2021年10月14日木曜日

ALTが上がっても肝障害とは限らない

  ALTは私のような年寄りの医者にとっては、GPTと言ってもらった方がいいのですが、今はALTと言いますので覚えておきましょう。私も最近やっとGPTがASTだったかALTだったか直ぐ分かるようになりました(^^)。


 さて、ALTの上昇は肝臓に特異的だと言いますが、肝臓以外でもALTは上昇します。以下の雑誌のP.23に表があるのですが、gあたりのALTの量は、肝臓が最も多く44000単位、次いで腎臓が19000単位、心臓が7100単位、骨格筋が4800単位含まれています。腎臓や心臓が壊れてもALTが上昇しますが、これらの臓器の重量は軽く、ALTが上昇する程臓器が壊れたら生命維持が困難なぐらいですので、ALT上昇を認めた場合には、まず肝臓、そしてCK上昇があれば筋肉を疑います。


 また、筋肉ではCKの上昇分の200分の1ぐらいの割合でALTが上昇するようです(以下の雑誌のP.130)。


 ある横紋筋融解症の患者さんのデータを示します。

CK 89444(CK-MB 1919.3)    ALP 53

AST 1575             γGT 15

ALT 513              総ビリルビン 1.27

LD 1934


 CKの上昇が著明ですが、ASTもLDも、そして何よりALTが上がっているので肝障害があるのだろうと思いますよね。実際急性肝炎も合併していると思われるという紹介でした。

 CKが89400程度上昇したと考えると、89400÷200=447となり、ALTは447上昇すると思われます。多少の肝障害はあるかも知れませんが、この患者さんのALT上昇は筋肉由来と考えられました。

 また、CK上昇は心筋由来ではないのか?については、CK-MBは2.14%であり、絶対値としては上昇していますが、割合は低いです。純粋に心筋由来だとCK-MBは20%程度らしいです。そしてCKが2000以上になるほど心筋が障害されたら生存は難しいかも知れません。また、上記の臨床病理レビューの同じ130ページに、CK/AST>12は骨格筋由来のCKを疑うとあります。CK/AST=56.7より骨格筋由来を疑います。

 LD/ASTから考えると肝臓由来のLD上昇となるので、ここでは述べません(ずるい)。

 と言う事で、今日は骨格筋が激しく損傷するとALTも上がると言うことを勉強しました。


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