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2020年7月6日月曜日

カリウムが高い時も血液ガスが役に立ちます(pH以外)

 酸塩基平衡と電解質は密接な関係があります。カリウムもpHと関係があるのは有名です。

 アシドーシスになると、少しでもそれを緩和しようと細胞がHイオンを細胞内に取り込みます。その際にKと交換するようです(何かの陽イオンと交換しないと細胞内が+になってしまいます)。よって、細胞内からカリウムが放出され、高カリウム血症となります。アルカローシスになると逆に低カリウム血症となります。

 今回の話題は偽性高カリウム血症です。つまり患者さんの体の中のカリウム濃度は正常なのに、採血するとカリウムが高いと報告されると言う状態です。これに血液ガスが役に立ちます。

 結論を先に言うと、血清カリウム値が高いのに、血液ガス分析で行ったカリウムが正常だったら、これは偽性高カリウム血症だと言えます。血小板が異常に高値の場合です。

 血小板がたくさんあると、血液が固まる時にカリウムがたくさん放出され、カリウムが高いと報告されてしまうようです。復習ですが、血液生化学、いわゆるプレーン採血は、血液に抗凝固薬を入れないで血液を固まらせ、固まった部分は取り除いて検査をします。血液が固まるまである程度の時間がかかるため、血液生化学検査は例えば10分では結果は出ません。

 でも茶色のスピッツに何か入ってますよ!と言う貴方、するどいです。あれは凝固促進剤であり、検査室の人が必要なものであって、我々患者さんのそばにいる人間にはあまり関係ありません。間違っても血液を注射器で採血し、茶色のスピッツに最初に血液を入れるようなことはしていませんよね。極論を言えば、注射器のまま検査室に提出し、検査室で茶色のスピッツに入れても良いのです、あれは。

 よって偽性高カリウム血症を予防するには、血液に抗凝固薬を入れて検査すれば良いです。何でも良いのですが、血液ガスの注射器には抗凝固薬が入っていて、カリウム塩ではありません(通常ヘパリンリチウムです)。

 血小板が多い人でカリウムが高いと報告されたら、もちろん心電図は直ぐとってカリウムが高い可能性も探りますが、血液ガス分析をやってみましょう。

 緊急の場合には、カリウムをプレーンの採血でオーダーすると20分ぐらいは結果が出ませんから、結果が1分もあれば出る血液ガス分析もしましょう。

 ちなみに、血小板と言えば、「はたらく細胞」の血小板を思い出してしまいます。可愛すぎます!

2020年7月5日日曜日

片肺挿管になったら酸素濃度を上げたらいいじゃない?

 気管挿管をしている時(あるいはする時)、起こりやすい不具合の一つは片肺挿管です。

 片肺挿管は何がいけないでしょうか?もちろん、酸素化能が低下する事です。挿管されていない(通常は右に入るので左ですね)肺に痰がたまることもあるかも知れません。

 さて、この時、気管チューブの位置を動かすことが出来ない(資格上の問題、その他色々)場合に、とりあえず酸素を100%にしたら良いじゃないと思いますね。もちろん、それは一つの手なのですが、その際、SPO2があまり上がらない事が多いです。今回はその事について考えてみましょう。

 まず、換気されない左肺から心臓に戻って来る血液は、酸素を取り込むことが出来ませんから、ほとんど静脈血と同じです。つまりPO2は40mmHg程度です。

 次に、換気されている右の肺から戻ってくる血液は、100%酸素で換気していて、酸素化能に問題がなければ、PO2は600mmHg以上あります。

 左肺と右肺からの血流が同じだったとすると、(右肺からの血流のPO2+左からのPO2)÷2=320mmHgとなり、SPO2は余裕で100%近いはずです。また、hypoxic pulmonary vasoconstrictionと言って換気が悪い肺胞へ行く血管は収縮する反応があり、左肺の血流は少なくなります。右:左が例えば2:1になったら、もっとPO2は高くなるはずです。

 しかし、PO2は60mmHg程度にしかなりません。何故でしょう?

 血液にはヘモグロビンが含まれているのがその理由です。血液が単純な液体であれば、先ほどの計算は成り立ちます。みなさんは、CaO2というのを覚えていますか?動脈血酸素含有量という物で、こちらで計算します。

 CaO2=Hb結合酸素+溶存酸素=1.34×Hb×SaO2÷100+0.0031×PaO2

でした。左肺から来る血液のCaO2=1.34×15×0.75+0.0031×40=15.2ml/dLです。
(Hbは15としました。静脈血のPO2は40mmHg、SO2は75%としました。)
右肺から来る血液のCaO2=20.3ml/dL程度です。右:左の血流が2:1だったとすると、(20.3×2+15.2)÷3=18.6ml/dLとなります。酸素化能が正常な人の酸素吸入なしの場合のCaO2は19.8ml/dL程度(SaO2 97%、PaO2 90としました)です。片肺挿管時は、室内空気を吸っている人より、PaO2が低いと言うことでしょう。PaO2が60mmHgでSaO2が90%として計算すると18.2ml/dL程度となり、やはりPaO2は60mmHg程度と言うことになります。

 気管チューブは患者さんの首の反り具合で最大5cm程度動くらしいですので、気管挿管をしている患者さんでは常に片肺挿管になっていないか、確認しましょう。そして、PaO2が突然下がったら片肺挿管を是非考えてください。

 他にも人工呼吸中の患者さんに変化があったら思い出す物としてDOPEと言うのがあります。
D displacement チューブの位置異常(つまり片肺挿管、抜けたなど)
O obstruction チューブの閉塞
P pneumothrax (緊張性)気胸
E equipment 装置の異常(人工呼吸器など)

 英語が苦手な方は「いきつめ」と覚えましょう。
い 位置の異常
き 緊張性気胸
つ 詰まった
め メカの異常

2020年7月3日金曜日

Na-CLを計算しましょう

 Na-CLが36以上は代謝性アルカローシス、以下は代謝性アシドーシス(AG正常)が疑われると以前も書いたこちらの論文を紹介させて頂いた記事でした)のですが、別の説明を見つけましたのでご紹介します。以下の本の994ページです。何とこの本現在新品が手に入らないようで、Amazonなどでは中古品の方が高い(と言うか新品は売っていない)値段になっています。楽天でも購入できませんので、電子版を購入しました。


 アニオンギャップの式は以下の通りです。

Anion Gap=Na−CL −HCO3+2.5×(アルブミンの正常値−Alb)

 式を変形します。

Na−CL=AG+HCO3−2.5×(アルブミンの正常値−Alb)・・・・・式(1)

 Na−CLが上昇するのは、AGが上昇した場合か、HCO3が上昇した場合、あるいは両方となります(Albが増加した場合もそうですが、あまり考えなくて良いでしょう)。しかし、AGが上昇すると、その分だけHCO3が低下します。HCO3は他のイオンの変化に伴って容易に変化します。AGが増加したと言うことは、その分だけ酸(酸は水素イオンを放出しますから、必ず陰イオンとなります)が増えていると言うことです。陰イオンが増えていますから、その分HCO3は低下します。
 ここで補正HCO3という概念を考えるのですが、AGが上昇している場合、もし、AGが正常に下がったらHCO3はいくらになるのか?それが高ければAGが増加する代謝性アシドーシスに加えて、代謝性アルカローシスもある、低ければAGが増加しない代謝性アシドーシスがあると言うことになります。補正HCO3を出す計算が以下のような物です(AGの正常値を12とする)。 

補正HCO3=HCO3+(AG−12) これを変形すると、

HCO3=補正HCO3−AG+12 となります。これを式(1)に代入すると

Na−CL=AG+(補正HCO3−AG+12)−2.5×(アルブミンの正常値−Alb) となって、結局

Na−CL=補正HCO3+12−2.5×(アルブミンの正常値−Alb) となります。

 補正HCO3はAGが正常になった場合のHCO3ですから、AGが高くても低くても正常でも関係ありません。補正HCO3が高ければ代謝性アルカローシス、低ければ代謝性アシドーシス(AG非増加型)ということになります。Albが正常であれば、HCO3の正常値は24ですので、Na−CLが36より大きいか小さいかで切ることになります。また、アルブミンがあまりに低いとNa−CLも下がります。アルブミンの正常値を4、測定されたアルブミン値が2だったとすると。Na−CLは31で切ることになります。よって、Na−CLは30から40ぐらいまでは正常と考えても良いかもしれません。

 また、Na−CLが36前後であれば酸塩基平衡に異常がないかというと、AGが増加する代謝性アシドーシスは分からないですし、代謝性アルカローシスとAG非増加型代謝性アシドーシスが混在していると異常を示さないかもしれません。

 まあ、Na−CLだけで血液ガス分析が全部解釈できるはずはありませんので、当たり前ですね。

 どちらにしても、一般血液検査を出したら、Na−CLを計算してみることは大切ですね。低い時は30以下、高い時は40以上を基準として異常と判断し、異常と思ったら血液ガス分析を行いたいですね。アメリカのように、血液生化学検査の一つとしてHCO3が検査できると良いのですが(日本でもやっているところはあるようです)。

2020年6月29日月曜日

体温が低い患者さんは補正すべきなのか?

 低体温の患者さんが救急車で運ばれることがあります。低体温は色々な注意をしなければならない重症患者さんです。

 血液ガスデータもきちんと解析したいですね。以下の本のP.373には温度が1度低下する毎に、pHは0.015低下し、PaCO2は4.3%低下するとあります。

 ちなみに、血液ガスは、検体を37度に温めて検査をしています。体温が30度だった患者さんであっても、検体は37度に温められて検査されています。


  何故PCO2が低下するのか考えたのですが、分かりませんでした!こちらの文献も読んだのですが、、、、、、トホホ。

 ボイル・シャルルの法則と言うのがあり、PV=nRTと言う公式を覚えている方もおられると思いますが、温度が下がればPVは下がります。同じ一気圧がかかっているので、Pは下がらないのではないかと思ったのですが、PCO2もPO2も下がるのだそうです。しかし、溶解度は増えるとのことで、ちんぷんかんぷんです。私は化学が理科の中で最も苦手だったのです!

 と言うことで、化学が苦手な皆さんに朗報です。色々議論はあるようなのですが、低体温の患者さんでも、打ち出されたデータに基づいて治療をすればいいです。そのような方針をαーstatと言います。低体温患者さんが来院されたら、格好良く、「血液ガスはアルファスタットでいこう!」と言いましょう。

 また、体温の補正をしたい場合、多くの器械は患者さんの体温を入れるところがありますので、入れておけば自動的に補正されます。その際はpH-statと言うようですが、「ピーエッチスタットで行こう」と言いましょう。間違ってもペーハースタットと言わないように。若い人はピーエッチと習っているようですから。ペーハーは歳よりの証拠です。

 もっと詳しく勉強したい方は、こちらこちらのサイトをご覧ください。英語です。

2020年6月28日日曜日

溶存酸素の係数は何故0.003か

 血液中に酸素がどのぐらい含まれているか?を知るには、酸素含有量という指標が必要です。動脈であれば、CaO2と言います。

 CaO2=Hb結合酸素+溶存酸素
 =1.39×Hb濃度×酸素飽和度+0.003×PaO2

 Hb結合酸素の係数「1.39」については別に解説しましたので、良かったらご覧ください。

 さて、今日は0.003についてです。こちらのサイトに書いてありますので読んでください。勉強になりますし面白いです。高校までの化学の知識も復習になります、、、、、、たぶん。

 さて、そのサイトの3ページ目に載っていますが、溶存酸素の係数の求め方です。と言うか、普通は求める必要はありません(^^)。

 気体が液体に溶ける量は分圧に比例しますが、通常の我々の環境であれば、1気圧、つまり760mmHg中の割合に比例します。また気体によって液体への溶けやすさが違います。それを表した係数がブンゼン係数と言い、酸素は0.024だそうです。CaO2は「/dL」で表すので、PaO2が1mmHgの時の溶存酸素の量は以下の通りです。1dL=100mlです。

 1÷760×0.024×100=0.00315789

 となります。よって、溶存酸素の係数は0.003、あるいは本によっては0.0031となっています。0.0032じゃないのか?等と細かいことを言っていると女性にもてませんので注意しましょう。たぶんですが、血液は純粋な水ではありませんから、ブンゼン係数が多少変化するのでしょう。まあ、臨床ではPaO2が100であっても0.3ml/dLしかなく(CaO2は20ml/dL程度です)1.5%程度ですので、無視してCaO2=Hb結合酸素と考えても問題ない場合が多いです。

 ちなみに、何故「/dL」なのか?よく分かりませんが、Hbも「g/dL」ですので、「/dL」が扱いやすいのではないでしょうか。

2020年6月27日土曜日

条件を変更後何分経ったら血液ガスをとっていいか?

 血液ガスをいつとったら良いのか?は大変悩ましい問題です。

 患者さんの状態を緊急で判断したい場合には、酸素を今始めたばかりだろうが、人工呼吸器をつけたばかりだろうが、今すぐ採血すれば良いです。pHが7を切っているんじゃないか、PaCO2が70を超えているんじゃないか、カリウムが高いのじゃないか、乳酸がかなり高いのじゃないか?等と思う場合です。

 しかし、緊急ではなく、今酸素投与量を増やしたんだけど、この酸素の量で良いのだろうか?人工呼吸器の設定を変えたんだけど、いつ採血したら人工呼吸管理の設定がちょうどいいと判定できるのだろう?と思うことがありますよね。本には患者さんが安定したら採血をすると書かれていますが、何分経ったら安定するのでしょうか?

 今回はこちらのサイトの日本語訳です。この論文を解説してくれています。

 慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstruction pulmonary disease;以下COPD)の患者は長期間の酸素療法と血液ガス分析(PaO2とSaO2)によるモニタリングを必要とする。酸素投与量を変更した場合に、酸素の状態を評価するための採血前に、新しい定常状態に達するまでにどのぐらいの時間が必要かは重要な問題である。

 最新のいくつかのガイドラインでは、20〜30分待つことを推奨しているが、本当にそのぐらい待つ必要があるのだろうか?この疑問に対して検討した文献が最近出版された。長期酸素投与(1〜4L/分)を1日16時間以上受けているCOPD患者12名の検討である。

 12人の患者は動脈カニュラから血液ガスを採取された。酸素投与中のベースとなるPaO2とSaO2と、酸素を中止してから、1分後、2分後、4分後、8分後、12分後、17分後、22分後、32分後、34分後に採血をした。

 その後もともと投与されていた酸素を再開し、同じインターバルで血液ガス分析を行った。最初が「wash out」であり、酸素の減量をシミュレーションしている。二番目が「wash in」であり、酸素の増量をシミュレーションしている。

 検討の結果、wash in、wash out共に、PaO2が臨床的に安定に達する平均時間は5分であった。7-8分経過すれば、75%の患者が安定状態に達した。最も長い患者は14分であった。SaO2に関しては、wash outでは平均7.4分、wash inでは2.6分であった。

 より詳細な検討により、酸素を減量した場合には16分、酸素を増量した場合には10分たてば安定したと考えて良いと結論づけられている。


 人工呼吸管理の方ではなく、慢性期のCOPDの方での検討ですので、急性期の患者さん等では使えないかもしれませんが、やはりガイドラインと同じように20分は待った方が良いと言うことになりますね。

2020年6月26日金曜日

酸素飽和度の色々

 昨日の続きです。酸素飽和度とは、ヘモグロビンにある酸素の座席がどのぐらい埋まっているか?と言う指標です。

 一番身近なものはパルスオキシメーターによって測定された酸素飽和度ですが、血液ガス分析の器械のはじき出すデータをきちんと見ると、酸素飽和度が二つあるはずです。sO2とFO2Hbなどとなっているものです。

 sO2あるいはO2SATなどと表示されている物は、機能的酸素飽和度と呼ばれています。以下の式で求められます。
 機能的酸素飽和度=酸素ヘモグロビン÷(酸素ヘモグロビン+脱酸素ヘモグロビン)

 またFO2Hbは、分画酸素飽和度と呼ばれる物で、Fはfractionの略で、酸素濃度などもFIO2とFが使われています。以下の式で求められます。
 分画酸素飽和度=酸素ヘモグロビン÷全ヘモグロビン

 分画酸素飽和度は、機能的酸素飽和度の分母に一酸化炭素ヘモグロビンとかメトヘモグロビンとか色々なヘモグロビンを足した物です。よって、分画酸素飽和度の方がやや低いのが一般的です。

 そして、昨日の計算式の係数は1.39が正式であり以下のように分画酸素飽和度を用いるべきです。
動脈血酸素含有量(CaO2)=1.39×Hb×分画酸素飽和度+0.0031×PaO2

 しかし、酸素飽和度が機能的酸素飽和度でしか求められない場合もあったりして、その際は係数が1.39では大きすぎるということなのでしょう。

2020年6月25日木曜日

酸素含有量の係数は何故1.34だったり1.35だったり、1.36だったり1.39だったりするのか?

 血液ガス分析をする時に、必須の計算ではありませんが、酸素含有量を計算する時があります。動脈血1dLに含まれる酸素の量(vol%)です。末梢組織に酸素がどのぐらい運ばれているのか?を考える時に必要です。

 ちなみにですが、大気の酸素濃度は20.9%と言いますが、割合を示しているだけで、量がどのぐらいあるかは分かりません。大気が1リットルあれば、209mlの酸素があるわけですが、100mlしかなければ、20.9mlしかありません。
 分圧も同じで、酸素分圧が100mmHgと言っても、酸素がどのぐらいあるのかはそれだけでは分かりません。
 酸素がどのぐらいあるのかは酸素含有量を計算しなければなりません。

 酸素含有量CaO2の計算式は以下の通りです。

CaO2=1.34×Hb×SaO2+0.0031×PaO2

 この係数が1.39だったり1.36だったりと本によって色々です。何故なのでしょうか?

 以前も紹介させて頂いた本のP.80には、理論上は1.39だと書いてあります。かいつまんで箇条書きにします。

 ヘモグロビンの分子量は64500
 ヘモグロビン1gは1.55×10^-5(10の-5乗)mol(1÷64500)
 ヘモグロビン1分子には酸素が4分子結合
 ヘモグロビン1gには6.20×10^-5molの酸素が結合(1.55×10^5×4)
 0度1気圧で乾燥状態の1molの気体の体積は約22.4Lなので、ヘモグロビン1gに結合している酸素は1.39ml(22.4×6.20×10^-5)

 しかし、実際に測定すると、係数は1.34だったり1.36だったりするようです。これは酸素飽和度の問題、一酸化炭素ヘモグロビンなどの量の問題だそうです。つまり1.39などの係数の後にかけるHbや酸素飽和度が異なっているからなんだそうです。

 今回はこれだけにして、次回解説します!

2020年6月24日水曜日

慢性呼吸不全の場合

 今回も内科学会雑誌からです。2020年7月号P.1421から1426です。

 慢性的にPaCO2が高いと代謝性代償が起こります。つまりHCO3が高くなります。高いと言っても30だったり40だったり50だったりします。どのぐらいまで上がるのが正常なのか?が分からないと代謝性アルカローシスや代謝性アシドーシスを合併している時に分かりません。

 それが分かる物がsignificance bandあるいはconfidence bandと呼ばれる物です。混合性代謝異常がない(どうやって調べるのでしょうかね)慢性II型呼吸不全の患者さん(二酸化炭素分圧が高いだけ)を集めHCO3がどのぐらいだったかを調べて、横軸にPCO2縦軸にHCO3をプロットした物です。

 だいたいHCO3=24+0.35×ΔPaCO2だったそうです。ΔPaCO2=PaCO2−40です。よって、HCO3はそのぐらい(±5ぐらいでしょうか)であれば代償性変化だと判断できます。

2020年6月23日火曜日

ガラスのシリンジ懐かしい!

 昔の話をすると笑われますが、私が研修医の頃はガラスのシリンジがあり、血液ガス分析にもガラスの注射器を使っていました。当時今と同じプラスチックの注射器もあったのですが、血液ガス分析にはガラスの注射器の方が良いと言われていたのです。理由は以下の通り(Dr.大塚の血液ガスのなぜ?がわかる、大塚将秀著、学研、P.36)で、それは今でも知っておいた方が良いかもしれません。

・ガラスは気体を通さないため、採血後の気密性が保たれる。プラスチックは液体を通しませんが、気体はゆっくりですが通します。
・ピストンとシリンジの死腔にヘパリンを満たすと、全く空気に触れることなく採血が出来る。
・ピストンとシリンジ間の抵抗が非常に小さいので、動脈血から採血していると言う実感がある。

 しかし、現在は専用のシリンジが開発され、値段も安くなったのと、ガラスのシリンジが廃止された(と思われます)ので今の若い人は見たこともないでしょう。落として破損する事もありましたし、毎回洗浄するのも手間がかかるためだと思われます。

 ガラスのシリンジで採血した場合、針先をゴム栓でフタをしないと血液が出てきてしまいます。血液を落とさないようにゴム栓をするコツがあったのですが、そんな技術は今は役に立ちませんね(^^)。逆に針刺しのリスクもありますし。

2020年6月22日月曜日

代謝性アシドーシスの3ステップ法

 日本内科学会雑誌2019年6月号P.1177〜1180の受け売りです。この雑誌は1年たつと、JSTAGEで公開され、一般の人でも論文に無料でアクセスできます。

 取り上げる論文は、今月6月10日頃から一般公開される予定でしたが、何故かこの論文だけ公開されません。「苦手を得意に!血液ガスOne Step more」というシリーズで第3回なのですが、何故か第1回と2回も公開されていません。何かあったのでしょうか。

 私は内科学会に入っているので雑誌は持っており、血液ガスに関しては興味を持っていましたが、この論文見逃していました。雑誌も捨ててしまい、ネットの公開を待っていたのですが、、、、、

 代謝性アシドーシスの場合には、Boston法という方法で解析すれば簡単だそうです。3つの暗算(それも足し算と引き算のみ)をするだけです。もちろんですがpHが高い時は使えません。



 アシデミア(pHが7.35未満)であれば、ステップ(1)をします。

(1)AG(Na−CL−HCO3)を計算
  AGが12以下ならAG非上昇型(non-Gap)アシドーシス ステップ(3)へ。
  AGが12以上ならAG上昇型(Gap)アシドーシス ステップ(2)へ。

(2)Na−CLを計算
  36未満なら代謝性アシドーシス(AG非上昇型)も合併している。
  36を越えるなら代謝性アルカローシスも合併している。
  36であればAG上昇型代謝性アシドーシスのみ

(3)HCO3+15を計算
  PaCO2<HCO3+15 呼吸性アルカローシス
  PaCO2=HCO3+15 呼吸性代償
  PaCO2>HCO3+15 呼吸性アシドーシス

 この方法ではアルブミン補正が入っていませんので、アルブミン補正はした方が良いでしょう。補正AG=AG+2.5×(アルブミンの正常値−Alb)です。アルブミンの正常値は4でいいでしょう。4.4という文献もありましたが、2.5×0.4=1ですので誤差の範囲です。

 Na-CLの正常値は36だけかというとそうではないでしょう。36±5ぐらいはあると思われます。Na-CLが30以下であれば明らかにnon-Gapアシドーシスがあるでしょうし、40以上であれば代謝性アシドーシスがあるでしょう。両者が合併した場合はどうなるのか?興味深いところです。

 しかし、この方法は他の方法に含まれている物です。緊急で解釈が必要なのはアシドーシスだけではないかと思いますので、緊急時には役立つのではないかと思われます。が、極論を言えば、アシデミアであればBEと乳酸を見たら良いと思います。この二つを表示しない血液ガスの器械は今の日本にはないのではないでしょうか。BEが低い、あるいは乳酸が高い、あるいは両方があればヤバいと思えば良いです。BEは使うべきでないという意見もあるのですが、私は使うべきだと思います。後でちゃんと解析すれば良いだけです。BEだけ見て終わりでは確かにいけません。

2020年6月21日日曜日

専用のシリンジは何故血液が自然に上がってくるのか?

 血液ガス分析専用シリンジのプランジャーの先端には特殊なフィルターがつけられているそうです。当院で採用しているシリンジは以下のような物です。画像をクリックすると添付文書に飛びますので参考にしてください。



 このフィルターは乾燥していると空気を通します。よって、採血すると血液がシリンジの中に上がってきます。フィルターが血液で濡れると空気を遮断するのだそうで、採血後検査器械にセットするまで、空気中のガスと血液中のガスが行き来するのを防ぎます。

 また注射器から分注するような場合、プランジャーを完全に押し込んでおいて、血液を入れてフィルターに血液を満たすと普通の注射器と同じように使えます。

 偉そうに書いていますが、この事全然知りませんでした。フィルターを血液でぬらさずにプランジャーを引いていました。

2020年6月19日金曜日

大気の組成は多い順に窒素、酸素、二酸化炭素?

 大気の組成は窒素が約80%で酸素が約20%、次は二酸化炭素で0.04%(以前は0.03%だったのですが、現在増えて0.04%になったそうです)と言うことは知っていましたが、なんと、二酸化炭素よりも多い気体があるのだそうです。知りませんでした。
 以下の本の一番最初に書いてありました。こちらのサイトにもありますが、アルゴンだそうです。へえ〜です!内視鏡などでアルゴンプラズマという止血装置を使いますが、アルゴンガスが漏れても大丈夫だったんですね。


 初心者向けとのことですが、ページ数が多いだけあって情報満載です。最初の章は化学の復習ですし、所々に化学の知識が満載です。高校生の時もっと勉強しておけば!と思いました。とても勉強になる本です。

2020年6月18日木曜日

AGの正常値は低くなりつつあります

 AGについての記事が続きます。

 AG=Na−(CL+HCO3)はもう頭に入りましたよね。AGはNaが低くなったり、CLやHCO3が高くなると下がります。しかし、血液中の水分が多くなったためにNaが下がった場合には、CLやHCO3も下がるかもしれませんので、何とも言えませんね。

 以前、血液ガス分析の電解質を用いて計算するとAGは低めになることを書きました。血液ガス分析では電解質を全血で測定しています。他の影響もあるのかも知れませんが、Naは低め、CLは高めに出ます。よって、AGは低めになります。よって、私は必ず血液生化学分析の電解質を計算に使っています。

 しかし、驚くべき事に、AGの正常値が低下しつつあるんだそうです。検査値の正常値が下がり続けるって、人間の進化???と思いますが、違います。詳しいことは分かりませんが、CLを測定する器械が良くなっていて、CL濃度が上昇傾向なんだそうです。

 今はAGの正常値は12±2が一番多いようですが、イオン選択電極というのでCLを測定した場合、AGの正常値は3〜11と言う文献もあるようです。

 検査の正常値も時代と共に変わっていっているのですね。

2020年6月16日火曜日

AGをAlbで補正するなんて聞いたことなかったぞ!

 アニオンギャップをアルブミン値で補正するのは、ほぼ常識になりつつありますが、そんなこと知らなかったぞ!と言う人もおられると思います。私もそうです。いつ知ったのか覚えていませんが、5年ぐらいしかたっていません。

 研修医の頃血液ガスについて勉強したし、その後もそれなりに勉強したけどな〜なんて思っていましたが、なんとこちらの論文によれば15年ほど前から言われ始めたのだそうです(論文が出たのが2018年で13年前からと書かれています)。原文は「Surprisingly, it is only within the last 13 years that a correction factor has been developed that can be introduced into clinical practice.」です。日本語にすれば「驚くべき事に補正係数が示され、それが実際の診療に紹介されてから13年程度しか経っていない」という感じです。

 また同じ文献には、有名なテキストでアニオンギャップがどう書かれているかについての表が載っており、何とセシル内科学第24版にはアニオンギャップをアルブミンで補正する記載がまったくないとのことです。こちらによればセシル内科学の原著は2020年に第26版が出ているそうです。Albの補正が書かれているか読んでみたいですが、、、、、、28699円とのことです。病院で買ってもらおう、、、、、、、

 以下の本は研修医の時に第一版を読んで、その後第二版が出たと言うことで原著を買って良く読んだ記憶があるのですが、なんと、P.128にアルブミンが低下するとAGが低下すると書かれています。補正をしなさいとは書かれていませんが、しっかり読んだはずなのに、、、、、、英語だったから仕方がないと言うことにしておきましょう。第二版で出版が止まっているのが残念です。第二版の原著は1999年に出版されています。



 よって、「先生Alb補正するのは常識ですよ!そんなことも知らないんですか?」と若い先生に馬鹿にされたら以下のように対応しましょう。

 「アルブミン補正なんて、俺が研修医の頃はなかったぞ!少なくとも2005年までは、俺は血液ガスについて最新の知識を得ていたが、そんなのは載っていなかった!最近言われ始めたんじゃないのか?」と答える。

 「俺はセシル内科学を読破したけれど、そんなこと書いてなかったぞ!えっ!今は26版なんだ、、、、、、俺は24版を読んだんだけどな。」と答える。

 「そうなんだ、アルブミンで補正するなんて知らなかったよ〜。君はよく勉強しているね。ところで、何でアルブミンが低いとAGが低くなるんだ?」と答える。

 最後の様に言われた若い先生向けの記事を明日アップする予定です。

2020年6月13日土曜日

貴方は血液ガスに自信がありますか?

 この論文ずっと探していました!!昔読んだ本に書いてあったのですが、その本を紛失してしまい、どうやったら検索できるかと思っていました。が、ネット記事に引用されていたのを見つけました。

Hingston DM, Irwin RS, Pratter MP, Dalen JE: A Computerized Interpretation of Arterial pH and Blood Gas Data: Do Physicians Need It? Respiratory Care 1982;27(7): 809-815.

 学生や医師(ある程度のベテランも含む)に血液ガスの講義をし、コンピューターによる血液ガス解析プログラムの話をたところ、61%は血液ガスデータ分析の基礎知識はあると答え、71%はコンピュータによる血液ガスデータ分析は不要であると返答したそうです。しかし、血液ガスデータ分析クイズをしたところ、正答率はわずか39%に過ぎなかったというものです。

 つまり血液ガス分析は理解するのが困難だと言うことです。よって血液ガスを勉強する時に大切なことは、分からなくても良いんだと言う気持ちでやることです。どうしよう!?全然分からないと言っていると、全く分からないままです。少しで良いから分かれば良いと思います!

 私は基礎知識があり、ちゃんとクイズに正解できると言える自信はありません、、、、、、でも、そうなるように日々勉強しています。

2020年6月12日金曜日

Tic-Tac-Toeによる血液ガス分析のやり方

 動画の紹介です。

 Tic-Tac-Toe法というものです。普段から血液ガスの解釈をしている方は当然のことでこんなカード使わなくてもと思うかもしれませんが、初学者の人には良いと思います。

 以下の動画を是非ご覧ください。もちろんですが、日本語音声です。



 こちらには文字で解説がありますが、英語なのでGoogle chromeで翻訳して頂けば良いかなと思います。

2020年6月8日月曜日

HCO3は計算値?

 血液ガス分析のデータを見ると色々な値が載っています。最近の物は乳酸だけでなく、電解質やヘモグロビンまで載っています。他の検査がなくても血液ガス分析だけでもかなりの診断が出来そうです。

 救急科専門医の筆記試験に出題されていますが、実際に測定している項目はどれか知っていますか?

平成16年度実施救急科専門医・認定医筆記試験問題
問題10 血液ガス分析装置で計算値として表示するのはどれか。
(a)PO2
(b)PCO2
(c)pH
(d)HCO3-

(e)Hb

 この問題の答えは(d)です。pH=6.1+log([HCO3]/0.03×PCO2)なので、

[HCO3]=0.03×PCO2×10^(pH-6.1)と言う計算になります。

 しかし、アメリカなどでは血液生化学検査の項目にHCO3(正確にはtCO2)があり、血液ガスをとらないこともよくあるようです。論文(参考文献)によれば、血液ガスのHCO3(pHとPCO2から計算した値)と生化学検査で得られたtCO2はほぼ同じだという事です。日本でも血液生化学検査でtCO2(ほぼHCO3と同じ)を測定している病院があるのですね。

 普通に臨床をしているだけならあまり関係ありませんが、英語の論文を読んだり、別の病院(血液生化学でtCO2を測定している病院)の先生や外国の人と血液ガス分析についてディスカッションする場合には、血液ガスをしなくてもHCO3が出せることを知っておきましょう。

参考文献
 楠木 啓史ら:生化学分析装置における血清重炭酸塩(総 CO2)の 測定. 医学検査 Vol.67 No.1 2018

2020年6月7日日曜日

高血糖の時AGのNaは補正すべきなのか?

 以下の本に血液ガスの項目があります。



 糖尿病性ケトアシドーシスの患者さんの症例が載っていて、AGが上昇していると書かれています。本文中にAGの計算値やAGが上昇していると言う理由が述べられていません。アルブミンは書かれていませんでした。AGが上昇する一般的な解説は載っていてとても勉強になるのですが、この症例のAG上昇についての記載がないのです。

 Na123、CL98、HCO3 12.5とあり、自分で計算してみたらAGは12.5となり、上昇していません。Albの値も記載がありませんし、困ってしまったので出版社にメールをしてみました。著者の先生とはFBでお友達にさせていただいているので、直接聞いても良かったのですが、出版社を通した方が何か良いことがあるのではないかと思って(私にではなく著者の先生にですよ)出版社にメールをしてみました。何とその日のうちに著者の先生の返事が来ました(出版社を通じて)。対応が早い!!

 そのお返事には、高血糖(血糖590)の症例なので、Naの補正が必要だと書かれていました。Naを補正するとNa+1.6mEq×(血糖100mg/dL上昇あたり)=130.84となり、AGは20.34で上昇しているという計算になりますとのことでした。

 高血糖の場合に補正したNaを使うなんて聞いたことがなくて勉強になったと思い、どこかにその記載はないかと調べたところ、例えばUpToDateやいくつかのサイト(こちらこちら)には、そのままのNaを使うべきだと書かれていました。著者の先生からはカンファレンスで補正すると言う意見を聞いたことがあり、補正をするものだと思っていたとメッセージを戴き、資料も戴きました。次の版(卒後20年目総合内科医ぐらいでしょうか)で訂正しますとお返事戴きました。ありがとうございます!
 Letters to the editorに補正すべきではないと言う記載をしている文献もあり、補正する人が多かった(今も?)のでしょうか。

 少し解説すると、高タンパク血症や高脂血症の場合には、偽性低Na血症といって、ナトリウムが低く出るのですが、本当の血清中のNa値は正常です。よって、血液ガスでAGを出す場合には補正が必要です。

 しかし、高血糖の場合には、糖は電荷を持たないそうですので血糖を考慮に入れる必要はありません。また、血糖が高くなると細胞外液の浸透圧が上昇し、細胞内から水が引っ張られるので、Naだけでなく、CLやHCO3も低下します。例えば、上記の例のように、血糖が590だったとすると、Naは1.6×4.9=7.84低下するとされています。130.84が123に低下したとすると、AGは12.5だったものが11.75になります(ClもHCO3も同じ比率で低下しますから、12.5×123÷130.84です)。ほとんど差はありません。高血糖の場合には、Naは本当にその値に下がっているので、AGは電荷の平衡から考えられているので、補正をするなら全ての電解質を補正しなければならないはずです。

 よって、高血糖の患者さんでAGを計算する場合、Naを血糖で補正する必要はありません。良かった!

2020年5月29日金曜日

HCO3は計算値です

 以前も書きましたが、血液ガス分析のデータの中には実際に測定していないものがあります。小数点以下の数値まで出ているから正確な気がしますが、実はそうではありません。

 pH、PCO2、PO2は実際に測定していますが、HCO3やBEは計算値です。測定値にある程度誤差がありますから、当然計算値にも誤差が出ます。

pH=6.1+log([HCO3]/0.03×[PCO2])

 と言う関係がありますので、pHとPCO2が測定できれば、以下のような計算で算出できます。

[HCO3]=0.03×[PCO2]×10^(pH-6.1)

 pHが7.4だった場合、PCO2が40だったとすると、HCO3は23.94となります。色々調べたところ、PCO2は±2ぐらい誤差が出る可能性があるようです。PCO2が42でpHが7.4だとHCO3は25.14となります。PCO2が38だとHCO3は22.75となり、HCO3は2.39の幅を持った範囲になります。pHの誤差も出ると考えるともう少し幅が広くなるのでしょうか。

 よって、HCO3が5以上上がったり下がったりしているなどがなければ、誤差の範囲と考えて経過観察するのも良いかもしれません。

 例えば、こちらの論文では、二つの器械を使って計算したところ、一つの器械ではアルカローシスと診断されたのに、もう一つの器械ではアシドーシスと診断された例があると書かれています。知りませんでしたが、器械によってHCO3算出の計算方法や、係数が違っているのだそうです。

 そう言うのは大変困りますが、検査データはある幅を持った値であることを忘れないようにしたいですね。

 患者さんの状態なども考慮して、総合的に判断しなければなりません。データに惑わされないようにしましょう。