2020年5月7日木曜日

トレーニング問題にトライ!

 日本内科学会雑誌の去年の6月号から12月号には、血液ガスについての文献がシリーズで載っていました。1年たつとネットにて無料で見られるようになりますので、内科学会員でない方や、雑誌捨てちゃったよ!と言う方は、6月までのお楽しみです。

 今回は今年の2月号のP.261ページに載っていたトレーニング問題を紹介します。まず解いてみてください。

問題 次の血液検査所見より、正しい酸塩基の解釈はどれか。二つ選べ。
動脈血液ガス:pH 7.40、PO2 100mmHg、PCO2 40mmHg、HCO3 24.0mEq/L。
血液生化学:血清アルブミン1.4g/dL、Na 140mEq/L、K 4.0mEq/L、CL 104mEq/L。
(a)酸塩基平衡異常なし。
(b)AG正常
(c)AG正常型代謝性アシドーシス
(d)AG増加型代謝性アシドーシス
(e)代謝性アルカローシス

 全く分からない時の解き方をまず書いてみます(ちゃんと解きたい人に答えが見えないようにとの配慮です(^^))。出題者は回答者に間違えさせようとしますので、複数の選択肢に同じ言葉があったらチェックです。AGは3つの選択肢に、アシドーシスは二つの選択肢、正常という言葉もあります。全部がある(c)はまず○です。pHは正常ですので、アルカローシスがないとなり立ちません。よって、正解は(c)と(e)です。が、正解は(d)と(e)でした。
 残念、、、、、、、

 もちろん、分かるように勉強しておくべきですが、分からない時には、このように解いてみましょう。あたる可能性は高いと思います(って説得力なし)。しかし、救急科専門医の試験問題も、それで解ける物が結構あります。多湖輝さんという方の本に書かれていました。試験監督をしていた時に、専門外の試験だったので試験問題がちんぷんかんぷんで、どうやったら正解が出せるか考えたのだそうです(心理学の先生です)。

 さて、まじめに解説してみます。確かに正常値がずらっと並んでおり、(a)の異常なしが○と思ってしまいますね。血液ガスを分析する場合、必ずAGを計算すべきで、多くの器械は自動的に計算値を出してくれますが、私は必ず血液生化学の値を使って自分で計算します(血液ガスの電解質はNaが低め、CLが高めに出るので、AGは低めに出ます)。
 AG(アニオンギャップ)を計算してみます。AG=Na−(HCO3+CL)=12でこちらも正常です(器械によってはNa+K−(HCO3+CL)となっているので注意)。他の問題に記載されているAGの正常値は8〜16だそうです。すると(b)も○としてしまいそうです。

 しかし!この問題のポイントは、アルブミンです。アルブミンが異常に低いことに気付けば正解です!アルブミンは血液中でHイオンを放出してAlbイオン(陰性)となるそうです。酸はHを放出する物と定義されていますので、アルブミンは酸です。よって、アルブミンが低い場合は、代謝性アルカローシスがあります。よって(e)がまず○になります。
 pHが正常なのでアシドーシスがないとなり立ちません。PCO2は正常なので、代謝性アシドーシスがあるはずです。AGが正常だったので(c)が○かと思いますが、ここでもアルブミンが関連します。AGはアルブミンが正常であると仮定して出される値だそうですので、アルブミンで補正する必要があります。補正AG=AG+2.5×(4−Alb)=18.5となりますので、AGは増加しています。よって(d)も○です。
 学会誌の解説では正常アルブミンを4.4としており、補正AGは19.5となっていますが、大きな違いはありません。

 ちなみに、ΔAG=AG−12を計算すると、6.5であり、補正HCO3=HCO3+ΔAG=30.5であり、やはり代謝性アルカローシスがあると判断できます。補正HCO3はAGの上昇がないと仮定した場合のHCO3です。

 偉そうに書いていますが、私はこの問題(e)が○はすぐ正解できましたが、補正AGを出すのを忘れて、(c)を○としてしまいました。普段は電子カルテにコピペ文が入れてあって、それに従って補正AGも計算していますが、問題を解く時は、はしょってしまいました。反省も込めてこの問題を紹介させて頂きます。

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