torrぐらい違ってきますが、そもそもA-aDO2は高濃度酸素を投与すると大きくなるとされています(例えばこちらのサイトに書かれています)ので、10ぐらいの差は許容されるのかも知れません。また、A-aDO2だけが患者さんの呼吸状態を把握するデータではありませんので、別の評価項目も用いれば良いですし、血液ガスデータも酸素投与をした状態で採血したデータであると分かって解析すれば問題ありません。


 また、PaCO2が例えば20Torrであれば、差は半分になり、100%酸素投与下でも差は5になります。PaCO2が80Torrであれば、差は20に増えますが、まあ、そんな状態の人は人工呼吸器をつけてPaCO2を下げて再評価するでしょう。


 急変時や救急車搬入時にチアノーゼがあったり、SpO2が90%を切っているような状態なのに、血液ガスをとるまでは酸素を投与しないというのは意味がないばかりか、低酸素による害を及ぼしますので、是非必要なら血液ガスを採取する前でも酸素を投与しましょう。そして正確な肺胞気式で計算をしましょう(何しろ自動的に計算してくれるサイトがありますから)。


 正確な吸入酸素濃度が分からないから、どうしても酸素投与はいけないというのであれば、素早く動脈血採血が出来るように腕を磨きましょう!


2021年6月11日金曜日

正確な肺胞気式でなくていいのか?その1

  呼吸管理において出てくる式の一つに肺胞気式というのがあります。肺胞内の酸素分圧は直接測定できないので、計算で予想するための式です。一般的に以下の通りです。

 PAO2=PIO2−PACO2÷R=(760-47)×FIO2−PaCO2/0.8

 PAO2:肺胞内酸素分圧(肺胞は英語でalveolar。気体は大文字なので、PAO2と表します)

 PIO2:吸入気酸素分圧(吸入は英語でinspire)

 PACO2:肺胞内二酸化炭素分圧(二酸化炭素は容易に肺胞と血液を移動しますので、PACO2とPaCO2は同じと考えます)

 R:呼吸商(通常は0.8。詳細を知りたい方はこちら

 760:大気圧です。病院が存在する場所が高いところにあれば違う値になりますし、低気圧が通過中であれば異なるかも知れません。

 47:37度における飽和水蒸気圧です。肺胞に入った気体は水蒸気で飽和されるため分圧がそれだけ低下します。

 PaCO2:動脈血二酸化炭素分圧(動脈は英語でartery。液体は小文字のためPaCO2と表します)

 通常の環境で酸素投与がされていなければ、PIO2=(760−47)×0.21=149.73=150Torrとします。よって、肺胞気式は以下のように書かれていることが多いです。

 PAO2=150−PaCO2/0.8

 何故150なのか?知らなかった方は、理解をして頂ければ幸いです。


 しかし、正確な肺胞気式はもっと複雑です。求め方は前回の記事で紹介した論文に書かれていますが、あなたが肺胞気式オタクでない限り知らなくても良いです。計算も面倒なので自動的にやってもらいましょう。そして、正確な肺胞気式で計算すべきなのか、簡略式で良いのか?と言うと、結論から言えば簡略式で問題ありません。


 こちらに、正式な肺胞気式の計算を簡単にすることができるサイトがありましたので、酸素投与をしない状態でPaCO2が変化したらPAO2はどうなるか計算してみました(正確には数値を入力しただけで自動的に計算してもらいました)。簡略式による値と比べてみます。単位は全てTorrです。mmHgでも同じですが、血圧以外の圧はTorrだと国際的に決まっているそうです。

(1)PaCO2 (2)正確な式のPAO2 (3)簡略式   (4)差(2)−(3)

 30      113.805        112.23      1.575

 35      107.8175         105.98      1.8375

 40      101.83           99.73       2.1

 45       95.8425        93.48       2.3625

 50       89.855          87.23       2.625

 60       77.88         74.73       3.15

 70       65.905          62.23       3.675

 80       53.93         49.73       4.2

 90      41.955         37.23      4.725


 PaCO2が上昇するにつれ、正確な式との差が大きくなりますが、それでも5は越えません。PAO2を求める意義は、PaO2との差(A-aDO2とかA-aO2 gradientとかP(A-aO2とか色々な表現があります)を求めるためでしょう。この値の正常値は年齢×0.3以下というのが一番簡単です。こちらのサイト2.5+0.21×年齢されています。80歳の人であれば、A-aDO2の正常値は前者であれば、24Torr以下、後者であれば19.3Torr以下で結構差があります。出典が明らかではありませんが、年齢の半分以下というのも見たことがあります。

 よって、PAO2の5Torr程度の差は、ほとんど誤差の範囲と考えられ、正確な式で計算をする必要はないと思われます(酸素投与されていない場合ですが)。


 次回の記事では、酸素投与がされている場合について考えてみましょう。

2021年6月10日木曜日

呼吸生理を詳しく勉強したい方に

  患者さんの管理において呼吸管理は非常に重要ですが、なかなかとっつきにくかったり難しかったりします。特に式が出てくるとアレルギー反応を起こす人もおられるのではないでしょうか。私も数学が学生時代得意だったし、今も継続して学んでいるにもかかわらず、式は苦手です。


 でも分かればとても面白いですので、是非我慢して勉強しましょう。こちらの論文は色々な式の意味や導き方が書かれていて興味深いです。物理や化学の基礎的な知識も書かれていて勉強になります。

 一度に全部読むのは大変なので、ちょっとずつ読んでみてはいかがでしょう。


肺胞気式を導くためのイメージ

 上記は肺胞気式を計算するための図です。何故PaCO2を呼吸商Rで割るのか、二酸化炭素が血液から肺胞に出てきたら、その分その他のガスの分圧が下がるから、単純にPaCO2/Rを引くだけではダメなのではないかと思っていましたが、この論文を読んですっきりしました!(が分からないことがまだあります)。

2021年6月4日金曜日

糖尿病性ケトアシドーシスに重炭酸ナトリウムの投与は有用か?

 代謝性アシドーシスがあるとメイロン!(重炭酸ナトリウムの商品名)と叫ぶ人が結構いますが、行うことの利益と不利益をよく理解しておきましょう。それでも使いたい場合には、堂々と使いましょう。
 こちらの論文をご覧ください。以下のTable2はコピペした物ですが、画像が鮮明ではないですね。



 以下に日本語訳を書いてみます。


表2 糖尿病性ケトアシドーシスにおける重炭酸ナトリウムの投与に関する重要な所見と結論

軽症から中等度のアシデミア(pH≧7.0)に対する重炭酸ナトリウムの使用は

 死亡率や入院期間を減らす効果はない

 一次的にアシドーシスを改善する

 ケトン血症の改善を遅らせる

 中枢神経のアシドーシスを悪化させる傾向にある

 カリウム補充量を増やす

 組織の低酸素を悪化させる

 小児で脳浮腫を発生させ、入院期間を延長させる

 治療後のアルカローシスをきたす

重症のアシデミア(pH<7.0)に対する重炭酸ナトリウムの使用は

 小規模無作為試験で有病率や死亡率に差を認めなかった。

糖尿病性ケトアシドーシスに対するルチンの重炭酸ナトリウムの投与は調べた範囲では支持されていなかった。

重炭酸ナトリウムの投与を考慮しても良い状況は以下の通り

 重症アシドーシス

 致死的高カリウム血症

 生理食塩水による代謝性アシドーシスからの回復



  以下解説です。私の個人的な考えも含んでいます。気になる方は原文にあたっていただき、参考文献が記載されているので調べてみてください。

・死亡率や入院期間を改善するデータはない

 今はエビデンスの時代ですので、アシドーシスを改善すれば良いことがありそうだと思っても、そう言うデータがないと、、、、、ですね。患者さんの症状が早く改善するというエビデンスがあるかも知れませんので、これだけでメイロンを使うな!とは言えないとは思います(が、私は滅多に使いません)。

・一時的にアシドーシスを改善する

 良いこともあると言うことなんでしょうが、すぐアシドーシスに戻ってしまうということでしょう。

・ケトン血症の改善を遅らせる

 文献を見たらよく分かりませんでした。すみません。重炭酸ナトリウムの投与によりケトンの産生が増えるようです。

・中枢神経のアシドーシスを悪化させる傾向にある

 重炭酸ナトリウムはNaとHCO3の溶液です。HCO3は多少はCO2になってしまいます。血液脳関門はCO2の方が通過しやすく、重炭酸ナトリウムの投与により脳内にCO2が入ってアシドーシスになるかも知れません。これに関しては否定的な見解も多いようです。

・カリウム補充量を増やす

 重炭酸ナトリウムは高カリウム血症の治療にも用いられる(のですが、最近はそれほどカリウムを下げないので有用ではないという意見もあります)ので当然ですね。

・組織の低酸素を悪化させる

 赤血球内の解糖系が抑制されるため、2,3-DPGが低くなります。そうなるとHbは酸素を放出しにくくなります。その状態で重炭酸ナトリウムを投与すると、酸素解離曲線は左方移動して、さらに酸素を放出しにくくなります。2,3-DPGは数日間回復しないようです。

。治療後アルカローシスになる

 一般的に重症患者さんは改善してくると代謝性アルカローシスになります。輸液や輸血に含まれる乳酸やクエン酸などが代謝されてHCO3になるし、アシドーシスの原因であった物質も代謝されてHCO3になるからでしょう。代償性の呼吸性アシドーシスによる低酸素とかカリウムを失うとか、何か問題があれば別ですが、一般的に自然に治ります。

 以下はよく分かりませんので省略しました。すみません。


2021年6月2日水曜日

代謝性アシドーシス以外でもアニオンギャップが上昇する

  代謝性アシドーシスを見逃さないためにアニオンギャップ(Anion Gap;以下AG)を必ず計算しましょうと書きましたが、どんな検査も100%ではないので、AGも代謝性アシドーシスではないのに上昇することがあります(もちろんですが、AGの上昇しない代謝性アシドーシスもあります)。

 復習しますと、AG=測定できない陰イオンー測定できない陽イオンでもありました。つまりAGが上昇するには

・測定できない陰イオンが増える。

・測定できない陽イオンが減る。

・両方がある。

の3つのどれかです。測定できない陽イオンは、カリウムやマグネシウム、カルシウムなども含んでいますが、それらの合計はそれほど高くなく、測定できない陽イオンが減ってAGが増えると言うことはあまりないと言われていて、考える必要がありません。

 よって、AGの上昇=測定できない陰イオンの増加と考えて良いです。以下の3つが考えられます。

・アルブミン、リン酸、異常タンパク質(例えばIgA)の増加

・代謝性アルカローシス(軽度AGが上昇することがあるそうです)

・機器のエラー(Naが高く、CLやHCO3が低く出る)

 詳細は今後記事にしていきます。しかし、AGが上昇していたら代謝性アシドーシスがあると考えて行動するのが良いですね。


 今回はUpToDateの「Serum anion gap in conditions other than metabolic acidosis」と言う文献を参考にしました。

2021年6月1日火曜日

アニオンギャップは高アルブミン血症でも補正すべきか?

 代謝性アシドーシスがあるかどうかチェックするため、血液ガスを採取したら必ずアニオンギャップ(Anion gap;以下AG)を計算すべきとされています。

 日本やアメリカでは一般的にAG=Naー(CL+HCO3)ですが、ヨーロッパではカリウムを入れてAG=(Na+K)ー(CL+HCO3)とするらしいです。4程度の違いが出ますね。自動的に計算されるAGは後者のことが多い(検査の器械がドイツ製が多い気がします)ので注意が必要です。

 さて、AGはどうしてこんな式かというと、体内ではプラスとマイナスは同じ数だという考えから来ています。つまり陽イオンの数=陰イオンの数(電荷の数)だという前提です。全てのイオンを計測できないし、計測できるものでも少ししかないものは、測定できない陰イオン(unmesured anion;以下UA)と測定できない陽イオン(unmesured cation;UC)とします。すると以下のような式になります。陽イオン=陰イオンです。

測定できる陽イオン+UC=測定できる陰イオン+UA

 AG=測定できる陽イオンー測定できる陰イオンなので、AG=Naー(CL+HCO3)=UA−UCとなり、アニオンギャップは、測定できない陰イオン−測定できない陽イオンとも言えます。

 測定できない陰イオンの主なものはアルブミンだそうです。次いでリン酸、尿酸、硫酸だそうです。アルブミンは酸だとされてます(酸の定義としてHイオンを放出するものというのを採用)。pH7.4ではアルブミンは陰性電荷を帯びた側鎖の方が多いそうです。よって、アルブミンは全体として陰イオンです。UAであるアルブミンが低くなるとAGは低下し、アルブミンが上昇すればAGは上昇します。よって、低アルブミン血症の場合にはAGが上昇しているのを見逃す可能性があるため、AGをアルブミンで補正すべきとされています。以下のような式です。

補正AG=AG+2.5×(4−Alb)

 これはアルブミンが高い時にも行うべきなのでしょうか?今日の疑問はそれです。前置きが長かったですね。

 結論から書けば、同じ式を用いて補正します。つまり、アルブミンが高い場合、補正AGは低下するはずです。こちらの論文を読んでいただけば良いですが、要約を日本語訳しておきます。

 背景:低アルブミン血症はどのぐらいアニオンギャップを低下させるのかに関するデータはいくつか存在していて混乱している。アルブミンが1g/dL低下するとAGは1.5〜2.5mM/L低下するとされている。

 研究方法:血清アルブミン、総蛋白、電解質濃度を5328人の患者(年齢は1ヶ月から102歳)で測定した。ほとんどの患者(3750人、70%)はアルブミン値が正常であったが、1158人は3.4g/dL以下の低アルブミン血症で、420人は4.7g/dL以上の高アルブミン血症であった。血清アルブミンや総蛋白とアニオンギャップの関係を線形回帰法で解析した。

 結果:309人(27%)の低アルブミン血症患者はアニオンギャップが低下しており、257人(61%)の高アルブミン血症患者はアニオンギャップが上昇していた。全ての患者で血清アルブミンか総蛋白とアニオンギャップには有意な関連があったP< 0.001)。アルブミンとアニオンギャップはアルブミン1g/dLにつきアニオンギャップ2.3mMの低下の関係があった。この係数を用いて、アニオンギャップをアルブミンで補正可能である(補正AG=AG+2.3×(4−Alb))。低アルブミン、あるいは高アルブミン血症のある患者の44%でアニオンギャップの評価が補正後に変化した。

 結論:アニオンギャップが増えているか減っているかを考える前に、まずアニオンギャップをアルブミンで補正すべきである。我々のデータは、アルブミン値の変化の2.3倍を使用することを支持する。Figgeらは2.5倍を推奨しているが、どちらを用いてもほぼ同じ結果である。


 まあ、アルブミンが高い人は血液内科などでない限り滅多に遭遇しないと思われますので、疑問に思うことはないのかも知れません。