2017年11月26日日曜日

PaO2が正常なら酸素投与は不要なのか?

 検査は不思議な物で、本当は一部のことしか示していないのに、検査が正常だと全てが正常だと感じさせてしまいます。今回はPaO2が正常でも酸素投与が必要なことがあるよ!と言うお話です。

 今日は、出血性ショックの患者さんです。80歳の女性で下血して血圧が60mmHgしかないという事で救急隊から受け入れ要請がありました。救急隊の方はショック状態なのとSpO2が上手く測れないために、オーバートリアージでフェイスマスクで酸素を5L/分流しながら搬送してきました。素晴らしいことです!

pH 7.505
PCO2 32.2 mmHg
PO2 220.3 mmHg
HCO3 24.8 mmol/L
Hb 4.8 g/dL
O2sat 99.1 %
O2(CT) 6.5 ml/dL
乳酸 3.53 mmol/L

 A-aDO2を計算すると、24.65 mmHgとなり、酸素化能障害はないと考えて良いでしょう。計算上の動脈血酸素飽和度(O2sat)は99.1%ですから、酸素は下げていって良いと思うかも知れませんが、、、、、、、

 末梢組織に運ばれる酸素の量(DO2)は以下の式で表されます。

DO2=心拍出量×血液中に含まれる酸素の量(O2(CT))

 出血性ショックの人は心拍出量が減っているはずです。なので、心拍出量を増やすべく、輸液をする事も大切ですが、血液中に含まれる酸素の量を増やすことも必要です。血液中に含まれる酸素の量 CaO2は以下のように計算できます。当院の検査器械はO2(CT)と表示します。CTはたぶんcontent(含有量)の略だと思います。一般的にはO2(CT)はCaO2と表現します。Cはcontentの意味です。

CaO2=ヘモグロビン結合酸素 + 溶存酸素
  =1.34×Hb×SaO2 + 0.003×PaO2

 正常な人では、ヘモグロビン結合酸素は20ml/dL 程度で、溶存酸素は0.3 ml/dL 程度です。ヘモグロビンと結合している酸素が圧倒的に多いですね。

 もし、ヘモグロビンが低下していれば輸血が必要ですが、直ぐには出来ませんので、PaO2を上げればいいです。酸素投与をすれば少しではありますが、血液中に含まれる酸素の量が増えます。SpO2は酸素が座われる座席が満席かどうかを示すだけで、酸素の座われる座席の数は示していないのです。

 SpO2が100%であっても、酸素投与をすべき時があるのです。

<今回の極論ポイント>
ショックが疑われる患者さんには、SpO2が100%あっても酸素投与をしましょう。

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