2017年11月30日木曜日

FIO2をどのぐらい変化させたら良いのか?


 目標とするPaO2を達成するために必要な吸入酸素濃度は以下の通りです。

目標とするFIO2=(目標とするPaO2−現在のPaO2÷713+現在のFIO2


 目標とするFIO2は高くても低くても良いです。良かったら使ってください。

 ちなみに、この式は、以下のかなり無理な条件を満たした場合にのみ成り立ちます。

・酸素濃度が変化しても、A-aDO2が変化しない。
・動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が変化しない。

 まあ、厳密に計算する必要はありませんので、気にしなくて良いでしょう。

 この式を導いてみます。

A-aDO2=(760−47)×現在のFIO2−PaCO2/0.8−現在のPaO2
A-aDO2=713×目標とするFIO2−PaCO2/0.8−目標とするPaO2

 です。上の式と下の式の左辺は等しいという前提ですので、式を変形すれば、PaCO2/0.8は消えます。よって上記の式が求められるのです。

 PaO2を70 mmHgぐらい挙げたいと思えば、FIO2を0.1(あるいは10%)上げれば良いと言うことですね。

<今日の極論ポイント>
 吸入酸素濃度を10%上げると、動脈血酸素分圧が70 mmHg程度上がります。

2017年11月29日水曜日

けいれんしたかどうかが分かります。

 けいれんをすると全身の筋肉が嫌気性代謝を行いますので、けいれんした直後に血液ガスを採取すると、代謝性アシドーシスになっているそうです。こちらのブログに紹介されている文献によれば、感度は73%、特異度は97%だったそうです。

 感度や特異度については詳しく知らなくても良いのですが、この文献のように特異度が高いと言うことは、血液ガスでアシドーシスになっていた場合、けいれんしていた可能性が非常に高いと言うことです。
 感度がそれほど高くない場合、アシドーシスがなかったら、けいれんしていないとは必ずしも言えないということです。

 救急診療指針P.292に「代謝性アシドーシスが認められれば痙攣であった可能性が高い」とあります。

 以前勤めていた病院の脳神経外科の先生も、けいれんしたかも?と言う人が来たら血液ガスをとってくださいと言っていましたので脳外科医の間でも常識になっているのだと思います。

 是非、けいれんが疑われる患者さんでは血液ガスをとりましょう。

2017年11月28日火曜日

PETCO2とPaCO2の関係は?

 集中治療室などでは波形表示式呼気二酸化炭素モニターを使いますね。エンドタイダルとか、ETCO2等と呼ばれている物です。

 ETは「地球外生命体」という意味ではなく、呼気終末という意味です。ETはend-tidalの略です。辞書で「tidal」を調べると潮の満ち引きと言うような意味らしいです。呼吸の繰り返しを潮の満ち引きに例えたのですね。オシャレです。

 このデータは、PaCO2とだいたい一緒なので、血液ガスを採取する回数を減らすことが出来ます。しかし、だいたい一緒とはあいまいすぎますよね。正確に分からないのでしょうか?

 死腔換気率を今日は勉強しましょう。例えば、こちらのサイトに載っていますが、一回換気量のうち、実際にガス交換に関わっていない割合を示します。

 一回換気量が500mlだったとして、吸い込んだ500mlが全て肺胞に入るわけではありません。口の中、気管、気管支ぐらいまでは肺胞がありません。これらを死腔と言います。肺胞が実際にあっても、ガス交換されていないところもあるでしょう。患者さんの状態によっても死腔換気率は変化します。計算式は以下の通りです。

VD/VT=(PaCO2−PETCO2)÷PaCO2

 死腔換気率は、「VD/VT」と表示します。VD、VTのVはvolume(量)です。Dはdead space(死腔)で、Tはtidalです。VDは死腔換気量、VTは一回換気量と言う事になります。どちらも気体なので、大文字ですね(が、字そのものの大きさは小さくします)。

死腔の量は2ml/kg程度のようです。麻酔科の授業で、「これを答えられたら、それだけで試験受けなくても良い」と突然教授が言われたのでよく覚えています。が、死腔の量を知らなかったので悔しかったです。一回換気量が500mlとすれば、体重50kgの人の死腔換気率は20%程度になるはずです。

 血液ガスとPETCO2を測定し、計算します。PaCO2が40mmHgでPETCO2が35mmHgと言う人がいたとします。死腔換気率は、(40−35)÷40=12.5%となります。気管挿管すると死腔換気率は減少しますので、これぐらいでしょう。

 この人のPETCO2が40になったとすると、死腔換気率が変化しないと仮定すれば、PaCO2は45.7mmHg程度になっていると予想できます。計算式は以下の通りです。

 PaCO2=PETCO2÷(1−死腔換気率)

 患者さんの状態は刻々変化しますので、結局血液ガスをとることになるのかも知れませんが、大きく間違うことはないでしょうから、PETCO2をきちんと利用したいですね。


2017年11月27日月曜日

FIO2を下げるか?PEEPを下げるか?

 人工呼吸をしている患者さんが状態が良くなり、PaO2が上昇してきたとします。当然設定を変更します。PEEPを下げるか、FIO2を下げるかのどちらかですね。

 どちらが良いのでしょうか?

 結論から言えば、FIO2が0.5を切るまではFIO2を下げていくのが良いでしょう。高濃度の酸素は肺を傷害すると言われているからです。

 しかし、PEEPも血圧を下げたり、気道内圧がPEEPの分だけ高くなりますから、下げた方が良いのは間違いありませんが。

 基本的には、吸入酸素濃度から下げるのがよいでしょう。

2017年11月26日日曜日

PaO2が正常なら酸素投与は不要なのか?

 検査は不思議な物で、本当は一部のことしか示していないのに、検査が正常だと全てが正常だと感じさせてしまいます。今回はPaO2が正常でも酸素投与が必要なことがあるよ!と言うお話です。

 今日は、出血性ショックの患者さんです。80歳の女性で下血して血圧が60mmHgしかないという事で救急隊から受け入れ要請がありました。救急隊の方はショック状態なのとSpO2が上手く測れないために、オーバートリアージでフェイスマスクで酸素を5L/分流しながら搬送してきました。素晴らしいことです!

pH 7.505
PCO2 32.2 mmHg
PO2 220.3 mmHg
HCO3 24.8 mmol/L
Hb 4.8 g/dL
O2sat 99.1 %
O2(CT) 6.5 ml/dL
乳酸 3.53 mmol/L

 A-aDO2を計算すると、24.65 mmHgとなり、酸素化能障害はないと考えて良いでしょう。計算上の動脈血酸素飽和度(O2sat)は99.1%ですから、酸素は下げていって良いと思うかも知れませんが、、、、、、、

 末梢組織に運ばれる酸素の量(DO2)は以下の式で表されます。

DO2=心拍出量×血液中に含まれる酸素の量(O2(CT))

 出血性ショックの人は心拍出量が減っているはずです。なので、心拍出量を増やすべく、輸液をする事も大切ですが、血液中に含まれる酸素の量を増やすことも必要です。血液中に含まれる酸素の量 CaO2は以下のように計算できます。当院の検査器械はO2(CT)と表示します。CTはたぶんcontent(含有量)の略だと思います。一般的にはO2(CT)はCaO2と表現します。Cはcontentの意味です。

CaO2=ヘモグロビン結合酸素 + 溶存酸素
  =1.34×Hb×SaO2 + 0.003×PaO2

 正常な人では、ヘモグロビン結合酸素は20ml/dL 程度で、溶存酸素は0.3 ml/dL 程度です。ヘモグロビンと結合している酸素が圧倒的に多いですね。

 もし、ヘモグロビンが低下していれば輸血が必要ですが、直ぐには出来ませんので、PaO2を上げればいいです。酸素投与をすれば少しではありますが、血液中に含まれる酸素の量が増えます。SpO2は酸素が座われる座席が満席かどうかを示すだけで、酸素の座われる座席の数は示していないのです。

 SpO2が100%であっても、酸素投与をすべき時があるのです。

<今回の極論ポイント>
ショックが疑われる患者さんには、SpO2が100%あっても酸素投与をしましょう。

2017年11月25日土曜日

酸素化能の評価について

 こちらの記事をご覧ください。それだけで充分かも知れません(^^)。

 肺胞気ー動脈血酸素分圧較差が酸素化能障害の評価によく使われます。計算法は以前書きました。計算が面倒な方は、こちらのサイトやアプリで計算すると良いでしょう。

 しかし、血液ガスをとったら全例で計算すべきだと思います。酸素を投与されているとこの較差は大きくなるとされていて、酸素を投与していない場合にのみ有用だという意見がありますが、計算するのは良いでしょう。
 若い先生には全例計算するように伝えています。計算式を理解したら、アプリとかサイトで計算して良いと伝えています。単純な計算ですから覚えておいた方が良いでしょう。私は暗記しています。

 肺胞気ー動脈血酸素分圧較差はA-aDO2と記載されることが多いですが、UpToDateにはA-a O2 gradientと書かれています。覚えておくと良いでしょう。

 こちらの文献によれば、A-aDO2が年齢で違う事は示されていません。厳密にやるなら、10を超えていたら全て酸素化能障害があると考えて(救急はオーバートリアージが原則ですから)行動すべきですね。

2017年11月24日金曜日

二酸化炭素を考慮した酸素減量法

 前回、酸素投与量を下げる時にも、動脈血酸素分圧 PaO2と吸入酸素濃度 FIO2が比例することを考えれば良いというお話をしました。

 しかし、肺炎などで酸素化能障害が発生し、PaO2が低下してくると、通常は過換気になってPaCO2が低下し、PaO2の低下を食い止めようとします。

 そのような状態で得られた血液ガスデータを使って、酸素投与量を下げる時は、PaCO2が正常の40ぐらいになった状態を想像しなければなりません。今回はそう言う計算?を紹介します。

 今回の患者さんは75歳の女性です。腹痛で救急搬送されました。循環血液量減少と、外が寒かったために、末梢循環が悪かったためでしょうか、SpO2が上手く測れなくて、オーバートリアージで酸素投与(フェイスマスクで4リットル/分)をして搬送されました。Good job!です。

pH 7.447
PCO2 30.9 mmHg
PO2 142.4 mmHg

 A-aDO2を計算すると、以下の通りです。

A-aDO2=713×0.36ー142.4ー30.9/0.8=76 mmHg

 これが同じ値で変わらないとすれば、PaCO2が40 mmHgになると、FIO2が0.36の人のPaO2は、、、、、

PaO2=713×0.36ーPaCO2/0.8ーA-aDO2=713×0.36ー40/0.8ー76=130 mmHgぐらいになります。

 PaO2を100ぐらいに下げたいのであれば、100÷130=0.77ぐらいFIO2を下げます。0.36×0.77=0.277ということで、酸素は約2リットル/分に下げられます。マスクではあまりよろしくないので、経鼻カニュラに変更することになりますね。

 前回の計算と比較して頂ければいいのですが、あまり大きな違いはありません。よって、現場ではPCO2が低くても、酸素濃度は比例するという風に考えて酸素投与量を下げていけば良いでしょう。あるいは過換気になっている状態で酸素投与量を下げることはない(患者さんの状態が改善していない)ので、気にしないと言う風でも良いでしょう。

<今回の極論ポイント>
 酸素投与量を下げる場合、二酸化炭素の事を考慮する必要はありません。

2017年11月23日木曜日

意識障害患者さん

 基礎的なお話は書ききった感じもあるので、これからは症例が増えていきます。

 40歳の男性です。意識障害で運ばれて来ました。意識レベルはJCSで三桁です。血圧や脈拍数は問題ありません。SpO2がルームエアーで85%だったので酸素を5リットル投与されて運ばれて来ました。

pH 7.353
PCO2 48.4 mmHg
PO2 149.1 mmHg
HCO3 26.3 moml/L

 まずみるのはPaO2でしたね。100mmHgを越えており、値としては問題ありませんね。酸素可能の評価は後で良いです。
 PCO2は少し高くなっていますね。正常値は35〜45 mmHgですので。緊急性はないでしょう。

 酸素化能障害がないかを判定します。酸素投与下ではA-aDO2は意味がないという説もありますが、一応計算します。酸素マスクで酸素を5L投与ですので、20+4×5=40で吸入酸素濃度は40%でした。

 A-aDO2=(760−47)×0.4−PaCO2/0.8−PaO2=713×0.4−48.4÷0.8ー149.1=75.6 mmHg

 年齢の半分以下という基準をとっても、酸素化能障害があることが分かります。酸素投与量を下げることはあっても、酸素投与はしばらく必要でしょうね。

 代謝の問題を判定します。例えばこちらの方法を参考にしてください。

(1)pHは7.4以下であり、アシドーシスです。正常値の7.35を切っていませんから、アシデミアとは言えないですね。
(2)PCO2が高いので、呼吸性アシドーシス+代償性変化としてのHCO3上昇と考えます。
(3)急性の呼吸性アシドーシスと考えると、PCO2は8.4 mmHg上昇していますので、HCO3は0.84 mmol/L上昇すると考えると、まあだいたい合います。と言うか異常があまり大きくないですから。

 他にも色々検討すべきなようですが、一度に全部勉強するのはこのサイトのポリシーに合いませんので(^^)。

 この人は、精神科で処方されている薬剤をたくさん飲んでしまい、薬物による意識障害がありました。呼吸抑制もそのせいなのでしょうかね。
 代謝に関してはよく分かりませんが、乳酸が2.06 mmol/Lでしたので、本当はもっとHCO3が高いのかも知れません。

 経過観察入院され、翌日元気に退院されました。

2017年11月22日水曜日

採血時に空気が入ったら落ち着いて排出させましょう

 採血はよく行われる処置ですが、意外に難しく、採血する時に注射器に空気が一緒に入ってしまうことがあります。血液ガスでは特に、その空気がデータに影響する可能性が大きいです。落ち着いて、空気を出すようにしましょう。

 空気を出さないとどうなるのかという事を紹介します。いつものUpToDateです。「Arterial blood gases」という文献です。

 Air bubbles that exceed 1 to 2 percent of the blood volume can cause a falsely high PaO2 and a falsely low PaCO2. The magnitude of this error depends upon the difference in gas tensions between blood and air, the exposure surface area (which is increased by agitation), and the time from specimen collection to analysis. The clinical significance of this error can be decreased by gently tapping on the syringe to remove the bubbles after the sample has been withdrawn and analyzing the sample as soon as possible.

 採血された血液の1−2%以上の量の空気は、誤ってPaO2を高く、PaCO2を低くしてしまうかも知れない。このエラーの程度は、血液と空気のガス分圧の差や、空気に血液が触れる面積の広さ(撹拌によって増大する)、採血してから検査を開始する時間などに依存している。採血後に検体を優しくゆすって空気を出したり、出来るだけ早く検査を行うことで、このエラーによる影響を最小限に出来る。

 空気がたくさん入っているとPCO2は低下し、PO2は患者さんの酸素分圧が空気より高いか低いかで異なりますが、異常値となることを覚えておきましょう。

2017年11月21日火曜日

酸素投与量を下げたい時どうするか?

 以前酸素の投与量をどう予測するかについて書きました

 今日は酸素を下げる時どうするか?と言うお話です。原則は少しずつ下げると言う事なので、1リットル/分ずつ減らしていきます。でも、私のようにせっかちな性格であれば、もっと早く下げていきたいです。その時に役立つお話です。

 腹痛で来院された80歳ぐらいの男性です。SpO2が安定しなかったので、救急隊の方がフェイスマスクで酸素を4リットル/分で投与して運んで来てくれました。救急は悪い方を採用しますので、SpO2は悪いと考えるのが正しいので、すばらしい判断です。

pH 7.447
PCO2 30.9 mmHg
PO2 142.4 mmHg

 吸入酸素濃度FIO2は、酸素投与1L/分で約0.04上昇しますので、0.2+0.04×4=0.36です。厳密にはFIO2の単位は%ではありません。FIO2とPaO2はだいたい比例するので、PaO2を100 mmHg程度にしたい場合、0.7(100÷142.4=0.712)ぐらいをFIO2にかければ良いです。0.36×0.7=0.25ぐらいですので、経鼻で1リットル/分に下げても良いと言うことになります。

 が、余裕をもって2リットル/分ぐらいにするのが良いでしょうし、4リットル/分の投与ならば1リットル/分ずつ下げても良いでしょうね。
 また、この計算はPaCO2の値について考慮に入れていませんので、状態が落ち着いてPaCO2が高くなれば、酸素は下げてはいけないかも知れません。その事については、別の記事で書きますので余裕があれば、ご覧ください。

 血液ガスは毎日少しずつが原則ですから!

<今回の極論ポイント>
 酸素を下げる時は少なめにが原則です。
 せっかちな人は、酸素分圧と吸入酸素濃度がだいたい比例する事を利用しましょう。

2017年11月20日月曜日

シリンジにヘパリンを入れすぎないようにしましょう

 血液ガスを検査する時に、注射器にヘパリンを入れすぎることは、現在の採血方法ではあまりないことですが、知っておくと良いと思うことです。

 UpToDateの「Arterial blood gases(動脈血液ガス分析)」と言う文献です。

 The heparin that is added to the syringe as an anticoagulant can decrease the pH if acidic heparin is used and the dismissal of heparin from the syringe is incomplete. It can also dilute the PaCO2, resulting in a falsely low value. When an ABG syringe is used, the amount of heparin solution used should be minimized and at least 2 ml of blood should be obtained.

 抗凝固薬として注射器に加えられるヘパリンはpHを低下させる可能性がある。酸性のヘパリンを用いたり、注射器からヘパリンを出す操作が不完全だったりすると発生しやすい。ヘパリンによって、PaCO2値も低下する可能性があるため、間違って低値を報告してしまうかも知れない。血液ガス専用のシリンジを用いた場合には、使われているヘパリンの量が必要最小限になっているが、最低でも2mlは注射器に採血するべきである。

 つまり、注射器に入れたヘパリンが多すぎると、採血された血液がヘパリンで薄まってしまい、pHやPaCO2が間違って低く報告されてしまう可能性があると言うことです。ヘパリンを入れすぎないように気をつけましょう。

ちなみに、、、、
 PaCO2は、何かで薄まれば濃度が低下します。
 pHはHCO3イオンとPCO2の濃度の比をlogで示した物(pH=k×log HCO3/PCO2)ですから、HCO3が低下してもPCO2も同じぐらい低下すればpHは変化しません。
 こちらのヘパリンの添付文書によれば、ヘパリンのpHは5.5−8だそうです。アルカリ性になることもあるのかも知れませんね。


2017年11月19日日曜日

低酸素だった場合、酸素をどのぐらい投与するべきか?

 低酸素の患者さんが来院されたとします。例えば、血液ガスデータが以下のような患者さんです。

pH 7.516
PCO2 30.7 mmHg
PO2 58.8 mmHg
HCO3 24.3 mmol/L
BE 2.0 mmol/L

 呼吸数は28/分で、SpO2は89%です。レントゲンでは肺炎を疑う所見があり、肺炎と診断しました。

 当然酸素を投与すると思いますが、どのぐらい投与しましょうか?

 よく分からなかったら、リザーバーマスク(10L/分)で投与することをお勧めしています。高濃度酸素は短時間なら問題ありませんが、低酸素は危険だからです。

 ただ、経鼻カニューレで酸素1L/分でいいのに、リザーバーマスクで投与してしまうとちょっとカッコ悪いですね。

 大雑把に言うと、吸入酸素濃度(FIO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)は比例します。よって、ルームエアーでPaO2が50 mmHgの人が来たとして、PaO2を100 mmHg近くに上げたいと思ったら、酸素濃度は約2倍、つまり40%近くにすればいいです。普通のマスクや経鼻カニュラで酸素を1L/分流すと吸入酸素濃度は約4%上昇すると言われていますから、5L/分で酸素を流せば良いです。経鼻カニュラは3L/分程度までとされていますので、普通の酸素マスクで5L/分流しましょう。

 ちょっと数学で証明?してみます。

 A-aDO2=PAO2−PaO2でしたよね。
 PAO2=(760−47)×FIO2−PaCO2/R-PaO2
 A-aDO2、PaCO2、R(呼吸商で通常は0.8)は変わらないと仮定すれば、

PaO2=713×FIO2−k kは定数

と言うことで713×FIO2が大きい、つまり高濃度酸素をやっている時ほど、PaO2とFIO2が比例すると言うことになります。もちろんですが、あくまでだいたいであり、換気の状態が変化しないことはないでしょうし、A-aDO2もFIO2によって変わるようですから、このやり方は正確ではありません。が、現場では、だいたいこのぐらいということでいいのではないでしょうか。

 逆に酸素を下げていく時にも、この理屈が通用します(別記事にしました)が、下げすぎはよくありませんので、少しずつ下げましょう。

 ちなみに、今回の患者さんでは、フェイスマスクで酸素を4リットル/分流しました。計算すると、1リットル/分で約4%吸入酸素分圧が上がりますので、吸入酸素濃度は約36%。約1.8倍になっていますので、PaO2もそのぐらい上昇しますから、58.8×1.8=105.3 mmHgになります。上がりすぎたら下げれば良いので、5リットル/分ぐらいから開始しても良いでしょう。

<今回の極論ポイント>
 PaO2とFIO2はほぼ比例します。
 迷ったら酸素は高流量で開始し、データを見ながら下げていけばいいです。
 低酸素は危険です!

2017年11月18日土曜日

血液ガスを採取する注射器はガラスが理想的です(検査データの信頼性としては)

 血液ガスを採血する時、どんな注射器で行っていますか?今は専用に作られている注射器を使っている施設が多いと思います。しかし、私が研修医の頃はガラスの注射器で採血していました。採血が終わって針をぬくときに、ちょっとしたコツを知らないと、血液が針から出てきてしまいますので、素早く針をゴム栓に刺すと言うテクニックも必要でした。
 当時研修に行った大学病院では今と同じような専用の注射器で採血していました。その病院の先生が、「自分の病院へ帰ったら同じ事したらダメですよ」と教えてくれました。血液ガス分析を行うと、病院には約2000円の収入が入りますが、その専用の注射器が2000円ぐらいするので、もうけがなくなってしまうと言うことでした。
 きっと今は専用の注射器の値段が安くなっているのでしょうから、ガラスの注射器を使うと言うこともなくなりました。

 しかし、検査を行う場合の正確さという意味では、ガラスの方が良いんだと言うことをご存じですか?

 UpToDateの「Arterial blood gas」という文献に載っていましたのでご紹介します。

 Gas diffusion through the plastic syringe and consumption of oxygen by leukocytes is a potential source of error that results in a falsely low PaO2 when the sample is left for prolonged periods at room temperature. However, the clinical significance of this error is minimal if the sample is placed on ice and analyzed within 15minutes. While using a glass syringe will prevent gas diffusion, this solution is impractical.

 私の日本語訳です。

 プラスチックの注射器を介したガスの拡散や白血球による酸素の消費は、検体を室温に長時間放置した場合に、PO2が誤って低く測定されてしまう原因となり得る。しかし、検体を氷で冷やして、採血後15分以内に検査を行えば、このエラーの臨床的な影響は少ない。ガラスの注射器を使用すれば、ガスの拡散を防ぐことが出来るが、この方法は現実的ではない。


 そうなんです。プラスチックの容器はガスを出入りさせるみたいですね。少しの量でしょうが、空気中の酸素分圧が血液中の酸素分圧を変化させるようです。空気の酸素分圧は760×0.21で約160 mmHgです。例えば、患者さんが人工呼吸中で、酸素分圧が200 mmHgだったとすると、長時間放置しておくと、拡散によって200 mmHgと160 mmHgの間の値になると言うことです。逆に酸素投与がされていなくて、PaO2が65 mmHgだったとすると、誤って高いデータが出るかも知れないのです。

 昔勤めていた東北の病院でそのことを医局で話したら、ある歯科の先生が「そんなことあり得ない!」と言って私の意見を却下したことがありました。その歯科の先生はとても穏やかな先生でしたし、血液ガスなんて歯科医の専門じゃないだろうに、なんでそんな強く否定できるんだろう?と不思議に思ったものです。私もこの事については自信があったのですが、「すみませんでした。私の記憶違いかも知れません。」と言って引き下がりました(^^)。

 トリビアみたいな話ですが、データがおかしいなと思ったらガラスの注射器で再検査してみると役立つことがあるかも知れません。

2017年11月17日金曜日

血液ガスの勉強は少しずつやりましょう

 日本人は特にまじめです。特に、看護師さんは本当にまじめで、勉強会などがあれば熱心にメモを取って参加されています。

 しかし、血液ガスに関しては、是非辞めましょう。例えば、血液ガスについてと言う本を探せば、最近はわかりやすい本が出てきてはいますが、逆に相当分厚い本も売られています。つまりは、突き詰めるとそのぐらいでも足りないぐらいの内容だと言うことです。

 いきなりそんなことを勉強すると、挫折してしまいますので、少しずつやりましょう。全く分からないよりは、少しでも分かる方が良いです。pHは7.4が正常値の真ん中なんだなとか知れば良いです。あるいは、特別な注射器で採血するんだなとか。

 だんだん分かってきたら前に進めば良いです。

 今詳細なデータを見つけられないのですが、以前こんな話を聞きました。

・ある教育病院の指導医に血液ガスデータの解釈に自信があるかと質問したら、80%近くの医師がYesと答えたが、実際にきちんと解釈できた医師は半分にも満たなかった。
・別の教育病院では、研修医によって誤った解釈がされて、不適切な治療がされている患者さんが20%近くいた。こちらの論文をご覧ください。かなり前のデータではありますが。

と言うような話です。アメリカの論文だったと思います。根拠を調べてみます!

2017年11月16日木曜日

血液ガスの勉強会があります

 先日紹介させて頂いた本の著者である田中竜馬先生による講義が12月9日土曜日の午後、東京駅近くで行われます。

 是非参加してみてはいかがでしょうか?詳細はこちらから

 私は申し込みましたので、参加される方は私を探してみてください(^^)。こちらの本もお勧めです。


2017年11月15日水曜日

心肺停止の原因としてアシドーシスは本当にあるのか?

 ICLSインストラクターをされている方から質問されました。受講生の方に医師がおられて、肺塞栓の症例とか出した場合には、詳細な血液ガスデータを出した方が良いと思うので、実際の症例のデータをいただけませんか?と。

 その方にはデータをお渡ししましたが、結論から言えば、必要ありません。

 血液ガスそのものからは少しずれますが、ICLSコースで大事なことは、鑑別診断をきちんとすることではありません。ICLSコースで大切なことは別にあります。
 しかし、医師に多いですが、その症例はどんなだったの?などと本筋ではないところに興味が向いてしまう人がいます。ICLSコースで大切なことは、きちんと蘇生をし、電気ショックが適応となる患者さんであれば、素早く安全に電気ショックを行い、電気ショックが適応ではない患者さんであれば、心肺停止になった原因の検索が必要です(もちろん、電気ショックが必要な患者さんでも、原因検索は必要ですが、電気ショックの方が優先されますからコースでは、そこまでの余裕はないでしょう)。

 よって、詳細な血液ガスデータは必要ありません。

 それから、心肺停止の原因として、アシドーシスがどんな本にも挙げられていますが、本当にアシドーシスが原因で心肺停止になるのでしょうか?アシドーシスは、他の疾患によって発生した二次的な原因ではないのでしょうか?もしそうだとすると、心肺停止中にはさらにアシドーシスがあるのが当然なので、血液ガスデータを取るのは良くないのではないでしょうか?

 等と考えています。いかがでしょうか?

2017年11月14日火曜日

血液ガスをとらなくても酸塩基平衡異常を疑えます。

 血液ガス分析は必要ないかなと思って、動脈血採血をしていなかった場合、採血結果が出て、血液ガスをとろう!と思うべき場合はどんな時か?と言うお話です。

 答えは、Na−Clが30以下か40以上の場合です。詳しくはこちらの論文をご覧ください。

 このブログでは細かいことを出来るだけ省くのがポリシーですので、とにかく、採血したら、ナトリウムとクロールの値から引き算をしてみてください。

 Na−CLが40以上だった場合、HCO3が増えていることが疑われます。つまり代謝性アルカローシスがある可能性が高いです。
 Na−CLが30以下だった場合、HCO3が低下していることが疑われます。高CL性代謝性アシドーシスが疑われます。下痢をしていないか確認してください。
 Na−CLが30〜40だった場合、酸塩基平衡異常がないかと言えば、そうではない(例えばアニオンギャップが上昇するアシドーシスがあるかも知れません)ので、疑いがあれば動脈血採血(場合によっては静脈血採血)を行いましょう。

 どちらにしても、血液ガス分析を是非しましょう。

<今回の極論ポイント>
 採血をしたら、Na−CLを計算しましょう。

2017年11月13日月曜日

血液ガス、電解質と言えばこの本をおいて他にありません!

 今日も本の紹介です。この本は電解質と酸塩基平衡について非常に分かりやすく解説がされていて、とても勉強になります。呼吸性アルカローシスと代謝性アシドーシスが両方存在する病態は、敗血症とアスピリン中毒しかないと言うことはこの本で学びました。

 電解質や酸塩基平衡異常はなかなかとっつきにくいのですが、この本を読めばそれはなくなります!以前あるところで休憩時間に他の病院の研修医の先生がこの本を読んでいるのをみて確信しました。休憩時間に読んでみたくなるような本なのです!


2017年11月12日日曜日

SpO2が97%でも肺塞栓は否定できません。

 一般的に感度がどれだけ高かろうと、ある疾患を否定するのは難しいです。

 たぶん、たった一つの例外は、「女性であれば妊娠である」という検査です。女性でなければ妊娠ではないと言えます。

 肺塞栓は怖い病気で、救急外来で鑑別しなければならない疾患の一つです。肺塞栓の特徴として低酸素、あるいは酸素化能障害が挙げられます。よって、酸素投与をしない状態でSpO2が低いのが普通です。

 しかし、SpO2が高い(例えば97%)であっても肺塞栓は否定できません。この事は以下の本にも書いてあります。注文はこちらからどうぞ(COIはありません!)



 今回の患者さんは50歳の女性です。数日間継続する息切れが悪化すると言うことで来院されました。

pH 7.451
PCO2 20.7 mmHg
PO2 103.2 mmHg
HCO3 14.1 mmol/L
BE -7.9 mmol/L
Na 134.6 mEq/L
K 3.97 mEq/L
CL 111 mEq/L
Anion Gap 13.5 mmol/L
乳酸 4.81 mmol/L

 軽度ではありますが、酸素化能障害があり(A-aDO2=21 mmHg)救急外来で担当した先生は直ちに造影CTを撮像しました。以下のように両側の肺動脈に肺塞栓がありました。

 SpO2が97%あっても肺塞栓を否定できないので、お忘れなく。過換気症候群と診断しないようにしましょう!

 パルスオキシメーター(SpO2)は誤差が2%程度あるのだそうです。本当は95%だったとしても、97%を示すこともありますので注意しましょう。

<今回の極論ポイント>
 SpO2は酸素が血液内に充分あると言うことを示しますが、酸素化能障害がないとは言えない。
 SpO2が良くても肺塞栓は否定できない。

2017年11月11日土曜日

異常が複数あった場合、どれがメインで、どれが代償か?

 血液ガスデータを解釈していると、呼吸性アルカローシスと代謝性アシドーシスが両方あるというようなことがあります。この時、どちらがメインで、どちらが代償なのか?あるいは両方あるのか?と言うことが分かりにくいです。

 しかし、きちんと解析すれば分かることも多いです。以下の患者さんは「呼吸性アルカローシス」と「代謝性アシドーシス」がありますが、どちらがメインなのでしょうか?

pH 7.376
PCO2 28.0 mmHg
HCO3 16.0 mmol/L

 こちらの文献によれば、変化率が大きい方がメインだと言うことです。

 PCO2は正常の40から12低下しています。30%の低下ですね。
 HCO3は正常の24から8低下しています。33%の低下ですね。
 よって、この方は、代謝性アシドーシスを呼吸で代償していると言うことになります。

 細かいことを言えば、呼吸の代償は計算とは合わないので、代謝性アシドーシス+呼吸性アルカローシスという診断になるのですが、取りあえずメインはどちらかが分かれば良いと思います!
 呼吸性アルカローシスと代謝性アシドーシスが両方ある疾患は、アスピリン中毒と敗血症しかないそうですので、余裕のある方は、覚えておくと良いでしょう。

 こちらの記事に別の方法を紹介していますので、是非ご覧ください。こっちの方が簡単でしょうし、たぶん同じ事になると思います。

<今回の極論ポイント>
 変化率の大きい方がメインの異常で、変化率が小さい方が代償性変化です。

2017年11月10日金曜日

BEやHCO3は見なくても良いです。

 以下の患者さんは、前日の夕方から倒れたままで動けなかったそうです。ヘルパーさんに発見されて、救急搬送された90歳の男性の方の血液ガスです。

pH 7.432
PCO2 29.5 mmHg

 以下PO2、HCO3、BEなどと続いていきますが、血液ガスが苦手だと言う理由の一つにデータが多すぎるということがあります。今回は上記の二つだけ見ましょう!簡単でしょ!

 以前に別の所にも書きましたが、実際に測定している血液ガスデータは、この二つとPaO2の3つだけです。他は計算式なので見なくても大丈夫です!実際、BEは見てはいけないという人もいます。例えば、UpToDateの"Approach to the adult with metabolic alkalosis(代謝性アシドーシスのある成人患者へのアプローチ)"や"Simple and mixed acid base disorder(単純、混合性酸塩基平衡異常)"と言う文献には、BEとかbase excessと言う言葉が出てきません。

 まずpHを見ます。7.4が正常と考えます。7.45まで正常なので、この人はpHは正常なのですが、やや高めですから、アルカローシスがあります。

 次にPaCO2を見ます。呼吸性アルカローシスならばPaCO2は低下しているはずで、確かに低下しています。この人の呼吸数は22/分でした。

 以前書いたように、PCO2が1低下するとpHは0.008上昇するはずです。この患者さんはPaCO2が40から10.5低下していますので、pHは0.084上昇するはずなので、pHは7.484のはずです。しかし、pHはそれよりも低いです。よって代謝性アシドーシスが合併していると考えられます。

 呼吸性アルカローシスと呼吸性アシドーシスは同時に存在できませんが、代謝性アシドーシスと代謝性アルカローシス、呼吸の問題(呼吸性アシドーシスか呼吸性アルカローシスのどちらか)の3つは同時に存在可能です。

 と言うことで、この患者さんは、呼吸性アルカローシスと代謝性アシドーシスがあることが、pHとPaCO2の二つを見るだけで分かりました。

 実際のデータを示します。

HCO3 19.2 mmHg
BE -3.7 mmol/L
Anion Gap 17.7 mmol/L
乳酸 4.58 mmol/L

 乳酸は2 mmol/L以下が正常値ですので、乳酸アシドーシスがありますし、Anion Gapも正常値の12 mmol/Lから5.7 mmol/L上昇していますね。半日以上飲み食いできず、循環血液量減少があったのと、軽度の横紋筋融解(CKが2000程度でした)があったことによるのでしょうか。呼吸数も早く、エコーで下大静脈がぺちゃんこだったことも分かりました。血液ガスデータ以外からも、呼吸性アルカローシスと代謝性アシドーシスを疑うことが出来ます。

 もちろん詳細な評価のために、HCO3やBE等の値も必要ですが、「血液ガスはちょー苦手!!」と言う人には、「pHとPaCO2だけでも簡単に解析は出来るんだよ!」と言うことをお伝えしておきます。見なければならないデータは少ない方が良いですよね。

 時々主張しているのですが、血液ガスで大事なことは、以下の二つです。心電図でも同じ事が言えそうですが。

・全部理解しようとしない。
・血液ガスのデータだけで患者さんの評価をしない。

<今回の極論ポイント>
・血液ガスなんて行わなくても患者さんの治療は出来る。
・血液ガスアレルギーを治すためには、たまには血液ガスから離れる事もありかも知れません。
・代謝を見たい時には、pHとPaCO2だけ見ましょう!

2017年11月9日木曜日

アシドーシスか?アルカローシスか?どっちがメイン?

 代償という言葉があります。一般的には償いということですが、血液ガスの分野ではちょっと違います。英語ではcompensationと言います。意味は日本語と同じです。

 人間の身体はすごいもので、何か問題が発生すると、その問題による不利益をできるだけ少なくするように、別のシステムが働いて、不利益を最小限にしようとします。血液ガスの分野では、pHが変化する問題が発生した場合、pHの変化を最小限にしようとする働きを代償性変化と言っています。

 つまり、アシドーシスとなるような病気が発生した場合、その変化を最小限、つまりpHの低下を最小限にしようと、pHを上げるような働きが起こります。これは代償性変化と呼びます。メインの異常ではないので、アルカローシスとは言わないんだそうです。

 では、以下の患者さんのように、代謝性アシドーシスと呼吸性アルカローシスがあった場合、どちらがメインで、どちらが代償なのでしょうか?あるいは、どちらもメインか、どちらも代償なのでしょうか?

pH 7.376
PCO2 28.0 mmHg
PO2 92.4 mmHg
HCO3 16.0 mmol/L
BE -7.4 mmol/L
Na 133.7 mEq/L
K 4.61 mEq/L
CL 101 mEq/L
Anion Gap 21.3 mmol/L
乳酸 3.93 mmol/L

 答えは簡単です。pHが正常値の7.4より高いか低いかを見る。それだけです。もちろん例外もありますが、基本それで良いです。

 つまりこの患者さんでは、代謝性アシドーシスと呼吸性アルカローシスがあるのですが、pHが7.4より低いため、アシドーシスがメインだと言うことです。

 何故かと言えば、「代償性変化はpHが7.4を越えて変化するほどは起こらない」というのが原則だからです。

 逆に、こんな感じの値であれば、代謝性アシドーシスが代償性変化なのだそうです。

pH 7.465
PCO2 21.3 mmHg

 これはわざと他を省略しました。簡単に言えば、pHとPaCO2だけ見れば良いと言うことです。PaCO2が低下すればpHは上昇し、PaCO2が上昇すればpHは低下するので、それにあっていれば、呼吸性なんとかがメインで、この原則に反していれば、呼吸性なんとかは代償だと言うことです。

pHが7.4以下
 PaCO2が上昇 呼吸性アシドーシス
 PaCO2が低下 代謝性アシドーシス
pHが7.4以上
 PaCO2が上昇 代謝性アルカローシス
 PaCO2が低下 呼吸性アルカローシス

と言う風になります。

 今日は複数の酸塩基平衡の問題があれば、pHを見て、7.4以上であれば何とかアルカローシスがメインであり、7.4以下であれば何とかアシドーシスがメインだと言うことを学びました。

 もし、pHが7.4だったらどうするのですか?と思う人、あなたは鋭いです!!答えは私にも分かりません、、、、、、、

<今日の極論ポイント>
 複数の酸塩基平衡の問題があれば、pHを見て判断しましょう。
 pHが7.4以上ならば○○アルカローシス、7.4以下ならば○○アシドーシスがメインです。

2017年11月8日水曜日

本の紹介

 本の紹介をします。こちらの本を読めばこんなブログ読まなくても良いというものですので、ブログをやっている身としては矛盾なのですが(^^)。

 田中竜馬先生の「竜馬先生の血液ガス白熱講義150分」という本です。非常に分かりやすく解説されていますので是非ご覧ください。何と電子版も売られています。


 ただ、この本を読んでも、このブログも見てくださいね(^^)。ちなみに、最近続編が出ています。また紹介させて頂きます!

2017年11月7日火曜日

メイロン入れますか?

 心肺停止の患者さんが運ばれて来ました。来院直後に心拍再開しました。その時の血液ガスのデータです。

pH 6.910
PCO2 67.7 mmHg
PO2 85.0 mmHg
HCO3 13.3 mmol/L
BE -19.9 mmol/L
Na 125.7 mEq/L
K 4.84 mEq/L
CL 98 mEq/L
Anion Gap 19.3 mmol/L
乳酸 9.40 mmol/L

 今回は私の指導を受けた研修医の先生や、研修医の時から当院に勤めていてくれる若い先生ばかりでしたので、誰もメイロンを入れようとしませんでしたが、一般的には、メイロン!と誰かが叫ぶと思います。「一般的」というのは定義が色々ですが、まあ10回中7回ぐらい発生する事と考えてください。

 メイロンは重炭酸ナトリウムという成分の点滴で、8.4%の溶液だと、NaHCO3が1mEq/ml入っています。HCO3が低下しているので、それを外から補充してやれば、アシドーシスを改善できるだろうと言うことで昔から使われています。私が研修医だった25年前でも使われていました。

 しかし、25年前からも同じですが、再三メイロンは使うべきではないと言われ続けています。が、今も使う先生がいます。今回はそのことについて、ちょっと考えてみましょう。ちょっとと言いながら長いです。

 最初に結論ですが、メイロンは原則使うべきではありません。時間がない方はここまでで大丈夫です。

 まず、メイロンを使いたがる先生の意見です。

・アシドーシスは悪い。特にカテコラミンが効きにくくなる。
・カリウムが高い場合、アシドーシスの補正は重要である(アシドーシスになるとカリウムが高くなります)。

 他に思いつきませんでした(^^)。

 さて、色々言われているメイロンの不利益です。まず賛成派の先生への反論です。

・アシドーシスが本当に悪いという証拠はどこにあるのか?
・末梢での酸素放出と言うことを考えると、アシドーシスは有利です。ヘモグロビン酸素解離曲線というのが右へ変異するため酸素を放出しやすくなります。逆にメイロンを入れてアルカローシスにすると末梢へ酸素は運ばれますが、そのまま心臓へ持って帰ってくる割合が高くなります(ヘモグロビン酸素解離曲線が左方移動するため)。
・メイロンを投与すると、一緒に投与されたカテコラミンの効きが悪くなると言われています。
・カリウムを下げる方法としてのメイロンにはエビデンスレベルの高い研究がないそうです。UpToDateの「Treatment and prevention of hyperkalemia in adults(成人の高カリウム血症の治療と予防)」の著者はメイロンの単独投与を推奨していません。

 他にも色々あります。

・高ナトリウム血症を引き起こす可能性がある。
 NaHCO3が1mEq/Lと言う濃度、つまりNaも同じ濃度入っていると言うことです。血清ナトリウムと同じ単位にそろえると、なんと1000mEq/Lです。6−7倍も濃い点滴を入れているんですよ!!びっくりじゃないですか?
・塩分の過剰となり得る。
 メイロン250ml一本で、ナトリウムが250mEq/L入ります。普通の人はナトリウムは1日50−100mEqあればいいそうです。つまり2−5日分の塩を入れてしまうと言うことです。それも心臓が悪い人に!!
・細胞内アシドーシスを引き起こす。
 paradoxical intracellular acidosis(奇異性細胞内アシドーシス)という現象があります。メイロンはHCO3イオンだけがあるのではなく、ある程度の量のCO2も含んでいます。これらが先に細胞内に入るため、細胞内のアシドーシスがひどくなると言うのです。しかし、この現象の存在については、否定的な意見もあるようです。
・冠還流圧(CPP)を低下させる。
 心拍再開には冠還流圧(拡張期の大動脈圧ー右心房圧)が大事だと言われています。ある程度の圧以上ないと心拍再開しないというのです。心臓そのものへの血流は拡張期に流れるためです。メイロンを入れると、この冠還流圧(coronary perfusion pressure;CPP)が低下すると言われています。

 どちらにしても、メイロンを使ったからと言って、激しく有用だったという証拠がないというのが一番の理由です。

<今回の極論ポイント>
 メイロンを心肺停止の人に使うのは辞めましょう。

2017年11月6日月曜日

静脈血ガスのススメ

血液ガス分析は、動脈血採血をして行うのが原則です。が、動脈血採血を頻繁に行うわけにも行かず、酸塩基平衡だけ見られれば良いという場合には、静脈血を採取して血液ガス分析を行っても良いです。

 多少のデータの異常は出ますが、PaO2の値以外は、ほぼ動脈血と変わりがないと考えて良いようです。動脈血を取りたかったのに、静脈血を取ってしまったと言う場合も、折角採取したデータは患者さんの診療に活かしたいですね!

 こちらの資料には以下のようにあります。

静脈血ガスは
 pH・HCO3を推定するのに有用である。
 PaCO2・PO2・乳酸値の推定に有用ではない。
 ただし PaCO2と乳酸値が基準値内であることの確認に使える。これらが基準値外の場合は、動脈血ガス分析にて確認を推奨する。


 血液ガス分析をしなくても、パルスオキシメーターで酸素飽和度が、カプノメーターで呼気二酸化炭素分圧が測れますので、そちらを考慮しても良いですね。

 UpToDateの「Venous blood gases and other alternatives to arterial blood gases(静脈血ガスと動脈血液ガス分析の代替えとなり得る検査法)」という文献に補正の仕方が載っていました。
      中心静脈        末梢静脈
pH   0.03〜0.05を足して評価  0.02〜0.04を足して評価
PaCO2   4〜5mmHgを引いて評価 3〜8mmHgを引いて評価

 まあ、細かいことを気にしなければ、ほぼ同じだと考えて良いですね!

<今回の極論ポイント>
 動脈血をとるつもりだったが、静脈血の血液ガス分析になってしまった場合、酸素以外はだいたい同じと考えて良い。

2017年11月5日日曜日

換気とpHの関係

92歳の男性が両下肢の浮腫で来院されました。ルームエアーでのデータです。

pH 7.449
PCO2 28.3 mmHg
PO2 72.0 mmHg
HCO3 19.2 mmol/L
BE −3.3 mmol/L
Na 130.1 mEq/L
K 4.81 mEq/L
Cl 102 mEq/L
AG 13.7 mEq/L
乳酸 0.91 mmol/L

A-aDO2(=42)が上昇しています(計算法はこちら)し、過換気になっていますので、酸素投与がまず必要ですよね。PaO2が正常なのは、患者さんがたくさん呼吸をしており、PaCO2が下がっているからですから!

今日は、PaCO2の低下とpHの上昇は見合っているのか?について学びます。

PaCO2が1低下すると、pHは0.008上昇するとされています。つまりPaCO2が40を正常とすれば、10低下して30になれば、pHは7.4から0.08上昇して、7.48になるはずだと言うことです。

この患者さんでも約10程度PaCO2が低下していますが、pHは7.48にはほど遠く、むしろ7.449しかありません。と言うことは、この患者さんには代謝性アシドーシスがあると言うことです。

何故代謝性アシドーシスがあるかについては、今回は考えなくて良いです。この患者さんは「呼吸性アルカローシス+代謝性アシドーシス」があると言うことが分かれば、それで良いのです!

いつも少しずつ学ぶのが大切ですからね!

<今日のポイント>
PaCO2が1低下するとpHは0.008上昇する。

2017年11月4日土曜日

低体温時に補正すべきか?

 検査室では、血液ガスデータを37度の状態で検査をして、結果を報告してくれます。

 では、低体温の患者さんや、心臓手術や低体温療法をしている患者さんでは、実際の体内のデータと報告されたデータが異なるから大丈夫なんだろうか?と言う疑問が浮かんでくると思います。

 先にお話しすると、気にする必要はありません。つまり体温でデータの補正をする必要はありません。普通に報告されたデータを使って解釈(α stat)し、治療を行って大丈夫です。

 体温が低下するとPaCO2は低下するようです。よって、低体温の患者さんの血液ガスでPaCO2が40だとしたら、実際はもっとPaCO2が低く、過換気だと言うことです。
 では、その患者さんの換気量を少なくするべきなのか?と言ったら、どうなのか分からないようです。二酸化炭素だけ正常にしても、人間の体は複雑だかからです。こちらによれば、PaCO2よりもヒスチジンが大事だとあります。ヒスチジンって何だろう?(^^)。

 UpToDateを見ると、患者さんの体温で補正する方法(pH stat)と、α statとどちらがいいかについては議論があるとあります。

 こちらのブログにも記事を載せていますので、良かったらご覧ください。

 補正しなきゃいけなかったら大変でした。ホント良かったです。

<今回の極論ポイント>
 低体温の患者さんでも普通に結果を解釈してよい。

2017年11月3日金曜日

まず最初に見るのはどの値?

 血液ガスデータは見る順番があります。例えば、以下のようなデータが出た場合、皆さんはどれを一番に見ますか?

pH 7.376
PCO2 28.0 mmHg
PO2 62.4 mmHg
HCO3 16.0 mmol/L
BE −7.4 mmol/L
乳酸 3.93 mmol/L

 上から順番に決まってますか?それとも異常値のあるPaCO2やBEからでしょうか?あるいは乳酸値ですか?

 救急はABCから始めましょうね!よって、血液ガスデータであれば、PaO2からです。なぜなら他のデータは、直接それだけで致死的にはならないからです。

 よって、血液ガスデータをもらったら、まず見るのはPaO2です。しかし、患者さんのABCを見るのに血液ガスデータを待っていてはいけないので、すでにABCを確保しているし、SpO2があるから、血液ガスデータはどんな順番で見てももええやないかい!と言う意見も間違いではありませんが、是非PaO2から見るようにしましょう。

 そして値をまず見れば良いです。難しいことは考えなくて良いです。60 mmHg以上あれば何とか大丈夫です。出来れば70 mmHg以上が良いと思います。もし60 mmHgを切っていれば(個人的には70 mmHgを切っていれば)まず酸素を投与します。どのぐらい酸素をやったら良いか分からなかったら、リザーバーマスクで10L/分以上流して良いと思います。COPD(慢性閉塞性呼吸器疾患)だったらどないすんねん!と思うのであれば、PaCO2をチェックしていただき、PaCO2が高くなければ大丈夫ですし、もしPaCO2が高くても、患者さんの呼吸が止まる可能性を考え、バックバルブマスク換気を準備すれば良いです。気管挿管が必要になる場合もあるでしょうが、取りあえず酸素を流すのが良いと思います。

 この患者さんは、PaO2が62.4 mmHgと60 mmHg以上ありますが、私は酸素投与を開始しました。理由はPaO2が70 mmHg以下だということ以外にもあるのですが、その話は別に述べましたのでご覧ください。

 酸素の値が低くないか?これをまず見れば良い。簡単ですね!

<今回の極論ポイント>
・血液ガスデータはまずPaO2から見ましょう。
・PaO2が70 mmHg以下の場合は、酸素投与を開始しましょう。
・どのぐらい酸素をやったら良いか分からなかったら、リザーバーマスクで10L/分投与しましょう。

2017年11月2日木曜日

実際に測定していない値があります。

日本救急医学会専門医筆記試験問題平成16年問題10を紹介しましょう。

問題10 血液ガス分析装置で計算値として表示するのはどれか。
(a)PO2

(b)PCO2
(c)pH
(d)HCO3-
(e)Hb

答えはどれでしょうか??答えは(d)です。

血液ガスを測定しているところに行ってみましょう。検査中はHCO3は表示されていません。

つまりHCO3は計算値で、極論を言えば他のデータをちゃんと解析すれば見なくても良いし、逆に変な値が出た時には、他のデータの測定異常ではないか?と考える必要があります。

常に現場を見ることは他の分野でも大切ですよね。時々美人検査技師さんに会いに検査室に行ってみてはいかがでしょう?

本当に過換気症候群?

過換気症候群の患者さんです!と17歳の女性が救急車で運ばれて来ました。

吹奏楽部の練習中、トロンボーンを吹いていた時に突然息が苦しくなったとのことでした。意識は清明で、血圧は124/82mmHg、脈拍数124/分、呼吸数は32回/分、SpO2はルームエアーで99%でした。

血液ガスデータは以下の通りで、酸素投与はされていません。

pH 7.53
PCO2 30.2 mmHg
PO2 92 mmHg
HCO3 24 mmol/L

さあ過換気症候群だと判断して治療して良いでしょうか???

過換気症候群の患者さんに、血液ガスが必要なのか?と言う論点もあると思いますが、別の所で議論しましょう!私は必要だと思います。今回のようなことがあるからです。

この人の酸素化能を調べてみましょう。これは以前記事にしましたので、そちらをご覧ください。

A-aDO2=20mmHgでした。

正常値は年齢×0.3 mmHg以下というのが一番覚えやすいですので、計算されたA-aDO2=20 mmHgは、17×0.3=5.1 mmHgを超えています。よって、この患者さんは、酸素化能障害があります。

単純な過換気症候群では酸素化能障害はありません。何しろ心の病気ですから。
通常、過換気症候群ではPaCO2が30以下に低下していますので、PaO2は100 mmHgを越えていて、SpO2は99%以上です。そうでなかったら、酸素化能障害を起こす病気があって、そのために過換気になっている(PaCO2を下げることで何とかPaO2を保っている)状態だと考えるべきです。
酸素化能障害が起こる病気としては、肺塞栓が有名です。

この患者さんの胸部レントゲン写真です。左の気胸があります。過換気症候群としなくて良かったです。



過換気症候群とせずに判断できた理由は、以下の通りです。
・トロンボーンの練習中に突然過換気になるのだろうか?
・酸素化能障害があるのはおかしいのではないだろうか?

日々の診療でミスを犯さないためには、おかしいんじゃないの?と思い、それを追求すると言う態度が必要ですね。

<今回の極論ポイント>
PaO2+PaCO2=150 mmHg弱です。
過換気症候群の患者さんを見つけたら、本当に過換気かを考えましょう。
重大な疾患を見逃さないように!

2017年11月1日水曜日

どこから採血しますか?

皆さんは、血液ガス分析のための採血をどこから採血されていますか?

救急外来では大腿動脈から採血することが多いと思います。普通は問題ありませんが、時々本当にいいのだろうか?と考えるのが良いと思います。

大腿動脈から穿刺する事の利点と欠点を挙げてみます。

利点
・血管が太いので刺しやすい。
・その為結果的に痛みが一番少ない。
・他に通常の採血も行う場合、最もやりやすい。

欠点
・鼠径部を露出するため、患者さんは嫌なのではないか。
・太い静脈が伴走しているため、動脈血を取りたかったのに静脈血採血となるリスクがある。
・側副血行路がないため、血管が閉塞するとまずい(が、閉塞することはまずないでしょう)。
・穿刺部位によっては腹腔内出血の危険もある。

では、橈骨動脈から採血する場合はどうでしょう。教科書的にはこちらを推奨するものが多いです。

利点
・患者さんは恥ずかしくないだろう。
・太い静脈の伴走がないため、手首から採血できたらまず動脈血だろう。
・側副血行路がある。
・大きな臓器の損傷の危険はない。

欠点
・細いので難しく、何度も刺したりして患者さんに苦痛を与える。
・同時に他の採血をするのは難しい。

また、どの部位で採血したとしても、仮性動脈瘤の危険があったり、その後に行われるインターベンションの時に穿刺が難しくなると言う様なリスクがあります。が、当院の循環器の先生方は、我々はプロなのでちょっとぐらい穿刺しても、そこからアプローチできるから気にしないで採血してくださいと言ってくださいますので安心です。そんな専門医になりたいです。

我々はどこからでも動脈血採血が出来るように腕を磨いておく必要がありますね!

酸素化能障害の調べ方

血液ガスをとったら、早めに酸素化能障害があるかどうかを調べます。個人的にはPaO2の値を見たら直ぐ行うのが良いと考えます。そんなに時間かかりませんから。

酸素化能では肺胞動脈血酸素分圧較差を求めます。言い方は色々ですが、A-aDO2と言う表現が一番多いのかも知れません。

式は覚えなくて良いです。今はスマホで計算も出来ますので!しかし、こうなっているんだということは理解しておきましょう。

A-aDO2=PAO2−PaO2  これは簡単ですね!定義がそういう事ですから。

PAO2=(760-47)×FIO2ーPaCO2/R

この式の項目を一つ一つ説明します。

PAO2のAは肺胞(Alveolar)という意味です。肺胞内のガスは気体なので大文字です。aの動脈(arterial)との違いを理解しておきましょう。

「760」は大気圧で、単位はmmHgあるいはTorrです。1気圧は1013.25hPaだそうですが、血液ガスでは一般的ではない(日本だけらしいですが)ので、知らなくて良いです。富士山の山頂で測定すれば、気圧は0.7気圧らしいですので、760×0.7=532となります。飛行機の中は飛行中は0.8気圧ぐらいだそうですので、760×0.8=608となります。一般的に我々が考える場合には、平地にある病院で行いますから、そのまま1気圧の760で良いです。

「47」は37度における飽和水蒸気圧です。空気が肺の中に入ると、肺胞に達する頃には水蒸気で加湿され、水蒸気が760の中の47の分を奪ってしまうのです。大きな会場の座席に例えると、まずファンクラブ会員である水蒸気さんたちが、760ある座席のうち、47座席を先に確保してしまい、残りの713の座席を窒素と酸素と二酸化炭素で奪い合うという事です。

次はFIO2です。fraction of inspiratory oxygenのことで、日本語だと吸入酸素濃度です。「FIO2は40%です」という人がいますが、「FIO2は0.4です」というのが正しいです。Fはそう言う単位のようです。二番目のIは液体ではないので大文字で、フォントが小さくなっています。酸素投与していないと0.2とか、0.21となります。(760-47)×0.21=149.73なので、ここを150としている場合がありますが、酸素投与をしていない、普通の環境下での測定にのみ当てはまります。

PaCO2は本当はPACO2(肺胞の二酸化炭素分圧)らしいですが、二酸化炭素は拡散能力が高いので、PACO2がほぼPaCO2と同じなのでこうなっています。これは血液ガス分析で出てくる値ですね。

Rは呼吸商で、通常の生活をしている人は0.8として計算します。食べている物の種類によって色々異なるようですが、そもそも、この式も厳密な物ではないので、全員0.8でいいです。

よって、
A-aDO2=713×FIO2ーPaCO2/0.8ーPaO2


となります。正常値は色々ですが、年齢×0.3以下というのが一番覚えやすいしいいのではないでしょうか。年齢の半分以下というのもありましたが。

FIO2が上昇すると、A-aDO2が大きくなるため、酸素化能障害がなくても、酸素投与時には酸素化能障害があると診断されてしまう可能性がありますが、酸素化能の指標として毎回必ず計算をしておきましょう。少なくとも、A-aDO2が正常であれば、酸素化能障害はないと言って良いと思いますので、感度が高い検査になりますね。

ちなみに、A-aDO2は他にもP(A-a)O2とかA-a O2 gradient等という言い方があるようです。

<今回のポイント>
血液ガスを採取したら必ずA-aDO2を計算しましょう。

血液ガスは一回とって満足してはいけません

83歳の男性です。糖尿病と診断されてインスリンまで使われていたのですが、本人が治療を拒否して1ヶ月程度何も治療をしない状態だったそうです。朝から意識レベルが低下していると言うことで救急車で来院されました。

意識レベルは3桁で、血圧120/75mmHg、脈拍数125/分、体温39度、呼吸数28/分,
SpO2 96%(酸素投与なし)でした。血糖は498mg/dLでした。
前回学んだように、これだけで酸素投与を開始しても良いですね。

まず血液ガスがとられました。

pH 7.376
PCO2 28.0 mmHg
PO2 92.4 mmHg
HCO3 16.0 mmol/L
BE −7.4 mmol/L
乳酸 3.93 mmol/L

今回はこれだけで満足しないように!と言うお話なので、細かい読みはいずれ説明させていただきます。
乳酸が2 mmol/L以上は異常と考えますので、この方は乳酸が高値になっていて、つまりは体の代謝が悪いと言うことです。最初に考えるのは循環不全や低酸素です。この方は酸素分圧は何とか保たれていましたので、あるとすれば循環不全です。
血圧は何とか正常ですが、脈拍数が早いので循環血液量減少があると予想されます。高血糖による浸透圧利尿があったのでしょうね。
よって酸素投与を行う(今回もマスクで4L/分流しました)と共に乳酸リンゲル液の投与を開始しました。生理食塩水じゃないの?!と言う突っ込みはとても大切ですが、又の機会に。

約1時間後に血液ガスを再検査しました。

pH 7.399
PCO2 25.8 mmHg
PO2 105.5 mmHg
HCO3 15.6 mmol/L
BE −7.4 mmol/L
乳酸 1.79 mmol/L

乳酸値が下がっていますね。治療が上手く行っていると考えて良いでしょう。血液ガスは一度取るだけのこともありますが、経過を診ることも結構大事だというお話でした。