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2020年7月6日月曜日

カリウムが高い時も血液ガスが役に立ちます(pH以外)

 酸塩基平衡と電解質は密接な関係があります。カリウムもpHと関係があるのは有名です。

 アシドーシスになると、少しでもそれを緩和しようと細胞がHイオンを細胞内に取り込みます。その際にKと交換するようです(何かの陽イオンと交換しないと細胞内が+になってしまいます)。よって、細胞内からカリウムが放出され、高カリウム血症となります。アルカローシスになると逆に低カリウム血症となります。

 今回の話題は偽性高カリウム血症です。つまり患者さんの体の中のカリウム濃度は正常なのに、採血するとカリウムが高いと報告されると言う状態です。これに血液ガスが役に立ちます。

 結論を先に言うと、血清カリウム値が高いのに、血液ガス分析で行ったカリウムが正常だったら、これは偽性高カリウム血症だと言えます。血小板が異常に高値の場合です。

 血小板がたくさんあると、血液が固まる時にカリウムがたくさん放出され、カリウムが高いと報告されてしまうようです。復習ですが、血液生化学、いわゆるプレーン採血は、血液に抗凝固薬を入れないで血液を固まらせ、固まった部分は取り除いて検査をします。血液が固まるまである程度の時間がかかるため、血液生化学検査は例えば10分では結果は出ません。

 でも茶色のスピッツに何か入ってますよ!と言う貴方、するどいです。あれは凝固促進剤であり、検査室の人が必要なものであって、我々患者さんのそばにいる人間にはあまり関係ありません。間違っても血液を注射器で採血し、茶色のスピッツに最初に血液を入れるようなことはしていませんよね。極論を言えば、注射器のまま検査室に提出し、検査室で茶色のスピッツに入れても良いのです、あれは。

 よって偽性高カリウム血症を予防するには、血液に抗凝固薬を入れて検査すれば良いです。何でも良いのですが、血液ガスの注射器には抗凝固薬が入っていて、カリウム塩ではありません(通常ヘパリンリチウムです)。

 血小板が多い人でカリウムが高いと報告されたら、もちろん心電図は直ぐとってカリウムが高い可能性も探りますが、血液ガス分析をやってみましょう。

 緊急の場合には、カリウムをプレーンの採血でオーダーすると20分ぐらいは結果が出ませんから、結果が1分もあれば出る血液ガス分析もしましょう。

 ちなみに、血小板と言えば、「はたらく細胞」の血小板を思い出してしまいます。可愛すぎます!

2020年6月8日月曜日

HCO3は計算値?

 血液ガス分析のデータを見ると色々な値が載っています。最近の物は乳酸だけでなく、電解質やヘモグロビンまで載っています。他の検査がなくても血液ガス分析だけでもかなりの診断が出来そうです。

 救急科専門医の筆記試験に出題されていますが、実際に測定している項目はどれか知っていますか?

平成16年度実施救急科専門医・認定医筆記試験問題
問題10 血液ガス分析装置で計算値として表示するのはどれか。
(a)PO2
(b)PCO2
(c)pH
(d)HCO3-

(e)Hb

 この問題の答えは(d)です。pH=6.1+log([HCO3]/0.03×PCO2)なので、

[HCO3]=0.03×PCO2×10^(pH-6.1)と言う計算になります。

 しかし、アメリカなどでは血液生化学検査の項目にHCO3(正確にはtCO2)があり、血液ガスをとらないこともよくあるようです。論文(参考文献)によれば、血液ガスのHCO3(pHとPCO2から計算した値)と生化学検査で得られたtCO2はほぼ同じだという事です。日本でも血液生化学検査でtCO2(ほぼHCO3と同じ)を測定している病院があるのですね。

 普通に臨床をしているだけならあまり関係ありませんが、英語の論文を読んだり、別の病院(血液生化学でtCO2を測定している病院)の先生や外国の人と血液ガス分析についてディスカッションする場合には、血液ガスをしなくてもHCO3が出せることを知っておきましょう。

参考文献
 楠木 啓史ら:生化学分析装置における血清重炭酸塩(総 CO2)の 測定. 医学検査 Vol.67 No.1 2018

2020年6月7日日曜日

高血糖の時AGのNaは補正すべきなのか?

 以下の本に血液ガスの項目があります。



 糖尿病性ケトアシドーシスの患者さんの症例が載っていて、AGが上昇していると書かれています。本文中にAGの計算値やAGが上昇していると言う理由が述べられていません。アルブミンは書かれていませんでした。AGが上昇する一般的な解説は載っていてとても勉強になるのですが、この症例のAG上昇についての記載がないのです。

 Na123、CL98、HCO3 12.5とあり、自分で計算してみたらAGは12.5となり、上昇していません。Albの値も記載がありませんし、困ってしまったので出版社にメールをしてみました。著者の先生とはFBでお友達にさせていただいているので、直接聞いても良かったのですが、出版社を通した方が何か良いことがあるのではないかと思って(私にではなく著者の先生にですよ)出版社にメールをしてみました。何とその日のうちに著者の先生の返事が来ました(出版社を通じて)。対応が早い!!

 そのお返事には、高血糖(血糖590)の症例なので、Naの補正が必要だと書かれていました。Naを補正するとNa+1.6mEq×(血糖100mg/dL上昇あたり)=130.84となり、AGは20.34で上昇しているという計算になりますとのことでした。

 高血糖の場合に補正したNaを使うなんて聞いたことがなくて勉強になったと思い、どこかにその記載はないかと調べたところ、例えばUpToDateやいくつかのサイト(こちらやこちら)には、そのままのNaを使うべきだと書かれていました。著者の先生からはカンファレンスで補正すると言う意見を聞いたことがあり、補正をするものだと思っていたとメッセージを戴き、資料も戴きました。次の版(卒後20年目総合内科医ぐらいでしょうか)で訂正しますとお返事戴きました。ありがとうございます!
 Letters to the editorに補正すべきではないと言う記載をしている文献もあり、補正する人が多かった(今も?)のでしょうか。

 少し解説すると、高タンパク血症や高脂血症の場合には、偽性低Na血症といって、ナトリウムが低く出るのですが、本当の血清中のNa値は正常です。よって、血液ガスでAGを出す場合には補正が必要です。

 しかし、高血糖の場合には、糖は電荷を持たないそうですので血糖を考慮に入れる必要はありません。また、血糖が高くなると細胞外液の浸透圧が上昇し、細胞内から水が引っ張られるので、Naだけでなく、CLやHCO3も低下します。例えば、上記の例のように、血糖が590だったとすると、Naは1.6×4.9=7.84低下するとされています。130.84が123に低下したとすると、AGは12.5だったものが11.75になります(ClもHCO3も同じ比率で低下しますから、12.5×123÷130.84です)。ほとんど差はありません。高血糖の場合には、Naは本当にその値に下がっているので、AGは電荷の平衡から考えられているので、補正をするなら全ての電解質を補正しなければならないはずです。

 よって、高血糖の患者さんでAGを計算する場合、Naを血糖で補正する必要はありません。良かった!

2020年3月18日水曜日

HCO3+15の続き

 昨日紹介した論文のタイトルは「Bedside rule secondary response in metabolic acid-base disorders is unreliable」です。日本語にすれば、「代謝性アシドーシスにおける代償性反応を簡単に予想できる式は信頼できない」と言う感じです。

 原文を読んでみました(ネットでは雑誌の購読者しか読めませんが、ある方法で原文を手に入れました)。

 ハリソン内科学やUpToDate、American College of Physicians guidelineにも、HCO3+15が紹介されていて、不正確だから削除すべきだという内容です。

 ハリソンは持っていないのですが、UpToDateはたぶん「Approach to the adult with metabolic acidosis(成人の代謝性アシドーシスへのアプローチ)」という文献で、Winterの式、HCO3+15以外に以下を紹介しています。

 pHの小数点以下とPCO2が同じという物です。pHが7.25ならpCO2は25ぐらいだというのです。

 これら三つとも使用できると書いています。

 論文では、代謝性アシドーシスではWinterの式とHCO3+15、代謝性アルカローシスでは0.7×([HCO3]−24)+40とHCO3+15を比較して、差がある(最大6)から良くないと書いているのですが、もしかしたらHCO3+15の方が正しいのかも知れないのに、それについてのコメントはありませんでした。

 そもそも、例えばHCO3が15だった場合の正しい?PCO2はいくらなのかどうやって決めるのでしょうか?

 人間の身体は色々ですし、Winterの式も±2なので、最大4の差があるわけですから、簡単に15を足すということで良いのではないかと思いました。

 気になる方は、電子カルテにひな形を入れておけば良いと思います。簡単にコピー出来ますから、代謝性アシドーシスでは40−1.25×(24−[HCO3])、代謝性アルカローシスでは40+0.75×([HCO3]−24)と書いておいて計算すれば良いかもしれません。
 もっと気になる方は、全ての方法で計算して比較し、どれを採用するか考えたら良いと思います。

 しかし、呼吸性アルカローシスと判断しても呼吸性アシドーシスと判断しても、大切なのは患者さんの状態であり、あまり厳密に考える意義はないのかもしれません。単純に患者さんの状態とPCO2の値だけで今後の介入を考えても良いでしょう。

 なので、私はHCO3+15、あるいはpHの小数点以下がPCO2と言う簡単な物をお勧めします。大切なことは、これらは不正確な可能性があると知っていることです。禁忌な治療であっても、禁忌だと知っていればやって問題ないです。それでもやりたいわけですし、禁忌である理由(その為に起こり得る副作用)に気をつけますので。

2020年3月17日火曜日

PCO2=HCO3+15はだめ?

 以前代謝性アシドーシスや代謝性アルカローシスの場合に、PCO2がHCO3+15位になればちょうど良い代償性変化だと書きました。
 しかし、最近読んだHospitalistと言う雑誌の特集に、HCO3+15は「勧められない」と書かれていました。

 がーん!!

 その雑誌はHospitalistの最新刊で、Vol.7、P.868-875, 2019です。内科エマージェンシーの特集で「代謝性アシドーシス」のところです。

 こちらの論文で不正確だと指摘されているそうで、以下の式(Winters formula)を推奨しています。

PCO2=1.5×[HCO3]+8±2

 濃度を表す時には、[]を使うのが正しいのだだそうです。きっと学生時代に習ったんでしょうが、忘れてしまいました、、、、、、また、本当はHCO3の後に「-」等電荷を上付きでつけなければなりませんが、入れ方が分かりません、、、、、、すみません。

 以前紹介した本「酸塩基平衡の考え方(南江堂)」のP.108-109には、両者の計算値が載っています。一番正しい?PCO2の予想は、代謝性アシドーシスでは予想PCO2=PCO2−(24−HCO3)×1.25だそうで、代謝性アルカローシスでは、予想PCO2=PCO2+(HCO3−24)×0.75だそうです。

 HCO3+15は、HCO3が正常値から外れるに従って予測値と大きく差が出てきます(と言っても4は越えない)。
 Winters formulaは、代謝性アシドーシスに限って使う物のようですが、軽度のアシドーシスの時には予測値と外れています(が同じように4は越えません。何とHCO3が24の時が一番差が大きい)。

 よって、代謝性アルカローシスと軽度の代謝性アシドーシスではHCO3+15を用い、HCO3が14を切るぐらいの重症な代謝性アシドーシスではWinnters fomulaを使うのが良いかもしれません。しかし、Winterus fomulaは±2と言うのがついていて、曖昧ですよね。

 と言うか、最初から代謝性アシドーシスならHCO3の変化×1.25を引き、代謝性アルカローシスならHCO3の変化×0.75を足せばイイじゃない!ってことになりませんかね。アシドーシスは1.25、アルカローシスは0.75を覚えるのが大変なので、+15を覚えれば良いので、HCO3+15で良いんじゃないでしょうか。人間の身体は計算通りにはいきませんしね。

<今回の極論ポイント>
 呼吸性代償はやはりHCO3+15で良いでしょう。

2020年3月12日木曜日

著明な循環血液量減少の患者さん

 高齢の男性が、著明な循環血液量減少にて来院されました。意識は清明でしたが、脈拍数は135/分で血圧は100前後でした。

血液ガス分析のデータ
pH 6.785
PCO2 28.5 mmHg
PO2 226 mmHg(酸素10リットル/分投与)
HCO3 4.2 mmol/L
BE -30.7 mmol/L
Lac 19.15 mmol/L

血液生化学検査のデータ
Na 127 mEq/L
K 4.6 mEq/L
CL 92 mEq/L
P 16.9 mg/dL
Alb 2.4 g/dL

AG 35 アルブミン補正をすると 36.56

 まず酸素化能です。
 A-aDO2=(760-47)×0.9−226−28.5÷0.8=380.1となるため、激しい酸素化能障害があります。代償性ショック状態ですので大量輸液と気管挿管となりました。

 pH<7.4でPCO2<28.5のため、これは代謝性アシドーシスであると分かります。
 代謝性変化の時は、PCO2=HCO3+15程度であれば代償の範囲だと分かります。計算すると19.2であり、PCO2はそれより高いです。よって、呼吸性アシドーシスを伴っています。
 ΔAG=36.56−12=24.56で、補正HCO3=HCO3+ΔAG=28.76となり、軽度の代謝性アルカローシスも伴っています。もしかしたら、AGが上昇しない代謝性アシドーシスもあるかも知れません。

 診断をまとめると以下のようになります。

酸素化能障害(気管挿管が必要)
呼吸性アシドーシス
AG上昇型代謝性アシドーシス
代謝性アルカローシス(AG非上昇型代謝性アシドーシスもあるかも)

 次回はこの患者さんをStewart法で解釈します。

2020年2月29日土曜日

乳酸値上昇は失神より痙攣発作を疑わせます

一時的な意識障害の患者さんが来られた時に、失神なのか痙攣なのか鑑別に困ることがあります。救急外来では痙攣が治まっていることが多いですし、現場を目撃した人がいないとなおさらです。

そんなときに役立つのが乳酸です。例えば以下のような60歳ぐらいの女性のデータを示します。

pH 7.063
PaCO2 43.7 mmHg
PaO2 393.7 mmHg
HCO3 12.2 mmol/L
BE −17.6mmol/L
Anion Gap 30.2 mmol/L
Lac 13.47 mmol/L

100%酸素投与下でのデータで、この方は意識障害が続いており、痙攣も目撃されていたので、データがなくても分かりますが、乳酸値が非常に高いです。乳酸値が2.5以上かどうかで判断すると、感度73%、特異度97%とのことです。こちらのブログをご覧ください。

他にもアンモニアやプロラクチン、CKが有用のようですが、一番大事なのは問診と身体所見であることはお忘れなく。

2020年2月27日木曜日

急性呼吸性アシドーシスではBEは低下しません

 一昨日の続きです。BE(ベースエクセス;base excess)は、代謝性アシドーシスを素早く判定するための指標だと書きました。よって?急性呼吸性アシドーシスでは変化しないとのことです。

 今回はその理由を書いてみます。

 まず、急性呼吸性アシドーシスでは、PaCO2が1上昇すると、HCO3が0.1上昇するそうです。以下のような反応が起こるからだとされています。

CO2+H2O→H2CO3→Hイオン+HCO3

Hイオンは、BB(バッファーベース)中のAlbイオンなどと結合し、BBが減ります。しかし、HCO3が同じ量出来ていますので、BBは減りません。BEはBBが減ると低下するとされていますので、これだけでBEは低下しないことが分かりますが、それらについては、また後日(私がまだ理解していないから)。

BE=HCO3-24.2+16.2×(pH-7.4)

でした。例えばPaCO2が40から50に上昇したとすると、HCO3は1上昇し、25になるとします。

pH=6.1+log(HCO3/0.03/PaCO2)

なので、代入して計算(関数電卓を使用しました)すると、pHは7.32になりました。

計算すると、BEは-0.496でほとんど正常です。

同じようにPaCO2が60に上昇したとすると、HCO3は26となり、pHは7.26で、BEは-0.468となりました。

確かに急性呼吸性アシドーシスではBEは低下しないようです。

2020年2月25日火曜日

BEは見なくても良いです(もちろん見ても良いです)

 BE(ベースエクセス;base excess)は、一目で代謝性アシドーシスを見つけるための指標のようで、緊急時にはよく使われています。BEが低い場合には、HCO3も低く、代謝性アシドーシスがあると考えて良いことが多いです。詳しくは省きますが、急性の呼吸性アシドーシスではBEは低下しません。

 BEは以下のような式で計算されます(一例です。色々あるようです)。

BE=HCO3−24.8+16.2×(pH−7.4)

 機械の業者さんによって違うようですが、上記のように、BEとHCO3はほぼ一対一です。

 しかし、色々限界があることも知っておかなければなりません。それは以下の通りです。

・低アルブミン血症では高くなる。
・pHの値がおかしい(HCO3とは逆の方向に呼吸性代償が強く働いた時など)場合にはHCO3と解離する。
・HCO3の変化が一次的な変化なのか、代償による変化なのかを区別できない。

 一つずつ説明します。低アルブミン血症ですが、以前書いたようにアルブミンは血液中でHイオンとAlbイオンに分離します。分離してHイオンを出す物質は酸と言う定義でした。よって、アルブミンは酸ですので、アルブミンが低くなれば、代謝性アルカローシスになります。BEはアルブミンが正常であるという前提で計算されるそうです。

 pHの値がおかしい場合です。HCO3が低くなったのに、呼吸性アルカローシスが合併し、pHが上昇した場合、BEの低下はそれほどでもなくなります。同じようにHCO3が高くなったのに呼吸性アシドーシスが合併してpHが低下した場合、BEの変化は少なくなります。

 代償かどうかについては、BEがHCO3とpHのみで決められていますから、区別がつきにくいです。

 一説によれば、昔は乳酸などが測定できなかったので、緊急時にBEを見て代謝性アシドーシスがあるなと思うような状況だったようですが、今は乳酸を測らない血液ガスは、クリープを入れないコーヒーのような(古い!)ものですので、BEを見る必要はないかも知れません。

 が、簡単に計算できるので、たぶん10年後にも、血液ガス分析のデータにはBEが計算され続けるでしょう。tCO2みたいに。

2019年4月5日金曜日

pHはピーエッチ?ペーハー?

 久しぶりの投稿です。今以下の本を読んでいます。初学者にも分かりやすい本ですのでお勧めです。

 酸塩基平衡の考え方 丸山一男著 南江堂

 その本の最初の方に、pHをペーハーと読むのは年配者と書かれていて驚きでした!そっか、これはドイツ語読みなので、現在は英語読みでピーエッチと教えているのだそうです。学校の先生をしている人に聞いたら、やはりピーエッチと教えているんだそうです。

 医療業界ではピーエッチと聞いた事があまりないのですが、それは働き始めるとみんながペーハーと言っているから訂正されるためなんだそうです。

 これから研修医の先生たちがピーエッチと言っていたら訂正しないように気をつけないといけないですね。

2018年11月28日水曜日

痛みが強くて過換気になった患者さん

 30歳ぐらいの男性が尿管結石による痛みで来院されました。激しい痛みのため冷や汗をかいていました。ペンタゾシン30mgを静注して対応しました。

 酸素投与なしでSpO2が100%を示しており、これは異常値とされていますので、血液ガスをとりました。呼吸回数は30/分でした。

pH 7.660
PaCO2 16.3 mmHg
PaO2 118.4 mmHg
HCO3 18.0 mmol/L
Anion Gap 15.3 mmol/L
Lac 1.51 mmol/L

 と言うデータでした。まず酸素可能を評価します。A-aDO2=150−118.4−16.3/0.8=11.2となり、酸素化能障害はありません。低酸素のために過換気になったのではないと考えられます。

 pHの上昇とPaCO2の低下が見合っているかどうか考えます。PaCO2が1低下するとpHは0.008上昇するとされていますので、予想されるpH=7.4+0.008×(40−16.3)=7.59程度となります。過換気による異常+代謝性アルカローシスがあると考えて良いでしょう。しかし、この人では追求しませんでした。

 結構強そうな男性でも痛みによって過換気になるのだなあと思った一例でした。

2018年3月20日火曜日

過換気症候群と乳酸値

 またまたさぼってしまっていました。すみません。

 今日の朝医局の勉強会で上記のテーマで勉強会がありました。全然知りませんでしたが、過換気症候群の患者さんで乳酸値が上昇することがあるのだそうです。

 それは乳酸アシドーシスを呼吸で代償しているんじゃないの?と思うあなたはさすがです。そう言う場合もあるし、たぶん、そう言う場合の方が頻度が高いでしょう。

 しかし、本当に過換気症候群で乳酸が高いことがあるのだそうです。こちらのリンクをご覧ください。

 知らないことばかりで日々勉強が必要ですね!

2018年3月1日木曜日

緊張性気胸の患者さん

 78歳の男性で、慢性閉塞性肺疾患で通院中です。呼吸困難があり、SpO2が低下していると言うことで救急搬送されました。現場では酸素10L/分流しても、SpO2が75%だったそうです。

 大きなことは言えませんが、高流量かつ高濃度の酸素を投与してもSpO2が上昇してこなければ、やはりバッグバルブマスク換気でしょう!なのに、、、、、、、、、、ここでは書きません。

 来院時の血液ガスです。バックバルブマスク換気を始めて直ぐぐらいの採血です。

pH 7.087
PCO2 92.4 mmHg
PO2 84.8 mmHg
HCO3 27.2 mol/L
BE −4.7 mol/L
乳酸 2.56 mol/L

 PaCO2が高いですよね。急激に意識が悪くなったとのことでしたので、有名なCO2ナルコーシスになったのかも知れません。この人の初期対応としては、酸素をやってはいけないということではなく、酸素投与にもかかわらずSpO2が低かったのですから、もう限界と言うことで換気を助けてあげれば良かったのです。酸素を投与したために、気管挿管が必要になるとか、そういう事はありません。低酸素であれば、酸素投与をし、それでもダメなら換気をしましょう!COPDがあるような人では、SpO2が90%ぐらいあれば良いでしょうが。

 この方は気管挿管され、一回換気量400mlぐらいを送るとピーク圧ーPEEPが25mmHgぐらいになっていました。25mmHgは1.36をかけて34cmH2Oなので、動的コンプライアンスは400ml÷34cmH2O=11.8ml/cmH2Oです。正常値は50〜100ml/cmH2Oなので、かなり肺が膨らみにくい状態ですね。

 レントゲンを撮ったら気胸でした!直ちに脱気をしました。するとピーク圧が5mmHgぐらいに低下しました。すごい変化ですね。動的コンプライアンスは、400÷5÷1.36=58.8ml/cmH2Oと正常になりました!すごい変化ですね!!

 その後あまりに元気になったので抜管してから血液ガスをとりました。酸素を経鼻で2リットル/分投与しています。

pH 7.368
PCO2 43.2 mmHg
PO2 72.7 mmHg
HCO3 24.3 mol/L
BE −1.1 mol/L
乳酸 1.76 mol/L

 A-aDO2が72.94 mmHgと酸素化能障害はありますが、酸塩基平衡は問題ありません。代償性変化がないので、急性の呼吸性アシドーシスだったのだと思われます。

<今回のポイント>
 酸素は大事です!
 おかしいなと思ったらCOPDの人でも酸素投与をしましょう。
 それでもSpO2が上がらなければバックバルブマスク換気をしましょう!

2018年1月10日水曜日

肺気腫の患者さん

 今年になってから全然更新していませんでした。すみません。

 さて、肺気腫の患者さんが発熱で来院されました。80歳の女性で、在宅酸素療法をしている方で、酸素を1.25リットル流しています。救急隊の方が4リットル投与で搬送してきました。落ち着いていたので酸素2リットル投与に減量しての血液ガスデータです。

 体温は38度、呼吸数は20/分、SpO2は94%でした。肺炎でしょうか?

pH 7.311
PCO2 81.6 mmHg
PO2 78.0 mmHg
HCO3 40.3 mmol/L
BE 11.6 mmol/L
AnionGap 11.5 mmol/L
乳酸 1.09 mmol/L

 まず最初に酸素の値を見ます。PaO2はまあ70 mmHg以上あれば、取りあえず良いのでしたね。よって、この人の酸素分圧は大丈夫です。
 次に酸素化能障害を診ます。AaDO2を計算すると、だいたい20 mmHgです。年齢の0.3以下という基準をとってみても、酸素化能障害はありません。咳もありませんので、肺炎ではないと考えました。CTも撮りましたが、異常はありませんでした。

 次はpHですね。7.4より低いので、アシドーシスがあります。
 PaCO2が上昇していますので、アシドーシスの原因は呼吸性のようです。
 呼吸性アシドーシスが急性に来たとすると、pHは7.06ぐらいになります(PaCO2が1上昇するとpHは0.008下がります)。pHはそれよりもかなり高く、代謝による代償がされていると思われ、慢性のCO2貯留があったのだと考えられます。慌てて気管挿管とか考えなくて良かったです。

 この方は尿路感染症でした。それにしても、PaCO2が80 mmHg以上あるのに、平気な人がいるのですね!

2017年12月14日木曜日

透析患者さん

 失神で来院された85歳の透析患者さんのデータです。

pH 7.287
PCO2 35.6 mmHg
PO2 95.1 mmHg
HCO3 16.6 mmol/L
BE −9.1 mmol/L
AnGAP 20.2 mmol/L
乳酸 0.78 mmol/L

必ず酸素から評価します。
PaO2は95.1 mmHgと良い値です。酸素化能障害はありません(A-aDO2=10 mmHg)。

pHは7.4より低くアシドーシス、アシデミアです。
PaCO2は正常範囲内です。よって主たる異常は代謝性アシドーシスです。
HCO3は正常値の24 mmol/Lよりも7.4 mmol/L低下しています。アニオンギャップも正常値の12 mmol/Lよりも8.2 mmol/L上昇していますので、アニオンギャップが上昇するタイプの代謝性アシドーシスです。透析患者さんですので当たり前ですね。
補正HCO3を求めると、測定されたHCO3+アニオンギャップの上昇値=16.6+8.2=24.8 mmol/Lとなり、正常値です。
呼吸による代償性変化は色々ありますが、PaCO2=HCO3+16と言うのを採用すると32.6 mmHgとなりほぼ正常と考えて良いでしょう。

よって、この患者さんは代謝性アシドーシス(アニオンギャップ上昇)のみという事になります。強いていえば、軽度の呼吸性アシドーシスが合併していると言っても良いかも知れません。

アニオンギャップ上昇のアシドーシスを見つけたら、以下の4つを考えます。
乳酸アシドーシス
ケトアシドーシス
腎不全
中毒

この方は透析患者さんなので(透析直前の値です)当然の結果ですね。

2017年12月13日水曜日

循環血液量減少の患者さん

 今日の患者さんは前日より下痢が続いていると言う80歳の男性です。血圧が普段120mmHg前後なのに、80/38mmHg、脈拍数が78/分(心房細動のためにシベノール内服中)と言う状態でした。ルームエアーでの採血です。

pH 7.553
PCO2 22.1 mmHg
PO2 76.7 mmHg
HCO3 19.0 mmol/L
AnGAP 16.6 mmmHg
乳酸 2.48 mmol/L

まず酸素から評価します。PaO2は70mmHg以上ありますから、取りあえず問題ありません。
酸素化能はA-aDO2=45 mmHgと言う事で、年齢の半分以下と言う厳しい基準をとっても高値です。酸素化能障害がありますので、酸素投与を開始しました。

代謝の解釈に移ります。
pHが7.4以上ですので、アルカローシスです。アルカレミアもありますね。
PaCO2が22 mmHgと低値を示しており、アルカローシスの原因は呼吸にあります。呼吸性アルカローシスが主体となります。
PaCO2は正常値の40 mmHgから18 mmHg低下したと考えると、PaCO2が1 mmHg低下でpHは0.008上昇しますので、計算するとこの方では0.144上昇するので、予想されるpHは7.4+0.144=7.544であり、測定された値とだいたいあっています(とすると代謝性変化と合わないのですが)。
HCO3は5 mmol/L程度低下しています。アニオンギャップはほぼ正常ですが、正常値の12 mmol/Lから4.6 mmol/L上昇したと考えると、補正HCO3は採血結果に4.6を足して23.6 mmol/Lとなります。ほぼ正常値ですので、アニオンギャップが上昇しないアシドーシスや代謝性アルカローシスはないと考えて良いでしょう。
乳酸値が軽度上昇していますので、アニオンギャップ上昇の原因はこれでしょう。

まとめると以下のようになります。
酸素化能障害あり(A-aDO2=45 mmHg)
呼吸性アルカローシス

以下は軽度の影響しかない
代謝性アシドーシス(たぶん代償ではない)
アニオンギャップ上昇

病態とそれに対する治療は以下のようにします。
細菌性腸炎による下痢による循環血液量減少があり、輸液が必要である。これは身体所見より判断しました。
下痢が続けば、下痢による代謝性アシドーシスも合併してくるかも知れない。
酸素化能障害があるため酸素投与が必要である。原因精査も必要である。
呼吸性アルカローシスは酸素化能障害以外にも、過換気症候群もあるかも知れない。

2017年12月8日金曜日

ルームエアーでSpO2が99%以上は変だと思いましょう

35歳の男性が息苦しいという事で来院しています。SpO2は100%でした。

おかしいなと思って採血しました。静脈血です。

pH 7.503
PCO2 27.9 mmHg
PO2 54.3 mmHg
HCO3 21.4 mol/L

pHが7.4以上なのでアルカローシスが主体です。
PCO2が低値なので呼吸性アルカローシスです。
PCO2は12.1低下していると考えると、pHは、7.4+0.008×12.1=7.497ぐらいになります。

よって、この患者さんは単純な呼吸性アルカローシスと言う事になります。

他の検査で大きな異常はなく、過換気症候群と考えられました。

SpO2が99%以上ならおかしいというお話は、以下の本の69ページに載っています。他にもSpO2の値を見ても9割以上の医師の方針が変わらなかったという事が書かれており、特に救急外来ではSpO2よりも呼吸数を重視しましょうと書かれています。



<本日の極論ポイント>
 酸素投与をしていない患者さんのSpO2が99%以上だったら患者さんに何か異常が起きていると考えましょう。



2017年12月7日木曜日

呼吸困難で来院の患者さん

 20歳の女性が呼吸困難で来院されました。呼吸数が34回/分以外にバイタルサインの異常は認められません。ルームエアーにてSpO2は100%でした。血液ガスデータを示します。

pH 7.607
PCO2 14.6
PO2 167.4
HCO3 14.2

PaO2は100を越えていて酸素の問題はありません。
酸素化能障害を調べるとA-aDO2=−36となります。誤差なのか、本当は酸素を吸っていたのか?色々考えてしまいますが、酸素化能障害はないのでしょう。
pHは7.4以上でアルカローシスが主体です。
PCO2が低いため、呼吸性アルカローシスです。呼吸数が34/分というのとあいますね。
PCO2が1低下するとpHが0.008上昇するため、PCO2は正常値の40から25.4低下していると考えると、pHは7.60程度のはずで、採血データとちょうどあっています。

 よって酸素化能障害を伴わない呼吸性アルカローシスと言う事で過換気症候群と考えて良いでしょう。採血でもD-Ddimerは陰性で、肺塞栓はほぼ除外できると判断しました。
 患者さんは病院に来てから落ち着いたようで、無事帰宅されました。

 過換気症候群は怖い病態が潜んでいることがあるので、注意が必要ですが、今回は何もなくて良かったです。

2017年12月2日土曜日

心肺停止時に血液ガスをとるべきか?

 こちらのブログの内容そのままです。が、ガイドラインが新しくなりましたので、少し新しくしました。

 心肺蘇生中に血液ガスを採取すべきか?という問題は、いつも議論になるところです。あれ?取るに決まってますか?私はとらない方が良いと思っています。
 以下に理由を。

・検査する意義がない(行動が変わらない)。
・だいたい静脈血です。
・データを見てしまうと、どうしても治療したくなる。

 解説?の前に、ERC(ヨーロッパ蘇生協議会)のガイドラインから。


 Blood gas values are difficult to interpret during CPR. During cardiac arrest, arterial gas values may be misleading and bear little relationship to the tissue acid-base state. Analysis of central venous blood may provide a better estimation of tissue pH. 

 以下は私の下手な日本語訳です。

 心肺蘇生中の血液ガス分析のデータは解釈が難しい。心肺停止中は、血液ガス分析の値は間違った値であり、組織の酸塩基平衡異常との関連はほとんどない。中心静脈から採取した血液で分析すると組織pHをより反映した値になるかも知れない。

・検査する意義がない(行動が変わらない)。
 検査は、その結果によって行動が変わるから行うものです。合コンで年齢や職業、年収などを聞くのは、それによって対象外とするかどうかを決めるからでしょう(たぶん)。
 血液ガスは、肺の酸素化能、動脈血中の酸素の量、二酸化炭素の量、代謝の問題などが分かります(電解質も分かりますが、それについては後で述べます)。
 酸素化能、酸素の量、二酸化炭素の量については、検査結果がどうであれ、蘇生をしっかりする以外に改善する方法がありませんし、そもそも血液ガスのデータを見てから、それらを改善するなんてダメでしょう。過換気はいけませんから、二酸化炭素が高かったからと言って、換気の方法を変えるべきではないでしょう。
 代謝の問題は色々です。心肺停止中は高いに決まっていますから、検査する意義はあまりないかも知れません。高くても私はメイロン使いませんし。

・だいたい静脈血です。
 心肺蘇生中に拍動しているのは、静脈の可能性が高いです。下大静脈には逆流防止弁がないので、胸骨圧迫の圧が動脈と同じように伝わってきます。壁の薄い静脈の方がよく触れる場合もあります。静脈血の評価は、心肺停止であれば、よけいに難しいです。

・データを見てしまうと、どうしても治療したくなる。
 例えばpHが6.9だった場合、メイロンを入れたくなります(使わないと宣言している私でも)。メイロンは心肺停止患者さんの社会復帰率を高めると言うエビデンスはありません。メイロンには様々な不利益があるため、使わない方が良いとされています。

 反論ももちろんあります。

・電解質は普通の採血より早く分かるから有用である。

 確かに仰るとおりです。JRCのガイドライン2015(こちらのP.12)にも「原因検索は心停止に至った状況や既往歴、身体所見などから行うが、迅速に結果の得られる動脈血ガス分析や電解質の検査結果が役立つこともある 」とあります。ERCのガイドライン2015(P.111)にも同様の記載があります。電解質については私も賛成します。

・アシドーシスが原因で心停止した場合には、メイロンが有用ではないのか?
 メイロンが有用かどうかも分かりませんし、血液ガスの結果でアシドーシスが結果なのか原因なのかは分からないでしょう。

・心拍再開の予想が出来る。
 こちらの論文によれば、来院してから4分以内にとった血液ガスデータでPaCO2が75mmHgより低ければ、75mmHg以上だった場合に比べて、心拍再開する可能性が3.3倍高いそうです。が、PaCO2が70mmHgだったとしても、100%心拍再開するわけではないし、PaCO2が100だったからと言って直ぐあきらめて良いのかと言えば、そうではありませんね。

 どちらにしても以下のことを推奨します。
・血液ガスは医師がとらなければならないので、優先される事をしっかりやってから採血しましょう。
・結果は電解質を見るだけにしましょう。

<今日の極論ポイント>
 血液ガスを優先して採取するような蘇生のやり方は改善しましょう。

2017年11月29日水曜日

けいれんしたかどうかが分かります。

 けいれんをすると全身の筋肉が嫌気性代謝を行いますので、けいれんした直後に血液ガスを採取すると、代謝性アシドーシスになっているそうです。こちらのブログに紹介されている文献によれば、感度は73%、特異度は97%だったそうです。

 感度や特異度については詳しく知らなくても良いのですが、この文献のように特異度が高いと言うことは、血液ガスでアシドーシスになっていた場合、けいれんしていた可能性が非常に高いと言うことです。
 感度がそれほど高くない場合、アシドーシスがなかったら、けいれんしていないとは必ずしも言えないということです。

 救急診療指針P.292に「代謝性アシドーシスが認められれば痙攣であった可能性が高い」とあります。

 以前勤めていた病院の脳神経外科の先生も、けいれんしたかも?と言う人が来たら血液ガスをとってくださいと言っていましたので脳外科医の間でも常識になっているのだと思います。

 是非、けいれんが疑われる患者さんでは血液ガスをとりましょう。