2020年3月18日水曜日

HCO3+15の続き

 昨日紹介した論文のタイトルは「Bedside rule secondary response in metabolic acid-base disorders is unreliable」です。日本語にすれば、「代謝性アシドーシスにおける代償性反応を簡単に予想できる式は信頼できない」と言う感じです。

 原文を読んでみました(ネットでは雑誌の購読者しか読めませんが、ある方法で原文を手に入れました)。

 ハリソン内科学やUpToDate、American College of Physicians guidelineにも、HCO3+15が紹介されていて、不正確だから削除すべきだという内容です。

 ハリソンは持っていないのですが、UpToDateはたぶん「Approach to the adult with metabolic acidosis(成人の代謝性アシドーシスへのアプローチ)」という文献で、Winterの式、HCO3+15以外に以下を紹介しています。

 pHの小数点以下とPCO2が同じという物です。pHが7.25ならpCO2は25ぐらいだというのです。

 これら三つとも使用できると書いています。

 論文では、代謝性アシドーシスではWinterの式とHCO3+15、代謝性アルカローシスでは0.7×([HCO3]−24)+40とHCO3+15を比較して、差がある(最大6)から良くないと書いているのですが、もしかしたらHCO3+15の方が正しいのかも知れないのに、それについてのコメントはありませんでした。

 そもそも、例えばHCO3が15だった場合の正しい?PCO2はいくらなのかどうやって決めるのでしょうか?

 人間の身体は色々ですし、Winterの式も±2なので、最大4の差があるわけですから、簡単に15を足すということで良いのではないかと思いました。

 気になる方は、電子カルテにひな形を入れておけば良いと思います。簡単にコピー出来ますから、代謝性アシドーシスでは40−1.25×(24−[HCO3])、代謝性アルカローシスでは40+0.75×([HCO3]−24)と書いておいて計算すれば良いかもしれません。
 もっと気になる方は、全ての方法で計算して比較し、どれを採用するか考えたら良いと思います。

 しかし、呼吸性アルカローシスと判断しても呼吸性アシドーシスと判断しても、大切なのは患者さんの状態であり、あまり厳密に考える意義はないのかもしれません。単純に患者さんの状態とPCO2の値だけで今後の介入を考えても良いでしょう。

 なので、私はHCO3+15、あるいはpHの小数点以下がPCO2と言う簡単な物をお勧めします。大切なことは、これらは不正確な可能性があると知っていることです。禁忌な治療であっても、禁忌だと知っていればやって問題ないです。それでもやりたいわけですし、禁忌である理由(その為に起こり得る副作用)に気をつけますので。

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