2020年5月3日日曜日

術後などの代謝性アルカローシスは良い傾向でもあります

 重症患者さんの状態が良くなってくると、血液ガス分析で代謝性アルカローシスとなることが多いです。代謝性アルカローシスの治療に詳しくないと、状態が良いのに何で?と不安になりますよね。しかし、最初に結論を言っておきましょう。

 代謝性アルカローシスになってきたら、患者さんは良くなってきたと考えて良いです。
 そして、たいてい何もしなくて良いです。

 理由を以下に述べます。

 まず、代謝性アルカローシスになる理由です。代謝性アルカローシスは、HCO3が高くなる状態です。よって、多くはHCO3が血中にたくさん放出される場合が多いです。腎不全でもHCO3が高くなるようですが、経験したことないですし、今回は状態が良くなっている患者さんでの場合ですので、考えなくて良いでしょう。
 重症患者さんには大量の点滴、輸血などが行われます。点滴には乳酸が含まれているものが多いです。私がよく使う乳酸リンゲル液はもちろん乳酸が入っています。また3号液であるソルデム3Aにも乳酸が入っています。輸血には血液を固まらないようにする薬が入っており、例えば赤血球輸血にはクエン酸が含まれています。これら乳酸、クエン酸は代謝されるとHCO3となります。

 今分からないので後日記事にしたいと思いますが、重症になった時に上昇した乳酸は代謝されてHCO3になるはずですが、きっと、これは減ったBB(Buffer Base)を補充するのに使われるので影響はないでしょう(自信はない)。

 よって、重症患者さんはHCO3の元を大量に投与されているので、状態が良くなればHCO3が作られ、代謝性アルカローシスになります。

 次に、代謝性アルカローシスを放置して良い理由です。

 人間はHCO3を腎臓から大量に排泄する能力があります。よって、何かなければ代謝性アルカローシスは維持されません。また、代謝性アルカローシスがあると問題になる事がなければ治療の必要はありません。例えば、CRPが高くてもCRPを下げる治療をしません(原因を治療して結果的に下げることはしますが、CRPを取り除く治療はしませんよね)。これはCRPそのものが悪さをしないからです。

 代謝性アルカローシスは以下のような問題を起こす可能性があります。

・低カリウムを引き起こす。
・代償性に呼吸性アシドーシスを起こし、低酸素になるかも知れない。
・ヘモグロビン酸素解離曲線を左方移動させるため、末梢でヘモグロビンが酸素を離しにくくなる。

 逆に言えば、上記に問題がなければ、放置で良いと言うことです。
 カリウムは正常か高めであれば、カリウムのフォロー(通常重症患者さんが回復しているのであれば、定期的に採血しますし、一緒にカリウムも測りますよね)をすればいいし、低ければカリウムは補充すべきですね。
 人工呼吸中の患者さんであれば、人工呼吸器の離脱に支障をきたすかも知れませんが、ゆっくり離脱しても良いかもしれません。人工呼吸中していない方であれば、肺が悪いなどの人でなければ、ほとんど問題にならないでしょう。
 酸素を離しにくくなる事については、どうなんでしょう?気にしたことありませんが、時々思い出すと良いかもしれません。

 よって、術後や急変した患者さんの血液ガスをとって、HCO3が高くなっていたら、安心して良いと思います。例外はもちろんありますので、きちんと血液ガスを解釈する必要はありますね。

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