ラベル 呼吸性アシドーシス の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 呼吸性アシドーシス の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020年6月24日水曜日

慢性呼吸不全の場合

 今回も内科学会雑誌からです。2020年7月号P.1421から1426です。

 慢性的にPaCO2が高いと代謝性代償が起こります。つまりHCO3が高くなります。高いと言っても30だったり40だったり50だったりします。どのぐらいまで上がるのが正常なのか?が分からないと代謝性アルカローシスや代謝性アシドーシスを合併している時に分かりません。

 それが分かる物がsignificance bandあるいはconfidence bandと呼ばれる物です。混合性代謝異常がない(どうやって調べるのでしょうかね)慢性II型呼吸不全の患者さん(二酸化炭素分圧が高いだけ)を集めHCO3がどのぐらいだったかを調べて、横軸にPCO2縦軸にHCO3をプロットした物です。

 だいたいHCO3=24+0.35×ΔPaCO2だったそうです。ΔPaCO2=PaCO2−40です。よって、HCO3はそのぐらい(±5ぐらいでしょうか)であれば代償性変化だと判断できます。

2020年3月13日金曜日

Stewart法を用いた解釈

 昨日の症例です。


 高齢の男性が、著明な循環血液量減少にて来院されました。意識は清明でしたが、脈拍数は135/分で血圧は100前後でした。

血液ガス分析のデータ
pH 6.785
PCO2 28.5 mmHg
PO2 226 mmHg(酸素10リットル/分投与)
HCO3 4.2 mmol/L
BE -30.7 mmol/L
Lac 19.15 mmol/L

血液生化学検査のデータ
Na 127 mEq/L
K 4.6 mEq/L
CL 92 mEq/L
P 16.9 mg/dL
Alb 2.4 g/dL


 Stewart法では、血液ガス分析以外にNaとCL(血液ガス分析で出てくるNa、CLを用いるとNa-CLの差が小さくなりがち)、アルブミンとリンをオーダーしておくのでした。


①アルブミンとリンを見る。

 アルブミンとリンは酸になります(水溶液中で水素イオンを放出するそうです)。これらが低い場合はアルカローシス、高い場合にはアシドーシスとなります。一般的にアルブミンは低く、リンは高い時が影響があります。アルブミンが高いことはあまりなく、リンはもともと低いので、低くなっても大きな影響は少ないためです。

 この患者さんでは低アルブミン血症があり、高リン血症がありますので、代謝性アルカローシスとアシドーシスどちらもあります。


②Na-CLを見る

 35であり、ほぼ正常です。正常値は36程度とされています。AG=Na-CL-HCO3より、Na-CLが低下する場合には、AGかHCO3、場合により両方が低下しています。

Na-CLが上昇する場合は、AGかHCO3、あるいは両方が上昇していると考えられます。

AGが上昇してHCO3が低下、あるいはAGが低下してHCO3が上昇などすれば大きな変化はありません。


③SID(strong ion difference)を計算する。

SID=HCO3+2.8×Alb(g/dL)+0.6×P(mg/dL)

 2.8とか0.6は単位をそろえるための係数です。覚えなくても良いです。計算すると21.06となります。かなり低下しています。SIDが低下している場合はアシドーシス、上昇している場合にはアルカローシスですので、この患者さんはアシドーシスがあります。


④SIDギャップを計算する。

 SIDギャップ=Na−CL−SIDです。通常はゼロになります。±2の範囲にあれば問題ありません。この患者さんでは、13.94と著明に上昇しています。これは酸が増えていることを示します。


⑤NaとCLが増えているのか減っているのか考える。

 低ナトリウム血症がある場合、補正CLを計算します。

補正CL=CL×140÷Na

 この患者さんは101となり正常ですが、Naは127と低下しています。


⑥PCO2を考える。

 PCO2はHCO3+15ぐらいであれば問題ありませんが、それより高ければ呼吸性アシドーシス、低ければ呼吸性アルカローシスを合併していると考えます。この患者さんはHCO3+15=19.6であり、PCO2はそれより高いため呼吸性アシドーシスがあると考えます(これは昨日の記事の通常法と同じですね)。


 まとめると以下のようになります。

呼吸性アシドーシス

低アルブミンによる代謝性アルカローシス

高リン血症による代謝性アシドーシス

酸の増加による代謝性アシドーシス

Naの低下すなわち希釈による代謝性アシドーシス


 気管挿管をして人工呼吸管理を開始、必要ならアルブミンを投与、腎機能障害がありましたので血液浄化を、細胞外液補充液を大量投与となるでしょう。メイロンの投与は推奨されていないので使わないでしょう。

 昨日と比較して何か治療に大きな変化があるかと言えば、ないような気もします。手間がかかる割に、大きな利益がないため、Stewart法はなかなか普及しないのかも知れません。

2020年3月12日木曜日

著明な循環血液量減少の患者さん

 高齢の男性が、著明な循環血液量減少にて来院されました。意識は清明でしたが、脈拍数は135/分で血圧は100前後でした。

血液ガス分析のデータ
pH 6.785
PCO2 28.5 mmHg
PO2 226 mmHg(酸素10リットル/分投与)
HCO3 4.2 mmol/L
BE -30.7 mmol/L
Lac 19.15 mmol/L

血液生化学検査のデータ
Na 127 mEq/L
K 4.6 mEq/L
CL 92 mEq/L
P 16.9 mg/dL
Alb 2.4 g/dL

AG 35 アルブミン補正をすると 36.56

 まず酸素化能です。
 A-aDO2=(760-47)×0.9−226−28.5÷0.8=380.1となるため、激しい酸素化能障害があります。代償性ショック状態ですので大量輸液と気管挿管となりました。

 pH<7.4でPCO2<28.5のため、これは代謝性アシドーシスであると分かります。
 代謝性変化の時は、PCO2=HCO3+15程度であれば代償の範囲だと分かります。計算すると19.2であり、PCO2はそれより高いです。よって、呼吸性アシドーシスを伴っています。
 ΔAG=36.56−12=24.56で、補正HCO3=HCO3+ΔAG=28.76となり、軽度の代謝性アルカローシスも伴っています。もしかしたら、AGが上昇しない代謝性アシドーシスもあるかも知れません。

 診断をまとめると以下のようになります。

酸素化能障害(気管挿管が必要)
呼吸性アシドーシス
AG上昇型代謝性アシドーシス
代謝性アルカローシス(AG非上昇型代謝性アシドーシスもあるかも)

 次回はこの患者さんをStewart法で解釈します。

2020年2月29日土曜日

乳酸値上昇は失神より痙攣発作を疑わせます

一時的な意識障害の患者さんが来られた時に、失神なのか痙攣なのか鑑別に困ることがあります。救急外来では痙攣が治まっていることが多いですし、現場を目撃した人がいないとなおさらです。

そんなときに役立つのが乳酸です。例えば以下のような60歳ぐらいの女性のデータを示します。

pH 7.063
PaCO2 43.7 mmHg
PaO2 393.7 mmHg
HCO3 12.2 mmol/L
BE −17.6mmol/L
Anion Gap 30.2 mmol/L
Lac 13.47 mmol/L

100%酸素投与下でのデータで、この方は意識障害が続いており、痙攣も目撃されていたので、データがなくても分かりますが、乳酸値が非常に高いです。乳酸値が2.5以上かどうかで判断すると、感度73%、特異度97%とのことです。こちらのブログをご覧ください。

他にもアンモニアやプロラクチン、CKが有用のようですが、一番大事なのは問診と身体所見であることはお忘れなく。

2020年2月27日木曜日

急性呼吸性アシドーシスではBEは低下しません

 一昨日の続きです。BE(ベースエクセス;base excess)は、代謝性アシドーシスを素早く判定するための指標だと書きました。よって?急性呼吸性アシドーシスでは変化しないとのことです。

 今回はその理由を書いてみます。

 まず、急性呼吸性アシドーシスでは、PaCO2が1上昇すると、HCO3が0.1上昇するそうです。以下のような反応が起こるからだとされています。

CO2+H2O→H2CO3→Hイオン+HCO3

Hイオンは、BB(バッファーベース)中のAlbイオンなどと結合し、BBが減ります。しかし、HCO3が同じ量出来ていますので、BBは減りません。BEはBBが減ると低下するとされていますので、これだけでBEは低下しないことが分かりますが、それらについては、また後日(私がまだ理解していないから)。

BE=HCO3-24.2+16.2×(pH-7.4)

でした。例えばPaCO2が40から50に上昇したとすると、HCO3は1上昇し、25になるとします。

pH=6.1+log(HCO3/0.03/PaCO2

なので、代入して計算(関数電卓を使用しました)すると、pHは7.32になりました。

計算すると、BEは-0.496でほとんど正常です。

同じようにPaCO2が60に上昇したとすると、HCO3は26となり、pHは7.26で、BEは-0.468となりました。

確かに急性呼吸性アシドーシスではBEは低下しないようです。

2020年2月14日金曜日

慢性的にPCO2が高い人は急激にCO2ナルコーシスになるかも

CO2ナルコーシスはなかなか難しい病気なのです(私も詳しくは分かりません)が、たぶん知らない医療従事者はいないぐらいに有名です。よって、慢性呼吸不全の人に酸素をやってはいけないということがよく言われます。これについては議論があって、別に記事を書いた気がしますが、後日また書きます。

今回はもともとCO2が高い人は、急激に意識レベルが低下する可能性があることをお話しします。

先日意識レベルが急に低下して、血液ガスをとったらPaCO2が100以上あったという患者さんがいたようです。そんな急に意識レベルが低下するのか不思議だったのですが、昨日引用させていただいた文献に載っていました。右上の図は、昨日も紹介したこちらの文献から引用させていただきました(半井悦郎ら:呼吸管理に必要な呼吸生理. 日集中医誌.2008;15:49 56.)。縦軸がPaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)で、横軸が分時換気量です。動脈血二酸化炭素分圧が高い人は、上の図でa点の様なところにあります。グラフの傾きが急になっています。よって、換気量が少し減っただけでPaCO2が急激に上昇することが分かりますね。

非常に勉強になりました。

2020年1月2日木曜日

HCO3に15を足してみましょう

 呼吸性アシドーシスやアルカローシスがあるかどうかをチェックする場合、HCO3に15を足しましょう。超簡単ですね。

 例えばHCO3が15と低値(24程度が正常値です)を示す、代謝性アシドーシスであったばあい、15に15を足して30程度が予想されるPaCO2です。
 もし、PaCO2が40であれば、CO2は正常範囲ですが、代謝性アシドーシスの代償が不十分であり、呼吸性アシドーシスもあると考えます。また、PaCO2が25であった場合、やはり、PCO2が低いので呼吸性アルカローシスがあると考えます。
 これはどんな場合にも当てはまるそうです。

 よって、血液ガスをとったらHCO3に15を足してしましょう。そして、PacO2がその値と同じ位であれば、PaCO2が下がっていたとしても、それは代償の範囲であると考えることが出来ます。

2018年3月1日木曜日

緊張性気胸の患者さん

 78歳の男性で、慢性閉塞性肺疾患で通院中です。呼吸困難があり、SpO2が低下していると言うことで救急搬送されました。現場では酸素10L/分流しても、SpO2が75%だったそうです。

 大きなことは言えませんが、高流量かつ高濃度の酸素を投与してもSpO2が上昇してこなければ、やはりバッグバルブマスク換気でしょう!なのに、、、、、、、、、、ここでは書きません。

 来院時の血液ガスです。バックバルブマスク換気を始めて直ぐぐらいの採血です。

pH 7.087
PCO2 92.4 mmHg
PO2 84.8 mmHg
HCO3 27.2 mol/L
BE −4.7 mol/L
乳酸 2.56 mol/L

 PaCO2が高いですよね。急激に意識が悪くなったとのことでしたので、有名なCO2ナルコーシスになったのかも知れません。この人の初期対応としては、酸素をやってはいけないということではなく、酸素投与にもかかわらずSpO2が低かったのですから、もう限界と言うことで換気を助けてあげれば良かったのです。酸素を投与したために、気管挿管が必要になるとか、そういう事はありません。低酸素であれば、酸素投与をし、それでもダメなら換気をしましょう!COPDがあるような人では、SpO2が90%ぐらいあれば良いでしょうが。

 この方は気管挿管され、一回換気量400mlぐらいを送るとピーク圧ーPEEPが25mmHgぐらいになっていました。25mmHgは1.36をかけて34cmH2Oなので、動的コンプライアンスは400ml÷34cmH2O=11.8ml/cmH2Oです。正常値は50〜100ml/cmH2Oなので、かなり肺が膨らみにくい状態ですね。

 レントゲンを撮ったら気胸でした!直ちに脱気をしました。するとピーク圧が5mmHgぐらいに低下しました。すごい変化ですね。動的コンプライアンスは、400÷5÷1.36=58.8ml/cmH2Oと正常になりました!すごい変化ですね!!

 その後あまりに元気になったので抜管してから血液ガスをとりました。酸素を経鼻で2リットル/分投与しています。

pH 7.368
PCO2 43.2 mmHg
PO2 72.7 mmHg
HCO3 24.3 mol/L
BE −1.1 mol/L
乳酸 1.76 mol/L

 A-aDO2が72.94 mmHgと酸素化能障害はありますが、酸塩基平衡は問題ありません。代償性変化がないので、急性の呼吸性アシドーシスだったのだと思われます。

<今回のポイント>
 酸素は大事です!
 おかしいなと思ったらCOPDの人でも酸素投与をしましょう。
 それでもSpO2が上がらなければバックバルブマスク換気をしましょう!

2018年1月10日水曜日

肺気腫の患者さん

 今年になってから全然更新していませんでした。すみません。

 さて、肺気腫の患者さんが発熱で来院されました。80歳の女性で、在宅酸素療法をしている方で、酸素を1.25リットル流しています。救急隊の方が4リットル投与で搬送してきました。落ち着いていたので酸素2リットル投与に減量しての血液ガスデータです。

 体温は38度、呼吸数は20/分、SpO2は94%でした。肺炎でしょうか?

pH 7.311
PCO2 81.6 mmHg
PO2 78.0 mmHg
HCO3 40.3 mmol/L
BE 11.6 mmol/L
AnionGap 11.5 mmol/L
乳酸 1.09 mmol/L

 まず最初に酸素の値を見ます。PaO2はまあ70 mmHg以上あれば、取りあえず良いのでしたね。よって、この人の酸素分圧は大丈夫です。
 次に酸素化能障害を診ます。AaDO2を計算すると、だいたい20 mmHgです。年齢の0.3以下という基準をとってみても、酸素化能障害はありません。咳もありませんので、肺炎ではないと考えました。CTも撮りましたが、異常はありませんでした。

 次はpHですね。7.4より低いので、アシドーシスがあります。
 PaCO2が上昇していますので、アシドーシスの原因は呼吸性のようです。
 呼吸性アシドーシスが急性に来たとすると、pHは7.06ぐらいになります(PaCO2が1上昇するとpHは0.008下がります)。pHはそれよりもかなり高く、代謝による代償がされていると思われ、慢性のCO2貯留があったのだと考えられます。慌てて気管挿管とか考えなくて良かったです。

 この方は尿路感染症でした。それにしても、PaCO2が80 mmHg以上あるのに、平気な人がいるのですね!

2017年12月5日火曜日

PaCO2は肺炎の予後を示す可能性があります

 救急外来にやって来る肺炎の患者さんは、過換気になっていることが多いです。熱があって、咳があって、呼吸数が30/分、SpO2が90%(酸素投与なし)等という人が来れば、写真を撮らなくても肺炎と診断できます。

 血液ガスを採取すれば、PaCO2が低値になっています。こちらの文献によれば、PaCO2が低値、あるいは高値になっていると、死亡率が非常に高いんだそうです。

 肺炎の患者さんが運ばれてきたら、やはり血液ガスをとった方が良いですね。静脈血でも良いので!

 この文献は、以下の本のP.192に紹介されていました。カラフルでとても読みやすい本ですのでお勧めです。



<今日の極論ポイント>
 肺炎の患者さんを診たら、血液ガスを静脈血でも良いのでとりましょう。

2017年11月23日木曜日

意識障害患者さん

 基礎的なお話は書ききった感じもあるので、これからは症例が増えていきます。

 40歳の男性です。意識障害で運ばれて来ました。意識レベルはJCSで三桁です。血圧や脈拍数は問題ありません。SpO2がルームエアーで85%だったので酸素を5リットル投与されて運ばれて来ました。

pH 7.353
PCO2 48.4 mmHg
PO2 149.1 mmHg
HCO3 26.3 moml/L

 まずみるのはPaO2でしたね。100mmHgを越えており、値としては問題ありませんね。酸素可能の評価は後で良いです。
 PCO2は少し高くなっていますね。正常値は35〜45 mmHgですので。緊急性はないでしょう。

 酸素化能障害がないかを判定します。酸素投与下ではA-aDO2は意味がないという説もありますが、一応計算します。酸素マスクで酸素を5L投与ですので、20+4×5=40で吸入酸素濃度は40%でした。

 A-aDO2=(760−47)×0.4−PaCO2/0.8−PaO2=713×0.4−48.4÷0.8ー149.1=75.6 mmHg

 年齢の半分以下という基準をとっても、酸素化能障害があることが分かります。酸素投与量を下げることはあっても、酸素投与はしばらく必要でしょうね。

 代謝の問題を判定します。例えばこちらの方法を参考にしてください。

(1)pHは7.4以下であり、アシドーシスです。正常値の7.35を切っていませんから、アシデミアとは言えないですね。
(2)PCO2が高いので、呼吸性アシドーシス+代償性変化としてのHCO3上昇と考えます。
(3)急性の呼吸性アシドーシスと考えると、PCO2は8.4 mmHg上昇していますので、HCO3は0.84 mmol/L上昇すると考えると、まあだいたい合います。と言うか異常があまり大きくないですから。

 他にも色々検討すべきなようですが、一度に全部勉強するのはこのサイトのポリシーに合いませんので(^^)。

 この人は、精神科で処方されている薬剤をたくさん飲んでしまい、薬物による意識障害がありました。呼吸抑制もそのせいなのでしょうかね。
 代謝に関してはよく分かりませんが、乳酸が2.06 mmol/Lでしたので、本当はもっとHCO3が高いのかも知れません。

 経過観察入院され、翌日元気に退院されました。