2020年6月17日水曜日

アルブミンが低いとAGが低下する理由

 昨日の続きです。アルブミンが低いと何故アニオンギャップが低下するのか?です。

 最初にUpToDateです。「Serum anion gap in conditions other than metabolic acidosis(代謝性アシドーシス以外の状況における血清アニオンギャップ)」という文献からです。

 原文は以下の通りです。

 Albumin has many positive and negative charges due to various amino acid side chains that can either release or bind hydrogen ions. The ratio of albumin's positive and negative charges changes with the pH of the solution. At pH 7.4, albumin carries approximately 20 more negative charges than positive charges (therefore each molecule has a net charge of -20). The major unmeasured anion in serum is albumin. Thus, the serum albumin must be measured and taken into account when calculating and interpreting the serum AG.

 アルブミンは様々な陽性電荷、陰性電荷を持つアミノ酸の側鎖を持つ。その側鎖は水素イオンを放出したり受け取ったりする。アルブミンの電荷は、アルブミンが溶けている溶液のpHにより変化する。pHが7.4の場合、アルブミンは陽性電荷を持つアミノ酸より陰性電荷を持つアミノ酸が20多くなる。それによりアルブミン分子は全体として−20の電荷を持つ。血清の主要な測定されない陰イオンはアルブミンである。よって血清アルブミンは必ず測定し、血清アニオンギャップを計算し、解析する場合には、アルブミン値を考慮に入れるべきである。

 と言うことです。人間の身体の中の電荷は中性になっているそうです。よって以下の式が成り立ちます。

Na+UC(測定されない陽イオン)=CL+HCO3+UA(測定されない陰イオン)

 AGの式にすると

AG=Naー(CL+HCO3)=UAーUC

 UAが減るか、UCが増えるかするとAGは低下します。アルブミンはUAなので、UAが減ればAGが減少するというわけです。また、アルブミンはたぶんpHが7.4に近いところにあるとHイオンを放出(するから陰性の電荷を持つのでしょう)するそうです。そのような物質は定義から酸です。低アルブミン血症では代謝性アルカローシスになることも分かります。

 UAが減ったらUCも一緒に減らないのか?減ればAGは変わらないじゃないかと言われるとそうなのです。しかし、何故UCが一緒に減らないのか、、、、、、今のところ分かりません。

 今分かることは、NaやCLは強イオンと呼ばれていて、水溶液中では必ずイオンに分離するそうです。よってNaなんとかとか、何とかCLになって電荷が減るということはありません。また急に外に出すことも難しいでしょうから、NaとCLはAlbの変化によって直接すぐ変化することはないのでしょう。

 HCO3は容易にイオンになったりHとくっついて二酸化炭素と水になったりします。よってUAが低下するとHCO3がその分増えて電気的中立を保とうとします。よってUAが減るとHCO3が増えて代謝性アルカローシスになります。

 昨日の若い先生に向けて。「アルブミンが減るとUAが減るからAGが減るのです!」と分かったような顔をして答えましょう、、、、、、知らんけど。

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