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2020年6月26日金曜日

酸素飽和度の色々

 昨日の続きです。酸素飽和度とは、ヘモグロビンにある酸素の座席がどのぐらい埋まっているか?と言う指標です。

 一番身近なものはパルスオキシメーターによって測定された酸素飽和度ですが、血液ガス分析の器械のはじき出すデータをきちんと見ると、酸素飽和度が二つあるはずです。sO2とFO2Hbなどとなっているものです。

 sO2あるいはO2SATなどと表示されている物は、機能的酸素飽和度と呼ばれています。以下の式で求められます。
 機能的酸素飽和度=酸素ヘモグロビン÷(酸素ヘモグロビン+脱酸素ヘモグロビン)

 またFO2Hbは、分画酸素飽和度と呼ばれる物で、Fはfractionの略で、酸素濃度などもFIO2とFが使われています。以下の式で求められます。
 分画酸素飽和度=酸素ヘモグロビン÷全ヘモグロビン

 分画酸素飽和度は、機能的酸素飽和度の分母に一酸化炭素ヘモグロビンとかメトヘモグロビンとか色々なヘモグロビンを足した物です。よって、分画酸素飽和度の方がやや低いのが一般的です。

 そして、昨日の計算式の係数は1.39が正式であり以下のように分画酸素飽和度を用いるべきです。
動脈血酸素含有量(CaO2)=1.39×Hb×分画酸素飽和度+0.0031×PaO2

 しかし、酸素飽和度が機能的酸素飽和度でしか求められない場合もあったりして、その際は係数が1.39では大きすぎるということなのでしょう。

2020年6月25日木曜日

酸素含有量の係数は何故1.34だったり1.35だったり、1.36だったり1.39だったりするのか?

 血液ガス分析をする時に、必須の計算ではありませんが、酸素含有量を計算する時があります。動脈血1dLに含まれる酸素の量(vol%)です。末梢組織に酸素がどのぐらい運ばれているのか?を考える時に必要です。

 ちなみにですが、大気の酸素濃度は20.9%と言いますが、割合を示しているだけで、量がどのぐらいあるかは分かりません。大気が1リットルあれば、209mlの酸素があるわけですが、100mlしかなければ、20.9mlしかありません。
 分圧も同じで、酸素分圧が100mmHgと言っても、酸素がどのぐらいあるのかはそれだけでは分かりません。
 酸素がどのぐらいあるのかは酸素含有量を計算しなければなりません。

 酸素含有量CaO2の計算式は以下の通りです。

CaO2=1.34×Hb×SaO2+0.0031×PaO2

 この係数が1.39だったり1.36だったりと本によって色々です。何故なのでしょうか?

 以前も紹介させて頂いた本のP.80には、理論上は1.39だと書いてあります。かいつまんで箇条書きにします。

 ヘモグロビンの分子量は64500
 ヘモグロビン1gは1.55×10^-5(10の-5乗)mol(1÷64500)
 ヘモグロビン1分子には酸素が4分子結合
 ヘモグロビン1gには6.20×10^-5molの酸素が結合(1.55×10^5×4)
 0度1気圧で乾燥状態の1molの気体の体積は約22.4Lなので、ヘモグロビン1gに結合している酸素は1.39ml(22.4×6.20×10^-5)

 しかし、実際に測定すると、係数は1.34だったり1.36だったりするようです。これは酸素飽和度の問題、一酸化炭素ヘモグロビンなどの量の問題だそうです。つまり1.39などの係数の後にかけるHbや酸素飽和度が異なっているからなんだそうです。

 今回はこれだけにして、次回解説します!

2020年6月24日水曜日

慢性呼吸不全の場合

 今回も内科学会雑誌からです。2020年7月号P.1421から1426です。

 慢性的にPaCO2が高いと代謝性代償が起こります。つまりHCO3が高くなります。高いと言っても30だったり40だったり50だったりします。どのぐらいまで上がるのが正常なのか?が分からないと代謝性アルカローシスや代謝性アシドーシスを合併している時に分かりません。

 それが分かる物がsignificance bandあるいはconfidence bandと呼ばれる物です。混合性代謝異常がない(どうやって調べるのでしょうかね)慢性II型呼吸不全の患者さん(二酸化炭素分圧が高いだけ)を集めHCO3がどのぐらいだったかを調べて、横軸にPCO2縦軸にHCO3をプロットした物です。

 だいたいHCO3=24+0.35×ΔPaCO2だったそうです。ΔPaCO2=PaCO2−40です。よって、HCO3はそのぐらい(±5ぐらいでしょうか)であれば代償性変化だと判断できます。

2020年6月16日火曜日

AGをAlbで補正するなんて聞いたことなかったぞ!

 アニオンギャップをアルブミン値で補正するのは、ほぼ常識になりつつありますが、そんなこと知らなかったぞ!と言う人もおられると思います。私もそうです。いつ知ったのか覚えていませんが、5年ぐらいしかたっていません。

 研修医の頃血液ガスについて勉強したし、その後もそれなりに勉強したけどな〜なんて思っていましたが、なんとこちらの論文によれば15年ほど前から言われ始めたのだそうです(論文が出たのが2018年で13年前からと書かれています)。原文は「Surprisingly, it is only within the last 13 years that a correction factor has been developed that can be introduced into clinical practice.」です。日本語にすれば「驚くべき事に補正係数が示され、それが実際の診療に紹介されてから13年程度しか経っていない」という感じです。

 また同じ文献には、有名なテキストでアニオンギャップがどう書かれているかについての表が載っており、何とセシル内科学第24版にはアニオンギャップをアルブミンで補正する記載がまったくないとのことです。こちらによればセシル内科学の原著は2020年に第26版が出ているそうです。Albの補正が書かれているか読んでみたいですが、、、、、、28699円とのことです。病院で買ってもらおう、、、、、、、

 以下の本は研修医の時に第一版を読んで、その後第二版が出たと言うことで原著を買って良く読んだ記憶があるのですが、なんと、P.128にアルブミンが低下するとAGが低下すると書かれています。補正をしなさいとは書かれていませんが、しっかり読んだはずなのに、、、、、、英語だったから仕方がないと言うことにしておきましょう。第二版で出版が止まっているのが残念です。第二版の原著は1999年に出版されています。



 よって、「先生Alb補正するのは常識ですよ!そんなことも知らないんですか?」と若い先生に馬鹿にされたら以下のように対応しましょう。

 「アルブミン補正なんて、俺が研修医の頃はなかったぞ!少なくとも2005年までは、俺は血液ガスについて最新の知識を得ていたが、そんなのは載っていなかった!最近言われ始めたんじゃないのか?」と答える。

 「俺はセシル内科学を読破したけれど、そんなこと書いてなかったぞ!えっ!今は26版なんだ、、、、、、俺は24版を読んだんだけどな。」と答える。

 「そうなんだ、アルブミンで補正するなんて知らなかったよ〜。君はよく勉強しているね。ところで、何でアルブミンが低いとAGが低くなるんだ?」と答える。

 最後の様に言われた若い先生向けの記事を明日アップする予定です。

2020年6月14日日曜日

アニオンギャップの計算にKを入れるべきか?

 血液ガス分析をするにあたって、アニオンギャップ(Anion gap;以下AG)は大切な項目です。AGが増えている時は酸が増えている事が分かるからです。AGが増えていない代謝性アシドーシスがあれば、HCO3が減った為にアシドーシスになっていると分かります。

 ご存じの通り計算式は以下の通りです。

AG=Naー(CL+HCO3

 しかし、本によっては、以下のようにKが入っています。

AG=Na+Kー(CL+HCO3

 カリウムを入れるべきか否か?について色々調べてみたのですが、これだ!というのは見つかりませんでした。例えば日本救急医学会の用語集には、K、Ca、Mgイオンの総和は約11mEq/Lでありほぼ一定なので、これらは測定できない陽イオンとして考えて良いとあります。分かったような、分からないような、、、、、

 困った時にはUpToDateです。「Serum anion gap in conditions other than metabolic acidosis」という文献にこれだ!と言う物がありました。日本語にすれば、「代謝性アシドーシス以外における血清アニオンギャップについて」と言う資料です。

 この中には、アメリカではKを含まない式を使うが、ヨーロッパではKを入れる国が多いと書かれています。何故ヨーロッパではAGの計算式にKを入れるのか?については書かれていませんでした。こちらの文献には
「As originally conceived, serum K+ was also included in the calculation, but serum K+ is included in none of the major textbooks published in the United States and only in a minority of manuscripts. 」と書かれています。日本語にすれば、「オリジナル文献には、血清カリウムイオンもAGの計算に含められていたが、アメリカで出版されている主要な教科書には載っておらず、個人的な資料の一部に書かれているのみである」という感じなのでしょうか。最初に考えた人がKを入れたんだけど、アメリカでは賛成する人があまりいなかったと言うことなのでしょうか。心肺蘇生のやり方とか、虫垂炎の保存的治療とか、欧米の対決が時々見られて面白いですね。

 また、アメリカではカリウムは測定できない陽イオンと考えられているとUpToDateには書かれています。

 こちらの文献には、KはNaに比べて低値であり、その変化はAGに大きな影響を与えないと書かれています。またカルシウムやマグネシウムに関しては、異常があっても実際にはAGに影響はほとんどなかったと書かれており、AGはNaとCL、HCO3の3つだけで計算すれば良いと言うことになります。

 簡単で良かった!

 当院の検査室とICU、救急外来
にある器械はSiemensと言う会社のもので、AGの計算にKが含まれています。ドイツに本社がある会社のようでした。なるほど。

 私は自分で血清の電解質を使って計算していますので、自動的に出てくるAGは見ていません。

2020年6月8日月曜日

HCO3は計算値?

 血液ガス分析のデータを見ると色々な値が載っています。最近の物は乳酸だけでなく、電解質やヘモグロビンまで載っています。他の検査がなくても血液ガス分析だけでもかなりの診断が出来そうです。

 救急科専門医の筆記試験に出題されていますが、実際に測定している項目はどれか知っていますか?

平成16年度実施救急科専門医・認定医筆記試験問題
問題10 血液ガス分析装置で計算値として表示するのはどれか。
(a)PO2
(b)PCO2
(c)pH
(d)HCO3-

(e)Hb

 この問題の答えは(d)です。pH=6.1+log([HCO3]/0.03×PCO2)なので、

[HCO3]=0.03×PCO2×10^(pH-6.1)と言う計算になります。

 しかし、アメリカなどでは血液生化学検査の項目にHCO3(正確にはtCO2)があり、血液ガスをとらないこともよくあるようです。論文(参考文献)によれば、血液ガスのHCO3(pHとPCO2から計算した値)と生化学検査で得られたtCO2はほぼ同じだという事です。日本でも血液生化学検査でtCO2(ほぼHCO3と同じ)を測定している病院があるのですね。

 普通に臨床をしているだけならあまり関係ありませんが、英語の論文を読んだり、別の病院(血液生化学でtCO2を測定している病院)の先生や外国の人と血液ガス分析についてディスカッションする場合には、血液ガスをしなくてもHCO3が出せることを知っておきましょう。

参考文献
 楠木 啓史ら:生化学分析装置における血清重炭酸塩(総 CO2)の 測定. 医学検査 Vol.67 No.1 2018

2020年5月29日金曜日

HCO3は計算値です

 以前も書きましたが、血液ガス分析のデータの中には実際に測定していないものがあります。小数点以下の数値まで出ているから正確な気がしますが、実はそうではありません。

 pH、PCO2、PO2は実際に測定していますが、HCO3やBEは計算値です。測定値にある程度誤差がありますから、当然計算値にも誤差が出ます。

pH=6.1+log([HCO3]/0.03×[PCO2])

 と言う関係がありますので、pHとPCO2が測定できれば、以下のような計算で算出できます。

[HCO3]=0.03×[PCO2]×10^(pH-6.1)

 pHが7.4だった場合、PCO2が40だったとすると、HCO3は23.94となります。色々調べたところ、PCO2は±2ぐらい誤差が出る可能性があるようです。PCO2が42でpHが7.4だとHCO3は25.14となります。PCO2が38だとHCO3は22.75となり、HCO3は2.39の幅を持った範囲になります。pHの誤差も出ると考えるともう少し幅が広くなるのでしょうか。

 よって、HCO3が5以上上がったり下がったりしているなどがなければ、誤差の範囲と考えて経過観察するのも良いかもしれません。

 例えば、こちらの論文では、二つの器械を使って計算したところ、一つの器械ではアルカローシスと診断されたのに、もう一つの器械ではアシドーシスと診断された例があると書かれています。知りませんでしたが、器械によってHCO3算出の計算方法や、係数が違っているのだそうです。

 そう言うのは大変困りますが、検査データはある幅を持った値であることを忘れないようにしたいですね。

 患者さんの状態なども考慮して、総合的に判断しなければなりません。データに惑わされないようにしましょう。

2020年5月28日木曜日

シスに注意

 シスと言えばStar Warsでは悪い人たちのことですね。血液ガスを学ぶ時にもシスが出てきます。暗黒面に落ちないように用語をしっかり勉強しておきましょう。

 アシドーシス(acidosis)とアシデミア(acidemia)の違いを説明できますか?出来る方は、この記事を読む必要はありませんが、きっとこのブログにたどり着いた方は読む必要があるでしょうね。

 まずacidは酸、alkaliは塩基(アルカリ)という意味です。emiaは何とか血症という意味で、例えば菌血症はbacteremiaと言います。osisとは状態の変化を表したり病気の名前についたりする言葉だそうです。

 アシデミア acidemia pHが7.35以下
 アルカレミア alkalemia pHが7.45以上
 アシドーシス acidosis pHを下げようとする病態
 アルカローシス alkalosis pHを上げようとする病態

 血液ガスデータを見て、「pHが7.3だね。アシドーシスだ!」と言うのはどうでしょう?
 pHを見て言えるのは、emiaです。正確には「pHが7.3だね。アシデミアだ!」と言うべきです。pHが7.3の場合、アシドーシスがなければ、pHは下がりませんので、アシドーシスがあるのは間違いないので、アシドーシスと言っても間違いではありませんが。

 アシドーシスやアルカローシスがあるかは、色々解釈しなければ分かりません。PCO2が50と高値であれば、通常は呼吸性アシドーシスですが、代謝性アルカローシスがあれば、呼吸性アルカローシスかもしれません。アシデミアがある時に、アルカローシスもあるかもしれません。

 用語はきちんと使った方がもちろんいいので、気をつけて使うようにしましょう。しかし、実際の現場では、大きな不利益はありませんね。

2020年5月9日土曜日

AGとは?その2

 AGについてもう少し追求してみましょう。

 まず、先日の記事にも書きましたが、アルブミンは酸ですし、AGはアルブミンが正常であるとして計算されるそうですので、アルブミンが低い(高いことはあまりありませんね)時は補正をします。

補正AG=AG+2.5×(正常アルブミン値−Alb) 正常アルブミン値は私は4としています。

 他にも例えば造影剤を投与した直後に血液ガス分析を行うとAGが低くなることがあるようです。造影剤がCL値を高くする可能性があるようで、AG=Na−(HCO3+CL)ですから、CLが高くなればAGは低下します。

 そもそも、この式はどうやって出てきたかというと、人間の身体は電気的に中性であり、陽イオンと陰イオンの和は等しいそうです。よって以下の式が作れます。

Na+UC=HCO3+CL+UA 

 UCはunmeasured cation、測定できない陽イオン、UAはunmeasured anion、測定できない陰イオンです。UCにはカリウムやマグネシウム、UAにはアルブミンやリンなども含まれますので、正確に言えば測定できるイオンも含んでいます。

 酸の定義は、Hイオンを放出する物ですので、液体中では酸は陰イオンとなります。陰イオンが増えたらアシドーシスと言うことです。よって上記の式を変形します。

Na−(HCO3+CL)=UA−UC=AG

 と考えると言うことです。酸が増えるとHイオンを放出してUAが増えます。よってAGが増加すると言うことです。アルブミンはUAに含まれていますので、低アルブミン血症ではAGが低下します。

と言うことで、内科学会雑誌(109巻2号P.260)の問題をどうぞ。

問題 アニオンギャップ(anion gap:AG)が10未満にならないものはどれか。1つ選べ。
(a)多発性骨髄腫
(b)ネフローゼ症候群
(c)高Ca血症
(d)高K血症
(e)尿細管性アシドーシス

カルシウムやカリウムはUCに含まれますので、高くなればAGが低くなることが分かりますので、(c)と(d)が×なのは直ぐ分かりますね。
(a)の多発性骨髄腫はIgGが増える病気です。IgGはUCになるそうですので、AGが低くなることがあります。しかし、UAになることもあるそうです。さすが内科学会雑誌です。
(b)ネフローゼ症候群では低アルブミン血症を認めます。朝倉内科学11版によれば、ネフローゼ症候群と診断するには、尿蛋白3.5g/日以上と低アルブミン(3g/dL以下)の両所見を認めることが必須とのことです。よって、アルブミンが低く、UAが低下しますので、AGが10未満になることもあるでしょう。
(e)はよく分からないのですが、答えは(e)だそうです。内科学会雑誌の解説によれば、「尿細管性アシドーシスはAG正常代謝性アシドーシスを呈する代表的疾患であり、AGが極端に低下することはない」とのことです。

 内科専門医になろうとする人以外は、(c)(d)が×だと言うことだけ分かれば良いのではないでしょうか。ちなみに、私はこの問題を解いた時、答えは正解しましたが、理屈が分かりませんでした。よって、この記事を書くため勉強しました。

2020年3月18日水曜日

HCO3+15の続き

 昨日紹介した論文のタイトルは「Bedside rule secondary response in metabolic acid-base disorders is unreliable」です。日本語にすれば、「代謝性アシドーシスにおける代償性反応を簡単に予想できる式は信頼できない」と言う感じです。

 原文を読んでみました(ネットでは雑誌の購読者しか読めませんが、ある方法で原文を手に入れました)。

 ハリソン内科学やUpToDate、American College of Physicians guidelineにも、HCO3+15が紹介されていて、不正確だから削除すべきだという内容です。

 ハリソンは持っていないのですが、UpToDateはたぶん「Approach to the adult with metabolic acidosis(成人の代謝性アシドーシスへのアプローチ)」という文献で、Winterの式、HCO3+15以外に以下を紹介しています。

 pHの小数点以下とPCO2が同じという物です。pHが7.25ならpCO2は25ぐらいだというのです。

 これら三つとも使用できると書いています。

 論文では、代謝性アシドーシスではWinterの式とHCO3+15、代謝性アルカローシスでは0.7×([HCO3]−24)+40とHCO3+15を比較して、差がある(最大6)から良くないと書いているのですが、もしかしたらHCO3+15の方が正しいのかも知れないのに、それについてのコメントはありませんでした。

 そもそも、例えばHCO3が15だった場合の正しい?PCO2はいくらなのかどうやって決めるのでしょうか?

 人間の身体は色々ですし、Winterの式も±2なので、最大4の差があるわけですから、簡単に15を足すということで良いのではないかと思いました。

 気になる方は、電子カルテにひな形を入れておけば良いと思います。簡単にコピー出来ますから、代謝性アシドーシスでは40−1.25×(24−[HCO3])、代謝性アルカローシスでは40+0.75×([HCO3]−24)と書いておいて計算すれば良いかもしれません。
 もっと気になる方は、全ての方法で計算して比較し、どれを採用するか考えたら良いと思います。

 しかし、呼吸性アルカローシスと判断しても呼吸性アシドーシスと判断しても、大切なのは患者さんの状態であり、あまり厳密に考える意義はないのかもしれません。単純に患者さんの状態とPCO2の値だけで今後の介入を考えても良いでしょう。

 なので、私はHCO3+15、あるいはpHの小数点以下がPCO2と言う簡単な物をお勧めします。大切なことは、これらは不正確な可能性があると知っていることです。禁忌な治療であっても、禁忌だと知っていればやって問題ないです。それでもやりたいわけですし、禁忌である理由(その為に起こり得る副作用)に気をつけますので。

2020年3月17日火曜日

PCO2=HCO3+15はだめ?

 以前代謝性アシドーシスや代謝性アルカローシスの場合に、PCO2がHCO3+15位になればちょうど良い代償性変化だと書きました。
 しかし、最近読んだHospitalistと言う雑誌の特集に、HCO3+15は「勧められない」と書かれていました。

 がーん!!

 その雑誌はHospitalistの最新刊で、Vol.7、P.868-875, 2019です。内科エマージェンシーの特集で「代謝性アシドーシス」のところです。

 こちらの論文で不正確だと指摘されているそうで、以下の式(Winters formula)を推奨しています。

PCO2=1.5×[HCO3]+8±2

 濃度を表す時には、[]を使うのが正しいのだだそうです。きっと学生時代に習ったんでしょうが、忘れてしまいました、、、、、、また、本当はHCO3の後に「-」等電荷を上付きでつけなければなりませんが、入れ方が分かりません、、、、、、すみません。

 以前紹介した本「酸塩基平衡の考え方(南江堂)」のP.108-109には、両者の計算値が載っています。一番正しい?PCO2の予想は、代謝性アシドーシスでは予想PCO2=PCO2−(24−HCO3)×1.25だそうで、代謝性アルカローシスでは、予想PCO2=PCO2+(HCO3−24)×0.75だそうです。

 HCO3+15は、HCO3が正常値から外れるに従って予測値と大きく差が出てきます(と言っても4は越えない)。
 Winters formulaは、代謝性アシドーシスに限って使う物のようですが、軽度のアシドーシスの時には予測値と外れています(が同じように4は越えません。何とHCO3が24の時が一番差が大きい)。

 よって、代謝性アルカローシスと軽度の代謝性アシドーシスではHCO3+15を用い、HCO3が14を切るぐらいの重症な代謝性アシドーシスではWinnters fomulaを使うのが良いかもしれません。しかし、Winterus fomulaは±2と言うのがついていて、曖昧ですよね。

 と言うか、最初から代謝性アシドーシスならHCO3の変化×1.25を引き、代謝性アルカローシスならHCO3の変化×0.75を足せばイイじゃない!ってことになりませんかね。アシドーシスは1.25、アルカローシスは0.75を覚えるのが大変なので、+15を覚えれば良いので、HCO3+15で良いんじゃないでしょうか。人間の身体は計算通りにはいきませんしね。

<今回の極論ポイント>
 呼吸性代償はやはりHCO3+15で良いでしょう。

2020年3月6日金曜日

HCO3 act、standって何?

 血液ガス分析のデータを良く見てみると、HCO3はHCO3 actとかHCO3 standとか書かれています。当院は「HCO3act」となっています。PO2とか書かれていますし、下付き文字が難しいようですね(HCO3の3が下付に見えますが、フォントの関係です)。

 研修医の時に疑問に思って検査室の人に聞いた記憶があるのですが、分からないと言われてしまい、当時はインターネットも普及していない時代だった(パソコンも持っていませんでした)ので、そのままになっていました。しかし、最近勉強して見つけました!

 結論から言えば、いくつかのHCO3が書かれていたら、act(正確にはacutual)だけ見れば良いです。

 actual HCO3は、pHとPCO2から計算された値です。HCO3は実際に測定していないんですよ。知っていましたか?計算式はpH=6.1+log(HCO3/0.03×PCO2)の関係から計算できます。

 HCO3 standはstandard HCO3の略です。これは、PCO2を40mmHgとした場合のHCO3の値です。呼吸性の異常がなければ、HCO3 actとHCO3 standは同じ値だそうです。定義から言えばそうですね。

act>stand 呼吸性アシドーシス
act<stand 呼吸性アルカローシス

 だと、こちらのサイトからダウンロードできるPDFファイルのP.88に書いてありました。

 酸塩基平衡の考え方(丸山一男著、南江堂)P.17には、HCO3 standが高ければ代謝性アルカローシス、低ければ代謝性アシドーシスと考えて良く、代償性変化をするHCO3actよりも重視する先生がいると書かれています。

 う〜ん、よく分かりませんし、当院のデータにはHCO3 standが出てきませんので、このデータは忘れても良いですね!HCO3 actのactは気にしないで良いと言うことだけ覚えておきましょう。

2020年2月27日木曜日

急性呼吸性アシドーシスではBEは低下しません

 一昨日の続きです。BE(ベースエクセス;base excess)は、代謝性アシドーシスを素早く判定するための指標だと書きました。よって?急性呼吸性アシドーシスでは変化しないとのことです。

 今回はその理由を書いてみます。

 まず、急性呼吸性アシドーシスでは、PaCO2が1上昇すると、HCO3が0.1上昇するそうです。以下のような反応が起こるからだとされています。

CO2+H2O→H2CO3→Hイオン+HCO3

Hイオンは、BB(バッファーベース)中のAlbイオンなどと結合し、BBが減ります。しかし、HCO3が同じ量出来ていますので、BBは減りません。BEはBBが減ると低下するとされていますので、これだけでBEは低下しないことが分かりますが、それらについては、また後日(私がまだ理解していないから)。

BE=HCO3-24.2+16.2×(pH-7.4)

でした。例えばPaCO2が40から50に上昇したとすると、HCO3は1上昇し、25になるとします。

pH=6.1+log(HCO3/0.03/PaCO2

なので、代入して計算(関数電卓を使用しました)すると、pHは7.32になりました。

計算すると、BEは-0.496でほとんど正常です。

同じようにPaCO2が60に上昇したとすると、HCO3は26となり、pHは7.26で、BEは-0.468となりました。

確かに急性呼吸性アシドーシスではBEは低下しないようです。

2020年2月25日火曜日

BEは見なくても良いです(もちろん見ても良いです)

 BE(ベースエクセス;base excess)は、一目で代謝性アシドーシスを見つけるための指標のようで、緊急時にはよく使われています。BEが低い場合には、HCO3も低く、代謝性アシドーシスがあると考えて良いことが多いです。詳しくは省きますが、急性の呼吸性アシドーシスではBEは低下しません。

 BEは以下のような式で計算されます(一例です。色々あるようです)。

BE=HCO3−24.8+16.2×(pH−7.4)

 機械の業者さんによって違うようですが、上記のように、BEとHCO3はほぼ一対一です。

 しかし、色々限界があることも知っておかなければなりません。それは以下の通りです。

・低アルブミン血症では高くなる。
・pHの値がおかしい(HCO3とは逆の方向に呼吸性代償が強く働いた時など)場合にはHCO3と解離する。
・HCO3の変化が一次的な変化なのか、代償による変化なのかを区別できない。

 一つずつ説明します。低アルブミン血症ですが、以前書いたようにアルブミンは血液中でHイオンとAlbイオンに分離します。分離してHイオンを出す物質は酸と言う定義でした。よって、アルブミンは酸ですので、アルブミンが低くなれば、代謝性アルカローシスになります。BEはアルブミンが正常であるという前提で計算されるそうです。

 pHの値がおかしい場合です。HCO3が低くなったのに、呼吸性アルカローシスが合併し、pHが上昇した場合、BEの低下はそれほどでもなくなります。同じようにHCO3が高くなったのに呼吸性アシドーシスが合併してpHが低下した場合、BEの変化は少なくなります。

 代償かどうかについては、BEがHCO3とpHのみで決められていますから、区別がつきにくいです。

 一説によれば、昔は乳酸などが測定できなかったので、緊急時にBEを見て代謝性アシドーシスがあるなと思うような状況だったようですが、今は乳酸を測らない血液ガスは、クリープを入れないコーヒーのような(古い!)ものですので、BEを見る必要はないかも知れません。

 が、簡単に計算できるので、たぶん10年後にも、血液ガス分析のデータにはBEが計算され続けるでしょう。tCO2みたいに。

2020年2月13日木曜日

肺胞気式でPCO2を何故呼吸商で割るのか?

 肺胞気式という式があります。肺の一番末端である肺胞に、酸素がどのぐらい存在するのか?を計算する式です。肺胞にどのぐらい酸素があるのかを直接測定できないため、とても重要な式です。以下に示します。

PAO2=PIO2-PACO2/R

 簡単な式ですが、用語の解説を以下にします。

 PAO2は肺胞の酸素分圧を示します。Pは分圧、その次の文字は、大文字だと気体中の測定値を示し、小文字だと液体中の測定値を示します。Aはalveolarと言う英語の略で肺胞という意味です。
 PIO2は、吸入したガスの酸素分圧です。通常PIO2=(760-47)×FIO2で示されます。760は1気圧です。標高の高いところで測定した場合には、760より低くなります。47は37度における飽和水蒸気圧で、肺胞に行くまでに吸入したガスは加湿されますので、水蒸気が圧を奪うと言うことです。体温は37度と仮定しています。低体温だったらどうするのか?等とやり出すときりがないので、通常の診療では、37度として考えて良いです。
 FIO2は吸入酸素濃度です。FIO2は50%等と言いますが、正確には、0.4と言います。Fはfractionの略で、分数とか小数という意味があるようです。酸素を吸っていない場合には、FIO2は0.21程度ですので、PIO2=713×0.21=150程度になります。
 PACO2は肺胞における二酸化炭素分圧です。これは直接測定できませんが、二酸化炭素は容易に肺胞と血液の間を行き来出来ますので、ほぼPACO2=PaCO2です。動脈血二酸化炭素分圧ですね。これは血液ガスで測定できます。
 Rは呼吸商と呼ばれる物で、通常の生活をしている人は0.8です。酸素を10使って二酸化炭素を8排泄していると言う状態です。

 よって、肺胞気式を簡単に書けば、PAO2=150-PaCO2/Rとなります。

 ところで、何故Rで割るのか考えたことがありませんでした。田中竜馬先生の本に書かれていて、田中先生も感動しませんか?と書いておられますが、私も何度目かに読ませていただいてやっと感動しました!

 肺胞気式のPaCO2は、PaCO2(つまりPAO2)が直接分圧を横取りするから入っているのではなく、消費される酸素の量を示すために入っているのです。

 詳しく知りたい方は、こちらの論文に計算式が載っています。理解するのに時間がかかりました(私だけ?)が、なかなか面白いです。

2019年4月5日金曜日

pHはピーエッチ?ペーハー?

 久しぶりの投稿です。今以下の本を読んでいます。初学者にも分かりやすい本ですのでお勧めです。

 酸塩基平衡の考え方 丸山一男著 南江堂

 その本の最初の方に、pHをペーハーと読むのは年配者と書かれていて驚きでした!そっか、これはドイツ語読みなので、現在は英語読みでピーエッチと教えているのだそうです。学校の先生をしている人に聞いたら、やはりピーエッチと教えているんだそうです。

 医療業界ではピーエッチと聞いた事があまりないのですが、それは働き始めるとみんながペーハーと言っているから訂正されるためなんだそうです。

 これから研修医の先生たちがピーエッチと言っていたら訂正しないように気をつけないといけないですね。

2018年9月23日日曜日

高濃度酸素を投与するとA-aDO2が開大する理由

 またまた久しぶりの投稿です。

 今回は他のページの引用です。こちらのページをお読みください。リンク先がなくなると困りますので、以下に私なりの解説です。

 肺胞気動脈血酸素分圧較差というのがあります。血液ガスをとったら必ず評価するように研修医の先生に伝えています。A-aDO2が分からない方は、別に解説していますのでご覧ください。

 このA-aDO2を酸素投与をしない状況で採血したデータでしか評価してはいけないという人がいます。なぜなら、高濃度酸素を投与していると、それだけでA-aDO2が上昇してしまい、患者さんの状態が悪いから上昇しているのかどうかが分からないからです。

 しかし、酸素投与をされてきた患者さんの酸素を中止して、ある程度の時間酸素投与なし(10分程度? )にしてから採血するというような行動は、患者さんを危険にさらすことになるかも知れませんので、あまりしません。どう評価するかは、別に学んで頂くとして、何故高濃度酸素を投与するとA-aDO2が上昇(開大するともいいます)するのでしょうか。

 全身から帰ってきた血液は、肺胞で酸素を充分受けて、例えばPO2が100mmHg位になって肺から出て、左心室を通り、全身に行きます。 しかし、リンク先によれば、3%程度の血液は肺胞で酸素化を受けずに動脈に送り出されるそうです。
 静脈血の酸素分圧が30mmHgだったとします(これは適当です)。肺から出てきた血液のPO2が100mmHgだった場合(酸素投与なし)と400mmHgだった場合(例えば、酸素15L/分)を考えてみましょう。

  酸素投与なしの場合、(100×97(%)+30×3)÷100=97.9となり、PaO2は98程度になります。酸素投与をして肺静脈内のPO2が400の場合(400×97%+30×3)÷100=389となり、酸素の低下の程度は5倍近いです。

 酸素化を受けていない3%の血液の酸素分圧と97%の酸素分圧の差が大きくなれば、A-aDO2に及ぼす影響は大きくなりますよね。よって、高濃度酸素を投与するとA-aDO2が高くなるのです。

2017年10月31日火曜日

血液ガスの記号について

血液ガスのデータは色々な略号で記載されています。今回はこれについて学びましょう。

最初の英語はどのようなデータかということで、これは大文字で書きます。

P Pressure 分圧
S Saturation 飽和度
C Content 含有量

他にもあるかも知れませんが、取りあえず三つだけ。つまり、酸素に関して言えば、PaO2とSaO2とCaO2があると言うことです。これらの区別はまた勉強しましょう。

次の英語は、どの部位のデータかと言うことで、小さい字で書きます。大文字のこともあるので、小さい字という表現になります。大文字は気体、小文字は液体のようです。

a artery 動脈血
A alveolar 肺胞
v vein 静脈血
P percutaneous 経皮的に(パルスオキシメーターによって)測定した動脈血(が多いと思います)このPを大文字にすべきか、小文字のpにすべきかについては今調査中です。

他にも色々ありますが今回は必要ないので省略します。静脈血のvは小文字だとは知りませんでした(T_T)。

次の文字は、測定した気体の種類です。

O2 酸素
CO2 二酸化炭素

窒素などもあるのでしょうが、この二つ以外あまり出てきませんね。

よって、SPO2とかpO2とかは、この基準に従えば誤りだと言うことになります。

よく出てくるデータは以下のようになります。

PaO2 動脈血酸素分圧
PaCO2 動脈血二酸化炭素分圧
SaO2 動脈血酸素飽和度
SpO2 経皮的に測定した動脈血酸素飽和度

こちらのブログにも解説していますので、良かったらご覧ください。

2017年10月29日日曜日

今日から血液ガスの症例をアップします。

 このブログは、以前作って以来、ずっと放置していたのですが、思うことがあって、今後できるだけ頻繁に、血液ガス分析について書いていきます。

 血液ガスは、救急外来で最もよく行われる検査の一つですが、解釈が難しいと感じている人が多いのではないでしょうか?私も研修医の先生と一緒に血液ガスについて勉強していて、一番研修医の先生が苦手にしている物の一つだと感じます。そして、私ももちろん、超苦手です。

 一度にたくさん勉強しても身につかないし、続かないので、少しずつですが、勉強して行きます。よろしくお願いします。

 今日は「血液ガスを何と呼んでいるか?」について書きます。知っている範囲の呼び方ですが、正式名はたぶん、血液ガス分析です。

・血ガス(けつがす)
・ABG(arterial blood gas)
・BGA(Blood gas analysis)
・単に「ガス」

 「血ガスをとります!」と言うと、看護師さんが「血圧は、120の80です。」などと言うので、血圧と聞き間違いやすいのでしょう(^^)。他の言い方が良いのかも知れませんね。