2017年11月1日水曜日

血液ガスは一回とって満足してはいけません

83歳の男性です。糖尿病と診断されてインスリンまで使われていたのですが、本人が治療を拒否して1ヶ月程度何も治療をしない状態だったそうです。朝から意識レベルが低下していると言うことで救急車で来院されました。

意識レベルは3桁で、血圧120/75mmHg、脈拍数125/分、体温39度、呼吸数28/分,
SpO2 96%(酸素投与なし)でした。血糖は498mg/dLでした。
前回学んだように、これだけで酸素投与を開始しても良いですね。

まず血液ガスがとられました。

pH 7.376
PCO2 28.0 mmHg
PO2 92.4 mmHg
HCO3 16.0 mmol/L
BE −7.4 mmol/L
乳酸 3.93 mmol/L

今回はこれだけで満足しないように!と言うお話なので、細かい読みはいずれ説明させていただきます。
乳酸が2 mmol/L以上は異常と考えますので、この方は乳酸が高値になっていて、つまりは体の代謝が悪いと言うことです。最初に考えるのは循環不全や低酸素です。この方は酸素分圧は何とか保たれていましたので、あるとすれば循環不全です。
血圧は何とか正常ですが、脈拍数が早いので循環血液量減少があると予想されます。高血糖による浸透圧利尿があったのでしょうね。
よって酸素投与を行う(今回もマスクで4L/分流しました)と共に乳酸リンゲル液の投与を開始しました。生理食塩水じゃないの?!と言う突っ込みはとても大切ですが、又の機会に。

約1時間後に血液ガスを再検査しました。

pH 7.399
PCO2 25.8 mmHg
PO2 105.5 mmHg
HCO3 15.6 mmol/L
BE −7.4 mmol/L
乳酸 1.79 mmol/L

乳酸値が下がっていますね。治療が上手く行っていると考えて良いでしょう。血液ガスは一度取るだけのこともありますが、経過を診ることも結構大事だというお話でした。

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