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2020年7月5日日曜日

片肺挿管になったら酸素濃度を上げたらいいじゃない?

 気管挿管をしている時(あるいはする時)、起こりやすい不具合の一つは片肺挿管です。

 片肺挿管は何がいけないでしょうか?もちろん、酸素化能が低下する事です。挿管されていない(通常は右に入るので左ですね)肺に痰がたまることもあるかも知れません。

 さて、この時、気管チューブの位置を動かすことが出来ない(資格上の問題、その他色々)場合に、とりあえず酸素を100%にしたら良いじゃないと思いますね。もちろん、それは一つの手なのですが、その際、SPO2があまり上がらない事が多いです。今回はその事について考えてみましょう。

 まず、換気されない左肺から心臓に戻って来る血液は、酸素を取り込むことが出来ませんから、ほとんど静脈血と同じです。つまりPO2は40mmHg程度です。

 次に、換気されている右の肺から戻ってくる血液は、100%酸素で換気していて、酸素化能に問題がなければ、PO2は600mmHg以上あります。

 左肺と右肺からの血流が同じだったとすると、(右肺からの血流のPO2+左からのPO2)÷2=320mmHgとなり、SPO2は余裕で100%近いはずです。また、hypoxic pulmonary vasoconstrictionと言って換気が悪い肺胞へ行く血管は収縮する反応があり、左肺の血流は少なくなります。右:左が例えば2:1になったら、もっとPO2は高くなるはずです。

 しかし、PO2は60mmHg程度にしかなりません。何故でしょう?

 血液にはヘモグロビンが含まれているのがその理由です。血液が単純な液体であれば、先ほどの計算は成り立ちます。みなさんは、CaO2というのを覚えていますか?動脈血酸素含有量という物で、こちらで計算します。

 CaO2=Hb結合酸素+溶存酸素=1.34×Hb×SaO2÷100+0.0031×PaO2

でした。左肺から来る血液のCaO2=1.34×15×0.75+0.0031×40=15.2ml/dLです。
(Hbは15としました。静脈血のPO2は40mmHg、SO2は75%としました。)
右肺から来る血液のCaO2=20.3ml/dL程度です。右:左の血流が2:1だったとすると、(20.3×2+15.2)÷3=18.6ml/dLとなります。酸素化能が正常な人の酸素吸入なしの場合のCaO2は19.8ml/dL程度(SaO2 97%、PaO2 90としました)です。片肺挿管時は、室内空気を吸っている人より、PaO2が低いと言うことでしょう。PaO2が60mmHgでSaO2が90%として計算すると18.2ml/dL程度となり、やはりPaO2は60mmHg程度と言うことになります。

 気管チューブは患者さんの首の反り具合で最大5cm程度動くらしいですので、気管挿管をしている患者さんでは常に片肺挿管になっていないか、確認しましょう。そして、PaO2が突然下がったら片肺挿管を是非考えてください。

 他にも人工呼吸中の患者さんに変化があったら思い出す物としてDOPEと言うのがあります。
D displacement チューブの位置異常(つまり片肺挿管、抜けたなど)
O obstruction チューブの閉塞
P pneumothrax (緊張性)気胸
E equipment 装置の異常(人工呼吸器など)

 英語が苦手な方は「いきつめ」と覚えましょう。
い 位置の異常
き 緊張性気胸
つ 詰まった
め メカの異常

2020年7月2日木曜日

空気が入ったらどうすべきか

 血液ガスを静脈で採血するように指示を出して、朝結果を見ると、PO2が75Torrだったりすることがあります。静脈血液ガスのPO2は通常50Torr以下で、ほとんど40Torr以下です。

 なのに75Torrもあるのは何故なのでしょうか???大きな声では言えませんが、ある病院では、昔看護師さんが動脈血をとっていましたので、その病院では看護師さんが気を利かせて動脈血をとってくれたということになりますが、当院はそうではありません。まさか、誤って動脈を刺してしまったなんて事もないでしょう。

 その原因は、シリンジに空気が入ったためと思われます。血液を空気に触れたままにすると、血液は空気の酸素分圧と同じ値に近づきます。空気のPO2はいくらかというと、160Torr程度です。計算は760mmHg×0.0209です。あれ?150じゃなかったの?と言う方は鋭いです。空気は水蒸気で飽和していませんので、37度における飽和水蒸気圧である47Torrを760Torrから引かないので、やや高いです。

 よって、採血時に空気が入ったのに、それを出さないで検査に出し、検査するまで少し時間が経つと、PCO2は低下(空気のCO2はほぼゼロ)、PO2は状況により上がったり下がったりします。静脈血の検体であれば、PO2は上昇します。

 なので、採血時に血液が混じった場合、面倒でも空気は出すようにしましょう。まあ、静脈の検体では酸素を評価することはありませんし、もともと静脈血はPCO2も評価が難しいと言われていますから、気にしなくても良いのかもしれませんが、折角行う検査は正確にやりたいですね。

2020年2月28日金曜日

一酸化炭素中毒の場合

 今日は一酸化炭素中毒の場合です。まず患者さんが来院した時に血液ガスをとるべきかどうか?が問題です。一酸化炭素中毒の症状や診察所見は多彩で、3分の1は見逃されていると言う報告があるようです。

 こちらの文献(総合診療 29 163-168, 2019)によれば、「寒い時期に熱がなくて、臓器がしぼれない症状が主訴の人」を見つけたら、静脈でも良いので血液ガスをとりましょうとあります。

 血液ガスデータは一見正常ですが、CO-Hbが高値です。が、喫煙者は高いことが多いですし、時間が経っていれば正常値の場合もありますし、正常値だからといって一酸化炭素中毒を否定できず、感度は低いです。が、15%以上あれば高いと考えて良いとされています。

 CO-Hbとは一酸化炭素と結合したヘモグロビンで、これは酸素とは結合できません。一酸化炭素は酸素の200倍ヘモグロビンと結合しやすいそうです。そうなるとヘモグロビン結合酸素が減りますので、酸素含有量が減ります。酸素含有量は、以前やりましたね。

動脈血酸素含有量(CaO2)=ヘモグロビン結合酸素 + 溶存酸素
            =1.34×Hb×SaO2 +0.003×PaO2

 通常のパルスオキシメーターは、一酸化炭素ヘモグロビンと酸素ヘモグロビンの区別が出来ません。血液ガスデータのSaO2は計算値ですので、一酸化炭素中毒の時の正確な酸素飽和度は分かりません。しかし、ヘモグロビン結合酸素が低下しているのは間違いないので、溶存酸素を増やす必要があります。

 血液ガス分析にCO-Hbがない場合には、是非入れてもらいましょう。もしそれが無理だったり、血液ガスを測定できない状況で、一酸化炭素中毒を疑った場合には、ちゅうちょなく酸素を全開で投与しましょう。高濃度酸素が危険ということが最近言われていますが、短時間ならば全然大丈夫です!!

 また高濃度酸素を吸っていると一酸化炭素の半減期が短くなるそうですから、高濃度酸素を投与するのは大切ですね。

<今回の極論ポイント>
 一酸化炭素中毒を疑ったら、まよわず酸素を大量に投与しましょう。

2020年2月13日木曜日

肺胞気式でPCO2を何故呼吸商で割るのか?

 肺胞気式という式があります。肺の一番末端である肺胞に、酸素がどのぐらい存在するのか?を計算する式です。肺胞にどのぐらい酸素があるのかを直接測定できないため、とても重要な式です。以下に示します。

PAO2=PIO2-PACO2/R

 簡単な式ですが、用語の解説を以下にします。

 PAO2は肺胞の酸素分圧を示します。Pは分圧、その次の文字は、大文字だと気体中の測定値を示し、小文字だと液体中の測定値を示します。Aはalveolarと言う英語の略で肺胞という意味です。
 PIO2は、吸入したガスの酸素分圧です。通常PIO2=(760-47)×FIO2で示されます。760は1気圧です。標高の高いところで測定した場合には、760より低くなります。47は37度における飽和水蒸気圧で、肺胞に行くまでに吸入したガスは加湿されますので、水蒸気が圧を奪うと言うことです。体温は37度と仮定しています。低体温だったらどうするのか?等とやり出すときりがないので、通常の診療では、37度として考えて良いです。
 FIO2は吸入酸素濃度です。FIO2は50%等と言いますが、正確には、0.4と言います。Fはfractionの略で、分数とか小数という意味があるようです。酸素を吸っていない場合には、FIO2は0.21程度ですので、PIO2=713×0.21=150程度になります。
 PACO2は肺胞における二酸化炭素分圧です。これは直接測定できませんが、二酸化炭素は容易に肺胞と血液の間を行き来出来ますので、ほぼPACO2=PaCO2です。動脈血二酸化炭素分圧ですね。これは血液ガスで測定できます。
 Rは呼吸商と呼ばれる物で、通常の生活をしている人は0.8です。酸素を10使って二酸化炭素を8排泄していると言う状態です。

 よって、肺胞気式を簡単に書けば、PAO2=150-PaCO2/Rとなります。

 ところで、何故Rで割るのか考えたことがありませんでした。田中竜馬先生の本に書かれていて、田中先生も感動しませんか?と書いておられますが、私も何度目かに読ませていただいてやっと感動しました!

 肺胞気式のPaCO2は、PaCO2(つまりPAO2)が直接分圧を横取りするから入っているのではなく、消費される酸素の量を示すために入っているのです。

 詳しく知りたい方は、こちらの論文に計算式が載っています。理解するのに時間がかかりました(私だけ?)が、なかなか面白いです。

2018年3月1日木曜日

緊張性気胸の患者さん

 78歳の男性で、慢性閉塞性肺疾患で通院中です。呼吸困難があり、SpO2が低下していると言うことで救急搬送されました。現場では酸素10L/分流しても、SpO2が75%だったそうです。

 大きなことは言えませんが、高流量かつ高濃度の酸素を投与してもSpO2が上昇してこなければ、やはりバッグバルブマスク換気でしょう!なのに、、、、、、、、、、ここでは書きません。

 来院時の血液ガスです。バックバルブマスク換気を始めて直ぐぐらいの採血です。

pH 7.087
PCO2 92.4 mmHg
PO2 84.8 mmHg
HCO3 27.2 mol/L
BE −4.7 mol/L
乳酸 2.56 mol/L

 PaCO2が高いですよね。急激に意識が悪くなったとのことでしたので、有名なCO2ナルコーシスになったのかも知れません。この人の初期対応としては、酸素をやってはいけないということではなく、酸素投与にもかかわらずSpO2が低かったのですから、もう限界と言うことで換気を助けてあげれば良かったのです。酸素を投与したために、気管挿管が必要になるとか、そういう事はありません。低酸素であれば、酸素投与をし、それでもダメなら換気をしましょう!COPDがあるような人では、SpO2が90%ぐらいあれば良いでしょうが。

 この方は気管挿管され、一回換気量400mlぐらいを送るとピーク圧ーPEEPが25mmHgぐらいになっていました。25mmHgは1.36をかけて34cmH2Oなので、動的コンプライアンスは400ml÷34cmH2O=11.8ml/cmH2Oです。正常値は50〜100ml/cmH2Oなので、かなり肺が膨らみにくい状態ですね。

 レントゲンを撮ったら気胸でした!直ちに脱気をしました。するとピーク圧が5mmHgぐらいに低下しました。すごい変化ですね。動的コンプライアンスは、400÷5÷1.36=58.8ml/cmH2Oと正常になりました!すごい変化ですね!!

 その後あまりに元気になったので抜管してから血液ガスをとりました。酸素を経鼻で2リットル/分投与しています。

pH 7.368
PCO2 43.2 mmHg
PO2 72.7 mmHg
HCO3 24.3 mol/L
BE −1.1 mol/L
乳酸 1.76 mol/L

 A-aDO2が72.94 mmHgと酸素化能障害はありますが、酸塩基平衡は問題ありません。代償性変化がないので、急性の呼吸性アシドーシスだったのだと思われます。

<今回のポイント>
 酸素は大事です!
 おかしいなと思ったらCOPDの人でも酸素投与をしましょう。
 それでもSpO2が上がらなければバックバルブマスク換気をしましょう!

2017年12月16日土曜日

PaO2が異常に低い場合

 検査データは疑ってかかると言うのが医療の原則です。おかしな値が出たら、あれ?検査のミス(色々な意味で)ではないか?!と考える癖をつけましょう。異常ではないか?と感じる為には、検査結果は予想しておく必要があります。例えば、PaO2は100 mmHgはあるよねとかです。

 血液ガスであれば、採血した血液の色でPaO2が予想できます。採血した血液は赤い良い色をしていたのに、PaO2が50 mmHg何て値が出たら、何かがおかしいと思わなければなりません。
 SpO2の値からも予想できます。SpO2が98%なのに、PaO2がやはり50 mmHgたったら変です。

 その場合、最初に疑うべきは、検体違いです。違う患者さんの結果が入力されたのではないか?と言う事です。今の時代バーコードなどで行いますから、頻度は低いのでしょうが、バーコードのシールを違う患者さんに貼ってしまったとか、考慮する必要はあるでしょう。

 さて、今回は白血球についてです。白血球が異常に高い(白血病など)場合には、血液ガスでPaO2が異常に低くなってしまう場合があるそうです。白血球が注射器の中で酸素を使ってしまうと言うことですね。その場合には、検体を冷やして検査室に持って行くことと、直ぐに検査してもらうことが大切です。

 再確認ですが、異常な値が出たと思えるためには、きっとこれぐらいの値が出るだろうと思っていなければいけません。最初はそうはいかないでしょうが、その訓練を毎回地道に続けることが大切です。

 プライベートでも、色々予測して行動していますよね。愛の告白をする場合だって、きっとOKしてくれるだろうと思ってするわけですよね。きっとダメだろうと思っても、ダメ元で!と言う場合には、OKしてくれたらかなり嬉しいのは、結果を予想しているからですね。

 皆で頑張りましょう。

2017年12月13日水曜日

循環血液量減少の患者さん

 今日の患者さんは前日より下痢が続いていると言う80歳の男性です。血圧が普段120mmHg前後なのに、80/38mmHg、脈拍数が78/分(心房細動のためにシベノール内服中)と言う状態でした。ルームエアーでの採血です。

pH 7.553
PCO2 22.1 mmHg
PO2 76.7 mmHg
HCO3 19.0 mmol/L
AnGAP 16.6 mmmHg
乳酸 2.48 mmol/L

まず酸素から評価します。PaO2は70mmHg以上ありますから、取りあえず問題ありません。
酸素化能はA-aDO2=45 mmHgと言う事で、年齢の半分以下と言う厳しい基準をとっても高値です。酸素化能障害がありますので、酸素投与を開始しました。

代謝の解釈に移ります。
pHが7.4以上ですので、アルカローシスです。アルカレミアもありますね。
PaCO2が22 mmHgと低値を示しており、アルカローシスの原因は呼吸にあります。呼吸性アルカローシスが主体となります。
PaCO2は正常値の40 mmHgから18 mmHg低下したと考えると、PaCO2が1 mmHg低下でpHは0.008上昇しますので、計算するとこの方では0.144上昇するので、予想されるpHは7.4+0.144=7.544であり、測定された値とだいたいあっています(とすると代謝性変化と合わないのですが)。
HCO3は5 mmol/L程度低下しています。アニオンギャップはほぼ正常ですが、正常値の12 mmol/Lから4.6 mmol/L上昇したと考えると、補正HCO3は採血結果に4.6を足して23.6 mmol/Lとなります。ほぼ正常値ですので、アニオンギャップが上昇しないアシドーシスや代謝性アルカローシスはないと考えて良いでしょう。
乳酸値が軽度上昇していますので、アニオンギャップ上昇の原因はこれでしょう。

まとめると以下のようになります。
酸素化能障害あり(A-aDO2=45 mmHg)
呼吸性アルカローシス

以下は軽度の影響しかない
代謝性アシドーシス(たぶん代償ではない)
アニオンギャップ上昇

病態とそれに対する治療は以下のようにします。
細菌性腸炎による下痢による循環血液量減少があり、輸液が必要である。これは身体所見より判断しました。
下痢が続けば、下痢による代謝性アシドーシスも合併してくるかも知れない。
酸素化能障害があるため酸素投与が必要である。原因精査も必要である。
呼吸性アルカローシスは酸素化能障害以外にも、過換気症候群もあるかも知れない。

2017年11月30日木曜日

FIO2をどのぐらい変化させたら良いのか?


 目標とするPaO2を達成するために必要な吸入酸素濃度は以下の通りです。

目標とするFIO2=(目標とするPaO2−現在のPaO2÷713+現在のFIO2


 目標とするFIO2は高くても低くても良いです。良かったら使ってください。

 ちなみに、この式は、以下のかなり無理な条件を満たした場合にのみ成り立ちます。

・酸素濃度が変化しても、A-aDO2が変化しない。
・動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が変化しない。

 まあ、厳密に計算する必要はありませんので、気にしなくて良いでしょう。

 この式を導いてみます。

A-aDO2=(760−47)×現在のFIO2−PaCO2/0.8−現在のPaO2
A-aDO2=713×目標とするFIO2−PaCO2/0.8−目標とするPaO2

 です。上の式と下の式の左辺は等しいという前提ですので、式を変形すれば、PaCO2/0.8は消えます。よって上記の式が求められるのです。

 PaO2を70 mmHgぐらい挙げたいと思えば、FIO2を0.1(あるいは10%)上げれば良いと言うことですね。

<今日の極論ポイント>
 吸入酸素濃度を10%上げると、動脈血酸素分圧が70 mmHg程度上がります。

2017年11月27日月曜日

FIO2を下げるか?PEEPを下げるか?

 人工呼吸をしている患者さんが状態が良くなり、PaO2が上昇してきたとします。当然設定を変更します。PEEPを下げるか、FIO2を下げるかのどちらかですね。

 どちらが良いのでしょうか?

 結論から言えば、FIO2が0.5を切るまではFIO2を下げていくのが良いでしょう。高濃度の酸素は肺を傷害すると言われているからです。

 しかし、PEEPも血圧を下げたり、気道内圧がPEEPの分だけ高くなりますから、下げた方が良いのは間違いありませんが。

 基本的には、吸入酸素濃度から下げるのがよいでしょう。

2017年11月26日日曜日

PaO2が正常なら酸素投与は不要なのか?

 検査は不思議な物で、本当は一部のことしか示していないのに、検査が正常だと全てが正常だと感じさせてしまいます。今回はPaO2が正常でも酸素投与が必要なことがあるよ!と言うお話です。

 今日は、出血性ショックの患者さんです。80歳の女性で下血して血圧が60mmHgしかないという事で救急隊から受け入れ要請がありました。救急隊の方はショック状態なのとSpO2が上手く測れないために、オーバートリアージでフェイスマスクで酸素を5L/分流しながら搬送してきました。素晴らしいことです!

pH 7.505
PCO2 32.2 mmHg
PO2 220.3 mmHg
HCO3 24.8 mmol/L
Hb 4.8 g/dL
O2sat 99.1 %
O2(CT) 6.5 ml/dL
乳酸 3.53 mmol/L

 A-aDO2を計算すると、24.65 mmHgとなり、酸素化能障害はないと考えて良いでしょう。計算上の動脈血酸素飽和度(O2sat)は99.1%ですから、酸素は下げていって良いと思うかも知れませんが、、、、、、、

 末梢組織に運ばれる酸素の量(DO2)は以下の式で表されます。

DO2=心拍出量×血液中に含まれる酸素の量(O2(CT))

 出血性ショックの人は心拍出量が減っているはずです。なので、心拍出量を増やすべく、輸液をする事も大切ですが、血液中に含まれる酸素の量を増やすことも必要です。血液中に含まれる酸素の量 CaO2は以下のように計算できます。当院の検査器械はO2(CT)と表示します。CTはたぶんcontent(含有量)の略だと思います。一般的にはO2(CT)はCaO2と表現します。Cはcontentの意味です。

CaO2=ヘモグロビン結合酸素 + 溶存酸素
  =1.34×Hb×SaO2 + 0.003×PaO2

 正常な人では、ヘモグロビン結合酸素は20ml/dL 程度で、溶存酸素は0.3 ml/dL 程度です。ヘモグロビンと結合している酸素が圧倒的に多いですね。

 もし、ヘモグロビンが低下していれば輸血が必要ですが、直ぐには出来ませんので、PaO2を上げればいいです。酸素投与をすれば少しではありますが、血液中に含まれる酸素の量が増えます。SpO2は酸素が座われる座席が満席かどうかを示すだけで、酸素の座われる座席の数は示していないのです。

 SpO2が100%であっても、酸素投与をすべき時があるのです。

<今回の極論ポイント>
ショックが疑われる患者さんには、SpO2が100%あっても酸素投与をしましょう。

2017年11月25日土曜日

酸素化能の評価について

 こちらの記事をご覧ください。それだけで充分かも知れません(^^)。

 肺胞気ー動脈血酸素分圧較差が酸素化能障害の評価によく使われます。計算法は以前書きました。計算が面倒な方は、こちらのサイトやアプリで計算すると良いでしょう。

 しかし、血液ガスをとったら全例で計算すべきだと思います。酸素を投与されているとこの較差は大きくなるとされていて、酸素を投与していない場合にのみ有用だという意見がありますが、計算するのは良いでしょう。
 若い先生には全例計算するように伝えています。計算式を理解したら、アプリとかサイトで計算して良いと伝えています。単純な計算ですから覚えておいた方が良いでしょう。私は暗記しています。

 肺胞気ー動脈血酸素分圧較差はA-aDO2と記載されることが多いですが、UpToDateにはA-a O2 gradientと書かれています。覚えておくと良いでしょう。

 こちらの文献によれば、A-aDO2が年齢で違う事は示されていません。厳密にやるなら、10を超えていたら全て酸素化能障害があると考えて(救急はオーバートリアージが原則ですから)行動すべきですね。

2017年11月24日金曜日

二酸化炭素を考慮した酸素減量法

 前回、酸素投与量を下げる時にも、動脈血酸素分圧 PaO2と吸入酸素濃度 FIO2が比例することを考えれば良いというお話をしました。

 しかし、肺炎などで酸素化能障害が発生し、PaO2が低下してくると、通常は過換気になってPaCO2が低下し、PaO2の低下を食い止めようとします。

 そのような状態で得られた血液ガスデータを使って、酸素投与量を下げる時は、PaCO2が正常の40ぐらいになった状態を想像しなければなりません。今回はそう言う計算?を紹介します。

 今回の患者さんは75歳の女性です。腹痛で救急搬送されました。循環血液量減少と、外が寒かったために、末梢循環が悪かったためでしょうか、SpO2が上手く測れなくて、オーバートリアージで酸素投与(フェイスマスクで4リットル/分)をして搬送されました。Good job!です。

pH 7.447
PCO2 30.9 mmHg
PO2 142.4 mmHg

 A-aDO2を計算すると、以下の通りです。

A-aDO2=713×0.36ー142.4ー30.9/0.8=76 mmHg

 これが同じ値で変わらないとすれば、PaCO2が40 mmHgになると、FIO2が0.36の人のPaO2は、、、、、

PaO2=713×0.36ーPaCO2/0.8ーA-aDO2=713×0.36ー40/0.8ー76=130 mmHgぐらいになります。

 PaO2を100ぐらいに下げたいのであれば、100÷130=0.77ぐらいFIO2を下げます。0.36×0.77=0.277ということで、酸素は約2リットル/分に下げられます。マスクではあまりよろしくないので、経鼻カニュラに変更することになりますね。

 前回の計算と比較して頂ければいいのですが、あまり大きな違いはありません。よって、現場ではPCO2が低くても、酸素濃度は比例するという風に考えて酸素投与量を下げていけば良いでしょう。あるいは過換気になっている状態で酸素投与量を下げることはない(患者さんの状態が改善していない)ので、気にしないと言う風でも良いでしょう。

<今回の極論ポイント>
 酸素投与量を下げる場合、二酸化炭素の事を考慮する必要はありません。

2017年11月23日木曜日

意識障害患者さん

 基礎的なお話は書ききった感じもあるので、これからは症例が増えていきます。

 40歳の男性です。意識障害で運ばれて来ました。意識レベルはJCSで三桁です。血圧や脈拍数は問題ありません。SpO2がルームエアーで85%だったので酸素を5リットル投与されて運ばれて来ました。

pH 7.353
PCO2 48.4 mmHg
PO2 149.1 mmHg
HCO3 26.3 moml/L

 まずみるのはPaO2でしたね。100mmHgを越えており、値としては問題ありませんね。酸素可能の評価は後で良いです。
 PCO2は少し高くなっていますね。正常値は35〜45 mmHgですので。緊急性はないでしょう。

 酸素化能障害がないかを判定します。酸素投与下ではA-aDO2は意味がないという説もありますが、一応計算します。酸素マスクで酸素を5L投与ですので、20+4×5=40で吸入酸素濃度は40%でした。

 A-aDO2=(760−47)×0.4−PaCO2/0.8−PaO2=713×0.4−48.4÷0.8ー149.1=75.6 mmHg

 年齢の半分以下という基準をとっても、酸素化能障害があることが分かります。酸素投与量を下げることはあっても、酸素投与はしばらく必要でしょうね。

 代謝の問題を判定します。例えばこちらの方法を参考にしてください。

(1)pHは7.4以下であり、アシドーシスです。正常値の7.35を切っていませんから、アシデミアとは言えないですね。
(2)PCO2が高いので、呼吸性アシドーシス+代償性変化としてのHCO3上昇と考えます。
(3)急性の呼吸性アシドーシスと考えると、PCO2は8.4 mmHg上昇していますので、HCO3は0.84 mmol/L上昇すると考えると、まあだいたい合います。と言うか異常があまり大きくないですから。

 他にも色々検討すべきなようですが、一度に全部勉強するのはこのサイトのポリシーに合いませんので(^^)。

 この人は、精神科で処方されている薬剤をたくさん飲んでしまい、薬物による意識障害がありました。呼吸抑制もそのせいなのでしょうかね。
 代謝に関してはよく分かりませんが、乳酸が2.06 mmol/Lでしたので、本当はもっとHCO3が高いのかも知れません。

 経過観察入院され、翌日元気に退院されました。

2017年11月21日火曜日

酸素投与量を下げたい時どうするか?

 以前酸素の投与量をどう予測するかについて書きました

 今日は酸素を下げる時どうするか?と言うお話です。原則は少しずつ下げると言う事なので、1リットル/分ずつ減らしていきます。でも、私のようにせっかちな性格であれば、もっと早く下げていきたいです。その時に役立つお話です。

 腹痛で来院された80歳ぐらいの男性です。SpO2が安定しなかったので、救急隊の方がフェイスマスクで酸素を4リットル/分で投与して運んで来てくれました。救急は悪い方を採用しますので、SpO2は悪いと考えるのが正しいので、すばらしい判断です。

pH 7.447
PCO2 30.9 mmHg
PO2 142.4 mmHg

 吸入酸素濃度FIO2は、酸素投与1L/分で約0.04上昇しますので、0.2+0.04×4=0.36です。厳密にはFIO2の単位は%ではありません。FIO2とPaO2はだいたい比例するので、PaO2を100 mmHg程度にしたい場合、0.7(100÷142.4=0.712)ぐらいをFIO2にかければ良いです。0.36×0.7=0.25ぐらいですので、経鼻で1リットル/分に下げても良いと言うことになります。

 が、余裕をもって2リットル/分ぐらいにするのが良いでしょうし、4リットル/分の投与ならば1リットル/分ずつ下げても良いでしょうね。
 また、この計算はPaCO2の値について考慮に入れていませんので、状態が落ち着いてPaCO2が高くなれば、酸素は下げてはいけないかも知れません。その事については、別の記事で書きますので余裕があれば、ご覧ください。

 血液ガスは毎日少しずつが原則ですから!

<今回の極論ポイント>
 酸素を下げる時は少なめにが原則です。
 せっかちな人は、酸素分圧と吸入酸素濃度がだいたい比例する事を利用しましょう。

2017年11月19日日曜日

低酸素だった場合、酸素をどのぐらい投与するべきか?

 低酸素の患者さんが来院されたとします。例えば、血液ガスデータが以下のような患者さんです。

pH 7.516
PCO2 30.7 mmHg
PO2 58.8 mmHg
HCO3 24.3 mmol/L
BE 2.0 mmol/L

 呼吸数は28/分で、SpO2は89%です。レントゲンでは肺炎を疑う所見があり、肺炎と診断しました。

 当然酸素を投与すると思いますが、どのぐらい投与しましょうか?

 よく分からなかったら、リザーバーマスク(10L/分)で投与することをお勧めしています。高濃度酸素は短時間なら問題ありませんが、低酸素は危険だからです。

 ただ、経鼻カニューレで酸素1L/分でいいのに、リザーバーマスクで投与してしまうとちょっとカッコ悪いですね。

 大雑把に言うと、吸入酸素濃度(FIO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)は比例します。よって、ルームエアーでPaO2が50 mmHgの人が来たとして、PaO2を100 mmHg近くに上げたいと思ったら、酸素濃度は約2倍、つまり40%近くにすればいいです。普通のマスクや経鼻カニュラで酸素を1L/分流すと吸入酸素濃度は約4%上昇すると言われていますから、5L/分で酸素を流せば良いです。経鼻カニュラは3L/分程度までとされていますので、普通の酸素マスクで5L/分流しましょう。

 ちょっと数学で証明?してみます。

 A-aDO2=PAO2−PaO2でしたよね。
 PAO2=(760−47)×FIO2−PaCO2/R-PaO2
 A-aDO2、PaCO2、R(呼吸商で通常は0.8)は変わらないと仮定すれば、

PaO2=713×FIO2−k kは定数

と言うことで713×FIO2が大きい、つまり高濃度酸素をやっている時ほど、PaO2とFIO2が比例すると言うことになります。もちろんですが、あくまでだいたいであり、換気の状態が変化しないことはないでしょうし、A-aDO2もFIO2によって変わるようですから、このやり方は正確ではありません。が、現場では、だいたいこのぐらいということでいいのではないでしょうか。

 逆に酸素を下げていく時にも、この理屈が通用します(別記事にしました)が、下げすぎはよくありませんので、少しずつ下げましょう。

 ちなみに、今回の患者さんでは、フェイスマスクで酸素を4リットル/分流しました。計算すると、1リットル/分で約4%吸入酸素分圧が上がりますので、吸入酸素濃度は約36%。約1.8倍になっていますので、PaO2もそのぐらい上昇しますから、58.8×1.8=105.3 mmHgになります。上がりすぎたら下げれば良いので、5リットル/分ぐらいから開始しても良いでしょう。

<今回の極論ポイント>
 PaO2とFIO2はほぼ比例します。
 迷ったら酸素は高流量で開始し、データを見ながら下げていけばいいです。
 低酸素は危険です!

2017年11月12日日曜日

SpO2が97%でも肺塞栓は否定できません。

 一般的に感度がどれだけ高かろうと、ある疾患を否定するのは難しいです。

 たぶん、たった一つの例外は、「女性であれば妊娠である」という検査です。女性でなければ妊娠ではないと言えます。

 肺塞栓は怖い病気で、救急外来で鑑別しなければならない疾患の一つです。肺塞栓の特徴として低酸素、あるいは酸素化能障害が挙げられます。よって、酸素投与をしない状態でSpO2が低いのが普通です。

 しかし、SpO2が高い(例えば97%)であっても肺塞栓は否定できません。この事は以下の本にも書いてあります。注文はこちらからどうぞ(COIはありません!)



 今回の患者さんは50歳の女性です。数日間継続する息切れが悪化すると言うことで来院されました。

pH 7.451
PCO2 20.7 mmHg
PO2 103.2 mmHg
HCO3 14.1 mmol/L
BE -7.9 mmol/L
Na 134.6 mEq/L
K 3.97 mEq/L
CL 111 mEq/L
Anion Gap 13.5 mmol/L
乳酸 4.81 mmol/L

 軽度ではありますが、酸素化能障害があり(A-aDO2=21 mmHg)救急外来で担当した先生は直ちに造影CTを撮像しました。以下のように両側の肺動脈に肺塞栓がありました。

 SpO2が97%あっても肺塞栓を否定できないので、お忘れなく。過換気症候群と診断しないようにしましょう!

 パルスオキシメーター(SpO2)は誤差が2%程度あるのだそうです。本当は95%だったとしても、97%を示すこともありますので注意しましょう。

<今回の極論ポイント>
 SpO2は酸素が血液内に充分あると言うことを示しますが、酸素化能障害がないとは言えない。
 SpO2が良くても肺塞栓は否定できない。

2017年11月3日金曜日

まず最初に見るのはどの値?

 血液ガスデータは見る順番があります。例えば、以下のようなデータが出た場合、皆さんはどれを一番に見ますか?

pH 7.376
PCO2 28.0 mmHg
PO2 62.4 mmHg
HCO3 16.0 mmol/L
BE −7.4 mmol/L
乳酸 3.93 mmol/L

 上から順番に決まってますか?それとも異常値のあるPaCO2やBEからでしょうか?あるいは乳酸値ですか?

 救急はABCから始めましょうね!よって、血液ガスデータであれば、PaO2からです。なぜなら他のデータは、直接それだけで致死的にはならないからです。

 よって、血液ガスデータをもらったら、まず見るのはPaO2です。しかし、患者さんのABCを見るのに血液ガスデータを待っていてはいけないので、すでにABCを確保しているし、SpO2があるから、血液ガスデータはどんな順番で見てももええやないかい!と言う意見も間違いではありませんが、是非PaO2から見るようにしましょう。

 そして値をまず見れば良いです。難しいことは考えなくて良いです。60 mmHg以上あれば何とか大丈夫です。出来れば70 mmHg以上が良いと思います。もし60 mmHgを切っていれば(個人的には70 mmHgを切っていれば)まず酸素を投与します。どのぐらい酸素をやったら良いか分からなかったら、リザーバーマスクで10L/分以上流して良いと思います。COPD(慢性閉塞性呼吸器疾患)だったらどないすんねん!と思うのであれば、PaCO2をチェックしていただき、PaCO2が高くなければ大丈夫ですし、もしPaCO2が高くても、患者さんの呼吸が止まる可能性を考え、バックバルブマスク換気を準備すれば良いです。気管挿管が必要になる場合もあるでしょうが、取りあえず酸素を流すのが良いと思います。

 この患者さんは、PaO2が62.4 mmHgと60 mmHg以上ありますが、私は酸素投与を開始しました。理由はPaO2が70 mmHg以下だということ以外にもあるのですが、その話は別に述べましたのでご覧ください。

 酸素の値が低くないか?これをまず見れば良い。簡単ですね!

<今回の極論ポイント>
・血液ガスデータはまずPaO2から見ましょう。
・PaO2が70 mmHg以下の場合は、酸素投与を開始しましょう。
・どのぐらい酸素をやったら良いか分からなかったら、リザーバーマスクで10L/分投与しましょう。

2017年11月1日水曜日

酸素化能障害の調べ方

血液ガスをとったら、早めに酸素化能障害があるかどうかを調べます。個人的にはPaO2の値を見たら直ぐ行うのが良いと考えます。そんなに時間かかりませんから。

酸素化能では肺胞動脈血酸素分圧較差を求めます。言い方は色々ですが、A-aDO2と言う表現が一番多いのかも知れません。

式は覚えなくて良いです。今はスマホで計算も出来ますので!しかし、こうなっているんだということは理解しておきましょう。

A-aDO2=PAO2−PaO2  これは簡単ですね!定義がそういう事ですから。

PAO2=(760-47)×FIO2ーPaCO2/R

この式の項目を一つ一つ説明します。

PAO2のAは肺胞(Alveolar)という意味です。肺胞内のガスは気体なので大文字です。aの動脈(arterial)との違いを理解しておきましょう。

「760」は大気圧で、単位はmmHgあるいはTorrです。1気圧は1013.25hPaだそうですが、血液ガスでは一般的ではない(日本だけらしいですが)ので、知らなくて良いです。富士山の山頂で測定すれば、気圧は0.7気圧らしいですので、760×0.7=532となります。飛行機の中は飛行中は0.8気圧ぐらいだそうですので、760×0.8=608となります。一般的に我々が考える場合には、平地にある病院で行いますから、そのまま1気圧の760で良いです。

「47」は37度における飽和水蒸気圧です。空気が肺の中に入ると、肺胞に達する頃には水蒸気で加湿され、水蒸気が760の中の47の分を奪ってしまうのです。大きな会場の座席に例えると、まずファンクラブ会員である水蒸気さんたちが、760ある座席のうち、47座席を先に確保してしまい、残りの713の座席を窒素と酸素と二酸化炭素で奪い合うという事です。

次はFIO2です。fraction of inspiratory oxygenのことで、日本語だと吸入酸素濃度です。「FIO2は40%です」という人がいますが、「FIO2は0.4です」というのが正しいです。Fはそう言う単位のようです。二番目のIは液体ではないので大文字で、フォントが小さくなっています。酸素投与していないと0.2とか、0.21となります。(760-47)×0.21=149.73なので、ここを150としている場合がありますが、酸素投与をしていない、普通の環境下での測定にのみ当てはまります。

PaCO2は本当はPACO2(肺胞の二酸化炭素分圧)らしいですが、二酸化炭素は拡散能力が高いので、PACO2がほぼPaCO2と同じなのでこうなっています。これは血液ガス分析で出てくる値ですね。

Rは呼吸商で、通常の生活をしている人は0.8として計算します。食べている物の種類によって色々異なるようですが、そもそも、この式も厳密な物ではないので、全員0.8でいいです。

よって、
A-aDO2=713×FIO2ーPaCO2/0.8ーPaO2


となります。正常値は色々ですが、年齢×0.3以下というのが一番覚えやすいし、いいのではないでしょうか。年齢の半分以下というのもありましたが。

FIO2が上昇すると、A-aDO2が大きくなるため、酸素化能障害がなくても、酸素投与時には酸素化能障害があると診断されてしまう可能性がありますが、酸素化能の指標として毎回必ず計算をしておきましょう。少なくとも、A-aDO2が正常であれば、酸素化能障害はないと言って良いと思いますので、感度が高い検査になりますね。

ちなみに、A-aDO2は他にもP(A-a)O2とかA-a O2 gradient等という言い方があるようです。

<今回のポイント>

血液ガスを採取したら必ずA-aDO2を計算しましょう。

2017年10月30日月曜日

発熱で来院された患者さん

 89歳の女性です。発熱で施設から紹介されてきました。

 見た目は元気そうで、意識レベルも普段と変わりないそうです。

 39度の発熱がありましたが、他のバイタルサインは特に問題ありませんでした。呼吸数は何と!測られていませんでした(研修医の先生にはちゃんと呼吸数をチェックするように伝えているのですが(T_T))。

 血液ガスデータは以下の通りです。この段階で行うべき介入は何でしょうか?

(酸素投与なし)
pH  7.507
PCO2  22.1 mmHg
PO2   69.7 mmHg
HCO3  17.1 mmol/L
BE   -5.1 mmol/L
Lactate  2.69 mmol/L

 少しずつ紹介していくので、今日は酸素についてだけ見てください。PO2(正確にはPaO2)は69.7 mmHgとまあまあな値です。70 mmHgあれば良いと覚えてください。
よって、緊急介入は必要なく、落ち着いてゆっくりと熱の原因検索を行っていけば良いでしょうか?

 違いますね。この人の呼吸数は30/分もありました。PCO2(こちらも正確にはPaCO2)も低いです。CO2とO2は酸素を奪い合っているので、PaCO2が減れば、PaO2は増えるはずです。なのにPaO2が正常値と言うことは、酸素を正常値に保つために一生懸命換気をしてPaCO2を下げている状態だと言うことです。

 よって、まず行うべきは酸素投与です。どのぐらい流したら良いかは色々です(少しずつ紹介していきます)。今回はマスクで4L/分流してみました。迷ったらもっと大量投与でも問題ありません。短時間の高酸素血症は問題ありませんから。

 酸素化能の程度を見る指標とか、色々あるのですが、それは次回に。

 今回の患者さんは、肺炎で低酸素になったために二酸化炭素を下げて酸素を少しでも正常に保とうとしていました。呼吸数が早くなっていました。

 ちなみに、血液ガスをとらなくたって、呼吸数が早いという所見だけで酸素投与をして良いです。このブログで述べていきますが、検査は患者さんのデータの一つであり、全てではありません。心電図の本にも似たことが書いてありました。心電図で患者さんの事が全て分かるわけではないから、身体所見とか病歴も大事にしましょう!と。

<今回の極論ポイント>
・呼吸数が早い人には酸素投与をしましょう!
・血液ガスなんかなくたって、患者さんの治療は出来る!