2020年7月7日火曜日

動脈血採血の動画

 動脈血採血のやり方の動画です。英語ですが見てるだけで分かります。



 採血前に患者さんのリストバンドを確認し、採血直後、検査前にシリンジを撹拌しているのが印象的でした。

 今日は手抜きで済みません。

2020年7月6日月曜日

カリウムが高い時も血液ガスが役に立ちます(pH以外)

 酸塩基平衡と電解質は密接な関係があります。カリウムもpHと関係があるのは有名です。

 アシドーシスになると、少しでもそれを緩和しようと細胞がHイオンを細胞内に取り込みます。その際にKと交換するようです(何かの陽イオンと交換しないと細胞内が+になってしまいます)。よって、細胞内からカリウムが放出され、高カリウム血症となります。アルカローシスになると逆に低カリウム血症となります。

 今回の話題は偽性高カリウム血症です。つまり患者さんの体の中のカリウム濃度は正常なのに、採血するとカリウムが高いと報告されると言う状態です。これに血液ガスが役に立ちます。

 結論を先に言うと、血清カリウム値が高いのに、血液ガス分析で行ったカリウムが正常だったら、これは偽性高カリウム血症だと言えます。血小板が異常に高値の場合です。

 血小板がたくさんあると、血液が固まる時にカリウムがたくさん放出され、カリウムが高いと報告されてしまうようです。復習ですが、血液生化学、いわゆるプレーン採血は、血液に抗凝固薬を入れないで血液を固まらせ、固まった部分は取り除いて検査をします。血液が固まるまである程度の時間がかかるため、血液生化学検査は例えば10分では結果は出ません。

 でも茶色のスピッツに何か入ってますよ!と言う貴方、するどいです。あれは凝固促進剤であり、検査室の人が必要なものであって、我々患者さんのそばにいる人間にはあまり関係ありません。間違っても血液を注射器で採血し、茶色のスピッツに最初に血液を入れるようなことはしていませんよね。極論を言えば、注射器のまま検査室に提出し、検査室で茶色のスピッツに入れても良いのです、あれは。

 よって偽性高カリウム血症を予防するには、血液に抗凝固薬を入れて検査すれば良いです。何でも良いのですが、血液ガスの注射器には抗凝固薬が入っていて、カリウム塩ではありません(通常ヘパリンリチウムです)。

 血小板が多い人でカリウムが高いと報告されたら、もちろん心電図は直ぐとってカリウムが高い可能性も探りますが、血液ガス分析をやってみましょう。

 緊急の場合には、カリウムをプレーンの採血でオーダーすると20分ぐらいは結果が出ませんから、結果が1分もあれば出る血液ガス分析もしましょう。

 ちなみに、血小板と言えば、「はたらく細胞」の血小板を思い出してしまいます。可愛すぎます!

2020年7月5日日曜日

片肺挿管になったら酸素濃度を上げたらいいじゃない?

 気管挿管をしている時(あるいはする時)、起こりやすい不具合の一つは片肺挿管です。

 片肺挿管は何がいけないでしょうか?もちろん、酸素化能が低下する事です。挿管されていない(通常は右に入るので左ですね)肺に痰がたまることもあるかも知れません。

 さて、この時、気管チューブの位置を動かすことが出来ない(資格上の問題、その他色々)場合に、とりあえず酸素を100%にしたら良いじゃないと思いますね。もちろん、それは一つの手なのですが、その際、SPO2があまり上がらない事が多いです。今回はその事について考えてみましょう。

 まず、換気されない左肺から心臓に戻って来る血液は、酸素を取り込むことが出来ませんから、ほとんど静脈血と同じです。つまりPO2は40mmHg程度です。

 次に、換気されている右の肺から戻ってくる血液は、100%酸素で換気していて、酸素化能に問題がなければ、PO2は600mmHg以上あります。

 左肺と右肺からの血流が同じだったとすると、(右肺からの血流のPO2+左からのPO2)÷2=320mmHgとなり、SPO2は余裕で100%近いはずです。また、hypoxic pulmonary vasoconstrictionと言って換気が悪い肺胞へ行く血管は収縮する反応があり、左肺の血流は少なくなります。右:左が例えば2:1になったら、もっとPO2は高くなるはずです。

 しかし、PO2は60mmHg程度にしかなりません。何故でしょう?

 血液にはヘモグロビンが含まれているのがその理由です。血液が単純な液体であれば、先ほどの計算は成り立ちます。みなさんは、CaO2というのを覚えていますか?動脈血酸素含有量という物で、こちらで計算します。

 CaO2=Hb結合酸素+溶存酸素=1.34×Hb×SaO2÷100+0.0031×PaO2

でした。左肺から来る血液のCaO2=1.34×15×0.75+0.0031×40=15.2ml/dLです。
(Hbは15としました。静脈血のPO2は40mmHg、SO2は75%としました。)
右肺から来る血液のCaO2=20.3ml/dL程度です。右:左の血流が2:1だったとすると、(20.3×2+15.2)÷3=18.6ml/dLとなります。酸素化能が正常な人の酸素吸入なしの場合のCaO2は19.8ml/dL程度(SaO2 97%、PaO2 90としました)です。片肺挿管時は、室内空気を吸っている人より、PaO2が低いと言うことでしょう。PaO2が60mmHgでSaO2が90%として計算すると18.2ml/dL程度となり、やはりPaO2は60mmHg程度と言うことになります。

 気管チューブは患者さんの首の反り具合で最大5cm程度動くらしいですので、気管挿管をしている患者さんでは常に片肺挿管になっていないか、確認しましょう。そして、PaO2が突然下がったら片肺挿管を是非考えてください。

 他にも人工呼吸中の患者さんに変化があったら思い出す物としてDOPEと言うのがあります。
D displacement チューブの位置異常(つまり片肺挿管、抜けたなど)
O obstruction チューブの閉塞
P pneumothrax (緊張性)気胸
E equipment 装置の異常(人工呼吸器など)

 英語が苦手な方は「いきつめ」と覚えましょう。
い 位置の異常
き 緊張性気胸
つ 詰まった
め メカの異常

2020年7月4日土曜日

シリンジを撹拌しましょう(その2)

 前回の記事で、検体を検査機器にかける前に、最低でも40秒は撹拌しましょうという事を書きました。

 今回はシリンジの添付文書からです。当院で採用しているシリンジの添付文書には以下のような図が載っています。

 左が採血直後、右が検査直前にそうしなさいとのことです。くるくるする操作を「きりもみ」と表現しています。血液ガスをとったらきりもみ操作を頻繁にしなければならないと言うことですね。

 救急外来でごまをすっているわけではありませんので、誤解のないようにお願いします。

2020年7月3日金曜日

Na-CLを計算しましょう

 Na-CLが36以上は代謝性アルカローシス、以下は代謝性アシドーシス(AG正常)が疑われると以前も書いたこちらの論文を紹介させて頂いた記事でした)のですが、別の説明を見つけましたのでご紹介します。以下の本の994ページです。何とこの本現在新品が手に入らないようで、Amazonなどでは中古品の方が高い(と言うか新品は売っていない)値段になっています。楽天でも購入できませんので、電子版を購入しました。


 アニオンギャップの式は以下の通りです。

Anion Gap=Na−CL −HCO3+2.5×(アルブミンの正常値−Alb)

 式を変形します。

Na−CL=AG+HCO3−2.5×(アルブミンの正常値−Alb)・・・・・式(1)

 Na−CLが上昇するのは、AGが上昇した場合か、HCO3が上昇した場合、あるいは両方となります(Albが増加した場合もそうですが、あまり考えなくて良いでしょう)。しかし、AGが上昇すると、その分だけHCO3が低下します。HCO3は他のイオンの変化に伴って容易に変化します。AGが増加したと言うことは、その分だけ酸(酸は水素イオンを放出しますから、必ず陰イオンとなります)が増えていると言うことです。陰イオンが増えていますから、その分HCO3は低下します。
 ここで補正HCO3という概念を考えるのですが、AGが上昇している場合、もし、AGが正常に下がったらHCO3はいくらになるのか?それが高ければAGが増加する代謝性アシドーシスに加えて、代謝性アルカローシスもある、低ければAGが増加しない代謝性アシドーシスがあると言うことになります。補正HCO3を出す計算が以下のような物です(AGの正常値を12とする)。 

補正HCO3=HCO3+(AG−12) これを変形すると、

HCO3=補正HCO3−AG+12 となります。これを式(1)に代入すると

Na−CL=AG+(補正HCO3−AG+12)−2.5×(アルブミンの正常値−Alb) となって、結局

Na−CL=補正HCO3+12−2.5×(アルブミンの正常値−Alb) となります。

 補正HCO3はAGが正常になった場合のHCO3ですから、AGが高くても低くても正常でも関係ありません。補正HCO3が高ければ代謝性アルカローシス、低ければ代謝性アシドーシス(AG非増加型)ということになります。Albが正常であれば、HCO3の正常値は24ですので、Na−CLが36より大きいか小さいかで切ることになります。また、アルブミンがあまりに低いとNa−CLも下がります。アルブミンの正常値を4、測定されたアルブミン値が2だったとすると。Na−CLは31で切ることになります。よって、Na−CLは30から40ぐらいまでは正常と考えても良いかもしれません。

 また、Na−CLが36前後であれば酸塩基平衡に異常がないかというと、AGが増加する代謝性アシドーシスは分からないですし、代謝性アルカローシスとAG非増加型代謝性アシドーシスが混在していると異常を示さないかもしれません。

 まあ、Na−CLだけで血液ガス分析が全部解釈できるはずはありませんので、当たり前ですね。

 どちらにしても、一般血液検査を出したら、Na−CLを計算してみることは大切ですね。低い時は30以下、高い時は40以上を基準として異常と判断し、異常と思ったら血液ガス分析を行いたいですね。アメリカのように、血液生化学検査の一つとしてHCO3が検査できると良いのですが(日本でもやっているところはあるようです)。

2020年7月2日木曜日

空気が入ったらどうすべきか

 血液ガスを静脈で採血するように指示を出して、朝結果を見ると、PO2が75mmHgだったりすることがあります。静脈血液ガスのPO2は通常50mmHg以下で、ほとんど40mmHg以下です。

 なのに75mmHgもあるのは何故なのでしょうか???大きな声では言えませんが、ある病院では、昔看護師さんが動脈血をとっていましたので、その病院では看護師さんが気を利かせて動脈血をとってくれたということになりますが、当院はそうではありません。まさか、誤って動脈を刺してしまったなんて事もないでしょう。

 その原因は、シリンジに空気が入ったためと思われます。血液を空気に触れたままにすると、血液は空気の酸素分圧と同じ値に近づきます。空気のPO2はいくらかというと、160mmHg程度です。計算は760mmHg×0.0209です。あれ?150じゃなかったの?と言う方は鋭いです。空気は水蒸気で飽和していませんので、37度における飽和水蒸気圧である47mmHgを760から引かないので、やや高いです。

 よって、採血時に空気が入ったのに、それを出さないで検査に出し、検査するまで少し時間が経つと、PCO2は低下(空気のCO2はほぼゼロ)、PO2は状況により上がったり下がったりします。静脈血の検体であれば、PO2は上昇します。

 なので、採血時に血液が混じった場合、面倒でも空気は出すようにしましょう。まあ、静脈の検体では酸素を評価することはありませんし、もともと静脈血はPCO2も評価が難しいと言われていますから、気にしなくても良いのかもしれませんが、折角行う検査は正確にやりたいですね。

2020年7月1日水曜日

血液ガスをとったら冷やすべきか?

 私はそう習ったことはありませんが、血液ガスをとったら、検体を氷水や氷につけて冷やすべきだと習っている先生もいます。

 何故冷やさないといけないのでしょうか?

 血液の中には白血球や赤血球、血小板があり、これらはそれぞれ代謝を行っています。採血して身体から外に出ても、しばらくは代謝が継続します。特に白血球は酸素を消費するようです。

 よって、偽性低酸素血症(患者さんの身体の中は低酸素ではないのに、検査では低酸素となる)を予防するために、検体を冷やすべきと言うのです。

 例えばこちらの論文によれば、白血病で白血球が30万(!)以上になったりすると、著明に酸素分圧が低下する症例が報告されています。



 しかし、この論文にあるように、白血球が37000では正常値の時とあまり変わりなく、白血球が異常に高い患者さんがたくさんいる病院(血液内科がある)でなければ、通常はそのまま検体を提出すれば良いと思います。

 何らかの原因で検査が直ぐできない場合には冷やした方が良いでしょう。

 ちなみに、検体がちゃんと密封されて、血液が空気と触れないようになっている場合には、検体を冷やした後、検査のために37度に戻しても検査データは変わりません。