2021年11月14日日曜日

急性アルコール中毒では浸透圧を下げなくて良いのか?

 急性アルコール中毒の人は、エタノールによって血清浸透圧が上昇します。

一般的に血清浸透圧が上昇すると、細胞内から水が引き出されるため細胞が小さくなり、血清ナトリウムは薄まって低下します。例えば、高血糖の場合はそうです。

しかし、エタノールが増えても、浸透圧に対して何か行う必要はありません(エタノールが増えすぎるために起こる問題はここでは触れません)。エタノールは細胞膜を自由に出入りできるため、浸透圧は高くなりますが、張度(tonicity)には影響しないからです。細胞内の水分の出入りを規定するのは張度です。

血清浸透圧の計算式は以下の通りです。

血清浸透圧=2×Na(mEq/L)+BUN(mg/dL)÷2.8+血糖(mg/dL)÷18

「なに!文IIはブスだからいや?」と覚えるのでした(知らんけど)。この場合、BUNもまた自由に細胞膜を出入りできるため、細胞内水分量には影響を与えません。よって、張度は以下の通りです。

張度=2×Na+血糖÷18

急性アルコール中毒で浸透圧が上昇している人がいても、理論上はナトリウムは低下しません。もし低下している人がいたら、それはエタノールとは関係ない低ナトリウム血症があると考えなければなりません。低ナトリウム血症の鑑別時に血清浸透圧を測定し、正常か高ければ低ナトリウム血症は検査ミスか他の病態による結果であって治療は不要とされていますが、治療が必要な場合もあることを知っておいた方が良いです。こちらの文献(有料ですが、ある方法で手に入れました)に分かりやすい表が載っています。直接載せるのは良くないでしょうから、一部を日本語にして載せます。

張度が低い場合(hypotonicity)

・浸透圧が低く浸透圧ギャップも正常

 通常の低ナトリウム血症でSIADが最も多いでしょう。

・浸透圧が正常(たぶん高い場合もある)で浸透圧ギャップが高い

 急性アルコール中毒などで無効浸透圧物質が投与されている場合。メインは上と同じ病態。

・浸透圧が高く浸透圧ギャップは正常

 腎不全などでBUNが高い状態など。


普段は浸透圧を気にする(していない人もいるかも知れませんが)のですが、張度も気にするようにしましょう。英語の文献にhypotonic hyponatoremiaと良く書かれているのですが、そう言う意味だったのですね、、、、、、勉強になりました。

2021年10月15日金曜日

血液ガスは静脈で良いのか?

 最近は血液ガスもとりあえず静脈血でと言うのが定着しているのでしょうか。私が勤める病院では静脈血の血液ガスが頻繁に採血されていて、私も良く行っています。


 今日は静脈血のデータはあてになるのか?についての考察です。

 先日経験した患者さんのデータです。

     静脈血    動脈血(1時間後の採血ですが)

pH    7.288     7.406

PCO2   61.7      39.4

PO2    25.2      85.3

HCO3   28.9      24.2

Lactate   2.89      1.20


 まず酸素はあてにならないと言うのは皆さんご存じでしょう。A-aDO2もあてにならないと言う意見がありますから、酸素をチェックしたいのであれば、SpO2で良いのかも知れませんね。

 UpToDate "Venous blood gases and other alternatives to arterial blood gases"(静脈血液ガスとその他動脈血液ガスの代わりになる指標)によれば、pHは0.02から0.04程度静脈血の方が低く、PCO2は静脈血の方が3-8 Torr程度高いとのことです。しかし、今回の症例の場合、採血時間が違いすぎるのですが、かなりデータが異なりますね。静脈血では呼吸性アシドーシスと診断されますが、動脈血はほぼ正常です。

 研修医の先生に、静脈血液ガスデータが悪いのですがと相談されて、患者さんは呼吸状態に問題はなく、まあ、次回こう言う人がいたら動脈で取り直した方がいいかもねと伝えたら、先生動脈血液ガスのデータは正常でした!と言われた(熱心な先生ですね)のでした。

 基本的には、静脈血では、pHとHCO3はわりとあてになるが、PCO2は評価できないと言われています。が、外国では通常の生化学でHCO3を測定している事に注意が必要です。日本の多くの施設でのHCO3は直接測定しているのではなく、pHとPCO2から計算して出されているので、日本ではHCO3もあてにならないかも知れません。

  こちらの資料も勉強になるので、是非ご覧ください。こちらの資料を参考に、どうすれば良いかを最後に書いておきます。


・静脈血液ガスのデータが正常であれば、たぶん動脈血も正常であり、採血し直さなくて良い。

・静脈血液ガスデータに異常があれば、動脈血を取り直した方が良い。

・患者さんの状態を先に判断して、血液ガスに異常がありそうであれば、動脈血採血を行った方が良い。


2021年10月14日木曜日

ALTが上がっても肝障害とは限らない

  ALTは私のような年寄りの医者にとっては、GPTと言ってもらった方がいいのですが、今はALTと言いますので覚えておきましょう。私も最近やっとGPTがASTだったかALTだったか直ぐ分かるようになりました(^^)。


 さて、ALTの上昇は肝臓に特異的だと言いますが、肝臓以外でもALTは上昇します。以下の雑誌のP.23に表があるのですが、gあたりのALTの量は、肝臓が最も多く44000単位、次いで腎臓が19000単位、心臓が7100単位、骨格筋が4800単位含まれています。腎臓や心臓が壊れてもALTが上昇しますが、これらの臓器の重量は軽く、ALTが上昇する程臓器が壊れたら生命維持が困難なぐらいですので、ALT上昇を認めた場合には、まず肝臓、そしてCK上昇があれば筋肉を疑います。


 また、筋肉ではCKの上昇分の200分の1ぐらいの割合でALTが上昇するようです(以下の雑誌のP.130)。


 ある横紋筋融解症の患者さんのデータを示します。

CK 89444(CK-MB 1919.3)    ALP 53

AST 1575             γGT 15

ALT 513              総ビリルビン 1.27

LD 1934


 CKの上昇が著明ですが、ASTもLDも、そして何よりALTが上がっているので肝障害があるのだろうと思いますよね。実際急性肝炎も合併していると思われるという紹介でした。

 CKが89400程度上昇したと考えると、89400÷200=447となり、ALTは447上昇すると思われます。多少の肝障害はあるかも知れませんが、この患者さんのALT上昇は筋肉由来と考えられました。

 また、CK上昇は心筋由来ではないのか?については、CK-MBは2.14%であり、絶対値としては上昇していますが、割合は低いです。純粋に心筋由来だとCK-MBは20%程度らしいです。そしてCKが2000以上になるほど心筋が障害されたら生存は難しいかも知れません。また、上記の臨床病理レビューの同じ130ページに、CK/AST>12は骨格筋由来のCKを疑うとあります。CK/AST=56.7より骨格筋由来を疑います。

 LD/ASTから考えると肝臓由来のLD上昇となるので、ここでは述べません(ずるい)。

 と言う事で、今日は骨格筋が激しく損傷するとALTも上がると言うことを勉強しました。


2021年10月3日日曜日

代謝性酸塩基平衡異常の解釈法:ABC-Gap法

  今日はこちらの論文の紹介です。著者の先生による新しい血液ガスの解釈法です。詳細は文献をお読み戴くのが良いですが、比較的長文で私には理解が出来ませんでした(当直明けで眠かったのもあるかも知れません)が、日本語ですので是非お読みください。呼吸性酸塩基平衡異常には適応しないと言うことです。


 以下手順です(Step2までは生理学的アプローチと同じです)。

 Step1 pHからアシデミアかアルカレミアか判定する。

 Step2 PCO2とHCO3から一次性障害が呼吸性か代謝性かを判定する。

(のですが、呼吸性の場合にはこの方法は使わない)

 Step3 ABC3つのギャップを計算し解釈する。

Anion gap:ΔAG=AG−12

Bicarbonate gap:BG=ΔAG−ΔHCO3=Na−CL−HCO3−12−(24−HCO3)=HCO3+ΔAG−24

 =補正HCO3−24=Na-CL-36

CO2 gap:CG=PCO2−予想PCO2=PCO2−HCO3−15

(HCO3が10−40の範囲にある場合にのみ適応)

 ΔAG>0 AG上昇型の代謝性アシドーシスがある。

 ΔAG<0 意義は不明。

 BG>0 代謝性アルカローシス

 BG<0 非AG上昇型の代謝性アシドーシス

 Step4 PCO2評価をする。

 CG>0なら呼吸性アシドーシス、CG<0なら呼吸性アルカローシスと診断。


 是非お試しください。

2021年10月2日土曜日

Base Exessを用いた血液ガスの解釈法

  昨日の続きです。BEを用いた血液ガスの解釈は比較的簡単であり、行っても良いかも知れません。私はマニアなので今日から、通常の生理学的アプローチとStewart法、そしてBEによる方法の3つで血液ガスを解釈することにしました。


 ちなみに、計算はStewart法が最も簡単です。Na-CLとSID(強イオン差、strong ion difference)=HCO3+2.8×Alb+0.6×P、SIDギャップ=Na-CL-SID、PCO2=HCO3+15の4つを計算するだけです。アルブミンとリンはそれぞれ低ければ代謝性アルカローシス、高ければ代謝性アシドーシスと診断できます。


 New England Journal of Medicineの2018年378巻、P.1419−1428の文献を参考にしました。以下は私の作った適当なやり方ですので、詳細は文献をご覧ください。


(1)pHが7.4より高いか低いかを見る

(2)PCO2とstandard BE(以下BE)により一次性変化を決める

 代謝性アシドーシス pH<7.4でBE<-2

 代謝性アルカローシス pH>7.4でBE>2

 呼吸性アシドーシス pH<7.4でPCO2>42

 呼吸性アルカローシス pH>7.4でPCO2<38

(3)代償性変化を予想する。以下を超えていたら代償ではない変化があると考える。

 代謝性アシドーシス ΔPCO2=BE

 代謝性アルカローシス ΔPCO2=0.6×BE

 呼吸性 急性 -2<BE<2

     慢性 BE=0.4×(PCO2−40)

(4)補正アニオンギャップを計算する。

 AG=Na−HCO3−CL+2.5×(4−Alb)

(5)AGが上昇していれば、以下を計算

a. Δ−Δを計算

ΔAG=AG−12

ΔHCO3=HCO3−24

Δ−Δ=ΔAG−ΔHCO3(乳酸アシドーシスの場合には0.6をかける)

Δ−Δ>5 AG非開大性代謝性アシドーシスあり

−5<Δ−Δ<5 AG開大性代謝性アシドーシスのみ

Δ−Δ<−5 代謝性アシドーシスあり

b. 浸透圧ギャップを計算

予想浸透圧=2×Na+血糖÷18+BUN÷2.8

浸透圧ギャップ=血清浸透圧−予想浸透圧

浸透圧ギャップが10以上あれば、薬物中毒などが疑われる。


(5)は面倒なのでやらないことにすれば、結構簡単です。予想式が3つしかありませんので覚えやすいと思います。

 ちなみにΔ−Δは批判も多いようで、ΔAG/ΔHCO3の方が良い(0.8以下はAG非上昇型代謝性アシドーシス、1.2以上は代謝性アルカローシス)という意見もあります。

2021年10月1日金曜日

ベースエクセスは有用か?

昨日の記事の続きです。こちらのガイドラインからです。


今回はBE(ベースエクセス)です。よく分からないのですが、重炭酸イオン濃度を見れば良いのでBEは必要ないという事なのでしょうか?確かに多くの書物にBEは出てきません。しかし、BEは低ければヤバい!と思えますので緊急時には有用だと思います。

NEJMにもBEを解説した文献があるようですので是非お読みください。


以下はガイドラインの原文と私の下手な日本語訳です。

 Is base deficit a better measurement than plasma bicarbonate in diagnosing metabolic acidosis? 

代謝性アシドーシスの診断において、塩基の不足(Base deficit)は重炭酸イオンよりも有用か?

R1.2—Measurement of base deficit should probably not be preferred to that of plasma bicarbonate in identifying patients at risk of metabolic acidosis (GRADE 2−, STRONG AGREEMENT).

代謝性アシドーシスのある患者を発見するのに、たぶん塩基の不足を測定すべきではない。

Rationale Clinical data are scarce and limited (observational, retrospective studies) [1214]. The two larg- est studies show that if the control group is of patients with a base excess (BE) of −5 mmol/L, corresponding to a base deficit of 5 mmol/L, plasma bicarbonate below 20 mmol/L is a good diagnostic indicator of metabolic acidosis [1314]. BE corresponds to the quantity of strong acid (or of strong base in the case of a metabolic acidosis) that should be added in vitro to 1 L of plasma to normalize the pH to 7.40, with a PaCOof 40 mmHg and a temperature of 37 °C. There are several methods of calculating BE, but they all use plasma bicarbonate as the main component. Standard base excess (SBE) calculated using the van Slyke equation* takes into account a hemoglobin concentration of 5 g/dL which is the theoretical hemoglobin concentration in the extracellular space of bicarbonate distribution. The van Slyke equation for SBE is the most used clinically, but is not used in comparative studies with plasma bicarbonate. As BE is always calculated from plasma bicarbonate, the correlation between plasma bicarbonate and BE (and hence base deficit) is very strong.

理由 臨床データは不十分で限定的である(観察研究や後ろ向き研究)。2つの大規模試験は、ベースエクセス(BE)が-5mmol/L(塩基の不足が5mmol/Lに相当)の患者をコントロール群とした場合、血清重炭酸イオン濃度が20mmol/Lより少ない事が、代謝性アシドーシスの良い指標であると報告している。BEは、検体が37度、PaCO2が40mmHgの場合、pHを7.40に戻すために1リットルの血漿に追加すべき強酸(または代謝性アシドーシスの場合には強塩基)の量を示す。BEを計算する方法はいくつかあるが、どの方法も血漿重炭酸濃度を主な要素としている。van Slyke式を用いて計算された標準ベースエクセス(SBE)は、重炭酸が体内で分布する細胞外液のヘモグロビン濃度である5g/dLを用いる。このvan Slyke式は臨床で最もよく使われている式であるが、血漿重炭酸イオン濃度との比較試験では用いられていない。BEは常に血漿重炭酸イオン濃度から計算されるので、血漿重炭酸イオン濃度とBE(つまり塩基の不足)の関連は非常に強い。

* Van Slyke equation: 

Base excess=(HCO–24.4)+(2.3×Hb+7.7)×(pH −7.4)×(1−0.023×Hb), with Hb in g/dL.

2021年9月30日木曜日

アニオンギャップはアルブミンで補正すべきか?

 アシドーシスについて調べていたら、フランスのガイドラインを見つけました。興味深い記載が多かったので少しずつ紹介させて頂きます。原文はこちらのガイドラインをご覧ください。


 今回はアニオンギャップをアルブミンで補正すべきか?についてです。以下は原文です。


In case of metabolic acidosis, is the plasma anion gap corrected for albumin better than the uncorrected plasma anion gap in differentiating acid excess from base deficit? 

 代謝性アシドーシスでは、酸の増加と塩基の欠乏を区別するために、アニオンギャップをアルブミンで補正する方が良いのか?

R1.3—The anion gap corrected for albumin should probably be used rather than the uncorrected anion gap to differentiate acidosis related to acid load from acidosis related to base deficit (GRADE 2+, STRONG AGREEMENT).

 酸の増加と塩基の欠乏を区別するために、アニオンギャップをアルブミンで補正することはたぶん有用である。

Rationale Although most clinical data are prospective, they are scarce and observational. Comparisons between the corrected anion gap* (cAG) and the uncorrected anion gap** (AG) show either no difference [1516] or superiority of cAG [1719]. Most authors consider that the pathological threshold is cAG or AG>12 mmol/L. The physiological AG is mainly composed of phosphate and albuminate (weak anion from blood albumin). Consequently, hypoalbuminemia leads to a decrease in plasma albuminate and so to a decrease in AG. Hence, a normal AG associated with hypoalbuminemia corresponds to the presence of plasma acids, which replace albuminate to normalize AG. Taking the albumin level into account in the calculation of AG unmasks plasma acids when there is hypoalbuminemia. So, cAG is greater than AG, particularly in a population of patients with a high risk of hypoalbuminemia, as is the case for patients in intensive care or patients with malnutrition, hepatopathy, chronic inflammation, or urinary loss of albumin.

根拠 ほとんどの臨床データは前向き研究であるが、エビデンスが十分ではなく、観察研究である。補正アニオンギャップ(cAG)と補正していないアニオンギャップ(AG)の比較では、有意差や有用性は認められなかった。多くの研究者はcAGやAGが12mmol/Lを越えると病的だと考えている。AGの上昇は主にリン酸イオンとアルブミンイオン(アルブミンは血液中では弱い陰イオンである)で形成されている。低アルブミン血症があると血清アルブミンイオンが低下し、AGも低下する。よって、低アルブミン血症がある場合の正常AGは、酸の存在を示す。つまり、酸の増加によるAGの上昇があっても、低アルブミン血症によってAGが正常化する。AGの計算時にアルブミン濃度を考慮する事は、低アルブミン血症時における血清酸濃度を明らかにする。よって、低アルブミン血症のある患者さんでは特に、cAGはAGよりも高い。同様に集中治療室の患者や栄養不良の患者、肝障害、慢性炎症、尿中へのアルブミン喪失などの病態でもAGが低下する。

* cAG=AG+(40−[albuminemia])×0.25, with albuminemia in g/L.

** AG=Na+−(Cl+HCO3)=12±4 mmol/L (or AG =(Na++K+)−(Cl+HCO3)=16±4 mmol/L).


 このガイドラインの文章はよく分からないところもあります(私の英語の独か威力の問題が一番大きいと思いますが)が、補正アニオンギャップを計算しても有用だというエビデンスはないというのはビックリでした。しかし、計算するだけですので、是非やりましょう。日本と外国ではアルブミンの単位が違う(日本はg/dL)ので、補正式の係数は0.25ではなく、2.5です。


 どちらにしても、アルブミンは全体として陰イオンであると言うことは覚えておきましょう。


 それから、日本語は区別されていなかったりしてややこしいのですが、ここで出てくるphosphateはリン酸イオン(PO43-)で、リン酸phosphoric acidとは厳密には区別しなければなりません。アルブミンもalbminではなく、albuminateとなっていることに注意です。


2021年9月10日金曜日

ASTとALTの関係

  ASTとALTはほぼ毎日測定される検査だと思います。私のような年寄りにとってはGOT、GPTの方がなじみがあります。最近やっとGOTはAST、GPTはALTだとすらすら言えるようになりました。


 さて、私が学生の時に、大学の病院実習で内科研修医の先生が、「私はGPT>GOTだったら正常範囲内だったとしても肝炎などを疑っています。過剰診療かも知れないけど。」と言っていたのを覚えています。そんなものかなあ?位にしか思っていませんでしたが、超優秀な先輩だったんだなと思います。以下に理由を述べます。


 ASTもALTも全身の細胞に多く含まれる酵素です。しかし、破壊される細胞の量などから、一般的には肝臓、筋肉、血液などの破壊を疑います。そして、ほぼ全ての細胞でASTの方が圧倒的に多く含まれています。よって細胞が破壊された、あるいは大量に破壊され続けている場合には、AST>ALTとなります。異常がない場合にもAST>ALTです。

 ASTの半減期は半日程度、ALTは2日程度とALTの方が半減期が長いそうです。よって、細胞破壊が終わった、あるいは破壊が軽度になった場合は、AST<ALTとなります。門脈、胆管周囲(門脈と胆管はほぼ同じ所を走行しています)の肝細胞にはALTが多く含まれているそうで、それらを破壊する病気(慢性肝炎、胆道疾患)では急性期でもALTが多くなります。


 さあ、今日から肝機能を見る時は、ああ、AST>ALTになっているなと思ってみましょう。もし、AST<ALTだったらあれ?と思えるように!

2021年9月9日木曜日

CLを気にしましょう

  一般臨床ではCLは軽視されていると思います。たぶんですが、多くの病院ではCLだけをオーダーすることがないです。私の知る範囲ではNaとCLはセットでオーダーとなっています。血液ガス分析で検査した場合でもCLは自動的に検査されます。


 常にNa-CLを計算している!と言う方がおられたらすみません。是非多くの方に広めてください。


 さて、CLが低い場合は、HCO3が増えているかアニオンギャップ(AG)が増えているかどちらかだと思われますが、低ナトリウム血症の場合も低下します。


 低ナトリウム血症の時は補正CLを計算してみましょう。簡単な計算です。

 補正CL=CL×140÷Na


 簡単でしょ。是非計算して頂き、低い場合にはCL欠乏による代謝性アルカローシスを疑いましょう。


 あとCLが高い場合はHCO3が低下した場合と思われます(AGはそれほど低下できません)。しかし、ブロム(睡眠薬中毒など)やヨード(PAMや造影剤投与後など)によって偽性高値を示す場合もあります。覚えておきましょう。


参考文献

米川修:苦手を得意に!血液ガスOne step more:臨床検査領域編:アニオンギャップ(AG)の有効な使い方−pitfallを絡めて−. 日本内科学会雑誌108:2507-2511, 2019

(内科学会雑誌は発行されてから1年たつとJ-STAGEの内科学会の所に載りますが、何故かこのシリーズの文献は載っていません)

2021年9月8日水曜日

雑誌の特集の紹介

  今回は手抜きです。総合診療という雑誌の9月号は検査の特集です。もう古いからしなくて良いのではないかという検査、今後やっていくべき検査について解説されています。



 一番最初はFENaはいらないのではないかという記事です。よく計算するようにしていたのでショックですが、やらなくて良いとなると楽かもしれません。じゃあどうするかというと問診や身体所見、尿所見で総合的に考えると言うことです。まあ、仕方ないですね。


 日々あまり考えずに検査をオーダーしている自分を反省することが出来ました。


2021年8月31日火曜日

低ナトリウム血症をみたら最初に本当にナトリウムの異常か確認しましょう

  前回の続きです。著明な低ナトリウム血症(Na102)を認めた場合、直ぐ低ナトリウム血症の治療に行くべきでしょうか?


 低ナトリウムは結果だったり、検査のエラーだったり、します。本当にナトリウムの異常があるのかチェックをするのが第一段階です。


 それには浸透圧が参考になります。浸透圧が測れなくても、簡単な検査で鑑別が出来ます。


 一つ目は血液ガス分析です。施設によっては利用できないと思いますが、血液ガスをオーダーすると自動的に電解質も測定されます。その電解質は偽性低ナトリウム血症を示しません(偽性低ナトリウム血症については、あとで説明します)。よって血液ガスを利用しましょう。


 次は浸透圧が高い場合の低ナトリウム血症です。浸透圧のほとんどはナトリウムが占めておりますので、ナトリウムが低ければ、浸透圧は低いはずです。なのに浸透圧が高かったら、これは浸透圧を上げる別の物質があるために、細胞内から水分が引っ張り出されて(浸透圧が高い方に水が移動しますので)ナトリウムが低下したと思われます(ナトリウム濃度は水とナトリウムの比率を示します)。

 最も多いのは高血糖です。血糖が100mg/dL上昇すると、Naは2mEq/L弱低下するとされています。1.6だとか、血糖が500mg/dLを越えると別の係数になるとか、細かいことが言われる場合がありますが、どっちみち適当なので、2弱下がると覚えるのが一番良いでしょう。血糖が例えば600mg/dLあった人がいたら、500上昇していますので、だいたい10ぐらいNaが低下すると予想します。Naが130mEq/Lだったら、低ナトリウム血症の治療は不要です。血糖を下げれば自然に治るはずですので(あるいは血糖が下がってから考えれば良い)。

 他にはマニトールなどの高浸透圧物質を点滴している場合です。

 ナトリウムが低くて困るのは浸透圧が下がるからで、浸透圧が下がっていなければ、Naの治療はいりません。


 その次は、浸透圧が正常なのにナトリウムが低くなる場合で、これは偽性低ナトリウム血症と呼ばれていて、血液検査のやり方から出てくるエラーです。詳しい理論は私もよく分からないのですが、著明な高血糖や著明な高タンパク血症(通常は見ないような激しい異常です)の場合に発生します。補正式は、こちらの私の別のブログに書きましたので参考にしてください。


 これらを除外してやっと低ナトリウム血症だと言えるのです。低ナトリウム血症の治療も慣れないとややこしくて難しいですが、低ナトリウムと診断するのも結構大変ですね。


2021年8月30日月曜日

極端な低ナトリウム血症の患者さん

  高齢の寝たきりの患者さんが意識障害があるとのことで搬送されました。バイタルサインは問題なかったので、まず血液ガスを採取しました。研修医の先生が体調不良で休んでおられたので、久しぶりに自分で動脈血をとりました。


 出てきたデータは以下の通りです。

pH 7.469

PCO2 31.5 Torr

PO2 112.5 Torr(酸素マスクで5リットル/分投与)

HCO3 22.4 mEq/L

BE −0.7mmol/L

Na 測定不可

K 4.45 mEq/L

CL 72 mEq/L

Lactate 1.14 mmol/L


 ナトリウムが測定不可!?とビックリしましたが、CLも低いので低ナトリウム血症だろうと思いました。次に出たのは浸透圧で、205 mOsm/kg・H2Oでした。やはりナトリウムが低いと考え、3%生食を投与しました。


 生化学のデータではNaは102mEq/LでCLは65mEq/Lでした。私の経験した患者さんでは最も低い値でした。ナトリウムが低すぎると血液ガスの機械では測れない場合があるのですね。勉強になりました。


 記事は出来るだけ短くをモットーとしていますので、今回はこれだけ。解析などは別記事で紹介します。


2021年8月29日日曜日

血小板が30万から25万に低下したら低下したと考えて良いのか?

  例えば肺炎で入院した患者さんの血小板が30万/uLだったとしましょう。入院翌日も通常採血します。


「血小板が25万/uLに減少したので、血小板が炎症で消費されているための低下と思われます。」


 と言う発言は正しいのでしょうか?


 厳密に言えば違うというのが今日の記事です。


 昨日紹介させて頂いた、医事新報社の雑誌の症例を集めた本「Reverced C.P.C.による臨床検査データ読み方トレーニング」のP.9によれば、referance changeというものがあり、同じ人でも日々検査データは変化しており、その幅が検査項目によって異なります。また検査の誤差も含めて考えると血小板であれば31.1%も変動するそうです。


 よって、30万/uLあった血小板が低下したと言えるのは、32%以上低下した場合、つまり30×0.32=9.6万/uL以上低下した場合、つまり血小板が20.4万/uL以下になった場合、低下したと言えると言う事です。


 カリウムを例に取れば、reference rangeは14.4%だそうです。4だったカリウムは4×0.144=0.576以上低下、3.4以下になった場合、生理的変化を越えて低下した、あるいは、4.6以上になった場合に上昇したと考えて良いと言うことです。


 検査データの読みというのは難しいですね。

2021年8月28日土曜日

正常値は基準値と言いましょう

  「血糖の正常値は?」等という会話が日本中の医療現場でされていると思われますが、ストレスにさらされている患者さんの血糖値が100mg/dLであったとして、それは正常なのか?と言われると難しいです。ストレスがあると血糖は高くなるのが普通なので、血糖100mg/dLは低いのではないか?と考える必要があるかも知れません。


 また、血糖が正常値だったというと、何か糖関係には全く問題がないという印象を受けてしまいます。よって、他にも色々難しいことがあるのですが、現在は正常値とは言わず、「基準値」という名前で呼ぶ事が勧められています。


 健康であっても基準値を外れる場合がある(だいたい5%程度)し、基準値の範囲内であっても病気がないとは言えない場合があることを忘れないようにしましょう。例えば、コレステロールは基準値の範囲内であっても治療を開始すべき場合があります。




 こちらの本の最初の章に詳しく書かれていますが、読んでも私は理解できなかったので何度も読んでみます。ちなみに、この本は15年ほど前に出版されたもので、現時点でAmazonで古本しか売っておらず、9400円もします。よって、たぶん、次のバージョン(症例は違うと思いますが)を購入されるのが良いと思ったら、こっちの方が高かったです(25000円近くします)、、、、、、知らんけど。


 通常に買える本としては、こちらがお勧めです。



 以下の本はRCPCではなく、一人RCPCみたいになっていますが、同じように検査について勉強になります。きっと著者の先生はかなり面白い先生なんだろうなと思われます。





2021年8月27日金曜日

今回から血液検査全般についてのブログに変更します

  定期的に思い出してアップしているこのブログですが、ネタ切れというか勉強不足もありますが、最近血液検査について(特にRCPC、後述)勉強したので、ブログのタイトルを「血液ガスから学ぶ救急医療」から「血液検査から学ぶ救急医療」に変更します。よろしくお願いいたします。


 RCPCとはReversed Clinico-Pathological Conferenceの略で、血液検査から患者さんの状態を想像すると言う検査のトレーニングになります。私が学生の時に医事新報ジュニア版というのがあり、無料で配られていました。それには色々興味深い記事が載っていて、RCPCも載っていました。が、私には難しすぎていつか読めるようになったらなあと思っていましたが、医師になって30年以上経ち、やっとその時が来たかも知れません、、、、、、知らんけど。



  RCPCについての本を探すと数冊しか見つかりません(医師向けと思われるもののみ)。そのうちの一つがこれです。大学の先輩が書かれているのもありましたが、色々勉強になります。少しずつ紹介していきたいと思いますし、載っていることの多くはネットで検索しても見つからないことが多かったので、ネットで見つけられるようにと言う意味も込めて記事を続けていきたいと思います。

2021年8月20日金曜日

浸透圧ギャップが高い時には偽性低ナトリウム血症も疑いましょう

  以前浸透圧ギャップを必ず計算しましょうと書きました。血液ガスを行っていなくても、低ナトリウム血症があったら浸透圧を測定することが多いので、その際は必ず浸透圧ギャップを計算しましょう。


 今回はそれをしていれば防げたのではないかという症例の紹介です。もう40年近く前の症例報告です。こちらのブログをご覧頂ければ幸いです。低ナトリウム血症だったのですが、高血糖によるものと考えてしまっていたのですが、著明な胃高脂血症による偽性低ナトリウム血症を伴っており、実際は高ナトリウム血症だったというものです。浸透圧ギャップが異常に高くなっており、患者さんは6歳であり、ほとんど食べられていない状態だったようですので、浸透圧ギャップを形成するような変な物質を摂取した可能性は非常に低いです。ナトリウムが低すぎると疑うべきだったと思われましたが、初診時に高脂血症による偽性低ナトリウム血症は疑われなかったようです。


 よって、浸透圧ギャップの開大を認めた場合、偽性低ナトリウム血症も疑い、血液ガス分析装置で測定したナトリウムの値を採用すべきですね。

2021年7月19日月曜日

乳酸がmg/dLで出てきたら9で割りましょう

  乳酸は血液ガスデータにおいてとても重要な値です。正確には乳酸イオンと言うべきかも知れません。英語ではlactateとlactic acidは別物ですが、日本語ではどちらも乳酸です。lactate+Hイオン=lactic acidです。


 さて、私が知るかぎり、乳酸値はmmol/Lで示されており、2mmol/L以上を高値(出来れば?3以上、あるいは5以上とされています)と呼んでいます。


 本にはmg/dLで結果を示している物があります。そのような器械があるのでしょう。その場合には9で割ってください。つまり乳酸値 9mg/dL=1mmol/Lです。


 何故そうなのかというと、乳酸の分子量が90だからです。

 1mmol/L=90mg/L=9mg/dL

 と言うことです。分子量90のものが1molあると90gです。


 乳酸イオンと乳酸の重さは変わらないのか?と言うと、Hイオンは分子量が1なので1モルあたり1gの違いしかなく、誤差と考えて良いです。


 覚えにくい人は、乳酸が18mg/dL以上だったら異常。女子高生を越えたら相手にする(セクハラな例え申し訳ありません)と覚えたらいいでしょう。


 今回はそれだけの記事です、、、、、たぶん。

2021年7月18日日曜日

過換気症候群で乳酸が上昇すると言われていますが

  呼吸性アルカローシスは怖いという実例です。こちらのEMAという若手救急医の集まりのサイトの症例75をご覧ください。


 この患者さんは(問題が古いためでしょうか?症例のリンクが見られません)どんな身体所見だったのか書かれていませんが、若い女性ですし、過換気症候群だと思い込んでしまいそうな患者さんだったのではと推測します。乳酸も上昇していますが、過換気症候群で乳酸が上昇することもあるしね(どこかに記事を書いた記憶があるのですが見つかりませんでした)と思い込んでしまうと大変なことになります。


 解説は読んでいただけば良いですが、PCO2とpHの関係からも、単純な呼吸性アルカローシスではないと分かります。PCO2からpHを予測する式があります。


予想pH=7.4+0.008×(40−PCO2


 これを計算すると7.608となり、実際のpHはそれよりも低いです。代謝性アシドーシスを合併しないとあり得ない値です(呼吸性アシドーシスと呼吸性アルカローシスは合併できません)。


 過換気症候群は別の病気だと誤診しても問題ない疾患です(精神的なものに対して非精神科医は介入すべきでないと以前精神科の先生に教わりましたので)。よって、過換気の患者さんを診たら重大な病気ではないかと考えるようにしましょう。


 そして、乳酸が上がっていたら、過換気のためと思い込むのではなく、乳酸が上がるような何かの代謝異常(type A;組織の低酸素、type B;ビタミンB1欠乏など)があるのではないか?と考えましょう、、、、、、知らんけど。



2021年7月17日土曜日

呼吸性アルカローシスも結構怖いです

 呼吸性アルカローシスの患者さんと聞いて皆さんはどんな印象を持ちますか?22歳女性の過換気症候群です!みたいな感じでしょうか。90歳男性の肺炎の患者さんです!でしょうか。 


 呼吸性アルカローシスはあまりそれ自体重大な印象がない気がします。本当の所はどうか分かりませんが、アルカリに人間は強そうな気がします。呼吸性アシドーシスだと低酸素も伴う(II型呼吸不全と言います)のですが、呼吸性アルカローシスはそれはありません。


 しかし、低酸素(hypoxia)に伴う呼吸性アルカローシスや敗血症の初期症状だったりと、比較的危ない病態を示す場合もありますので、呼吸性アルカローシスを見た場合には、そう言う病態ではないか必ず考えるようにしましょう。


 こちらの文献には、過換気による低CO2血症により心室細動をきたした症例報告が載っています。


 呼吸性アルカローシスも馬鹿にしてはいけません、、、、、、知らんけど。


2021年7月16日金曜日

酸素濃度を5倍してみましょう

  昨日の関連記事です。酸素化能の評価としてA-aDO2がスタンダードではないかと思っていたのですが、PAO2の予想がでたらめだとなれば、A-aDO2は意味がありません。


 では、どうすれば良いのでしょうか?


 私が研修医の頃、麻酔科の先生に「PaO2は吸入酸素濃度を5倍した値より少し低い」と言うのを教わりました。「A-aDO2を計算しなくなるから、これは研修医には教えてはいけないよ」と言われたのですが、私も研修医なのにいいのかなあ?と思った記憶があります。私は研修医時代から老けていると言われていて、研修医に見えなかったからかも知れません(麻酔の先生は非常勤の先生でしたから)。


 つまり、酸素投与をしない状態では、酸素濃度は約20%ですので、PaO2は100 Torr程度となります。酸素濃度が40%ならPaO2は200 Torr程度と言うことです。かなり大雑把で、ほとんど使うことはなかったのですが、最近買った本のP.104にFive Times Ruleとして紹介されていました。




 この本の中には、肺胞気式がやはり有用ではないことが記載されています。理由として、呼吸商を用いていること(実際に測定できない)、FIO2が0.6以上だと肺胞に窒素が入ってこない(理由は書かれていませんでした)、年齢によって正常値が変わる(事がどうして肺胞気式が有用でない理由になるのか書かれていませんでした)など、推測が多すぎると言うことだそうです。
 なんと、このFive Times Ruleは、ちゃんとした救急の本(Tintinalii's Emergency Medicine)に計算と共に書かれているそうです。知りませんでした。今まで馬鹿にしていてすみません。

 さあ、今日から肺胞気式を捨てて、吸入酸素濃度を5倍してみましょう!、、、、、、知らんけど。

 こちらのブログにもほぼ同じ記事を載せました。




2021年7月15日木曜日

肺胞気式はでたらめ?

  大変興味深い記事がM3.comに出ています。会員の方はこちらの記事をご覧ください。


 会員でない方は無料なので是非と言いたいですが、、、、、、、


 肺胞気式は前提が間違っているのででたらめであり、使うべきではないとの主張です。確かにややこしいからこんなこと勉強したくないと思う人がいるのかも知れません。


 個人的には必ず肺胞気式を使って計算していますし、研修医の先生にも計算するよう伝えています。呼吸生理を勉強する意欲を奪っていたら大変申し訳なく思いますが。

2021年7月9日金曜日

2,3 DPGさんは2,3 BPGさんに改名されました。

知らなかったので記事にしました。


輸血の使用時に使うカリウム吸着フィルターについて調べていて、UpToDateの"Practical aspects of red blood cell transfusion in adults: Storage, processing, modifications, and infusion(成人における赤血球輸血の実際:保管、手順、調節、輸血法)"を読んでいてビックリ。


Red cell 2,3 BPG (previously called 2,3 diphosphoglycerate [2,3 DPG]) can increase oxygen delivery to the tissues by shifting the oxyhemoglobin dissociation curve to the right.

赤血球の2,3 BPG(過去には2,3ジホスホグリセレート(2,3 DPG)と呼ばれていた)は、酸素ヘモグロビン解離曲線を右方移動させ、組織への酸素供給を増加させる。


とありました。2,3 DPGさんは改名したんだ。知らなかった。それだけでは短いと思うので、UpToDateの記事の続きを紹介します。

Reduced 2,3 BPG has the opposite effect (ie, it can reduce tissue oxygen delivery by shifting the curve to the left) . Levels of 2,3 BPG begin to drop in stored units of RBCs by two weeks and can be as low as 10 percent of normal after five to six weeks. It is uncertain whether this abnormality is physiologically important, even in critically ill patients. Even if it were important, the 2,3 BPG concentration in the transfused cells returns to normal within 6 to 24 hours of transfusion, resulting in normalization of oxygen release. 

2, 3 BPGが減ると逆の効果をもたらす。すなわち、ヘモグロビン酸素解離曲線を左方移動させることで、組織への酸素供給が減少する。2, 3 BPGは2週間以内に保存血の中で低下し始める。5−6週間後には正常の10%まで低下する。この2, 3 BPGの減少が、重症患者であっても、生理学的に重要かどうかは明らかではない。仮に重要だったとしても、2, 3 BPG濃度は6−24時間以内に正常に回復し、酸素放出は正常化する。

輸血の適応として、Hbが低下しすぎた場合というのがあり、酸素運搬量が減る(CaO2のほとんどはヘモグロビン結合酸素です)のを輸血によって防ぐと言うのがあります。が、2, 3 DPG(私が読んだ文献はそう書いていました)が減っているため、輸血をしてもあまり意味がないかも知れないとありました。しかし、上記の記載によれば気にしなくて良いと言うことですし、いや6時間は酸素放出が十分でないんだから、急いで輸血する意義はない!とも言えますね。

色々分からないことが多いですね。

2021年7月6日火曜日

アニオンギャップを計算しましょう

  血液ガス分析を行った場合、必ずアニオンギャップを計算しましょう。今は乳酸を直接測定できるから必要ないという意見もありますが、計算するだけです(器械が自動的に算出する場合も多いです)から害はありません。またアシドーシスの原因は乳酸だけではありませんので計算しましょう。


 アニオンギャップはカリウムを含んでいる場合がありますので、自院の器械がどう言う計算でアニオンギャップを計算しているかはチェックしておきましょう。


 熱中症で来院された患者さんです。

pH 7.425

PCO2 37 torr

HCO3 23.7 mEq/L

Na 141.9 mEq/L

CL 101 mEq/L


 一見問題ない値です。よってスルーしてしまいそうですが、自動的に計算されたアニオンギャップは21.2 mEq/L(Kは3.99 mEq/Lでした。計算すると21.19 mEq/Lですので四捨五入されているのでしょう)で上昇しています。Kを除いても17.2 mEq/Lと増加しています。乳酸値は2.63 mmol/Lでした。


 補正HCO3を計算すると23.7+(17.2−12)=28.9 mEq/Lで上昇しています。この人のアルブミン値は5.1g/dLで低アルブミン血症はありませんでした。


 アルブミンが高い場合には、逆補正がいると考えると2.75(=(4.0−5.1)×2.5)を引くことになり、アニオンギャップは14.45となるため、正常値と考えても良いのかも知れませんが。


 この患者さんはもともと代謝性アルカローシスがあったのかもしれませんね。アニオンギャップを計算しなければ代謝性アシドーシスを見逃したかも知れません。

 当然ですが、この方は輸液をしていただき、経過観察入院となりました。


 繰り返しますが、この方は発汗多量で体調も悪く、乳酸値が高いので、アニオンギャップがなくても診断は可能ですね。



2021年6月27日日曜日

浸透圧ギャップは血液ガス分析に役立つか?

 中毒患者さんや原因不明の意識障害では浸透圧ギャップ(正確には浸透圧モル濃度ギャップと言うべきかも知れません)を計算しましょうと言われます。アニオンギャップ上昇があればやはり計算すべきと言う意見もあります。本当なのでしょうか?


  UpToDateの「Serum osmolal gap(血清浸透圧ギャップ)」と言う文献に鑑別が載っていました。代謝性アシドーシスの有無でまず2つに分けます。


アニオンギャップ上昇型代謝性アシドーシスあり

 浸透圧ギャップ大 エチレングリコール

          メタノール

          プロピレングリコール

 浸透圧ギャップ小 重篤な慢性腎臓病(非透析)

          ケトアシドーシス(糖尿病性、アルコール性)

          乳酸アシドーシス

          パラアルデヒド(経口、静注)

アニオンギャップ上昇型代謝性アシドーシスなし

 エタノール

 イソプロパノール

 ジエチルエーテル

 マニトール、ソルビトール、グリシンの点滴

 偽性低ナトリウム血症(重症な高脂血症、高タンパク血症)


 浸透圧ギャップは必ず計算した方が良さそうですね。最後の偽性低ナトリウム血症では、血液ガスの電解質を使えば起こりません。血液ガス分析は通常の生化学検査の電解質とは違う方法で測定しているからです。


 また以下の本のP.104にも似たような分類が載っています。


浸透圧ギャップ上昇なし、アニオンギャップ上昇あり サリチル酸
浸透圧ギャップのみ上昇 エタノール、イソプロパノール
浸透圧ギャップ、アニオンギャップ両方上昇 メタノール、プロピレングリコール

浸透圧ギャップは単純な算数ですが、面倒なのでアプリで計算しましょう。例えばM2Plus Launcherです。


2021年6月26日土曜日

たねぽん法の良い点

  前回紹介させて頂いたたねぽん法ですが、簡単なだけでなく、ミスも少ないと論文に書かれています。英語の論文に書かれていますが、やはり日本語が良いですよね。訳してはしょってみます。


 症例が載っています。66歳の男性で糖尿病があるようです。採血結果は以下の通りです。

Na 138 mmol/L

Cl 96 mmol/L

Alb 3.6 g/dL

HCO3 29 mmol/L

 まずたねぽん法でやってみます。AGの計算がいらないのも面白いです。

Step 1 補正HCO3=Na−CL−2.5×Albを計算

 補正HCO3=138−96−2.5×3.6=33

Step 2 補正HCO3と測定されたHCO3を比較

 33>29で補正HCO3の方が高い

 → アニオンギャップ増加型代謝性アシドーシス

Step 3 補正HCO3とHCO3の正常値を比較

 33 > 25(静脈血HCO3の正常値を25とした)で補正HCO3の方が高い

 → 代謝性アルカローシス


 一般的に言われているアニオンギャップ法でやってみます。

Step 1 アニオンギャップを計算。

 AG=Na−CL−HCO313896−29=13

Step 2 AGをアルブミンで補正

 補正AG=AG+2.5×(4−Alb) アルブミンの正常値を4としています。

 =13+2.5×(4−3.6)=14

Step 3 補正AGをAG正常値と比較

 14 > 10 (AG正常値を10とした)で補正AGの方が大きい。

 → アニオンギャップ上昇型代謝性アシドーシス

Step 4 ΔAGを求める。

 ΔAG=14−10 =4(AG正常値を10とした)

Step 5 ΔHCO3を求める。

 ΔHCO3=HCO3正常値−HCO3測定値

 =25−29 = −4

Step 6 ΔAGとΔHCO3を比較

 4 > −4でΔAGの方が大きい

 代謝性アルカローシス


 診断は同じになりますが、例えばStep 5において、計算を逆にしてしまい、ΔHCO3とΔAGが同じだと間違える可能性があります。そうするとAG上昇型代謝性アシドーシスのみとなってしまい、代謝性アルカローシスの合併を見逃してしまいます。

補正HCO3の計算式

  昨日の投稿で、補正HCO3=Na−CL−2.5×Albと言う式を紹介しました。何故そうなるのか?と言う説明を知りたい方への記事です。

 補正HCO3=HCO3+ΔAG

です。補正HCO3とはHCO3にAG(アニオンギャップ;Anion gap)の上昇分(ΔAG;デルタAGと読みます)を足したものです。AGが上昇すると、それと同じだけHCO3が下がります。陽イオンと陰イオンの合計は同じと仮定されていて、アニオンギャップが増える(陰イオンが増える)とHCO3は下がります。HCO3は結構受け身の陰イオンなのです。そして、AGがゼロになったと仮定した場合のHCO3が、補正HCO3です。また、

 ΔAG=AG−12 (AGの正常値は12と考えて)

 AG=Na−CL−HCO3+2.5×(4−Alb) (4−AlBの4はアルブミンの正常値)

です。最初の式に代入すると、

 補正HCO3=HCO3+Na−CL−HCO3+2.5×(4−Alb)−12

となり

 補正HCO3=Na−CL−2.5×Alb−2

となります。最後の−2は誤差なので、無視すると以下の様になります。

 補正HCO3=Na−CL−2.5×Alb

無視するなんて!と思う方は以下の説明を。

・アルブミンの正常値を4.4とすれば最後の−2は−1になります。さすがにアルブミンの正常値を4.8にするのはどうかとは思いますが、そうすると0になります。

・アニオンギャップの正常値は12かと言えば、最近はもっと低いのではないかと言われています。10が正常値をすれば、ドンピシャその式になります。


 是非この式をお使いください。


2021年6月25日金曜日

酸塩基平衡の解釈法(たねぽん法)

  こちらのサイトに書かれていた方法です。たねもと先生だからたねぽん法なのでしょう。


 サイトにも書かれていますが、論文はこちらです。英語が得意な方はこちらをご覧ください。


 代謝の問題を確認するのに、通常の方法だと6ステップ必要ですが、3ステップで良いというものです。血液ガスを取るの忘れた!と言う場合にも使えます。私はよく使っています。イオンは本来[]をつけるらしいですが、このサイトでは省略しています。

 ここではステップ2と3を逆に記載します。血液ガス分析のデータがなくてもステップ2まで行えるからです。


ステップ1 補正HCO3を計算する。

 補正HCO3=NaCl2.5×Alb 

ステップ2 計算された補正HCO3をHCO3の基準値(24 mEq/L)と比較

 HCO3計算値 > 26 代謝性アルカローシス

 HCO3計算値 22から26の間 正常

 HCO3計算値 < 22 代謝性アシドーシス(アニオンギャップ非増加)

ステップ3 補正HCO3の計算値とHCO3の測定値と比較

 HCO3計算値 > HCO3測定値+2

  測定できない陰イオン増加による代謝性アシドーシス(アニオンギャップ上昇)

 HCO3計算値 HCO3測定値±2の範囲 変な物質は増えていない

 HCO3計算値 < HCO3測定値−2

  異常イオン増加(ブロム中毒、リチウム中毒、免疫グロブリン異常など)


 ステップ1で計算したHCO3はAGが増加していないと仮定した場合のHCO3(補正HCO3と呼んでいます)です。この分析法の根拠は、サイトにも論文にも書かれているので知りたい方はご覧ください。


 何と言ってもアニオンギャップの計算をしないなんて画期的です(似たような計算はしますが)。血液ガス分析のデータがなくても酸塩基平衡の解析が出来るのもいいですね!著明な低アルブミン血症がない場合には、Na−CLでも大丈夫です。それについてはこちらの記事こちらの記事にに書きましたので良かったらご覧ください。


2021年6月24日木曜日

浸透圧を求めるにはどの式を使ったら良いか?

  血液ガス分析には直接関係はありませんが、アニオンギャップが増加している時や、そうでない時でも浸透圧の計算が役立つことがあります。浸透圧は血液検査で測定できます。正確には重量モル浸透圧濃度(Osmolality)で単位はmOsm/kg・H2Oですが、ここでは単に浸透圧とします。


 測定された浸透圧と計算値には当然差(浸透圧ギャップと言います)があります。その差が大きい時(10以上)には、何はおかしな物質が血液中に増えていると予想されます。中毒や原因不明の代謝異常の診断に、この浸透圧ギャップが役立つことがあるのです。


 浸透圧ギャップは、測定された浸透圧−計算された浸透圧で求められます。計算された浸透圧は容積モル浸透圧濃度と言い、単位はmOsm/Lで、単位が違う物どうしを引き算して良いのか?と言う疑問もありますが、それも今回はいいでしょう。


 浸透圧の計算には血糖とBUN(血液尿素窒素)、ナトリウムが必要です。以下の式が有名です。

浸透圧の計算値(mOsm/L)=2×Na(mEq/L)+血糖(mg/dL)÷18+BUN(mg/dL)÷2.8

 係数はNaと同じだけ陰イオンがあるだろうと言うことで2、ブドウ糖は分子量が180、尿素窒素は28(10で割っているのは単位を合わせるため)のためとのことです。しかし、浸透圧の計算法は他にも色々あるようで、どれが一番良いのか検討した文献がありました。その文献によれば以下の式が一番いいようです。

=1.86×(Na+K)+1.15×血糖÷18+BUN÷2.8+14


 また別の文献では以下の式を推奨しています。

=1.89×Na+1.38×K+1.08×血糖÷18+1.03×BUN÷2.8+7.45


 今度使ってみよう。しかし、どちらの文献も一般的に認められている式もacceptableとしています。


2021年6月23日水曜日

Torrとは

  血液ガスにおいて圧力を示す単位はkPaが推奨されていますが、torrでも良いと以前書きました。mmHg=Torr(厳密に言えば違いますが、現在の日本の定義では全く同じ)なので良かったですが、torrとはなんでしょうか?


 その前に注意点です。単位としてtorrを書く場合は「Torr」と最初が大文字だそうです、トルという単位はなどと文章に書く場合はtorrと小文字になるそうです。ややこしい。


 エバンジェリスタ・トリチェリという人が最初に大気圧を水銀で測定したために、彼の功績をたたえてtorrと言う単位の名前になっています。


 定義は1/760気圧と言うことです。mmHgもtorrもちゃんと定義されたのだから良いのじゃないかという気もしますが、科学とは厳密な定義によって成り立っていますので仕方ないですね。


 エバンジェリスタ・トリチェリという名前は、エバンゲリオンのファンの人みたいですごく親しみがわきますね。


2021年6月22日火曜日

mmHgとは

 前回もう使わないと書いた分圧の単位であるmmHgですが、何故そうなったのか、少し勉強してみます。


  こちらのサイトに図入りで解説されていますのでそちらをご覧ください。


 問題点は何かと言えば、測定した場所によって水銀の体積や重力が異なるため、正確な比較が出来ないということです。物質は温度によって体積が変わります。例えば、ある場所での気温が0度で血圧が110mmHgだった場合、気温が30度の場所では体積が増えるため、たぶんですが血圧は110mmHgより高くなります。水銀を使った昔の体温計はその理論を使っています。


 また重力は場所や標高によって異なる(こちらのサイトを参照)ため、わずかではありますが、やはり値に差が出ます。


 どちらも誤差の範囲ではありますし、そもそも実測の血圧(本当は動脈ラインが実測なんですが)も測る人によって差が出ますので、気にしなくても良さそうですが、厳密な値を求められる場合にはmmHgは適切ではありません。日本では血圧や動脈ラインなどの圧のみに許可されているようです。私たちの次の世代ぐらいには、圧力の単位がPa(パスカル)に変わる可能性が高いです。7.5mmHg =1kPaのようですので覚えておきましょう。


 次回はTorr、torr、トルについて勉強しましょう。


2021年6月21日月曜日

A-aDO2の正常値はどれを採用したら良いの?

 血液ガスで酸素化能を評価する場合、肺胞気-動脈血酸素分圧較差をチェックすべきです。が、この値の正常値は色々あってどれを使ったら良いのか分かりませんね。今回はそれについて調べてみます。

A-aDO2=0.3×年齢

A-aDO2=0.5×年齢

A-aDO2=2.5+0.21×年齢PMID: 5963295)

A-aDO2=2.5+0.25×年齢(PMID: 29489223)文献では(年齢+10)÷4とありました。

A-aDO2=4+0.25×年齢(こちらに載っていましたが、引用文献が見つかりません)

A-aDO2=2.5+FIO2×年齢(PMID: 5963295)

A-aDO2=53未満(PMID: 17127809


 先に結論を。A-aDO2が50Torrを越えていたらまず異常と考えてよく、10Torr以下ならまず間違いなく正常でしょう。

 また、年齢を考慮に入れると、20歳以上の方では、0.5×年齢を越えていたら明らかに異常です。2.5+0.21×年齢以下であればまず異常なしです。

 20歳以下では0.3×年齢が一番厳しい基準であり、これをクリアすれば酸素化能障害はないと言えるでしょう。2.5+0.25×年齢が一番緩い基準であり、これを上回れば、酸素化能障害があると考えて良いでしょう。

 個人的には0.3×年齢が一番覚えやすくていい気がします。


 まず、こちらの論文を見てください。A-aDO2の正常値を出しています。

 対象となった患者さんの年齢は18歳から95歳までで、非喫煙者で過去にも喫煙既往歴のない以下の被験者を選択し、男性164人、女性769人のデータを集めたそうです

(1)過去及び現在において心肺疾患を有さず、現在呼吸器症状(喘鳴・咳・痰・労作時息切れ)なし

(2)肥満でない(標準式より120強を肥満と定義)

(3)神経筋疾患や円背など胸郭障害を除外

(4)測定所(病院・施設・保健所)に歩いて来院

(5)腎不全・肝不全などの重症例を除外

(6)インシュリン治療中の糖尿病や症状のある副鼻腔炎等肺機能に影響を及ぼすと考えられる疾患は除外

(7)高血圧・不全麻痺のない脳血管障害・耳鼻科・眼科・皮膚科領域疾患・その他の局所疾患・内分泌疾患・糖尿病・精神疾患・消化器疾患・四肢障害・局所の癌は除外せず

 結果は以下のグラフです。

 
 このデータを見ると、0.5×年齢をとれば、特異度が最も高いような気がします。どれを使っても誤差の範囲と考えることも可能です。

 血液ガスオタクとしては、以下の式が一番格好いい気がします。

A-aDO2=2.5+FIO2×年齢

 貴方はどれを採用しますか?


2021年6月20日日曜日

乳酸アシドーシスがあってもアニオンギャップは上がらないかも知れません。

  昨日の記事の結論ですが、乳酸が高値だったのに、血液ガス分析装置のNa、CLを用いたため、AGが上昇しておらず、おかしな値になったという症例は、今回のタイトルのことを知っていれば、別にどちらでもいいことでした(最初にそう言っちゃあおしまいなので言いませんでした)。


 こちらの論文には、AGが16以上という基準を用いても4割から7割の乳酸アシドーシス(乳酸値が4mmol/L以上)を見逃す可能性があると書かれています。検査に用いたデータは血液ガス分析装置の電解質で、HCO3も計算値だと思われます。論文にはこちらのデンマークの会社の器械を使ったと書かれていました。しかし、AGはKを入れない計算式になっていました。器械が算出する値がそうなっているのか、論文を書くにあたって計算し直したのか、、、、、、気になりましたが、これもどっちでもいい話でしたね。


 こちらの本はある雑誌の座談会で勧められていた本なので購入しました。漫画チックな本だと書かれていたので面白そうだと思って買ったのですが、漫画チックなのは表紙だけでした。良く見たら、雑誌にも表紙が漫画チックだとかかれていました。まいっか。





 この本にはAGが15以上なら代謝性アシドーシスの可能性が高く、25以上ならまず間違いないだろうと書かれています。乳酸アシドーシスの場合には、AGの上昇とHCO3の減少の比率は1.5:1だと書かれています。


 血液ガスマイスターへの道は険しく曲がりくねっているようです。


2021年6月19日土曜日

アニオンギャップを計算する時、電解質は血液ガス分析の値を用いるべきか?

 今日は手抜きというか別のブログに記事を書いたので、そちらをご覧ください。


  こちらの記事をご覧ください。


 結論だけこちらに書けば、どっちでも良いと思われます。が、血液ガス分析の値を用いるべきだという意見も、生化学検査の値を用いるべきだという意見もあります。そんな、細かいことどうでもええんちゃうの?と言う意見もあります、、、、、、知らんけど。


 1年ほど前に私は血液生化学のデータを用いるべきと書いていました。すっかり忘れていました。




2021年6月17日木曜日

mmHgかTorrか?それともhPaか??

 血液ガスデータの分圧の単位として、mmHg(ミリメートル水銀柱、ミリメートルエッチジー、水銀柱ミリメートル)とかtorr(トル)、英語の文献だとPa(パスカル)と言うのを見たことがあると思います。一体どれを使ったら良いの??と思いますよね。


 結論を先に。


「mmHgは辞めてtorrを用い、将来に備えてPaを併記しましょう!」


 以下解説です。


 まず、 こちらのサイトに「新計量法による圧力の単位には、SIに係る計量単位としてPa(パスカル)、N/m2(ニュートン毎平方メートル)およびbar(バール)が用いられるほか、非SI単位として、生体内の圧力にTorr(トール)が、そして血圧にmmHg(水銀柱ミリメートル)が認められています。」とあります。後で解説しますが、正確に比較するためには(医療の現場では)Paを用いることが推奨されているようです。


 血液ガスにはTorrが用いられるようですが、国際的にはPaです。1kPa=7.5Torrですので覚えておきましょう。「PaO2 10kPa」と書かれていたら、75 mmHgです。おっと!その前に、Torrなのかtorrなのか?ですが、PaO2は100Torrと言うような記号として使う場合には、Tは大文字だそうです。「トルは血液ガス分析で分圧を示す単位として使われている」などと書く場合にはtorrと小文字だそうです。ややこしい。


 「mmHg」は血圧などにおいてのみ使用可能とされています。しかし、血圧もPaに変更することが求められているようで、英語のサイトにはkPaが併記されている場合があります。血圧120mmHgは16kPaとなりますが、これは分かりにくいですよね。私たちが生きている間は血圧はmmHgのままでしょう。GOTやGPTもAST、ALTになったのに、AST(GOT)、ALT(GPT)となっているみたいに。


 そして、血液ガス分析のデータはtorrにすることになっているようです(が、出来ればPaに変更)。TorrとmmHgは定義が異なる違った単位だったのですが、その誤差は非常に少なく、通常はTorr=mmHgとして良いです。また今の日本では全く同じ定義ですので、Torr=mmHgです。このブログでもmmHgは使わないように(最近ですが)しておりますが、Torrと同じと考えてください。


 mmHgと書いている方は、是非Torrに変えるようにしましょう。


 細かい定義などについては、次回記事をアップします。


2021年6月16日水曜日

静脈血と動脈血でPCO2やpHがかなり異なる患者さん

  60歳ぐらいの患者さんが救急車で来院されました。静脈血で採血したところ以下の値でした。以下の左の値です。

     静脈血     動脈血

pH    7.367      7.435

PCO2    50       37.8 Torr

HCO3   28.1      24.8 mEq/L

BE      2.0      0.7 mEq/L

Na    138.8     137.4 mEq/L

K     4.20       3.02 mEq/L

CL     101      101 mEq/L

血糖     181      181 mg/dL

乳酸     4.25      4.5 mmol/L

 呼吸数は32回/分であり、合わないよねと研修医の先生に伝え(と言うか最初から動脈血で検査すべきでしたが)、動脈血採血を行いました。その値が右隣の値です。

 やはり結構違いますね。静脈血だと呼吸性アシドーシスがあり、それを代謝で代償していると言う判断になりますが、後者だと乳酸が高いだけになります。

 血液ガスの解釈は難しいですね。

2021年6月15日火曜日

呼吸と数字

  今日は本の紹介です。血液ガスは特に数字がよく出てきます。この本は数字に関する話題を分かりやすく解説しています。研修医、看護師向けとのことですので平易な語りかけるような文章で分かりやすいです。





 P.20には「生体内の圧力の単位としてTorr、血圧の単位としてmmHgを用いる」と世界的に定められていると書かれています。今後このページでもmmHgではなく、Torrを使うようにします!が、著者も本の中でmmHgを使っていて突っ込まないでくださいねと書いています(^^)。

 ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×年)を命名したのはブリンクマン先生ではないとか、面白く読めます。

 2200円と医学書としては安いのも魅力的です。


2021年6月14日月曜日

無呼吸になるとPaCO2はどのぐらい上昇するのか?

  今日は短いです。無呼吸になると、1分間で5Torr程度PaCO2が上昇します。こちらの文献からです。


 原文を引用します。/minは原文ではmin-1(−1は上付き文字)となっていました。

In apnoea, PaCO2 increases by 0.3-0.7 kPa/min, say 0.5 kPa/min.

無呼吸状態において、PaCO2は1分間に0.3〜0.7kPa(2.25〜5.25Torr)、例えば0.5kPa(3.75Torr)上昇する。


 これ、何かで知りたくて調べても分からなかったことなのです。ずいぶん前に知りたかったので何故知りたかったのか忘れました(^^)。

2021年6月13日日曜日

正確な肺胞気式でなくて良いのか?その3

  一度こだわるとしつこく追求したいタイプなので、その3です。


 肺胞気式は本当は少し複雑だと言うこと、PaCO2が高くなるほど、FIO2が高くなるほど簡易式と正式な肺胞気式との差は増えるのですが、A-aDO2の正常値に幅があるので、誤差はほとんど考慮する必要がなく、簡易式で問題ないことをその1その2で書きました。


 それでもごちゃごちゃ言う人がいた場合の理論武装です。その前に、そう言う人の意見をまず聞いてみましょう。

・酸素を投与しない状態でないと正確な呼吸状態が把握できない。

 酸素投与は人工呼吸器であれば正確な酸素濃度が分かります。しかし、経鼻で1L/分の酸素を流すと酸素濃度は24%程度と言われていますが、本当の吸入酸素濃度は分かりません。よって、FIO2が0.24として計算しても、本当は0.28だったりするかも知れません。A-aDO2やP/F比に大きな違いが出るかも知れません。これは別記事で計算してみましょう。


 しかし、、、、、、

・初回は酸素投与しなかったとして

 初回は酸素投与をせず、A-aDO2が例えば50Torrだったとしましょう。酸素化が悪いので酸素を投与します。次のA-aDO2は酸素投与をした状態での結果になります。同じく50Torrだった場合、どう評価するのでしょう?酸素を投与するとA-aDO2は高くなると言われていますので、良くなっていると考えるのでしょうか?それとも変わらないのか?もしかしたら悪くなっているのかも知れません。その次の3回目の採血と比べるのではないでしょうか。結局酸素を投与した状態での評価が必要ですよね。それとも採血する時には、酸素を止めて採血するのでしょうか?

・呼吸商は0.8か???

 計算式では、呼吸商を0.8としていますが、本当の呼吸商はその時の代謝によって異なります。こちらのWikipediaをご覧ください。今の呼吸商はどのぐらいか?を測定する方法は一般臨床では存在しないと思いますし、それをする必要もないでしょう。呼吸商に誤差がある以上、予想式によるPAO2にも誤差がもともとあります。

・大気圧は760Torrか?(TorrもmmHgも同じですが、血圧以外の圧はTorrを用いるそうです)

 PIO2=(760−47)×FIO2において、760Torrは一気圧ですが、測定した場所の正確な気圧は分かりません。多少の誤差があるでしょう(低気圧が通過中には少し低いのではないでしょうか)。当院では、血液ガス分析の器械から出てくる紙データにも、電子カルテに載ったデータにも気圧が書かれていますが、私はこの記事を書くまでは電子カルテにも載っているのは知りませんでした(偉そうなことを書いているのに、チェックしていなかったです)。
 私が勤める病院の標高は40m程度のようです。気温25度で海面が1気圧の時、病院の気圧は756Torrです(こちらのサイトで計算し、こちらのサイトでhPaをmmHgに変換しました)。電子カルテに載っているデータもほぼこの値でした。760Torrからの4Torrの低下は、ほぼ誤差の範囲ですが、松本市は標高600m程度のようで、気圧は710Torr程度になります。酸素投与なしの場合PAO2が10Torr程度、100%酸素投与であれば50Torr程度低下します。これらも考慮して解析しているでしょうか。

・体温は37度か?

 血液ガスは37度の状態で測定するようです。体温が40度ある人では飽和水蒸気圧の補正が必要ではないかと思われます。PIO2を計算する時の760−47の47は37度における飽和水蒸気圧です。体温36度では44.57Torr、38度では49.7Torr、40度であれば55.33Torrになります(こちらのサイトで計算し、こちらのサイトでhPaをTorrに変換しました)。これによっても誤差が出ます(が、大きな誤差ではないと思われます)。

・PAO2は本当か?
 PAO2は理論上の値です。本当の値は測定できませんし、たぶん、理論とは多少異なるでしょう。肺に入ってくる気体を固体のように仮定して計算していますが、固体ではありませんし、機能的残気量とかのことを考えると複雑すぎます。又これについては記事を書きます。


 上記のような理由により、肺胞気式は誤差をたくさん含んだ計算式です。酸素投与をした場合の誤差も許容範囲だと考えて良いでしょう。


 こちらの文献にも以下のように書かれています。

 We can discard the extra term in the full AGE for any usual clinical purpose; it is complicated and simply too small to make a difference.

 我々は、どんな臨床状況においても、正式な肺胞気式(AGE;alveolar gas equation)の余分な項目を破棄できる。正式な肺胞気式は複雑であり差は非常に小さいためである。


 低酸素は許容できるものではありません。必要であれば、是非血液ガスをとる前に酸素投与を開始しましょう。救急外来であれば、救急隊の方に酸素投与を開始してもらってから搬送してもらうのも手かも知れませんね。以前別の病院の救急外来の看護師さんから、そう言う先生(酸素投与は血液ガスをとってから!)がいて困っているのですが、どうしたら良いでしょうと質問されたのです。

2021年6月12日土曜日

正確な肺胞気式でなくて良いのか?その2

  昨日の記事に引き続き、正確な肺胞気式と簡略式との差を考えます。今日は酸素投与がされている場合です。


 「血液ガスは、酸素を投与しない状態で採血して計算しなければならないので、血液ガスをとるまで酸素を絶対に投与するな!」と言う人を見かけます。低酸素は危険ですから、そんなプラクティスは推奨しません。もし、そう思うなら正確な肺胞気式で計算すれば良いです。そう言えば、前回の記事に正確な肺胞気式を書いていませんでした。以下の通りです。

PAO2=PIO2−PaCO2/R+(1/R-1)×PaCO2×FIO2=713×FIO2−PaCO2/0.8+0.25×PaCO2×FIO2

(PaCO2=PACO2という前提ですので、式の中のPCO2はAでもaでも同じです)

 最後の項目はFIO2が低い場合、ほとんど無視できるとされています。酸素投与なしならば、0.25×0.21=0.0525となり、PaCO2が40Torrならば2.1となり誤差の範囲です。前回の記事「正確な肺胞気式でなくて良いのか?その1」で計算してみましたね。今回はPaCO2が40Torrの場合、FIO2が上昇するとどうなるかを計算します。


(1)FIO2  (2)正確な式によるPAO2 (3)簡略式 (4)差(2)−(3)

 0.21       101.83         99.73     2.1

 0.24(経鼻1L)     123.52          121.12       2.4

 0.28(経鼻2L)  152.44          149.64       2.8

 0.32(経鼻3L)  181.36          178.16       3.2

 0.36(マスク4L)  210.28         206.68     3.6

 0.4(マスク5L)    239.2         235.2      4

 0.44(マスク6L)  268.12          263.72       4.4

 0.5        311.5         306.5      5

 0.6        383.8         377.8      6

 0.8        528.4         520.4      8

 1         673           663        10


 と言うことで、100%酸素投与をしていても差は10Torrであり、肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)は10Torrぐらい違ってきますが、そもそもA-aDO2は高濃度酸素を投与すると大きくなるとされています(例えばこちらのサイトに書かれています)ので、10ぐらいの差は許容されるのかも知れません。また、A-aDO2だけが患者さんの呼吸状態を把握するデータではありませんので、別の評価項目も用いれば良いですし、血液ガスデータも酸素投与をした状態で採血したデータであると分かって解析すれば問題ありません。


 また、PaCO2が例えば20Torrであれば、差は半分になり、100%酸素投与下でも差は5になります。PaCO2が80Torrであれば、差は20に増えますが、まあ、そんな状態の人は人工呼吸器をつけてPaCO2を下げて再評価するでしょう。


 急変時や救急車搬入時にチアノーゼがあったり、SpO2が90%を切っているような状態なのに、血液ガスをとるまでは酸素を投与しないというのは意味がないばかりか、低酸素による害を及ぼしますので、是非必要なら血液ガスを採取する前でも酸素を投与しましょう。そして正確な肺胞気式で計算をしましょう(何しろ自動的に計算してくれるサイトがありますから)。


 正確な吸入酸素濃度が分からないから、どうしても酸素投与はいけないというのであれば、素早く動脈血採血が出来るように腕を磨きましょう!


2021年6月11日金曜日

正確な肺胞気式でなくていいのか?その1

  呼吸管理において出てくる式の一つに肺胞気式というのがあります。肺胞内の酸素分圧は直接測定できないので、計算で予想するための式です。一般的に以下の通りです。

 PAO2=PIO2−PACO2÷R=(760-47)×FIO2−PaCO2/0.8

 PAO2:肺胞内酸素分圧(肺胞は英語でalveolar。気体は大文字なので、PAO2と表します)

 PIO2:吸入気酸素分圧(吸入は英語でinspire)

 PACO2:肺胞内二酸化炭素分圧(二酸化炭素は容易に肺胞と血液を移動しますので、PACO2とPaCO2は同じと考えます)

 R:呼吸商(通常は0.8。詳細を知りたい方はこちら

 760:大気圧です。病院が存在する場所が高いところにあれば違う値になりますし、低気圧が通過中であれば異なるかも知れません。

 47:37度における飽和水蒸気圧です。肺胞に入った気体は水蒸気で飽和されるため分圧がそれだけ低下します。

 PaCO2:動脈血二酸化炭素分圧(動脈は英語でartery。液体は小文字のためPaCO2と表します)

 通常の環境で酸素投与がされていなければ、PIO2=(760−47)×0.21=149.73=150Torrとします。よって、肺胞気式は以下のように書かれていることが多いです。

 PAO2=150−PaCO2/0.8

 何故150なのか?知らなかった方は、理解をして頂ければ幸いです。


 しかし、正確な肺胞気式はもっと複雑です。求め方は前回の記事で紹介した論文に書かれていますが、あなたが肺胞気式オタクでない限り知らなくても良いです。計算も面倒なので自動的にやってもらいましょう。そして、正確な肺胞気式で計算すべきなのか、簡略式で良いのか?と言うと、結論から言えば簡略式で問題ありません。


 こちらに、正式な肺胞気式の計算を簡単にすることができるサイトがありましたので、酸素投与をしない状態でPaCO2が変化したらPAO2はどうなるか計算してみました(正確には数値を入力しただけで自動的に計算してもらいました)。簡略式による値と比べてみます。単位は全てTorrです。mmHgでも同じですが、血圧以外の圧はTorrだと国際的に決まっているそうです。

(1)PaCO2 (2)正確な式のPAO2 (3)簡略式   (4)差(2)−(3)

 30      113.805        112.23      1.575

 35      107.8175         105.98      1.8375

 40      101.83           99.73       2.1

 45       95.8425        93.48       2.3625

 50       89.855          87.23       2.625

 60       77.88         74.73       3.15

 70       65.905          62.23       3.675

 80       53.93         49.73       4.2

 90      41.955         37.23      4.725


 PaCO2が上昇するにつれ、正確な式との差が大きくなりますが、それでも5は越えません。PAO2を求める意義は、PaO2との差(A-aDO2とかA-aO2 gradientとかP(A-aO2とか色々な表現があります)を求めるためでしょう。この値の正常値は年齢×0.3以下というのが一番簡単です。こちらのサイト2.5+0.21×年齢されています。80歳の人であれば、A-aDO2の正常値は前者であれば、24Torr以下、後者であれば19.3Torr以下で結構差があります。出典が明らかではありませんが、年齢の半分以下というのも見たことがあります。

 よって、PAO2の5Torr程度の差は、ほとんど誤差の範囲と考えられ、正確な式で計算をする必要はないと思われます(酸素投与されていない場合ですが)。


 次回の記事では、酸素投与がされている場合について考えてみましょう。

2021年6月10日木曜日

呼吸生理を詳しく勉強したい方に

  患者さんの管理において呼吸管理は非常に重要ですが、なかなかとっつきにくかったり難しかったりします。特に式が出てくるとアレルギー反応を起こす人もおられるのではないでしょうか。私も数学が学生時代得意だったし、今も継続して学んでいるにもかかわらず、式は苦手です。


 でも分かればとても面白いですので、是非我慢して勉強しましょう。こちらの論文は色々な式の意味や導き方が書かれていて興味深いです。物理や化学の基礎的な知識も書かれていて勉強になります。

 一度に全部読むのは大変なので、ちょっとずつ読んでみてはいかがでしょう。


肺胞気式を導くためのイメージ

 上記は肺胞気式を計算するための図です。何故PaCO2を呼吸商Rで割るのか、二酸化炭素が血液から肺胞に出てきたら、その分その他のガスの分圧が下がるから、単純にPaCO2/Rを引くだけではダメなのではないかと思っていましたが、この論文を読んですっきりしました!(が分からないことがまだあります)。

2021年6月4日金曜日

糖尿病性ケトアシドーシスに重炭酸ナトリウムの投与は有用か?

 代謝性アシドーシスがあるとメイロン!(重炭酸ナトリウムの商品名)と叫ぶ人が結構いますが、行うことの利益と不利益をよく理解しておきましょう。それでも使いたい場合には、堂々と使いましょう。
 こちらの論文をご覧ください。以下のTable2はコピペした物ですが、画像が鮮明ではないですね。



 以下に日本語訳を書いてみます。


表2 糖尿病性ケトアシドーシスにおける重炭酸ナトリウムの投与に関する重要な所見と結論

軽症から中等度のアシデミア(pH≧7.0)に対する重炭酸ナトリウムの使用は

 死亡率や入院期間を減らす効果はない

 一次的にアシドーシスを改善する

 ケトン血症の改善を遅らせる

 中枢神経のアシドーシスを悪化させる傾向にある

 カリウム補充量を増やす

 組織の低酸素を悪化させる

 小児で脳浮腫を発生させ、入院期間を延長させる

 治療後のアルカローシスをきたす

重症のアシデミア(pH<7.0)に対する重炭酸ナトリウムの使用は

 小規模無作為試験で有病率や死亡率に差を認めなかった。

糖尿病性ケトアシドーシスに対するルチンの重炭酸ナトリウムの投与は調べた範囲では支持されていなかった。

重炭酸ナトリウムの投与を考慮しても良い状況は以下の通り

 重症アシドーシス

 致死的高カリウム血症

 生理食塩水による代謝性アシドーシスからの回復



  以下解説です。私の個人的な考えも含んでいます。気になる方は原文にあたっていただき、参考文献が記載されているので調べてみてください。

・死亡率や入院期間を改善するデータはない

 今はエビデンスの時代ですので、アシドーシスを改善すれば良いことがありそうだと思っても、そう言うデータがないと、、、、、ですね。患者さんの症状が早く改善するというエビデンスがあるかも知れませんので、これだけでメイロンを使うな!とは言えないとは思います(が、私は滅多に使いません)。

・一時的にアシドーシスを改善する

 良いこともあると言うことなんでしょうが、すぐアシドーシスに戻ってしまうということでしょう。

・ケトン血症の改善を遅らせる

 文献を見たらよく分かりませんでした。すみません。重炭酸ナトリウムの投与によりケトンの産生が増えるようです。

・中枢神経のアシドーシスを悪化させる傾向にある

 重炭酸ナトリウムはNaとHCO3の溶液です。HCO3は多少はCO2になってしまいます。血液脳関門はCO2の方が通過しやすく、重炭酸ナトリウムの投与により脳内にCO2が入ってアシドーシスになるかも知れません。これに関しては否定的な見解も多いようです。

・カリウム補充量を増やす

 重炭酸ナトリウムは高カリウム血症の治療にも用いられる(のですが、最近はそれほどカリウムを下げないので有用ではないという意見もあります)ので当然ですね。

・組織の低酸素を悪化させる

 赤血球内の解糖系が抑制されるため、2,3-DPGが低くなります。そうなるとHbは酸素を放出しにくくなります。その状態で重炭酸ナトリウムを投与すると、酸素解離曲線は左方移動して、さらに酸素を放出しにくくなります。2,3-DPGは数日間回復しないようです。

。治療後アルカローシスになる

 一般的に重症患者さんは改善してくると代謝性アルカローシスになります。輸液や輸血に含まれる乳酸やクエン酸などが代謝されてHCO3になるし、アシドーシスの原因であった物質も代謝されてHCO3になるからでしょう。代償性の呼吸性アシドーシスによる低酸素とかカリウムを失うとか、何か問題があれば別ですが、一般的に自然に治ります。

 以下はよく分かりませんので省略しました。すみません。


2021年6月2日水曜日

代謝性アシドーシス以外でもアニオンギャップが上昇する

  代謝性アシドーシスを見逃さないためにアニオンギャップ(Anion Gap;以下AG)を必ず計算しましょうと書きましたが、どんな検査も100%ではないので、AGも代謝性アシドーシスではないのに上昇することがあります(もちろんですが、AGの上昇しない代謝性アシドーシスもあります)。

 復習しますと、AG=測定できない陰イオンー測定できない陽イオンでもありました。つまりAGが上昇するには

・測定できない陰イオンが増える。

・測定できない陽イオンが減る。

・両方がある。

の3つのどれかです。測定できない陽イオンは、カリウムやマグネシウム、カルシウムなども含んでいますが、それらの合計はそれほど高くなく、測定できない陽イオンが減ってAGが増えると言うことはあまりないと言われていて、考える必要がありません。

 よって、AGの上昇=測定できない陰イオンの増加と考えて良いです。以下の3つが考えられます。

・アルブミン、リン酸、異常タンパク質(例えばIgA)の増加

・代謝性アルカローシス(軽度AGが上昇することがあるそうです)

・機器のエラー(Naが高く、CLやHCO3が低く出る)

 詳細は今後記事にしていきます。しかし、AGが上昇していたら代謝性アシドーシスがあると考えて行動するのが良いですね。


 今回はUpToDateの「Serum anion gap in conditions other than metabolic acidosis」と言う文献を参考にしました。

2021年6月1日火曜日

アニオンギャップは高アルブミン血症でも補正すべきか?

 代謝性アシドーシスがあるかどうかチェックするため、血液ガスを採取したら必ずアニオンギャップ(Anion gap;以下AG)を計算すべきとされています。

 日本やアメリカでは一般的にAG=Naー(CL+HCO3)ですが、ヨーロッパではカリウムを入れてAG=(Na+K)ー(CL+HCO3)とするらしいです。4程度の違いが出ますね。自動的に計算されるAGは後者のことが多い(検査の器械がドイツ製が多い気がします)ので注意が必要です。

 さて、AGはどうしてこんな式かというと、体内ではプラスとマイナスは同じ数だという考えから来ています。つまり陽イオンの数=陰イオンの数(電荷の数)だという前提です。全てのイオンを計測できないし、計測できるものでも少ししかないものは、測定できない陰イオン(unmesured anion;以下UA)と測定できない陽イオン(unmesured cation;UC)とします。すると以下のような式になります。陽イオン=陰イオンです。

測定できる陽イオン+UC=測定できる陰イオン+UA

 AG=測定できる陽イオンー測定できる陰イオンなので、AG=Naー(CL+HCO3)=UA−UCとなり、アニオンギャップは、測定できない陰イオン−測定できない陽イオンとも言えます。

 測定できない陰イオンの主なものはアルブミンだそうです。次いでリン酸、尿酸、硫酸だそうです。アルブミンは酸だとされてます(酸の定義としてHイオンを放出するものというのを採用)。pH7.4ではアルブミンは陰性電荷を帯びた側鎖の方が多いそうです。よって、アルブミンは全体として陰イオンです。UAであるアルブミンが低くなるとAGは低下し、アルブミンが上昇すればAGは上昇します。よって、低アルブミン血症の場合にはAGが上昇しているのを見逃す可能性があるため、AGをアルブミンで補正すべきとされています。以下のような式です。

補正AG=AG+2.5×(4−Alb)

 これはアルブミンが高い時にも行うべきなのでしょうか?今日の疑問はそれです。前置きが長かったですね。

 結論から書けば、同じ式を用いて補正します。つまり、アルブミンが高い場合、補正AGは低下するはずです。こちらの論文を読んでいただけば良いですが、要約を日本語訳しておきます。

 背景:低アルブミン血症はどのぐらいアニオンギャップを低下させるのかに関するデータはいくつか存在していて混乱している。アルブミンが1g/dL低下するとAGは1.5〜2.5mM/L低下するとされている。

 研究方法:血清アルブミン、総蛋白、電解質濃度を5328人の患者(年齢は1ヶ月から102歳)で測定した。ほとんどの患者(3750人、70%)はアルブミン値が正常であったが、1158人は3.4g/dL以下の低アルブミン血症で、420人は4.7g/dL以上の高アルブミン血症であった。血清アルブミンや総蛋白とアニオンギャップの関係を線形回帰法で解析した。

 結果:309人(27%)の低アルブミン血症患者はアニオンギャップが低下しており、257人(61%)の高アルブミン血症患者はアニオンギャップが上昇していた。全ての患者で血清アルブミンか総蛋白とアニオンギャップには有意な関連があったP< 0.001)。アルブミンとアニオンギャップはアルブミン1g/dLにつきアニオンギャップ2.3mMの低下の関係があった。この係数を用いて、アニオンギャップをアルブミンで補正可能である(補正AG=AG+2.3×(4−Alb))。低アルブミン、あるいは高アルブミン血症のある患者の44%でアニオンギャップの評価が補正後に変化した。

 結論:アニオンギャップが増えているか減っているかを考える前に、まずアニオンギャップをアルブミンで補正すべきである。我々のデータは、アルブミン値の変化の2.3倍を使用することを支持する。Figgeらは2.5倍を推奨しているが、どちらを用いてもほぼ同じ結果である。


 まあ、アルブミンが高い人は血液内科などでない限り滅多に遭遇しないと思われますので、疑問に思うことはないのかも知れません。

2021年5月26日水曜日

アニオンギャップが激しく低下(マイナス47)した症例

 アニオンギャップ(Anion gap;以下AG)は代謝性アシドーシスの鑑別、pHなどが正常な場合に代謝性アシドーシスを発見するツールになりますので、必ず計算すべきとされていますし、多くの血液ガス分析の結果に自動的に計算されていることが多いと思います。

 アニオンギャップは通常以下のように計算されます。

AG=Na−(CL+HCO3

 正常値は12程度ですが、最近はもっと低い値なのではないかと言われています。日本やアメリカではこれで良いのですが、ヨーロッパなどは以下のようにカリウムを含んでいます。

AG=(Na+K)−(CL+HCO3

 自動的に計算されるAGはこちらのことが多い(私が知るかぎり血液ガスの検査器械はドイツ製が多い)のでチェックしておく必要があります。

 何故このような値を算出する必要があるのかについては別に学んで頂ければ良いですが、この値がマイナスになることはまずありません。しかし、こちらの論文には、AGがマイナスになった症例が載っています。是非ご覧ください。

 理由としては大量のアセチルサリチル酸(アスピリンをたくさん飲んで自殺を測った患者さんです)が間違ってCLとして測定されてしまったと言うことが書かれています。AGはCLが増えれば低下しますからね。

 CLが間違って高値を示す疾患は他にもいくつかあり、Brを含んだ睡眠薬の中毒(発売が禁止された国も多いのですが、日本ではまだ売られています)や造影剤投与後などもあります。

 AGが47でもビックリするぐらい高いですが、−47だったらもっとビックリするかも知れませんね。

2021年5月14日金曜日

前額部にパルスオキシメーター

  パルスオキシメーターは指などに挟んで光が組織を通過して来た物を測定しています。その光の強さの変化によってSpO2を計算するのです。


 よって、どこかセンサーを挟むところが必要ですが、最近は反射式と言って挟まなくても貼るだけでいい物があるようです。


 特にこちらの資料の6ページ目をご覧戴くと、前額部は酸素の変化がより早く検出できるようです。



 また、こちらの論文によれば、前額部の血流は交感神経の支配が弱く、ショックや低体温時にも動脈の血流が維持されるそうです。よって、通常の部位でSpO2が測定できない時には前額部に貼るモニターを考慮しても良いでしょう。

2021年5月6日木曜日

パルスオキシメーターを使う時にマニキュアは気にしなくて良いです。

  国家試験では、マニキュアはSpO2に影響する因子として有名なのだそうです。私が医師国家試験を受けた時に、パルスオキシメーターの問題があったかどうか、全く記憶にありません(MRIは私の学年まで出題されていなかったのは覚えています)が、看護師さんの国家試験でも出題されているようです。


 しかし、特に急変時にマニキュアをしているからと言って、それを取り除かないとパルスオキシメーターをつけられないというのでは、色々困ります。それを調べた研究がいくつかあり、結論から言えば、マニキュアは気にしなくて良いと言うことです。昔の器械は気にしなければならなかったのかも知れませんが、今の器械は大丈夫です。


 以下の論文を参考にして図を作りました。と言うか、色をつけただけですが。


 どの色でも、ほとんどマニキュアなしと差はありません。よって、緊急時は特にマニキュアを塗った人でも指で測定できます。もちろんですが、別の方法が直ぐ出来る(あるいはマニキュアを直ぐ取り除ける)のであれば、そうした方が良いでしょう。


 こちらのブログでも同じ事を書いています。少し変えてますが。

2021年4月21日水曜日

乳酸とAnion Gapの関係

 乳酸アシドーシスの時、乳酸が上昇した分だけAnion Gap(アニオンギャップ;以下AG)が上がりそうですが、実際はそうではありません。AGの上昇は、乳酸上昇(mmol/L)×0.6ぐらいだそうです(他にも色々式があるようですが)。今回はAGの上昇と乳酸値が同じぐらいの患者さんが来られました。AGの上昇と乳酸値の上昇は関連がない場合もあり、乳酸値は必ず測定すべきだそうです。普通測定するやろと思いますが、私の前の職場では測定できていたのに検査データとして報告がされていませんでした。私は測れないんだと思っていました。何てこった!

 ショック状態の90歳女性が運ばれてきました。血液ガスは以下の通りでした。

pH 7.073

PCO2 19.3 Torr(呼吸数40/分)

PO2 210.7 Torr(リザーバーマスクで酸素6L/分投与)

HCO3 5.5 mmol/L

BE -22.8 mmol/L

Na 140 mmol/L

K 4.5 mmol/L

CL 106 mmol/L

Lac 16.37 mmol/L


 まず酸素化能を評価します。リザーバーマスクで6L/分投与でしたので、だいたいFIO2は0.6です。A-aDO2は193 Torrで上昇(正常値は色々提唱されていますが、年齢×0.3以下というのを私は使っています)しており、酸素化能障害があります。この方は心不全でした。ご家族は人工呼吸管理を希望されませんでしたので、気管挿管をせずに管理しました。残念ながら入院後直ぐに亡くなりました。


 次に酸塩基平衡ですが、私は最初にNa-CLを計算しております。この方は140−106=34で正常(正常は30−40です)ですが、Anion Gap上昇型の代謝性アシドーシスの存在は否定できません。また複数の異常が存在する可能性もあります。

 田中竜馬先生の本の読み方に従えば、STEP1としてまずpHを見ます。pHは7.35より低く、アシデミアがあります。

 次にSTEP2で呼吸性か代謝性かを判断します。PCO2が低いため(低ければアルカローシスになりますから)、アシデミアの原因は代謝であり、HCO3は5.5 mmol/Lと著明に低下(正常値は24前後)しています。代謝性アシドーシスがあります。

 次のSTEP3では代償が適切かを見ます。代謝性アシドーシスではHCO3が1mmol/L低下する毎に、PCO2が1.2Torr程度低下します。HCO3は5.5mmol/Lと正常値の24mmol/Lから18.5mmol/L低下していますので、PCO2は18.5×1.2Torr低下します。よってPCO2は17.8Torr(40−18.5×1.2)ぐらいになるはずで、測定値は19.3Torrですので良い感じですね。呼吸性代償が適切にされていると思われます。ちなみに呼吸数は40回/分でした。適切な呼吸性代償ではありますが、呼吸が早すぎますので、いずれ呼吸筋疲労がきてしまいますよね。やはり人工呼吸が必要でした。

 STEP4ではAGを計算してみます。Na-CL-HCO3=28.5mmol/Lで正常値の12mmol/Lより16.5もmmol/L上昇しています。この方は何故かアルブミンが測定されていませんでしたが、1週間ほど前の採血があり、その際は3g/dLでした。クレアチニンやBUNが1週間前より上昇しており、軽度血液濃縮があったとしてアルブミンが3.5g/dL程度になっていたと考えると、補正AGはAG+(4−3.5)×2.5=29.75mmol/Lとなります。

 ΔAG=AG−12を計算すると、17.75mmol/Lとなり、補正HCO3=HCO3+ΔAG=22.25mmol/Lとなりますので代謝性アルカローシスはなさそうです。


 まとめるとこの方は

酸素化能障害

AG上昇型代謝性アシドーシス(乳酸高値)

呼吸性代償

があると思われます。この方は乳酸の上昇とAGの上昇がほぼ一致していました。乳酸高値の原因は著明な心不全による心源性ショックで、全身の代謝が上手くいっていなかったからでしょう。

2021年4月19日月曜日

吸気の二酸化炭素が増えたら肺胞気式は使えない(たぶん)

  最近消火のための二酸化炭素が放出される設備が誤作動して作業員の方が亡くなるという事故が起こっています。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。


 ニュースでは低酸素のために亡くなったと書かれています。20%のガスが二酸化炭素に置き換わったとのことです。たぶん、急激な低酸素ではなく、血液中の二酸化炭素分圧(PaCO2)が上昇し、意識レベルが低下し、呼吸が止まってしまい低酸素になったのでしょう。


 20%のガスが二酸化炭素になった場合、残り80%の20%が酸素です。よって吸入酸素濃度は16%です。PAO2を計算すると、PIO2=(760−47)×0.16で114Torr、PaO2=PIO2−PaCO2÷0.8となりますので、(PaCO2は取りあえず40Torrとして計算)PAO2=64Torr程度となります。20%のガスが二酸化炭素に置き換わったとしても、それだけでは死亡するほどの低酸素にはならないことが分かります。例えば、高いところを飛んでいる飛行機の機内の気圧は地上の0.8倍程度になっており、PAO2はほぼ同じ位になっています。が、飛行機に乗っただけで死亡する人はいません。


 さて、PaCO2÷0.8と言う数字はどう言う意味か覚えていますか?前回の記事でご紹介しましたが、消費される酸素の量が測定できないので、二酸化炭素から予想するのでした。二酸化炭素が8出てきたら、酸素は10使われていると予想されるのです。しかし、これは空気中の二酸化炭素がほぼゼロ(PICO2=0Torr)と言う場合の式でした。


 ここまで書いておいてなんですが、じゃあPICO2が0.2になった時、どうやってPAO2を計算したら良いのか(肺胞気二酸化炭素分圧からは計算できないと思われます)については今のところ分かりませんでした。どなたか分かる方がおられたら教えてください。PaCO2が142Torr程度まで(713×0.2)あるいは+40で180Torr程度まで上がるのでしょうか?そしてなおさら肺胞気式は使えませんね。