2017年11月19日日曜日

低酸素だった場合、酸素をどのぐらい投与するべきか?

 低酸素の患者さんが来院されたとします。例えば、血液ガスデータが以下のような患者さんです。

pH 7.516
PCO2 30.7 mmHg
PO2 58.8 mmHg
HCO3 24.3 mmol/L
BE 2.0 mmol/L

 呼吸数は28/分で、SpO2は89%です。レントゲンでは肺炎を疑う所見があり、肺炎と診断しました。

 当然酸素を投与すると思いますが、どのぐらい投与しましょうか?

 よく分からなかったら、リザーバーマスク(10L/分)で投与することをお勧めしています。高濃度酸素は短時間なら問題ありませんが、低酸素は危険だからです。

 ただ、経鼻カニューレで酸素1L/分でいいのに、リザーバーマスクで投与してしまうとちょっとカッコ悪いですね。

 大雑把に言うと、吸入酸素濃度(FIO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)は比例します。よって、ルームエアーでPaO2が50 mmHgの人が来たとして、PaO2を100 mmHg近くに上げたいと思ったら、酸素濃度は約2倍、つまり40%近くにすればいいです。普通のマスクや経鼻カニュラで酸素を1L/分流すと吸入酸素濃度は約4%上昇すると言われていますから、5L/分で酸素を流せば良いです。経鼻カニュラは3L/分程度までとされていますので、普通の酸素マスクで5L/分流しましょう。

 ちょっと数学で証明?してみます。

 A-aDO2=PAO2−PaO2でしたよね。
 PAO2=(760−47)×FIO2−PaCO2/R-PaO2
 A-aDO2、PaCO2、R(呼吸商で通常は0.8)は変わらないと仮定すれば、

PaO2=713×FIO2−k kは定数

と言うことで713×FIO2が大きい、つまり高濃度酸素をやっている時ほど、PaO2とFIO2が比例すると言うことになります。もちろんですが、あくまでだいたいであり、換気の状態が変化しないことはないでしょうし、A-aDO2もFIO2によって変わるようですから、このやり方は正確ではありません。が、現場では、だいたいこのぐらいということでいいのではないでしょうか。

 逆に酸素を下げていく時にも、この理屈が通用します(別記事にしました)が、下げすぎはよくありませんので、少しずつ下げましょう。

 ちなみに、今回の患者さんでは、フェイスマスクで酸素を4リットル/分流しました。計算すると、1リットル/分で約4%吸入酸素分圧が上がりますので、吸入酸素濃度は約36%。約1.8倍になっていますので、PaO2もそのぐらい上昇しますから、58.8×1.8=105.3 mmHgになります。上がりすぎたら下げれば良いので、5リットル/分ぐらいから開始しても良いでしょう。

<今回の極論ポイント>
 PaO2とFIO2はほぼ比例します。
 迷ったら酸素は高流量で開始し、データを見ながら下げていけばいいです。
 低酸素は危険です!

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