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2020年7月3日金曜日

Na-CLを計算しましょう

 Na-CLが36以上は代謝性アルカローシス、以下は代謝性アシドーシス(AG正常)が疑われると以前も書いたこちらの論文を紹介させて頂いた記事でした)のですが、別の説明を見つけましたのでご紹介します。以下の本の994ページです。何とこの本現在新品が手に入らないようで、Amazonなどでは中古品の方が高い(と言うか新品は売っていない)値段になっています。楽天でも購入できませんので、電子版を購入しました。


 アニオンギャップの式は以下の通りです。

Anion Gap=Na−CL −HCO3+2.5×(アルブミンの正常値−Alb)

 式を変形します。

Na−CL=AG+HCO3−2.5×(アルブミンの正常値−Alb)・・・・・式(1)

 Na−CLが上昇するのは、AGが上昇した場合か、HCO3が上昇した場合、あるいは両方となります(Albが増加した場合もそうですが、あまり考えなくて良いでしょう)。しかし、AGが上昇すると、その分だけHCO3が低下します。HCO3は他のイオンの変化に伴って容易に変化します。AGが増加したと言うことは、その分だけ酸(酸は水素イオンを放出しますから、必ず陰イオンとなります)が増えていると言うことです。陰イオンが増えていますから、その分HCO3は低下します。
 ここで補正HCO3という概念を考えるのですが、AGが上昇している場合、もし、AGが正常に下がったらHCO3はいくらになるのか?それが高ければAGが増加する代謝性アシドーシスに加えて、代謝性アルカローシスもある、低ければAGが増加しない代謝性アシドーシスがあると言うことになります。補正HCO3を出す計算が以下のような物です(AGの正常値を12とする)。 

補正HCO3=HCO3+(AG−12) これを変形すると、

HCO3=補正HCO3−AG+12 となります。これを式(1)に代入すると

Na−CL=AG+(補正HCO3−AG+12)−2.5×(アルブミンの正常値−Alb) となって、結局

Na−CL=補正HCO3+12−2.5×(アルブミンの正常値−Alb) となります。

 補正HCO3はAGが正常になった場合のHCO3ですから、AGが高くても低くても正常でも関係ありません。補正HCO3が高ければ代謝性アルカローシス、低ければ代謝性アシドーシス(AG非増加型)ということになります。Albが正常であれば、HCO3の正常値は24ですので、Na−CLが36より大きいか小さいかで切ることになります。また、アルブミンがあまりに低いとNa−CLも下がります。アルブミンの正常値を4、測定されたアルブミン値が2だったとすると。Na−CLは31で切ることになります。よって、Na−CLは30から40ぐらいまでは正常と考えても良いかもしれません。

 また、Na−CLが36前後であれば酸塩基平衡に異常がないかというと、AGが増加する代謝性アシドーシスは分からないですし、代謝性アルカローシスとAG非増加型代謝性アシドーシスが混在していると異常を示さないかもしれません。

 まあ、Na−CLだけで血液ガス分析が全部解釈できるはずはありませんので、当たり前ですね。

 どちらにしても、一般血液検査を出したら、Na−CLを計算してみることは大切ですね。低い時は30以下、高い時は40以上を基準として異常と判断し、異常と思ったら血液ガス分析を行いたいですね。アメリカのように、血液生化学検査の一つとしてHCO3が検査できると良いのですが(日本でもやっているところはあるようです)。

2020年6月17日水曜日

アルブミンが低いとAGが低下する理由

 昨日の続きです。アルブミンが低いと何故アニオンギャップが低下するのか?です。

 最初にUpToDateです。「Serum anion gap in conditions other than metabolic acidosis(代謝性アシドーシス以外の状況における血清アニオンギャップ)」という文献からです。

 原文は以下の通りです。

 Albumin has many positive and negative charges due to various amino acid side chains that can either release or bind hydrogen ions. The ratio of albumin's positive and negative charges changes with the pH of the solution. At pH 7.4, albumin carries approximately 20 more negative charges than positive charges (therefore each molecule has a net charge of -20). The major unmeasured anion in serum is albumin. Thus, the serum albumin must be measured and taken into account when calculating and interpreting the serum AG.

 アルブミンは様々な陽性電荷、陰性電荷を持つアミノ酸の側鎖を持つ。その側鎖は水素イオンを放出したり受け取ったりする。アルブミンの電荷は、アルブミンが溶けている溶液のpHにより変化する。pHが7.4の場合、アルブミンは陽性電荷を持つアミノ酸より陰性電荷を持つアミノ酸が20多くなる。それによりアルブミン分子は全体として−20の電荷を持つ。血清の主要な測定されない陰イオンはアルブミンである。よって血清アルブミンは必ず測定し、血清アニオンギャップを計算し、解析する場合には、アルブミン値を考慮に入れるべきである。

 と言うことです。人間の身体の中の電荷は中性になっているそうです。よって以下の式が成り立ちます。

Na+UC(測定されない陽イオン)=CL+HCO3+UA(測定されない陰イオン)

 AGの式にすると

AG=Naー(CL+HCO3)=UAーUC

 UAが減るか、UCが増えるかするとAGは低下します。アルブミンはUAなので、UAが減ればAGが減少するというわけです。また、アルブミンはたぶんpHが7.4に近いところにあるとHイオンを放出(するから陰性の電荷を持つのでしょう)するそうです。そのような物質は定義から酸です。低アルブミン血症では代謝性アルカローシスになることも分かります。

 UAが減ったらUCも一緒に減らないのか?減ればAGは変わらないじゃないかと言われるとそうなのです。しかし、何故UCが一緒に減らないのか、、、、、、今のところ分かりません。

 今分かることは、NaやCLは強イオンと呼ばれていて、水溶液中では必ずイオンに分離するそうです。よってNaなんとかとか、何とかCLになって電荷が減るということはありません。また急に外に出すことも難しいでしょうから、NaとCLはAlbの変化によって直接すぐ変化することはないのでしょう。

 HCO3は容易にイオンになったりHとくっついて二酸化炭素と水になったりします。よってUAが低下するとHCO3がその分増えて電気的中立を保とうとします。よってUAが減るとHCO3が増えて代謝性アルカローシスになります。

 昨日の若い先生に向けて。「アルブミンが減るとUAが減るからAGが減るのです!」と分かったような顔をして答えましょう、、、、、、知らんけど。

2020年5月7日木曜日

トレーニング問題にトライ!

 日本内科学会雑誌の去年の6月号から12月号には、血液ガスについての文献がシリーズで載っていました。1年たつとネットにて無料で見られるようになりますので、内科学会員でない方や、雑誌捨てちゃったよ!と言う方は、6月までのお楽しみです。

 今回は今年の2月号のP.261ページに載っていたトレーニング問題を紹介します。まず解いてみてください。

問題 次の血液検査所見より、正しい酸塩基の解釈はどれか。二つ選べ。
動脈血液ガス:pH 7.40、PO2 100mmHg、PCO2 40mmHg、HCO3 24.0mEq/L。
血液生化学:血清アルブミン1.4g/dL、Na 140mEq/L、K 4.0mEq/L、CL 104mEq/L。
(a)酸塩基平衡異常なし。
(b)AG正常
(c)AG正常型代謝性アシドーシス
(d)AG増加型代謝性アシドーシス
(e)代謝性アルカローシス

 全く分からない時の解き方をまず書いてみます(ちゃんと解きたい人に答えが見えないようにとの配慮です(^^))。出題者は回答者に間違えさせようとしますので、複数の選択肢に同じ言葉があったらチェックです。AGは3つの選択肢に、アシドーシスは二つの選択肢、正常という言葉もあります。全部がある(c)はまず○です。pHは正常ですので、アルカローシスがないとなり立ちません。よって、正解は(c)と(e)です。が、正解は(d)と(e)でした。
 残念、、、、、、、

 もちろん、分かるように勉強しておくべきですが、分からない時には、このように解いてみましょう。あたる可能性は高いと思います(って説得力なし)。しかし、救急科専門医の試験問題も、それで解ける物が結構あります。多湖輝さんという方の本に書かれていました。試験監督をしていた時に、専門外の試験だったので試験問題がちんぷんかんぷんで、どうやったら正解が出せるか考えたのだそうです(心理学の先生です)。

 さて、まじめに解説してみます。確かに正常値がずらっと並んでおり、(a)の異常なしが○と思ってしまいますね。血液ガスを分析する場合、必ずAGを計算すべきで、多くの器械は自動的に計算値を出してくれますが、私は必ず血液生化学の値を使って自分で計算します(血液ガスの電解質はNaが低め、CLが高めに出るので、AGは低めに出ます)。
 AG(アニオンギャップ)を計算してみます。AG=Na−(HCO3+CL)=12でこちらも正常です(器械によってはNa+K−(HCO3+CL)となっているので注意)。他の問題に記載されているAGの正常値は8〜16だそうです。すると(b)も○としてしまいそうです。

 しかし!この問題のポイントは、アルブミンです。アルブミンが異常に低いことに気付けば正解です!アルブミンは血液中でHイオンを放出してAlbイオン(陰性)となるそうです。酸はHを放出する物と定義されていますので、アルブミンは酸です。よって、アルブミンが低い場合は、代謝性アルカローシスがあります。よって(e)がまず○になります。
 pHが正常なのでアシドーシスがないとなり立ちません。PCO2は正常なので、代謝性アシドーシスがあるはずです。AGが正常だったので(c)が○かと思いますが、ここでもアルブミンが関連します。AGはアルブミンが正常であると仮定して出される値だそうですので、アルブミンで補正する必要があります。補正AG=AG+2.5×(4−Alb)=18.5となりますので、AGは増加しています。よって(d)も○です。
 学会誌の解説では正常アルブミンを4.4としており、補正AGは19.5となっていますが、大きな違いはありません。

 ちなみに、ΔAG=AG−12を計算すると、6.5であり、補正HCO3=HCO3+ΔAG=30.5であり、やはり代謝性アルカローシスがあると判断できます。補正HCO3はAGの上昇がないと仮定した場合のHCO3です。

 偉そうに書いていますが、私はこの問題(e)が○はすぐ正解できましたが、補正AGを出すのを忘れて、(c)を○としてしまいました。普段は電子カルテにコピペ文が入れてあって、それに従って補正AGも計算していますが、問題を解く時は、はしょってしまいました。反省も込めてこの問題を紹介させて頂きます。

2020年1月1日水曜日

低アルブミン血症があると代謝性アルカローシスになります

 皆様あけましておめでとうございます。

 今年はこのブログをもっと頻繁にアップしたいと考えました。よろしくお願いします。

 さて、今年の最初はアルブミンです。私も知りませんでしたが、アルブミンは酸なのだそうです。酸とは「水溶液中で電離して、水素イオンを生じる物質」と定義されています。

 アルブミンは血液中でHイオンを放出しますので酸となります。

 よって、アルブミンが低くなる(高くなることはあまりないので初心者は考えなくて良いでしょう。私も初心者)と代謝性アルカローシスになります。

 私の受持患者さんは、血液ガスをとると代謝性アルカローシスの人が多かったので、ずっと疑問に思っていたのですが、これを知ってとてもスッキリしました!生理食塩水を入れても治るはずはなく、アルブミンが上がるように栄養管理をする以外にないと言うことが分かりました。

<今回の極論ポイント>
 血液ガス分析をしたら、低アルブミン血症がないかチェックしましょう。