2020年6月20日土曜日

専用シリンジがない場合

 血液ガス分析を行う場合には、専用のシリンジを使って採血します。私が研修医の頃は、このシリンジは1本2000円ぐらいしたので、検査をすればするほど病院が損をするため、ガラスの注射器を使って採血をしていました。ガラスについては後日記事を書くこととして、今回は専用のシリンジがなかった場合にどうするかというお話です。

 専用のシリンジは、普通の注射器と何が違うのでしょう?

 いくつか違いがありますが、ヘパリンが入っているのが特徴です。よって、専用のシリンジではなく、普通の注射器で採血する場合には、ヘパリンを入れる必要があります。

 何故ヘパリンが必要かというと、注射器の中で血液が固まると検査結果に異常が出る可能性があります(特にヘモグロビンやヘマトクリット)。また、検査器械の中でも血液が固まると、器械が壊れてしまうので問題となります。よって、ヘパリンが必要ですが、数単位あれば良いようです。通常は1mlで1000単位のヘパリン製剤を使っていますので、0.005ml(約10分の1滴)あれば十分です。

 ヘパリンを注射器に少し吸って、プランジャー(注射器の引っ張るところ)を動かして吸ったヘパリンを全部バイアルに戻せば良いです。それでも注射器や注射針の中にヘパリンが残ります。

 ヘパリンが多すぎるとPCO2、pHが低下します。また、ヘパリンは陰イオンなので、NaやCaなどの陽イオンと一緒になっています。ヘパリンナトリウムやヘパリンカルシウムという製剤です。これらを使うと、NaやCaの検査結果に異常が出る可能性があります。その際は別に生化学検査でNaやCaをオーダーすると良いでしょう。

 ちなみに、専用のシリンジは電解質の結果に影響が出にくい、ヘパリンリチウムが使われているそうです。また乾燥しているので、血液を薄めたりする可能性はほとんどないそうです。

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