2021年7月19日月曜日

乳酸がmg/dLで出てきたら9で割りましょう

  乳酸は血液ガスデータにおいてとても重要な値です。正確には乳酸イオンと言うべきかも知れません。英語ではlactateとlactic acidは別物ですが、日本語ではどちらも乳酸です。lactate+Hイオン=lactic acidです。


 さて、私が知るかぎり、乳酸値はmmol/Lで示されており、2mmol/L以上を高値(出来れば?3以上、あるいは5以上とされています)と呼んでいます。


 本にはmg/dLで結果を示している物があります。そのような器械があるのでしょう。その場合には9で割ってください。つまり乳酸値 9mg/dL=1mmol/Lです。


 何故そうなのかというと、乳酸の分子量が90だからです。

 1mmol/L=90mg/L=9mg/dL

 と言うことです。分子量90のものが1molあると90gです。


 乳酸イオンと乳酸の重さは変わらないのか?と言うと、Hイオンは分子量が1なので1モルあたり1gの違いしかなく、誤差と考えて良いです。


 覚えにくい人は、乳酸が18mg/dL以上だったら異常。女子高生を越えたら相手にする(セクハラな例え申し訳ありません)と覚えたらいいでしょう。


 今回はそれだけの記事です、、、、、たぶん。

2021年7月18日日曜日

過換気症候群で乳酸が上昇すると言われていますが

  呼吸性アルカローシスは怖いという実例です。こちらのEMAという若手救急医の集まりのサイトの症例75をご覧ください。


 この患者さんは(問題が古いためでしょうか?症例のリンクが見られません)どんな身体所見だったのか書かれていませんが、若い女性ですし、過換気症候群だと思い込んでしまいそうな患者さんだったのではと推測します。乳酸も上昇していますが、過換気症候群で乳酸が上昇することもあるしね(どこかに記事を書いた記憶があるのですが見つかりませんでした)と思い込んでしまうと大変なことになります。


 解説は読んでいただけば良いですが、PCO2とpHの関係からも、単純な呼吸性アルカローシスではないと分かります。PCO2からpHを予測する式があります。


予想pH=7.4+0.008×(40−PCO2


 これを計算すると7.608となり、実際のpHはそれよりも低いです。代謝性アシドーシスを合併しないとあり得ない値です(呼吸性アシドーシスと呼吸性アルカローシスは合併できません)。


 過換気症候群は別の病気だと誤診しても問題ない疾患です(精神的なものに対して非精神科医は介入すべきでないと以前精神科の先生に教わりましたので)。よって、過換気の患者さんを診たら重大な病気ではないかと考えるようにしましょう。


 そして、乳酸が上がっていたら、過換気のためと思い込むのではなく、乳酸が上がるような何かの代謝異常(type A;組織の低酸素、type B;ビタミンB1欠乏など)があるのではないか?と考えましょう、、、、、、知らんけど。



2021年7月17日土曜日

呼吸性アルカローシスも結構怖いです

 呼吸性アルカローシスの患者さんと聞いて皆さんはどんな印象を持ちますか?22歳女性の過換気症候群です!みたいな感じでしょうか。90歳男性の肺炎の患者さんです!でしょうか。 


 呼吸性アルカローシスはあまりそれ自体重大な印象がない気がします。本当の所はどうか分かりませんが、アルカリに人間は強そうな気がします。呼吸性アシドーシスだと低酸素も伴う(II型呼吸不全と言います)のですが、呼吸性アルカローシスはそれはありません。


 しかし、低酸素(hypoxia)に伴う呼吸性アルカローシスや敗血症の初期症状だったりと、比較的危ない病態を示す場合もありますので、呼吸性アルカローシスを見た場合には、そう言う病態ではないか必ず考えるようにしましょう。


 こちらの文献には、過換気による低CO2血症により心室細動をきたした症例報告が載っています。


 呼吸性アルカローシスも馬鹿にしてはいけません、、、、、、知らんけど。


2021年7月16日金曜日

酸素濃度を5倍してみましょう

  昨日の関連記事です。酸素化能の評価としてA-aDO2がスタンダードではないかと思っていたのですが、PAO2の予想がでたらめだとなれば、A-aDO2は意味がありません。


 では、どうすれば良いのでしょうか?


 私が研修医の頃、麻酔科の先生に「PaO2は吸入酸素濃度を5倍した値より少し低い」と言うのを教わりました。「A-aDO2を計算しなくなるから、これは研修医には教えてはいけないよ」と言われたのですが、私も研修医なのにいいのかなあ?と思った記憶があります。私は研修医時代から老けていると言われていて、研修医に見えなかったからかも知れません(麻酔の先生は非常勤の先生でしたから)。


 つまり、酸素投与をしない状態では、酸素濃度は約20%ですので、PaO2は100 Torr程度となります。酸素濃度が40%ならPaO2は200 Torr程度と言うことです。かなり大雑把で、ほとんど使うことはなかったのですが、最近買った本のP.104にFive Times Ruleとして紹介されていました。




 この本の中には、肺胞気式がやはり有用ではないことが記載されています。理由として、呼吸商を用いていること(実際に測定できない)、FIO2が0.6以上だと肺胞に窒素が入ってこない(理由は書かれていませんでした)、年齢によって正常値が変わる(事がどうして肺胞気式が有用でない理由になるのか書かれていませんでした)など、推測が多すぎると言うことだそうです。
 なんと、このFive Times Ruleは、ちゃんとした救急の本(Tintinalii's Emergency Medicine)に計算と共に書かれているそうです。知りませんでした。今まで馬鹿にしていてすみません。

 さあ、今日から肺胞気式を捨てて、吸入酸素濃度を5倍してみましょう!、、、、、、知らんけど。

 こちらのブログにもほぼ同じ記事を載せました。




2021年7月15日木曜日

肺胞気式はでたらめ?

  大変興味深い記事がM3.comに出ています。会員の方はこちらの記事をご覧ください。


 会員でない方は無料なので是非と言いたいですが、、、、、、、


 肺胞気式は前提が間違っているのででたらめであり、使うべきではないとの主張です。確かにややこしいからこんなこと勉強したくないと思う人がいるのかも知れません。


 個人的には必ず肺胞気式を使って計算していますし、研修医の先生にも計算するよう伝えています。呼吸生理を勉強する意欲を奪っていたら大変申し訳なく思いますが。

2021年7月9日金曜日

2,3 DPGさんは2,3 BPGさんに改名されました。

知らなかったので記事にしました。


輸血の使用時に使うカリウム吸着フィルターについて調べていて、UpToDateの"Practical aspects of red blood cell transfusion in adults: Storage, processing, modifications, and infusion(成人における赤血球輸血の実際:保管、手順、調節、輸血法)"を読んでいてビックリ。


Red cell 2,3 BPG (previously called 2,3 diphosphoglycerate [2,3 DPG]) can increase oxygen delivery to the tissues by shifting the oxyhemoglobin dissociation curve to the right.

赤血球の2,3 BPG(過去には2,3ジホスホグリセレート(2,3 DPG)と呼ばれていた)は、酸素ヘモグロビン解離曲線を右方移動させ、組織への酸素供給を増加させる。


とありました。2,3 DPGさんは改名したんだ。知らなかった。それだけでは短いと思うので、UpToDateの記事の続きを紹介します。

Reduced 2,3 BPG has the opposite effect (ie, it can reduce tissue oxygen delivery by shifting the curve to the left) . Levels of 2,3 BPG begin to drop in stored units of RBCs by two weeks and can be as low as 10 percent of normal after five to six weeks. It is uncertain whether this abnormality is physiologically important, even in critically ill patients. Even if it were important, the 2,3 BPG concentration in the transfused cells returns to normal within 6 to 24 hours of transfusion, resulting in normalization of oxygen release. 

2, 3 BPGが減ると逆の効果をもたらす。すなわち、ヘモグロビン酸素解離曲線を左方移動させることで、組織への酸素供給が減少する。2, 3 BPGは2週間以内に保存血の中で低下し始める。5−6週間後には正常の10%まで低下する。この2, 3 BPGの減少が、重症患者であっても、生理学的に重要かどうかは明らかではない。仮に重要だったとしても、2, 3 BPG濃度は6−24時間以内に正常に回復し、酸素放出は正常化する。

輸血の適応として、Hbが低下しすぎた場合というのがあり、酸素運搬量が減る(CaO2のほとんどはヘモグロビン結合酸素です)のを輸血によって防ぐと言うのがあります。が、2, 3 DPG(私が読んだ文献はそう書いていました)が減っているため、輸血をしてもあまり意味がないかも知れないとありました。しかし、上記の記載によれば気にしなくて良いと言うことですし、いや6時間は酸素放出が十分でないんだから、急いで輸血する意義はない!とも言えますね。

色々分からないことが多いですね。

2021年7月6日火曜日

アニオンギャップを計算しましょう

  血液ガス分析を行った場合、必ずアニオンギャップを計算しましょう。今は乳酸を直接測定できるから必要ないという意見もありますが、計算するだけです(器械が自動的に算出する場合も多いです)から害はありません。またアシドーシスの原因は乳酸だけではありませんので計算しましょう。


 アニオンギャップはカリウムを含んでいる場合がありますので、自院の器械がどう言う計算でアニオンギャップを計算しているかはチェックしておきましょう。


 熱中症で来院された患者さんです。

pH 7.425

PCO2 37 torr

HCO3 23.7 mEq/L

Na 141.9 mEq/L

CL 101 mEq/L


 一見問題ない値です。よってスルーしてしまいそうですが、自動的に計算されたアニオンギャップは21.2 mEq/L(Kは3.99 mEq/Lでした。計算すると21.19 mEq/Lですので四捨五入されているのでしょう)で上昇しています。Kを除いても17.2 mEq/Lと増加しています。乳酸値は2.63 mmol/Lでした。


 補正HCO3を計算すると23.7+(17.2−12)=28.9 mEq/Lで上昇しています。この人のアルブミン値は5.1g/dLで低アルブミン血症はありませんでした。


 アルブミンが高い場合には、逆補正がいると考えると2.75(=(4.0−5.1)×2.5)を引くことになり、アニオンギャップは14.45となるため、正常値と考えても良いのかも知れませんが。


 この患者さんはもともと代謝性アルカローシスがあったのかもしれませんね。アニオンギャップを計算しなければ代謝性アシドーシスを見逃したかも知れません。

 当然ですが、この方は輸液をしていただき、経過観察入院となりました。


 繰り返しますが、この方は発汗多量で体調も悪く、乳酸値が高いので、アニオンギャップがなくても診断は可能ですね。