こちらのブログの内容そのままです。が、ガイドラインが新しくなりましたので、少し新しくしました。
心肺蘇生中に血液ガスを採取すべきか?という問題は、いつも議論になるところです。あれ?取るに決まってますか?私はとらない方が良いと思っています。
以下に理由を。
・検査する意義がない(行動が変わらない)。
・だいたい静脈血です。
・データを見てしまうと、どうしても治療したくなる。
解説?の前に、ERC(ヨーロッパ蘇生協議会)のガイドラインから。
Blood gas values are difficult to interpret during CPR. During
cardiac arrest, arterial gas values may be misleading and bear
little relationship to the tissue acid-base state. Analysis of central venous blood may provide a better estimation of tissue pH.
以下は私の下手な日本語訳です。
心肺蘇生中の血液ガス分析のデータは解釈が難しい。心肺停止中は、血液ガス分析の値は間違った値であり、組織の酸塩基平衡異常との関連はほとんどない。中心静脈から採取した血液で分析すると組織pHをより反映した値になるかも知れない。
・検査する意義がない(行動が変わらない)。
検査は、その結果によって行動が変わるから行うものです。合コンで年齢や職業、年収などを聞くのは、それによって対象外とするかどうかを決めるからでしょう(たぶん)。
血液ガスは、肺の酸素化能、動脈血中の酸素の量、二酸化炭素の量、代謝の問題などが分かります(電解質も分かりますが、それについては後で述べます)。
酸素化能、酸素の量、二酸化炭素の量については、検査結果がどうであれ、蘇生をしっかりする以外に改善する方法がありませんし、そもそも血液ガスのデータを見てから、それらを改善するなんてダメでしょう。過換気はいけませんから、二酸化炭素が高かったからと言って、換気の方法を変えるべきではないでしょう。
代謝の問題は色々です。心肺停止中は高いに決まっていますから、検査する意義はあまりないかも知れません。高くても私はメイロン使いませんし。
・だいたい静脈血です。
心肺蘇生中に拍動しているのは、静脈の可能性が高いです。下大静脈には逆流防止弁がないので、胸骨圧迫の圧が動脈と同じように伝わってきます。壁の薄い静脈の方がよく触れる場合もあります。静脈血の評価は、心肺停止であれば、よけいに難しいです。
・データを見てしまうと、どうしても治療したくなる。
例えばpHが6.9だった場合、メイロンを入れたくなります(使わないと宣言している私でも)。メイロンは心肺停止患者さんの社会復帰率を高めると言うエビデンスはありません。メイロンには様々な不利益があるため、使わない方が良いとされています。
反論ももちろんあります。
・電解質は普通の採血より早く分かるから有用である。
確かに仰るとおりです。JRCのガイドライン2015(こちらのP.12)にも「原因検索は心停止に至った状況や既往歴、身体所見などから行うが、迅速に結果の得られる動脈血ガス分析や電解質の検査結果が役立つこともある 」とあります。ERCのガイドライン2015(P.111)にも同様の記載があります。電解質については私も賛成します。
・アシドーシスが原因で心停止した場合には、メイロンが有用ではないのか?
メイロンが有用かどうかも分かりませんし、血液ガスの結果でアシドーシスが結果なのか原因なのかは分からないでしょう。
・心拍再開の予想が出来る。
こちらの論文によれば、来院してから4分以内にとった血液ガスデータでPaCO2が75mmHgより低ければ、75mmHg以上だった場合に比べて、心拍再開する可能性が3.3倍高いそうです。が、PaCO2が70mmHgだったとしても、100%心拍再開するわけではないし、PaCO2が100だったからと言って直ぐあきらめて良いのかと言えば、そうではありませんね。
どちらにしても以下のことを推奨します。
・血液ガスは医師がとらなければならないので、優先される事をしっかりやってから採血しましょう。
・結果は電解質を見るだけにしましょう。
<今日の極論ポイント>
血液ガスを優先して採取するような蘇生のやり方は改善しましょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿