以下の本に血液ガスの項目があります。
糖尿病性ケトアシドーシスの患者さんの症例が載っていて、AGが上昇していると書かれています。本文中にAGの計算値やAGが上昇していると言う理由が述べられていません。アルブミンは書かれていませんでした。AGが上昇する一般的な解説は載っていてとても勉強になるのですが、この症例のAG上昇についての記載がないのです。
Na123、CL98、HCO3 12.5とあり、自分で計算してみたらAGは12.5となり、上昇していません。Albの値も記載がありませんし、困ってしまったので出版社にメールをしてみました。著者の先生とはFBでお友達にさせていただいているので、直接聞いても良かったのですが、出版社を通した方が何か良いことがあるのではないかと思って(私にではなく著者の先生にですよ)出版社にメールをしてみました。何とその日のうちに著者の先生の返事が来ました(出版社を通じて)。対応が早い!!
そのお返事には、高血糖(血糖590)の症例なので、Naの補正が必要だと書かれていました。Naを補正するとNa+1.6mEq×(血糖100mg/dL上昇あたり)=130.84となり、AGは20.34で上昇しているという計算になりますとのことでした。
高血糖の場合に補正したNaを使うなんて聞いたことがなくて勉強になったと思い、どこかにその記載はないかと調べたところ、例えばUpToDateやいくつかのサイト(こちらやこちら)には、そのままのNaを使うべきだと書かれていました。著者の先生からはカンファレンスで補正すると言う意見を聞いたことがあり、補正をするものだと思っていたとメッセージを戴き、資料も戴きました。次の版(卒後20年目総合内科医ぐらいでしょうか)で訂正しますとお返事戴きました。ありがとうございます!
Letters to the editorに補正すべきではないと言う記載をしている文献もあり、補正する人が多かった(今も?)のでしょうか。
少し解説すると、高タンパク血症や高脂血症の場合には、偽性低Na血症といって、ナトリウムが低く出るのですが、本当の血清中のNa値は正常です。よって、血液ガスでAGを出す場合には補正が必要です。
しかし、高血糖の場合には、糖は電荷を持たないそうですので血糖を考慮に入れる必要はありません。また、血糖が高くなると細胞外液の浸透圧が上昇し、細胞内から水が引っ張られるので、Naだけでなく、CLやHCO3も低下します。例えば、上記の例のように、血糖が590だったとすると、Naは1.6×4.9=7.84低下するとされています。130.84が123に低下したとすると、AGは12.5だったものが11.75になります(ClもHCO3も同じ比率で低下しますから、12.5×123÷130.84です)。ほとんど差はありません。高血糖の場合には、Naは本当にその値に下がっているので、AGは電荷の平衡から考えられているので、補正をするなら全ての電解質を補正しなければならないはずです。
よって、高血糖の患者さんでAGを計算する場合、Naを血糖で補正する必要はありません。良かった!
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