今日の患者さんは前日より下痢が続いていると言う80歳の男性です。血圧が普段120mmHg前後なのに、80/38mmHg、脈拍数が78/分(心房細動のためにシベノール内服中)と言う状態でした。ルームエアーでの採血です。
pH 7.553
PCO2 22.1 mmHg
PO2 76.7 mmHg
HCO3 19.0 mmol/L
AnGAP 16.6 mmmHg
乳酸 2.48 mmol/L
まず酸素から評価します。PaO2は70mmHg以上ありますから、取りあえず問題ありません。
酸素化能はA-aDO2=45 mmHgと言う事で、年齢の半分以下と言う厳しい基準をとっても高値です。酸素化能障害がありますので、酸素投与を開始しました。
代謝の解釈に移ります。
pHが7.4以上ですので、アルカローシスです。アルカレミアもありますね。
PaCO2が22 mmHgと低値を示しており、アルカローシスの原因は呼吸にあります。呼吸性アルカローシスが主体となります。
PaCO2は正常値の40 mmHgから18 mmHg低下したと考えると、PaCO2が1 mmHg低下でpHは0.008上昇しますので、計算するとこの方では0.144上昇するので、予想されるpHは7.4+0.144=7.544であり、測定された値とだいたいあっています(とすると代謝性変化と合わないのですが)。
HCO3は5 mmol/L程度低下しています。アニオンギャップはほぼ正常ですが、正常値の12 mmol/Lから4.6 mmol/L上昇したと考えると、補正HCO3は採血結果に4.6を足して23.6 mmol/Lとなります。ほぼ正常値ですので、アニオンギャップが上昇しないアシドーシスや代謝性アルカローシスはないと考えて良いでしょう。
乳酸値が軽度上昇していますので、アニオンギャップ上昇の原因はこれでしょう。
まとめると以下のようになります。
酸素化能障害あり(A-aDO2=45 mmHg)
呼吸性アルカローシス
以下は軽度の影響しかない
代謝性アシドーシス(たぶん代償ではない)
アニオンギャップ上昇
病態とそれに対する治療は以下のようにします。
細菌性腸炎による下痢による循環血液量減少があり、輸液が必要である。これは身体所見より判断しました。
下痢が続けば、下痢による代謝性アシドーシスも合併してくるかも知れない。
酸素化能障害があるため酸素投与が必要である。原因精査も必要である。
呼吸性アルカローシスは酸素化能障害以外にも、過換気症候群もあるかも知れない。
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