2018年3月23日金曜日

低体温再び

 低体温の患者さんが来られました。自宅内で倒れていたとのことです。SpO2が測定できず、酸素4L/分で投与されていました。グッドジョブです!直腸温を測定したところ、30.8度でした。体温が低いため(循環血液量が減少していたのも原因かもしれません)血管が収縮しており、SpO2が測定できなかったのでしょう。救急はオーバートリアージですので、低酸素を除外できないのであれば酸素投与が原則です!

pH 7.147
PCO2 24.1 mmHg
PO2 180.3 mmHg
HCO3 8.1 mmol/L
BE -19.0 mmol/L
AnionGap 28.4 mol/L
乳酸 2.10 mol/L

 著明な代謝性アシドーシスと代償性の呼吸性アルカローシスでしょうか。採血では横紋筋融解と循環血液量減少が疑われました。大量輸液をして、加温をして入院となりました。

 前回の記事を参考にしていただくとよいですが、血液ガス検査は検体を37度にして検査をします。よって低体温の場合には、実際の値と異なる可能性があります。しかし、通常はそれを考慮せず、データとして表示されたものをそのまま解釈して問題ないようです。

2018年3月22日木曜日

乳酸が高い患者さん

 一昨日の投稿に関連するかも知れません。

 85歳の男性が呼吸困難で来院されました。SpO2が測定できなかったようで、高流量酸素を投与されて救急車で搬送されました。

pH 7.460
PCO2 14.1 mmHg
PO2 181.0 mmHg
HCO3 9.8 mol/L
Base Excess -12.1 mol/L
Na 130.5 mEq/L
K 4.42 mEq/L
CL 109 mEq/L
乳酸値 7.27mmol/L

 一昨日の文献を参考にすれば、この人は呼吸性アルカローシスで、それに伴って乳酸アシドーシスが来ていると考えることが出来ます。

 また通常に読めば、pHは7.4を越えて代償することはありませんので、この方はアルカローシスが主体であるという事になります。

 しかし、臨床症状などを考慮すると、循環不全によって嫌気性代謝が亢進しており、そのために乳酸が出たのだろうと考えました。

 こちらのスライドを見ていただくと乳酸に関する色々が書かれていて興味深いです。この患者さんは栄養不良があったので、ビタミンB1不足を疑って、ビタミンB1を投与しました。

2018年3月20日火曜日

過換気症候群と乳酸値

 またまたさぼってしまっていました。すみません。

 今日の朝医局の勉強会で上記のテーマで勉強会がありました。全然知りませんでしたが、過換気症候群の患者さんで乳酸値が上昇することがあるのだそうです。

 それは乳酸アシドーシスを呼吸で代償しているんじゃないの?と思うあなたはさすがです。そう言う場合もあるし、たぶん、そう言う場合の方が頻度が高いでしょう。

 しかし、本当に過換気症候群で乳酸が高いことがあるのだそうです。こちらのリンクをご覧ください。

 知らないことばかりで日々勉強が必要ですね!

2018年3月2日金曜日

本の宣伝です

 血液ガスとは関係ありませんが、別のブログに書いていたことを、日本医事新報社の方に本にして頂きました。

 絶賛発売中ですので是非ご覧戴き、ご意見頂けると嬉しいです。




2018年3月1日木曜日

緊張性気胸の患者さん

 78歳の男性で、慢性閉塞性肺疾患で通院中です。呼吸困難があり、SpO2が低下していると言うことで救急搬送されました。現場では酸素10L/分流しても、SpO2が75%だったそうです。

 大きなことは言えませんが、高流量かつ高濃度の酸素を投与してもSpO2が上昇してこなければ、やはりバッグバルブマスク換気でしょう!なのに、、、、、、、、、、ここでは書きません。

 来院時の血液ガスです。バックバルブマスク換気を始めて直ぐぐらいの採血です。

pH 7.087
PCO2 92.4 mmHg
PO2 84.8 mmHg
HCO3 27.2 mol/L
BE −4.7 mol/L
乳酸 2.56 mol/L

 PaCO2が高いですよね。急激に意識が悪くなったとのことでしたので、有名なCO2ナルコーシスになったのかも知れません。この人の初期対応としては、酸素をやってはいけないということではなく、酸素投与にもかかわらずSpO2が低かったのですから、もう限界と言うことで換気を助けてあげれば良かったのです。酸素を投与したために、気管挿管が必要になるとか、そういう事はありません。低酸素であれば、酸素投与をし、それでもダメなら換気をしましょう!COPDがあるような人では、SpO2が90%ぐらいあれば良いでしょうが。

 この方は気管挿管され、一回換気量400mlぐらいを送るとピーク圧ーPEEPが25mmHgぐらいになっていました。25mmHgは1.36をかけて34cmH2Oなので、動的コンプライアンスは400ml÷34cmH2O=11.8ml/cmH2Oです。正常値は50〜100ml/cmH2Oなので、かなり肺が膨らみにくい状態ですね。

 レントゲンを撮ったら気胸でした!直ちに脱気をしました。するとピーク圧が5mmHgぐらいに低下しました。すごい変化ですね。動的コンプライアンスは、400÷5÷1.36=58.8ml/cmH2Oと正常になりました!すごい変化ですね!!

 その後あまりに元気になったので抜管してから血液ガスをとりました。酸素を経鼻で2リットル/分投与しています。

pH 7.368
PCO2 43.2 mmHg
PO2 72.7 mmHg
HCO3 24.3 mol/L
BE −1.1 mol/L
乳酸 1.76 mol/L

 A-aDO2が72.94 mmHgと酸素化能障害はありますが、酸塩基平衡は問題ありません。代償性変化がないので、急性の呼吸性アシドーシスだったのだと思われます。

<今回のポイント>
 酸素は大事です!
 おかしいなと思ったらCOPDの人でも酸素投与をしましょう。
 それでもSpO2が上がらなければバックバルブマスク換気をしましょう!

2018年1月10日水曜日

肺気腫の患者さん

 今年になってから全然更新していませんでした。すみません。

 さて、肺気腫の患者さんが発熱で来院されました。80歳の女性で、在宅酸素療法をしている方で、酸素を1.25リットル流しています。救急隊の方が4リットル投与で搬送してきました。落ち着いていたので酸素2リットル投与に減量しての血液ガスデータです。

 体温は38度、呼吸数は20/分、SpO2は94%でした。肺炎でしょうか?

pH 7.311
PCO2 81.6 mmHg
PO2 78.0 mmHg
HCO3 40.3 mmol/L
BE 11.6 mmol/L
AnionGap 11.5 mmol/L
乳酸 1.09 mmol/L

 まず最初に酸素の値を見ます。PaO2はまあ70 mmHg以上あれば、取りあえず良いのでしたね。よって、この人の酸素分圧は大丈夫です。
 次に酸素化能障害を診ます。AaDO2を計算すると、だいたい20 mmHgです。年齢の0.3以下という基準をとってみても、酸素化能障害はありません。咳もありませんので、肺炎ではないと考えました。CTも撮りましたが、異常はありませんでした。

 次はpHですね。7.4より低いので、アシドーシスがあります。
 PaCO2が上昇していますので、アシドーシスの原因は呼吸性のようです。
 呼吸性アシドーシスが急性に来たとすると、pHは7.06ぐらいになります(PaCO2が1上昇するとpHは0.008下がります)。pHはそれよりもかなり高く、代謝による代償がされていると思われ、慢性のCO2貯留があったのだと考えられます。慌てて気管挿管とか考えなくて良かったです。

 この方は尿路感染症でした。それにしても、PaCO2が80 mmHg以上あるのに、平気な人がいるのですね!

2017年12月29日金曜日

体温が30度の患者さん

 外で倒れていたと言う事で搬入された90歳の男性です。体温は30度でしたが、意識は清明で、体温以外のバイタルサインに異常はありませんでした。

pH 7.279
PCO2 38.4 mmHg
PO2 71.9 mmHg
HCO3 17.6 mmol/L
BE −9.5 mmol/L
Na 142.6 mEq/L
K 4.66 mEq/L
CL 108 mEq/L
AnionGap 21.7 mmol/L
Lactate 6.82 mmol/L

 血液ガスの検査は体温が37度だと仮定して検査をするようです。この人はそれよりも7度も体温が低いので、患者さんの体内でのデータと、出された結果には違いがないのでしょうか?実はあるのです。体温で補正して治療をしなければならないという考えはpH-statと言うようです。補正しなくて良いと言うのがα-statと言うようです。どちらが良いのか議論があるようです。

 しかし、こちらのブログにも書きましたが、体温が低くても、普通に解釈して治療して構いません。本当は体温が下がるとPaCO2は低下するようなので、この人は呼吸性アシドーシスがあるのかも知れませんが、気にしなくて良いです。SpO2が93%程度でしたので念のため酸素投与を行っています。

さて、この血液ガスの解釈をしてみます。
 この患者さんはpHが低く、アシドーシスがあります。
 PCO2が正常ですので、代謝性アシドーシスがあります。
 Anion Gapは正常値の12 mmol/Lから9.7 mmol/L上昇しており、AGが上昇する代謝性アシドーシスがあります。
 補正HCO3(アニオンギャップの上昇値をHCO3に足した物)は27.3 mmol/L程度であり、代謝性アルカローシスはなさそうです。
 AG上昇の代謝性アシドーシスでは、中毒、腎不全、乳酸アシドーシス、ケトアシドーシスなどを考えるのでしたね。この人は、乳酸が正常値の2 mmol/L以下より高値なので、乳酸アシドーシスと考えて良いでしょう。乳酸値の上昇とAGの上昇には明確な関連はないようです。
 乳酸アシドーシスの原因は、きっと低体温による循環不全でしょうね。

 加温と輸液で検査データは改善しました。ちなみに、低体温を温かい輸液で治療しようという試みはしないようにしましょう。