2020年6月27日土曜日

条件を変更後何分経ったら血液ガスをとっていいか?

 血液ガスをいつとったら良いのか?は大変悩ましい問題です。

 患者さんの状態を緊急で判断したい場合には、酸素を今始めたばかりだろうが、人工呼吸器をつけたばかりだろうが、今すぐ採血すれば良いです。pHが7を切っているんじゃないか、PaCO2が70を超えているんじゃないか、カリウムが高いのじゃないか、乳酸がかなり高いのじゃないか?等と思う場合です。

 しかし、緊急ではなく、今酸素投与量を増やしたんだけど、この酸素の量で良いのだろうか?人工呼吸器の設定を変えたんだけど、いつ採血したら人工呼吸管理の設定がちょうどいいと判定できるのだろう?と思うことがありますよね。本には患者さんが安定したら採血をすると書かれていますが、何分経ったら安定するのでしょうか?

 今回はこちらのサイトの日本語訳です。この論文を解説してくれています。

 慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstruction pulmonary disease;以下COPD)の患者は長期間の酸素療法と血液ガス分析(PaO2とSaO2)によるモニタリングを必要とする。酸素投与量を変更した場合に、酸素の状態を評価するための採血前に、新しい定常状態に達するまでにどのぐらいの時間が必要かは重要な問題である。

 最新のいくつかのガイドラインでは、20〜30分待つことを推奨しているが、本当にそのぐらい待つ必要があるのだろうか?この疑問に対して検討した文献が最近出版された。長期酸素投与(1〜4L/分)を1日16時間以上受けているCOPD患者12名の検討である。

 12人の患者は動脈カニュラから血液ガスを採取された。酸素投与中のベースとなるPaO2とSaO2と、酸素を中止してから、1分後、2分後、4分後、8分後、12分後、17分後、22分後、32分後、34分後に採血をした。

 その後もともと投与されていた酸素を再開し、同じインターバルで血液ガス分析を行った。最初が「wash out」であり、酸素の減量をシミュレーションしている。二番目が「wash in」であり、酸素の増量をシミュレーションしている。

 検討の結果、wash in、wash out共に、PaO2が臨床的に安定に達する平均時間は5分であった。7-8分経過すれば、75%の患者が安定状態に達した。最も長い患者は14分であった。SaO2に関しては、wash outでは平均7.4分、wash inでは2.6分であった。

 より詳細な検討により、酸素を減量した場合には16分、酸素を増量した場合には10分たてば安定したと考えて良いと結論づけられている。


 人工呼吸管理の方ではなく、慢性期のCOPDの方での検討ですので、急性期の患者さん等では使えないかもしれませんが、やはりガイドラインと同じように20分は待った方が良いと言うことになりますね。

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