2020年6月14日日曜日

アニオンギャップの計算にKを入れるべきか?

 血液ガス分析をするにあたって、アニオンギャップ(Anion gap;以下AG)は大切な項目です。AGが増えている時は酸が増えている事が分かるからです。AGが増えていない代謝性アシドーシスがあれば、HCO3が減った為にアシドーシスになっていると分かります。

 ご存じの通り計算式は以下の通りです。

AG=Naー(CL+HCO3

 しかし、本によっては、以下のようにKが入っています。

AG=Na+Kー(CL+HCO3

 カリウムを入れるべきか否か?について色々調べてみたのですが、これだ!というのは見つかりませんでした。例えば日本救急医学会の用語集には、K、Ca、Mgイオンの総和は約11mEq/Lでありほぼ一定なので、これらは測定できない陽イオンとして考えて良いとあります。分かったような、分からないような、、、、、

 困った時にはUpToDateです。「Serum anion gap in conditions other than metabolic acidosis」という文献にこれだ!と言う物がありました。日本語にすれば、「代謝性アシドーシス以外における血清アニオンギャップについて」と言う資料です。

 この中には、アメリカではKを含まない式を使うが、ヨーロッパではKを入れる国が多いと書かれています。何故ヨーロッパではAGの計算式にKを入れるのか?については書かれていませんでした。こちらの文献には
「As originally conceived, serum K+ was also included in the calculation, but serum K+ is included in none of the major textbooks published in the United States and only in a minority of manuscripts. 」と書かれています。日本語にすれば、「オリジナル文献には、血清カリウムイオンもAGの計算に含められていたが、アメリカで出版されている主要な教科書には載っておらず、個人的な資料の一部に書かれているのみである」という感じなのでしょうか。最初に考えた人がKを入れたんだけど、アメリカでは賛成する人があまりいなかったと言うことなのでしょうか。心肺蘇生のやり方とか、虫垂炎の保存的治療とか、欧米の対決が時々見られて面白いですね。

 また、アメリカではカリウムは測定できない陽イオンと考えられているとUpToDateには書かれています。

 こちらの文献には、KはNaに比べて低値であり、その変化はAGに大きな影響を与えないと書かれています。またカルシウムやマグネシウムに関しては、異常があっても実際にはAGに影響はほとんどなかったと書かれており、AGはNaとCL、HCO3の3つだけで計算すれば良いと言うことになります。

 簡単で良かった!

 当院の検査室とICU、救急外来
にある器械はSiemensと言う会社のもので、AGの計算にKが含まれています。ドイツに本社がある会社のようでした。なるほど。

 私は自分で血清の電解質を使って計算していますので、自動的に出てくるAGは見ていません。

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