吹奏楽部の練習中、トロンボーンを吹いていた時に突然息が苦しくなったとのことでした。意識は清明で、血圧は124/82mmHg、脈拍数124/分、呼吸数は32回/分、SpO2はルームエアーで99%でした。
血液ガスデータは以下の通りで、酸素投与はされていません。
pH 7.53
PCO2 30.2 mmHg
PO2 92 mmHg
HCO3 24 mmol/L
さあ過換気症候群だと判断して治療して良いでしょうか???
過換気症候群の患者さんに、血液ガスが必要なのか?と言う論点もあると思いますが、別の所で議論しましょう!私は必要だと思います。今回のようなことがあるからです。
この人の酸素化能を調べてみましょう。これは以前記事にしましたので、そちらをご覧ください。
A-aDO2=20mmHgでした。
正常値は年齢×0.3 mmHg以下というのが一番覚えやすいですので、計算されたA-aDO2=20 mmHgは、17×0.3=5.1 mmHgを超えています。よって、この患者さんは、酸素化能障害があります。
単純な過換気症候群では酸素化能障害はありません。何しろ心の病気ですから。
通常、過換気症候群ではPaCO2が30以下に低下していますので、PaO2は100 mmHgを越えていて、SpO2は99%以上です。そうでなかったら、酸素化能障害を起こす病気があって、そのために過換気になっている(PaCO2を下げることで何とかPaO2を保っている)状態だと考えるべきです。
酸素化能障害が起こる病気としては、肺塞栓が有名です。
この患者さんの胸部レントゲン写真です。左の気胸があります。過換気症候群としなくて良かったです。
・トロンボーンの練習中に突然過換気になるのだろうか?
・酸素化能障害があるのはおかしいのではないだろうか?
日々の診療でミスを犯さないためには、おかしいんじゃないの?と思い、それを追求すると言う態度が必要ですね。
<今回の極論ポイント>
PaO2+PaCO2=150 mmHg弱です。
過換気症候群の患者さんを見つけたら、本当に過換気かを考えましょう。
重大な疾患を見逃さないように!
参考になりました!!A-aDO2の基準値として手元にある本ではざっくり20mmHgってなってたり,他の本では高齢者喫煙者は20mmHg,通常は10mmHg.別の本では10以下は正常,10-20は境界値,20以上を異常と判定,なんて書いてたりしてます.年齢x0.3,覚えておきます.
返信削除コメントありがとうございます。年齢の半分以下というものもありました。酸素を吸っていると正常でも高くなるので、正常かどうかは判定が難しいですね。
返信削除以下の記事には、「年齢ごとの正常値よりも,開大を認めたときに患者の病態を考えて診断,治療を行うことが大切なのかもしれない」とあります。そちらの方が良いかも知れませんね!
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3555
お忙しい中,追加情報ありがとうございました.紙上?症例検討では数字が独り歩きしてしまい数字だけ見がちです.あらためて気を付けたいと思います.
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