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2020年7月31日金曜日

メトヘモグロビン血症ではSpO2が85%以下にはなりにくいです。

 メトヘモグロビン血症を診たことはありません。皆さんはありますか?

 メトヘモグロビンは、ヘモグロビンの酸素結合部位である鉄分子が2価ではなく、3価になってしまったもので、通常でも2%程度ぐらいまでは存在していますが、これが増えてしまうと酸素が結合できないヘモグロビンが増えてSaO2が低下して低酸素状態となり、問題が起こるという訳です。

 局所麻酔薬やニトログリセリン等でも起こるようなので、意外にメトヘモグロビン血症は発生しているようです。重大にならなければ症状もないようなので見逃されているかもしれません。通常のパルスオキシメーターでも検出できないそうです。

 さて、こちらの論文によれば、メトヘモグロビンが増えると、SpO2は85%に近づいていくようです。

 簡単に理屈を説明します。

 パルスオキシメーターは赤色光Rと赤外光IRを出して、その光がどのぐらい吸収されたかを測っているそうです。SO2は赤色光Rと赤外光IRの吸光度の比と反比例するとのことで、比が1の時SO2は85%なのだそうです。

 メトヘモグロビンは、パルスオキシメーターが使っている二種類の光の吸光度が同じだそうです。もしメトヘモグロビンが増えた場合、R/IRがどうなるか考えます。メトヘモグロビンが増えると、吸光度は赤色光ではR+M、赤外光IRではIR+Mとなります。

 R/IR-(R+M)/(IR+M)を計算し、これが0以上ならSpO2は上昇しますし、0以下ならSpO2は低下します。

 R/IR−(R+M)/(IR+M)=M(R-IR)/IR(IR+M)となり、MとIR+Mは0以上なので、R/IR<1なら、つまりSpO2が85%を超えていれば、メトヘモグロビンが増えるとSpO2は低下、R/IR>1なら、つまりSpO2が85未満なら、SpO2は上昇すると考えられます。

 もともとのSpO2が85%未満ということはあまりないでしょうから、通常はメトヘモグロビンが増えればSpO2が85%に向かって低下します。そして、どんなにメトヘモグロビンが増えてSaO2が低下しても、SpO2は85%より下がらないと言うことです。

 現在はメトヘモグロビンや一酸化炭素による影響を検出して、ちゃんとSaO2が測定できるパルスオキシメーターが発売されていますので、それを救急外来に常備しておくのが良いと思います(院長先生買ってください!)。

2020年7月12日日曜日

スマートホンのSpO2は信頼できるか?

 最近のスマホやスマートウォッチは色々なセンサーを内蔵しており、使用している人の健康状態をチェックしてくれる物があります。時には、その人の緊急事態を知らせて命を救ったとか。

 今回は、その中でSpO2が信頼できるか?というお話です。結論から言えば、まだまだだそうです。エビデンスレベルの高い研究もまだないでしょうし、使用するのは良いですが、病院ではやはり測定し直しましょう(しないことはないでしょうが)。

 こちらの文献をご覧ください。

 現在夏休み中で、非常に手抜きです(いつもじゃないかって?)。

2020年6月30日火曜日

パルスオキシメーターは機能的動脈血酸素飽和度を測定しています。

 今回は手抜きです。

 タイトルについてはこちらの論文を読んでいただけば良いです。

 以前酸素飽和度は機能的酸素飽和度と分画酸素飽和度があるとお話ししました。機能的酸素飽和度は酸化ヘモグロビン÷(還元ヘモグロビン+酸化ヘモグロビン)で求められます。パルスオキシメーターはこちらを求めます(でないものもあるようですが)。

 ヘモグロビンは酸化と還元以外に一酸化炭素ヘモグロビン、メトヘモグロビンなどがあります。分母にこれら全てのヘモグロビンを入れた物が分画酸素飽和度です。

 よって、機能的酸素飽和度>分画酸素飽和度です。例えば一酸化炭素中毒では、通常のパルスオキシメーターは、一酸化炭素ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンを区別できないので、機能的酸素飽和度>>分画酸素飽和度となります。

 血液ガス分析は静脈血で行って、酸素化はSpO2で見れば良いよと言う考えは、だいたい正しいのですが、時におかしな事になるので、動脈血で血液ガス分析を行うのは大切なことです。

2020年6月26日金曜日

酸素飽和度の色々

 昨日の続きです。酸素飽和度とは、ヘモグロビンにある酸素の座席がどのぐらい埋まっているか?と言う指標です。

 一番身近なものはパルスオキシメーターによって測定された酸素飽和度ですが、血液ガス分析の器械のはじき出すデータをきちんと見ると、酸素飽和度が二つあるはずです。sO2とFO2Hbなどとなっているものです。

 sO2あるいはO2SATなどと表示されている物は、機能的酸素飽和度と呼ばれています。以下の式で求められます。
 機能的酸素飽和度=酸素ヘモグロビン÷(酸素ヘモグロビン+脱酸素ヘモグロビン)

 またFO2Hbは、分画酸素飽和度と呼ばれる物で、Fはfractionの略で、酸素濃度などもFIO2とFが使われています。以下の式で求められます。
 分画酸素飽和度=酸素ヘモグロビン÷全ヘモグロビン

 分画酸素飽和度は、機能的酸素飽和度の分母に一酸化炭素ヘモグロビンとかメトヘモグロビンとか色々なヘモグロビンを足した物です。よって、分画酸素飽和度の方がやや低いのが一般的です。

 そして、昨日の計算式の係数は1.39が正式であり以下のように分画酸素飽和度を用いるべきです。
動脈血酸素含有量(CaO2)=1.39×Hb×分画酸素飽和度+0.0031×PaO2

 しかし、酸素飽和度が機能的酸素飽和度でしか求められない場合もあったりして、その際は係数が1.39では大きすぎるということなのでしょう。

2018年3月23日金曜日

低体温再び

 低体温の患者さんが来られました。自宅内で倒れていたとのことです。SpO2が測定できず、酸素4L/分で投与されていました。グッドジョブです!直腸温を測定したところ、30.8度でした。体温が低いため(循環血液量が減少していたのも原因かもしれません)血管が収縮しており、SpO2が測定できなかったのでしょう。救急はオーバートリアージですので、低酸素を除外できないのであれば酸素投与が原則です!

pH 7.147
PCO2 24.1 mmHg
PO2 180.3 mmHg
HCO3 8.1 mmol/L
BE -19.0 mmol/L
AnionGap 28.4 mol/L
乳酸 2.10 mol/L

 著明な代謝性アシドーシスと代償性の呼吸性アルカローシスでしょうか。採血では横紋筋融解と循環血液量減少が疑われました。大量輸液をして、加温をして入院となりました。

 前回の記事を参考にしていただくとよいですが、血液ガス検査は検体を37度にして検査をします。よって低体温の場合には、実際の値と異なる可能性があります。しかし、通常はそれを考慮せず、データとして表示されたものをそのまま解釈して問題ないようです。

2018年3月1日木曜日

緊張性気胸の患者さん

 78歳の男性で、慢性閉塞性肺疾患で通院中です。呼吸困難があり、SpO2が低下していると言うことで救急搬送されました。現場では酸素10L/分流しても、SpO2が75%だったそうです。

 大きなことは言えませんが、高流量かつ高濃度の酸素を投与してもSpO2が上昇してこなければ、やはりバッグバルブマスク換気でしょう!なのに、、、、、、、、、、ここでは書きません。

 来院時の血液ガスです。バックバルブマスク換気を始めて直ぐぐらいの採血です。

pH 7.087
PCO2 92.4 mmHg
PO2 84.8 mmHg
HCO3 27.2 mol/L
BE −4.7 mol/L
乳酸 2.56 mol/L

 PaCO2が高いですよね。急激に意識が悪くなったとのことでしたので、有名なCO2ナルコーシスになったのかも知れません。この人の初期対応としては、酸素をやってはいけないということではなく、酸素投与にもかかわらずSpO2が低かったのですから、もう限界と言うことで換気を助けてあげれば良かったのです。酸素を投与したために、気管挿管が必要になるとか、そういう事はありません。低酸素であれば、酸素投与をし、それでもダメなら換気をしましょう!COPDがあるような人では、SpO2が90%ぐらいあれば良いでしょうが。

 この方は気管挿管され、一回換気量400mlぐらいを送るとピーク圧ーPEEPが25mmHgぐらいになっていました。25mmHgは1.36をかけて34cmH2Oなので、動的コンプライアンスは400ml÷34cmH2O=11.8ml/cmH2Oです。正常値は50〜100ml/cmH2Oなので、かなり肺が膨らみにくい状態ですね。

 レントゲンを撮ったら気胸でした!直ちに脱気をしました。するとピーク圧が5mmHgぐらいに低下しました。すごい変化ですね。動的コンプライアンスは、400÷5÷1.36=58.8ml/cmH2Oと正常になりました!すごい変化ですね!!

 その後あまりに元気になったので抜管してから血液ガスをとりました。酸素を経鼻で2リットル/分投与しています。

pH 7.368
PCO2 43.2 mmHg
PO2 72.7 mmHg
HCO3 24.3 mol/L
BE −1.1 mol/L
乳酸 1.76 mol/L

 A-aDO2が72.94 mmHgと酸素化能障害はありますが、酸塩基平衡は問題ありません。代償性変化がないので、急性の呼吸性アシドーシスだったのだと思われます。

<今回のポイント>
 酸素は大事です!
 おかしいなと思ったらCOPDの人でも酸素投与をしましょう。
 それでもSpO2が上がらなければバックバルブマスク換気をしましょう!

2017年11月25日土曜日

酸素化能の評価について

 こちらの記事をご覧ください。それだけで充分かも知れません(^^)。

 肺胞気ー動脈血酸素分圧較差が酸素化能障害の評価によく使われます。計算法は以前書きました。計算が面倒な方は、こちらのサイトやアプリで計算すると良いでしょう。

 しかし、血液ガスをとったら全例で計算すべきだと思います。酸素を投与されているとこの較差は大きくなるとされていて、酸素を投与していない場合にのみ有用だという意見がありますが、計算するのは良いでしょう。
 若い先生には全例計算するように伝えています。計算式を理解したら、アプリとかサイトで計算して良いと伝えています。単純な計算ですから覚えておいた方が良いでしょう。私は暗記しています。

 肺胞気ー動脈血酸素分圧較差はA-aDO2と記載されることが多いですが、UpToDateにはA-a O2 gradientと書かれています。覚えておくと良いでしょう。

 こちらの文献によれば、A-aDO2が年齢で違う事は示されていません。厳密にやるなら、10を超えていたら全て酸素化能障害があると考えて(救急はオーバートリアージが原則ですから)行動すべきですね。

2017年11月21日火曜日

酸素投与量を下げたい時どうするか?

 以前酸素の投与量をどう予測するかについて書きました

 今日は酸素を下げる時どうするか?と言うお話です。原則は少しずつ下げると言う事なので、1リットル/分ずつ減らしていきます。でも、私のようにせっかちな性格であれば、もっと早く下げていきたいです。その時に役立つお話です。

 腹痛で来院された80歳ぐらいの男性です。SpO2が安定しなかったので、救急隊の方がフェイスマスクで酸素を4リットル/分で投与して運んで来てくれました。救急は悪い方を採用しますので、SpO2は悪いと考えるのが正しいので、すばらしい判断です。

pH 7.447
PCO2 30.9 mmHg
PO2 142.4 mmHg

 吸入酸素濃度FIO2は、酸素投与1L/分で約0.04上昇しますので、0.2+0.04×4=0.36です。厳密にはFIO2の単位は%ではありません。FIO2とPaO2はだいたい比例するので、PaO2を100 mmHg程度にしたい場合、0.7(100÷142.4=0.712)ぐらいをFIO2にかければ良いです。0.36×0.7=0.25ぐらいですので、経鼻で1リットル/分に下げても良いと言うことになります。

 が、余裕をもって2リットル/分ぐらいにするのが良いでしょうし、4リットル/分の投与ならば1リットル/分ずつ下げても良いでしょうね。
 また、この計算はPaCO2の値について考慮に入れていませんので、状態が落ち着いてPaCO2が高くなれば、酸素は下げてはいけないかも知れません。その事については、別の記事で書きますので余裕があれば、ご覧ください。

 血液ガスは毎日少しずつが原則ですから!

<今回の極論ポイント>
 酸素を下げる時は少なめにが原則です。
 せっかちな人は、酸素分圧と吸入酸素濃度がだいたい比例する事を利用しましょう。

2017年11月12日日曜日

SpO2が97%でも肺塞栓は否定できません。

 一般的に感度がどれだけ高かろうと、ある疾患を否定するのは難しいです。

 たぶん、たった一つの例外は、「女性であれば妊娠である」という検査です。女性でなければ妊娠ではないと言えます。

 肺塞栓は怖い病気で、救急外来で鑑別しなければならない疾患の一つです。肺塞栓の特徴として低酸素、あるいは酸素化能障害が挙げられます。よって、酸素投与をしない状態でSpO2が低いのが普通です。

 しかし、SpO2が高い(例えば97%)であっても肺塞栓は否定できません。この事は以下の本にも書いてあります。注文はこちらからどうぞ(COIはありません!)



 今回の患者さんは50歳の女性です。数日間継続する息切れが悪化すると言うことで来院されました。

pH 7.451
PCO2 20.7 mmHg
PO2 103.2 mmHg
HCO3 14.1 mmol/L
BE -7.9 mmol/L
Na 134.6 mEq/L
K 3.97 mEq/L
CL 111 mEq/L
Anion Gap 13.5 mmol/L
乳酸 4.81 mmol/L

 軽度ではありますが、酸素化能障害があり(A-aDO2=21 mmHg)救急外来で担当した先生は直ちに造影CTを撮像しました。以下のように両側の肺動脈に肺塞栓がありました。

 SpO2が97%あっても肺塞栓を否定できないので、お忘れなく。過換気症候群と診断しないようにしましょう!

 パルスオキシメーター(SpO2)は誤差が2%程度あるのだそうです。本当は95%だったとしても、97%を示すこともありますので注意しましょう。

<今回の極論ポイント>
 SpO2は酸素が血液内に充分あると言うことを示しますが、酸素化能障害がないとは言えない。
 SpO2が良くても肺塞栓は否定できない。